祈りの幕が下りる時

田中さくらのレビュー・評価・感想

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祈りの幕が下りる時
7

原作を読んでいなくても十分楽しめる内容

原作を読んでしばらく経っていたため、「こういう話だったかな」と思えるくらい、あちこちに伏線を張り過ぎずにまとまっていた。
松島菜々子の演技には正直あまり期待していなかったが、ふだんは沈着冷静でありながら内面の激情を抑えた演出家を上手く演じていた。阿部寛演じる加賀の相棒・松宮役の溝端淳平が、加賀は先輩でありながら親戚であるが故に、つい言いたいことを言ってしまったりという微妙な距離感を表現している点が良かった。
捜査が行き詰まっても最後に一気に解けていくのは推理物の映画にはありがちだが、この作品もその種に入るだろう。時間の制約がある中で原作通りに作ることは不可能だから仕方ないが。
特に、浅居博美の担任(及川光博)についての描き方が表面的で、どんな人物だったのかがわかりにくく、原作を読んでいない人にはその後の展開に納得がいかないのではないか。
とはいえ、博美が追い詰められ、ついに加賀と対峙したシーンは、雑にならずに丁寧に作られていて、観ている側にも緊張感がひしひしと伝わってきた。淡々とした加賀の言動がかえって迫力を生んでいる。随所に挿入される日本橋界隈の風景も楽しい。わざとらしさを感じなかった。
エンドロールにもサプライズがあるので、最後まで席を立たずにちゃんと観ていただきたい。