太陽が見ている(かもしれないから)

太陽が見ている(かもしれないから)

『太陽が見ている(かもしれないから)』はいくえみ綾による漫画作品。
2014年9月から2018年5月に発行され全8巻。『Cookie』にて2014年5月号から2018年7月号に掲載されていた。
自分の気持ちを出すことが出来ず、クラスメイトと打ち解けられない中学生の岬。自分の居場所が無いと感じていたが、同じクラスの楡と仲良くなり、楡の前では自分を偽らずに過ごすことが出来るようになる。
高校生になった2人は、楡が父親に買ってもらった家で一緒に暮らし始める。
岬の家庭は親が離婚しており、母親と母親の彼氏と一緒に生活していたため家庭にも居場所がなかった。そんな岬にとって、楡との生活は大事な居場所となった。
ある日、楡の幼なじみで、小さい頃にある事件を起こして疎遠になっていた、日帆と出会い3人は急速に仲良くなっていく。岬と楡、日帆の関係はどうなるのか。
3人の男女の友情や、淡い恋心ではなく胸が締め付けられるような三角関係の揺れ動く気持ちを描いている。家族との不和、思春期ならではの不安定な感情や痛々しさといった心の機微が繊細に描写された作品で、カップルが成立してからも一筋縄ではいかない。
重苦しく生々しい展開が多いが、最後は皆が前を向いて歩きだし、すっきりする作品。

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太陽が見ている(かもしれないから)
10

人付き合いが苦手で「生きにくい」と感じている人におすすめしたい漫画

いくえみ綾「太陽が見ているかもしれないから」が7月に完結しました!
いくえみさんの作品に出てくる女の子は、決してキラキラした少女漫画の女の子ではなくて、クラスで馴染めなくて転校したりと、とても現実的な中で、がむしゃらに強く生きようとする女の子が多くてとても応援したくなります。
「太陽が見ているかもしれないから」の主人公の岬も、人付き合いが誰よりも苦手で、窮屈な思いをしながら生きています。修学旅行で同じクラスの子が言い合いになって、泣き出して、抱きしめあって慰める、そんな女子らしい女子のやり取りを冷ややかな目で見てしまったり、「制服がないから」という理由で高校を選んだり、自分を取り巻く環境にとにかく馴染めないでいます。そんな岬と同じくクラスから浮いた存在の楡。中学で出会った2人が大人になるまでを描いた作品です。

思春期の不安定な心理描写がとても表現されていて、どんなに苦手なキャラクターも「その気持ちわかる」とついつい感情移入してしまい、嫌いになれないキャラクターばかりです。「好きだから眩しくて近づけない」という気持ちや、「本当に好きな人には相談できない悩みをどうでもいい人に相談してしまう」などと言った人間の弱い部分に共感します。学校で、会社で、同じような思いを抱えている人にぜひ読んでもらいたいです。