ソマリと森の神様

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ソマリと森の神様
8

世界を綿密に魅せる、圧倒的描き込み

中身はともかく、外見は無機質なゴーレムである「おとうさん」や、全体的に退廃的な雰囲気の強いこの世界の中で、数少ない人間であるソマリは、圧倒的な描き込み量の背景から際立ち、他の何者よりも生命力が感じられます。
”ヒト狩り”によって人間が絶滅の危機に瀕している世界で、実際にソマリを狙う脅威にさらされることがありながらも、おとうさんの献身や、意外にもソマリたちに協力してくれる人たちもいて、暗い雰囲気になりそうな状況にも関わらずどこか温かさを感じます。
それというのも、ソマリは状況に無頓着な能天気。それが元来の性格であるのか、お父さんと一緒だから安心しているのか?きっと両方なのだと思います。
幼さに見合って危なっかしいソマリは、無防備にはしゃいでは危ない目に合いそうになりますが、おとうさんがゴーレムとしての分析能力と戦闘能力を用い、いつも助けてくれます。
その姿は本当の親子のようで「ゴーレムには感情が備わっていない」というお父さんですが、ソマリの危険には緊張や憤怒の気配を見せることも。確かに感情を滅多に見せないかもしれませんが、まるで寡黙だけど娘を想う優しいお父さんみたいです。
食べ物に目がなくなんでも美味しそうに食べるソマリの可愛さも、この作品に多く備わる魅力の1つです。