ザ・バンド

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『ミュージック・フロム・ビッグピンク』について

『ミュージック・フロム・ビッグピンク』は、ロックの歴史に残る伝説のバンド、「ザ・バンド」の記念すべき第一作です。
1960~70年代のアメリカを代表するバンドでありながら、メンバー5人のうち、なんとアメリカ人はドラマーのレヴォン・ヘルムただ一人。それ以外の4人は、実質の音楽的リーダーと言えるロビー・ロバートソンを含めてすべてカナダ人です。
この特異なメンバー構成は、この時期のアメリカ文化を外から見る視点を生み出したという点で、重要です。
「ミュージック・フロム・ビッグピンク」では、フォークロア的な色彩が色濃く漂う中で、主流であったサイケデリックな手法を徹底的・意図的に排除し、農村の中で奏でられているような、土の匂いのするサウンドを展開しています。
ギター、ベース、ドラムといったオーソドックスな楽器だけでなく、オルガン、フィドルなど、伝統的な響きを持った楽器が印象的に使われています。
有名な「ウェイト」では、そのまま聖書を思い起こさせる歌詞の世界が展開され、アメリカ社会の不変の部分に触れるかのような感覚を味わいます。
最大の印象は一曲目「怒りの涙」。たそがれたオルガンとギターのデュエットで始まりますが、そこにとてつもなく重たいタムタムのサウンドがかぶさってきます。異世界です。