漂着物

漂着物のレビュー・評価・感想

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漂着物
7

未知の生命体を描いた異色作

伊藤潤二氏の作品世界はあり得ない設定を独自の絵柄で描ききって読者を引きずり込む、力業も魅力の一つでしょう。この作品もレビュータイトルで掲げた、未知の生命体がテーマとなっています。あえて、この生命体の正体は明らかにされることなく終わるというもの。ラストに至っては、この巨大な生物のなかに人間が入っているというぶっ飛んだ発想はなかなか思いつかないのではないでしょうか?
これもはっきりとした説明はないのですが登場人物の1人が「もしかするとこの生物に寄生して人間たちは生きながられていたのでは?」という憶測をするのですが、これも断定できないままエンディングを向かえます。ここで描かれる巨大な生命体のグロさも氏の独壇場といえます。伊藤氏はシリーズ物も手がけているのですが、個人的にはシリーズものより短編作品に惹かれます。その奇想天外な発想や登場人物たちのキャラクターの描き方もよくネタが尽きないものだと感じます。本作は20年以上前の1995年に発表された作品ですが、デビュー8年目にしてこのオリジナリティ。また、デビュー時とは比べものにならないほどのペン・タッチには脱帽モノです。いっぺんのマンネリ感は微塵もなし!