椿町ロンリープラネット

椿町ロンリープラネット

『椿町ロンリープラネット』(つばきちょうロンリープラネット)とは、石川県出身の漫画家・やまもり三香による日本の少女漫画。『マーガレット』(集英社)で、2015年8月発売の12号~2019年9月発売の8号まで連載された。全14巻。
主人公は、父が多額の借金を背負ったことにより自身も住み込み家政婦として働くことになった、高校2年生の大野ふみ(おおの ふみ)。根は優しいのに無愛想でぶっきらぼうな雇い主の小説家・木曳野暁(きびきの あかつき)と、真面目で家庭的なふみが共に生活を送る中で、お互いに成長し惹かれ合っていく様子を描く。
2人の住む家が日本家屋であったり、暁の普段着が和装であるなど、全体を通して和の雰囲気が強い。
作中には描かれなかったエピソードを収録したボイスドラマが配信される(第1弾:マーガレット10・11合併特大号、第2弾:16号 特別付録)、脇役たちのエピソードを描いた番外編が数回に渡って連載されるなど人気が高く、累計発行部数は紙と電子合わせて430万部を突破した。

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椿町ロンリープラネット
9

優しく移ろう恋模様に、心暖まる

主人公は勿論のこと、恋敵まで思わず背中を押したくなるようなキャラクター像と、繊細な絵によってなぞられる、優しく移ろう恋模様に胸がジンワリと暖まる。
母親を幼い頃に亡くし、借金を抱え出稼ぎに行く父親を支える、女子高校生のふみ。そんなふみが家政婦として仕える時代小説家の暁。複雑な家庭環境ながらも親の愛情を一身に受けて育った二人が、不器用に、優しく痛みに寄り添い合い、一歩ずつ、時には立ち止まりながらお互いを分かろうとする姿に心を揺さぶられる。
二人は人に頼らずまず一人でやろうとする。孤独を味わったことがあるからこそ、人一倍愛情深い。小さな発見とともに縮まった一歩を大切にしながら、だんだんと惹かれ合う心理描写が丁寧かつ繊細。二人だけの世界ではなく、あくまでも周りを巻き込みながら織りなす日常を愛おしく感じた。
甘えることを我慢してしまうしっかり者のふみが勇気を出して素直に甘えるシーンから、等身大の女子高校生らしさや、十歳以上歳の差がうかがえてそれがまた良かった。お気に入りのシーンを、時々読み返しに行きたくなるような作品。エピローグの「私はあなたの生きた証」「あなたはわたしが愛した証」というフレーズにこの作品”らしさ”が出ている。読了後、この宇宙のどこか自分にとってたった一人の存在を、願わずにはいられない。