映画HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ

『映画HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』は、2018年10月に公開されたプリキュア15周年記念の劇場作品である。本作は2016年公開の『映画プリキュアオールスターズ みんなで歌う♪奇跡の魔法!』で一旦終了した“プリキュアが大集合するお祭り映画”で、当時最新シリーズであった『HUGっと!プリキュア』と第1作目の『ふたりはプリキュア』のキャラクターたちの活躍をメインに、プリキュアの記憶と能力を奪い我が物とする怪物・ミデンとの激しいバトルと、そのミデンの意外な正体に迫っていく様が魅力の内容となっている。ミデンによって記憶を失ったプリキュアは幼児の背格好へ戻りそれまでの関係性を失う為、ミデンに恐怖し逃げようとするものの、記憶を奪われなかったキュアエール・野乃はなとキュアブラック・美墨なぎさは必死の抵抗によってキュアホワイトを始め仲間のプリキュアの記憶を呼び覚まし復活させる。思いの力に動揺したミデンはプリキュアのみならず一般の人々の記憶まで取り込み巨大な水晶のステージに変えてしまう。果たして、他のプリキュアや多くの人々の記憶を解放することは出来るのか。ミデンはなぜ記憶に拘り渇望するのか。本作では登場した55人のプリキュア全員に台詞と活躍の場面が見られるよう構成されており、「最も多くのマジカル戦士が登場するアニメ映画」としてその年のギネスブックに登録されている。

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映画HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ
10

プリキュア15年の集大成、かつての子供たちへ涙のエール

本作は15周年を迎えたプリキュアシリーズにおいて、通常春に上映される複数の作品からプリキュアたちが集合して悪を倒す所謂「オールスターズ」系作品を秋に改めて公開した映画です。

歴代プリキュアたちの記憶と能力を吸収し使いこなす事が出来る謎の存在「ミデン」に襲われる「HUGっとプリキュア」の面々。記憶を奪われたプリキュアは赤ん坊の年齢にまで小さくなり共に戦った事もすっかり忘れてしまいます。
独り追い詰められる「キュアエール/野乃はな」。そのピンチを救ったのは初めてプリキュアに変身して悪と戦った「キュアブラック/美墨なぎさ」と「キュアホワイト/雪城ほのか」。彼女たちもミデンに襲われ仲間の記憶を奪われつつも、はなたちのいる世界に現れ辛くもミデンを撃退しますが、赤ん坊になりすっかり気弱になってしまった他の仲間はそれぞれがバラバラな行動ではなとなぎさを悩ませます。さっきまでピクニックを楽しみ、笑いあっていたのに今は自分を拒絶しこの場を逃げ出そうとさえしている。

プリキュアという作品で度々出てくる「絆」、それがミデンという記憶を奪う「敵」によって断絶してしまう描写はとてもショッキングで悲しみに溢れています。
それまでも仲間がバラバラになって行動するストーリーはありましたが、「一緒にいるのに自分が分かってもらえないもどかしさ」をここまで強烈に描いたのは無かったように思います。後に「HUGっと」と「ふたりは」の2チームは記憶を取り戻しミデンを追い詰めるのですが、彼の正体である古いカメラ(フィルムも無く使用もされていない)の楽しい・嬉しいといった感情を知らず他人から奪う事で自分に「焼き付けようと」してもなお虚しさしか感じない姿にまた胸を撃たれます。それはキュアエールも同じで、彼女は相手の気持ちになって考え理解し受け入れようとします。
思えばプリキュアの根底には相手の倒すことそれがメインでは無く、普通の生活を脅かす者に立ち向かう姿勢が描かれておりたとえそれが敵であっても理解しようと努力し受け入れる。それが一貫して描かれています。本作でもそれは余すことなく表現され感動を誘うのです。