千と千尋の神隠し / Spirited Away

『千と千尋の神隠し』とは、スタジオジブリが制作した長編アニメーション映画。宮崎駿の原作・脚本・監督により2001年に公開された。ジブリ作品の興行収入ランキング1位。316億8000万円で当時は日本国内の興行収入1位だった。『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』に記録を更新されるまで、記録を破られることは無かった。
不思議な世界に迷い込んだ10歳の少女、千尋(ちひろ)が、「千」(せん)という名で神々が訪れる湯屋「油屋」で働き、豚にされた両親や謎の少年ハクを助けるために強く生きていく姿を描いた物語。
2002年に第52回ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞。2003年に第75回アカデミー賞でアカデミー長編アニメ映画賞を受賞。日本の長編アニメ作品でアカデミー賞を獲得したのは本作品のみ。
日本テレビ系『金曜ロードショー』の2003年に1回目を放送。視聴率は46.9%でこの年の紅白歌合戦の視聴率を上回り、同年の年間視聴率1位を記録した。
2022年舞台『千と千尋の神隠し』が上演され、第47回菊田一夫劇賞を受賞。

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千と千尋の神隠し / Spirited Away
8

無限の可能性な作品

ジブリの最高傑作とする人も多く、海外の多くの国でも絶賛された、テーマ性が光る、日本文化の粋を究めた集大成と言える日本アニメの至宝。
特に子供達への道徳授業はこの一本で足りるかも知れないと思わせる。「自然に気付かせる訓話」の幕の内弁当だ。食べる為には働くこと、間違いは認めて謝ること、人を色眼鏡で見ないこと、自分が周囲に対して出来ることは惜しまぬこと、自然を守るのは人間の為になること、人の言葉に安易に流されずに自分で考えること、子供への過ぎた干渉は成長を阻害すること、相手の立場や真意を慮ることがコミュニケーションの基本であること等々、挙げ出せば本当にキリがない。
日本人の勤労意識や自律心を、日本版「不思議の国のアリス」とも言える女の子の冒険ストーリーに綴り、日本的かつ無国籍な幻想的空間を舞台に、美しく躍動的なアニメーションを以て、薫り豊かな音楽に乗せて奏でる本作。もはや未来に遺すべき芸術作品だ。
人として社会と関わるからには決して逃れられない基本姿勢を、僅か二時間で親子一緒に愉しく学べるのだ。幾らディズニーアニメが素晴らしくとも日本アニメに届かないのは、そのメッセージの多様さと大人にも通じる普遍的な深みにある。
本作は「風の谷のナウシカ」や「もののけ姫」の様な自然科学や文明論的な社会テーマ性は弱く見える。でも本作の真意は人文科学的な人間行動学の啓蒙にある。
人と自然に対して大いなる愛を持ち、勇気を持って行動する人は、周囲を変え、運命をも変える。この発想は実は日本人には当たり前だが、絶対的な神に運命を委ねる教えの中で育ってきた国や地域の人々にはとても新鮮なのだろう。「善き行動が善き社会を創る」此れこそ真に日本アニメの歴史的名作と確信する由縁である。
世界が宮崎駿に感動し感謝するなど、誰が予想できただろうか?想像力は無限の可能性を秘めていると感じられる名作だ。