翔んで埼玉 / Fly Me to the Saitama

ウルムナフさんのレビュー・評価・感想

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翔んで埼玉 / Fly Me to the Saitama
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映画館で声をあげて笑って観られる映画

タイトルは『翔んで埼玉』ですが、実際には1都6県の関東ローカルネタに溢れているため、他地域の方はピンと来ないところがあるかもしれません。
逆に、関東の方は、万難を排してでもぜひ、映画館で声をあげて笑いながら観てください。とくに、埼玉の映画館でご覧になることをお勧めします。

主演が東京都民(二階堂ふみ)と埼玉県民(GACKT)の役なのに、なぜか二人とも沖縄県出身という、不思議なことになっています。
原作には出てこなかった、神奈川県・千葉県・群馬県・栃木県は、とんだとばっちりを被っていますが、それすらも壮大なこの映画の世界を成立させるために必要な要素となっています。

原作は『パタリロ!』で有名な魔夜峰央の同名の漫画ですが、読んでいなくても全く問題ありません。もちろん、読んでいたら、ここまで再現するのか…!と思うこと間違いなしです。
美麗な描写とちょっとの毒を含んだ魔夜峰央の作品世界を、余すところなく、馬鹿馬鹿しくも仰々しく再現していますが、もちろん、魔夜作品を全く知らなくても楽しめます。

出演者と製作スタッフの、魔夜峰央の世界観への熱烈なリスペクトと、「コメディは真面目にやればやるほど可笑しくなる」という姿勢を、本気で全力で表現したことは、日本映画の快挙と言ってよいでしょう。
1カット1カットの画面の情報量の密度がとても高く、建物の設定から小道具の本当に細かいところまで手が込んでいるため、1回観ただけでは見逃してしまうような小ネタが至るところに仕込まれています。
とくに、人物デザイン監修/衣裳デザインを、『累ーかさねー』の柘植伊佐夫が担当していることが大きいです。
『累ーかさねー』のエキセントリックな人物表現が、更にパワーアップしており、非現実的な人物設定を視覚的に語らせて、予備知識ゼロの観客であろうと、この荒唐無稽な作品世界に否が応でも引きずり込むことに成功しています。
原作は「埼玉ディスり漫画」として爆発的に有名になりましたが、映画を観終わったとき、何故か埼玉が好きになっていることでしょう。