死役所

死役所

『死役所』は、あずみきし原作の漫画作品。新潮社の『月刊コミックバンチ』にて、2013年11月号より連載されており、2023年5月時点で累計部数は570万部を超えている。既刊23巻。
此岸と彼岸の境界に存在する、あの世の市役所ならぬ「死役所」。ここには、自殺、他殺、病死、事故死、寿命、死産まで様々な理由で亡くなった者たちが訪れ、死後に自分の死の手続きをする場所である。
「総合案内」で働く職員シ村は、次から次へと現れる死者に「お客様は仏様です」と慇懃無礼な態度で対応する。訪れる死者は死を受け入れた者から、現実を理解しないまま現れる者まで様々である。彼らはどう生き、どう死んだのか。生前の姿が死者の申請書から次々とあぶり出されていく。
実は死役所の職員たちもまた隠された秘密があった。彼らはなぜ死後、職員として働くことになったのか。シ村の秘められた過去とは何か。死役所を訪れる人や職員が死んでなお、自分の人生について考える物語である。
2019年10月から12月までテレビ東京系の新ドラマ枠「ドラマホリック!」にて、TOKIOの松岡昌宏主演でテレビドラマ化された。

ay1220のレビュー・評価・感想

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死役所
10

絶妙な世界観

死後の世界のお話です。お役所に見立てて、自殺課、殺人課、老衰課、事故課…などと死後の行先が決められていて、死んだ人は皆、成仏するために「お役所」で手続きをしていく…という設定です。
基本的に短編のお話がいくつか入っていますが、主人公は老若男女さまざまで、それぞれに人間味あふれるストーリーが展開していきます。たんたんと、言葉少なに進んでいく反面、「死」を扱っているだけあって心に刺さる、胸が痛くなるようなヒューマンドラマもあります。
例えば、ずっと子どもが欲しくて不妊治療していた夫婦がやっと授かった子どもが死産で産まれてしまうお話。死の結末はわかっているのに、結果だけが重要ではなく夫婦で共有していくその「過程」に意味があり、産まれた赤ちゃんは微笑んでいた…。
他にも。いじめを苦に自殺した子が後から親の愛を知る話など、ただ感動させようとしてお涙頂戴的にストーリーが進んでいくわけではなく、救われない・理不尽な面も描かれていて、胸にぐっとくるような、短編なのに深い仕上がりの作品なのです。
ストーリーの進行役としての主人公、シ村(死者が最初に行く総合案内所にいる)さんが、慇懃無礼でありながら仏様のようにも見える、謎深き人物で…。これまた魅力的なんです。
タイトルから感じるような恐怖、ホラーものではありせん。本当によくできた世界観で、一人ひとりの人生が丁寧に描かれていて、ずーっと読んでいたい作品です。