ブレードランナー / Blade Runner

ブレードランナー / Blade Runner

『ブレードランナー』とは、フィリップ・K・ディック作のSF小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の映画化作品。監督はリドリー・スコット、脚本はハンプトン・ファンチャーであり、1982年に公開された。
レプリカントと呼ばれる、人間と区別がつきにくい人造人間6名が火星から地球へと逃亡してくるのをきっかけに、主人公リック・デッカードがレプリカント狩りのため復職につく。すべてのレプリカントを狩れるのか。人間と機械の違いとは何か。SF映画「禁断の惑星」や「メトロポリス」に次ぐSF映画の金字塔。

ブレードランナー / Blade Runnerのレビュー・評価・感想

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ブレードランナー / Blade Runner
9

映画への没入感が凄まじい作品です

『ブレードランナー』は、フィリップ・K・ディックの小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を基にした、1982年のサイバーパンクSF映画であり、その映像美や独特な世界観が特徴的です。
以下、あらすじです。

物語は、近未来のロサンゼルス。人間にそっくりな人工生命体であるレプリカントが存在する世界で展開されます。
レプリカントは労働力として作られ、人間と見分けがつかないほどの外見と知性を持っていますが、制御が困難であるため特定の期間が経過すると「退役」させられます。
主人公のリック・デッカードは、ブレードランナーと呼ばれる特別捜査官であり、退役を迎えたレプリカントを捕まえることが任務です。
ある日、4人の危険な逃亡レプリカントが地球に現れ、彼らを追跡することになります。デッカードは彼らを捕まえるために捜査を進めるうちに、自身の信念や存在に疑問を抱くようになります。

『ブレードランナー』の魅力はいくつもありますが、その中でも大きくは4つの点が魅力的です。
・ノワール映画の要素が取り入れられた雰囲気
・未来世界でありながら荒廃している美術の美しさ
・独特なカメラアングルや映像構成、映像効果を用いた監督の独特な映像美へのこだわりの演出
・人間くさいアンドロイドたちのキャラクターの魅力

これらの魅力が組み合わさり、『ブレードランナー』は視覚的な魅力と独特な雰囲気を持つ作品となっています。

ブレードランナー / Blade Runner
9

監督リドリー・スコットが多層的に造形したミステリーSF大作『ブレードランナー』

『ブレードランナー』は1982年のSF映画で、監督はリドリー・スコット、脚本はハンプトン・ファンチャーとディヴィッド・ピープルスです。
出演はハリソン・フォード、ルトガー・ハウザー、ショーン・ヤング、エドワルド・オルモス。
本作は作家フィリップ・K・ディックが1968年に発表した小説『電気羊はアンドロイドの夢を見るか?』を緩やかに原案にしています。
映画の舞台は2019年のディストピア的な未来のロスアンジェルス。
「レプリカント」として知られる人造人間が、市場を独占するタイレルコーポレーションによって遺伝子工学的に「製造」されて宇宙植民地での労働のために供給されています。
ロイ・バッティ(ハウザー)に率いられたレプリカントのグループが地球に逃亡すると、疲れ果てた警官リック・デッカード(フォード)は彼らを狩り出す命令をいやいやながら承諾しました。
研究者は本作公開時から映画の分析を始めていました。
1996年には、作品製作に関する詳細を「解剖」する研究が現れました。
また、別な研究では、『ブレードランナー』における哲学的・心理学的問題や文学的影響が分析されています。
たとえば、複数の文学テキスト(聖書、古典、近代文学)をコラージュして画面を構成していることを指摘することで、映画のサイバーパンク的な、ディストピア的な要素を摘出している研究があります。
というように、多様な解釈を許す「懐の深い」作品として仕上げられたのは監督リドリー・スコットの力量であるかもしれません。

ブレードランナー / Blade Runner
8

近未来

最初にこの映画を見て感じたのは、斬新でスタイリッシュ、それでいてアジア的で、どこか古ぼけた退廃的な世界観だなと思いました。
ハリソンフォード演ずる、主人公デッカードが、街中の日本料理店(ラーメン屋?)で食事をするシーンが印象的です。このシーンについては、いろいろなレビューや評価があるようですが、自分の場合はこのシーンで一気に映画に惹き付けられました。
雨が降り注ぐなか、デッカードは順番待ちをして店で食事をします。店と周囲の雰囲気が独特で、一見近未来的なのですが、そこに何か雑然とした、異国情緒あふれるというよりも、どこかアジア的な雰囲気で、そこに日本の文化が入り交じった用なただ住まいの街並と店です。
また店内で食事する人々の服装も、近未来的‥というよりも、いろんな文化の入り交じった用な独特のファッションセンスです。彼ら彼女らが器用に箸を使ってうどん(ラーメン?)をすすったり、店員に注文する姿が妙に味わい深く感じます。
そこに寿司屋のマスターのような主人と、デッカードのやり取りが絶妙に絡み合います。マスターのおかしな日本語も素敵です。
具体的に何を食べているのかわかりませんが、独特の雰囲気と世界観の中で生きている、ハードボイルド風の主人公・デッカードが麺を啜る姿が妙に美味しそうに感じました。
作品は、アンドロイドの反乱を描いた物語ですが、実は主人公もアンドロイドかもしれない‥という伏線もあるそうです。しかし私が魅了されたのは、この作り込まれた世界観、ごちゃ混ぜでカオス、それでいて芸術的な雰囲気と設定です。
物語序盤からレイチェルという、魅力的な女性のアンドロイドが登場します。
アンドロイドと分かっていても、デッカードは彼女と恋に落ち、二人で一緒にピアノを弾くシーンはSF映画というよりは、ハードボイルドな刑事映画のラブシーンさながらで、独特の世界観と絡み合い私は好きです。
派手なアクションよりも他にも見る所がいろいろあり、何よりデッカードが兎に角渋くて、素敵です。
ストーリーよりも、他に目が行く映画という意味では今までで一番でした。