王様とボク

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王様とボク
4

まあまあです。面白い題材と豪華キャストの無駄遣い

菅田目当てでしたが、あらすじを読んで面白そうだったので視聴しました。
6歳のまま知能の成長が止まってしまった青年とその友達の葛藤を描くという題材はいいと思いました。
しかし「大人になんかなりたくない」という主題をいろいろな表現方法でおしゃれに見せようとすることに時間や労力を割きすぎていて、題材が持つ面白味を引き出せていないと思いました。
この映画は全体的に登場人物の人間味を描いている場面が中途半端でした。もっとモリオとミキヒコが関わり合って人間として成長していく様子をメインに映していたら面白くなっていたと思います。特に、トモナリの描かれ方が中途半端すぎて可哀想でした。もっとトモナリの葛藤やトモナリママとのシーンも描いてあげて欲しかったです。あとは、他の方もおっしゃっていましたが二階堂ふみの役はいらなかったかな。そもそもモリオと会ったことがないはずなのに、なんで序盤のほうからモリオのこと気にかけてますよアピールみたいな語りかけ?のシーンがあったんだろう。普通会ったこともない彼氏の友達のナイーブな話題にあんなにズカズカと踏み込んでいくかな、と思い違和感しかなかったです。プレゼントも、球根にこれから育っていく、みたいなメッセージ性を込めたのかもしれないけどまず彼女が会ったこともないモリオにプレゼント買ったり手紙を書いてることが意味わかんな過ぎて入ってこない。彼女役はいても良かったと思うけどあんなに前面に出す必要はなかった。出したとしても二階堂ふみはちょっとうるさ過ぎて邪魔なので適役ではなかったかな、演技はすごく上手なだけに残念でした。

細かい設定についてもフィクションなので多少の現実とのずれはあるのかもしれませんが、それにしても違和感が多すぎました。まず12年間眠っていてもう面会も行っていないとしても、親が会いに来ないのはおかしすぎる。絶対気にかけていたはず。親が子のことをそんな簡単に忘れる?そして親が出てこないなら誰の判断で施設に預けたの?どこからお金が出てるの?おばあちゃんはモリオに会ってるの?そこもよく分からない。もう育てる気はないとしても、たとえ九州に住んでいたとしても、12年間も眠っていた我が子が目を覚ましたというのに、一度も会いにこないわけないでしょう。ミキヒコがモリオを育てるような流れにしたかったから登場させなかったのかもしれないけど、余計なシーンを省いて親の心情とかを描いたほうがわかりやすかった。親がモリオに会わない理由があるのだとしてももっと描くべきだった。

あと、施設の人の対応の描かれ方も雑すぎ。子供(知能は)が勝手に施設を抜け出してるのに探しにもこないの?ありえない。知能的にはひとりで出歩くには危ない歳なんだから普通大問題になるでしょう。モリオが朝帰りしてきたら施設のスタッフが3人で駆け寄ってくシーンも笑いそうになったくらいおかしかった。施設の人がミキヒコを信頼して預けたみたいな感じだったらまだわかるけど、門の外から見送ってた感じからしてそんなことなさそうだったし。モリオがプリクラを見て自分の姿の変わりように涙を流す?シーンも、ちゃんと毎日お風呂やトイレに入っていたら洗面所に鏡があるはずだし、他の大人と目線の高さが同じことにも気づいてるはずだし、意識が戻ってから1回も自分が大人になったことに気づいてないのはおかしい。この間3歳の子供と遊びましたが、この作品で描かれているモリオより判断能力はありました。知能に障害がない普通の6歳児と同じなら、もっと自分の状況を知ろうとするはず。
電車を見るシーンからして朝っぽかったけど、6歳なら普通夜疲れて眠くなるよね?夜寝ないみたいな概念ないよね?身体は大学生だからオールも余裕みたいな感じなの?よくわからん。要するに詰めが甘過ぎです。

ファンタジーにもしきれない、リアルな描写もしきれない、中途半端な映画でした。最後のシーンも言うまでもなく、は?って感じでした。その後モリオとミキヒコはどうなったんだよ…。ミキヒコは学校もバイトも全部やめてるのに…。この作品は主題をおしゃれに撮ることに精一杯で、こんな見せ方いいでしょー!みたいな感じで、そのほかを中途半端にしただけの面白い題材と豪華キャストの無駄遣いに終わった映画ということに尽きるかなと思いました。菅田を始め松坂桃李も二階堂ふみも演技はとても上手なだけにもったいなかったです。