BANANA FISH / バナナフィッシュ

BANANA FISH / バナナフィッシュ

『BANANA FISH(バナナフィッシュ)』とは、『別冊少女コミック』で連載されていた吉田秋生によるバイオレンスサスペンス漫画。1980年代のニューヨークを舞台に、バナナフィッシュというドラッグをめぐる、ストリートキッズ、アッシュの戦いを描く。ハードな抗争を繰り広げる一方、孤高に生きてきたアッシュが英二との友情を通して人間らしさや愛を覚えていく姿が描かれている。かねてより名作として人気を博していたが、2018年に吉田秋生40周年プロジェクトでアニメ化され、人気が再燃した。

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BANANA FISH / バナナフィッシュ
10

名作中の名作少女漫画

少女漫画なのに少女は出てこない。なんやこれ、と思いながら1話から見続けていると、あっという間に夢中になっている、そんな作品です。
ギャングのボス「アッシュ」と写真家の助手「英二」の友情を、バナナフィッシュという存在を中心に、非常に危うく、しかし逞しく表現した作品です。単純な友情ではない、まさにこれこそ愛ですね。BLちっくな表現も織り混ざりますが、あくまで人間を味わう一種の手法として受け取ってもらいたいです。
そして何より複雑な人間関係がまた、その味わいを深めていきます。殺された兄、殺した親友、殺されたボス、殺した兄貴。キャラクターの憎悪が、キャラクター自身に降りかかる、躊躇のない絶望の叩き売り。だからこそ映えるのが英二の温かさと、強さです。ギャングのボスとして圧倒的な力を持つアッシュですが、それは決して望んで手に入れたものではありません。作為的に与えられ、逃れられなくなる地獄への切符そのものなのですから。
見返りばかりを求められて、純粋に手を差し伸べられることを知らずに育った山猫は、英二という存在に触れることで、心の氷を溶かし始めます。しかし、その流水が血に変わる時、友情は引き裂かれ、また新たな試練が与えられます。結末は賛否両論ですが、それが名作の証なのではないでしょうか。読者の望む結末が、本当の幸福とは限らない。見る人によって解釈が180度変わるような、後味がずっと残り続ける、非常に美しいラストをお楽しみください。また、番外編、後日談としてanother storyもございますので、そちらも是非ご一読ください。何度も噛みしめることのできる、名作中の、名作です。