いちげき

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いちげき
9

松本次郎著、漫画「いちげき」レビュー

「いちげき」って?
「いちげき」とは、永井義男の時代小説「幕末一撃必殺隊」を原作とした漫画である。

どんな漫画なの?
幕末期の江戸では薩摩藩が画策した「御用盗」という強盗や放火、辻斬りなどのテロ行為が行われていた。
薩摩の仕業とアタリはつけつつも、確証がないため正規部隊を動かして鎮圧できない幕府は、御用盗鎮圧のために「身元不明の特殊部隊」を設立させ、対応させようとする。
この「身元不明の特殊部隊」の隊員として力自慢の農民たちが選ばれる。
それが主人公たちである。
主人公たちは幕府の侍、島田と和田の下で訓練を積み、「御用盗」を襲撃。
戦果を挙げていくが、幕府側もまたきな臭い動きを見せていて…。

…というのがおおまかなストーリーだが、別の見方をすることもできる。
当時は身分が絶対の時代であり、農民とは侍より下の存在である。
そんな農民である主人公たちが薩摩の侍を斬るために、侍という身分を与えられ、訓練し、薩摩の侍をやっつけるという、この流れ。
どこかで見たことがないだろうか。
「落ちこぼれ達が、熱血コーチに導かれ、ジャイアントキリングを達成する」
そう。青春スポ根漫画の路線である。

やっていることは、手足が飛ぶし、血も出るし、人を斬るし、人が死ぬし、たまにしっかりエロもはさむし、といった有様だが、中身は不思議と血みどろなのに爽やかというか、帯にもある通りギラギラした青春を感じるのである。
「身分は農民という最下層の主人公たちが、人斬りのエリート侍・島田に導かれ、絶対的存在だった侍を斬る」
複雑な歴史背景とこのストーリーラインで、ただのジャイアントキリングで終わらないドラマも生まれる。
興味を持たれた方は是非とも読んでみてほしい。