薄桜鬼

『薄桜鬼』は、オトメイトより2008年にPS2ソフトとして発売された、大人気乙女ゲームソフト。対象年齢は15歳以上。
行方不明となった父を探すため、男装をし旅立った主人公の千鶴。夜の京都で白髪で目が赤く光った新選組隊士に襲われるところから物語は展開していく。
作中には薄桜鬼最大のテーマとなる、鬼と呼ばれる存在が登場。史実は決して壊さず、しかしそこにオリジナル要素も含めて進行していくストーリーは、乙女ゲームという括りだけでは言い表しきれない。
2009年にキャラクター達との日常を描いた『薄桜鬼 随想録』、2010年には新選組がまだ浪士組と呼ばれていた頃を描いた、『薄桜鬼 黎明録』が発売。その後も様々なゲーム機に移植され、2015年には大幅リメイクをし、シナリオや攻略キャラクターが追加された『真改』シリーズが発売された。

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薄桜鬼
9

激動の時代を駆け抜けた男たちと一人の少女の幕末奇譚

音信不通になってしまった父親を探すため、江戸からひとり京までやってきた雪村千鶴。静かに雪が舞い降る夜、千鶴の耳に飛び込んできたのは男の悲鳴と、その悲鳴にかぶさるように響いた甲高い笑い声。恐怖に凍り付く千鶴が目にしたのは、浅葱色のだんだら羽織を着た白髪の隊士が浪士を惨殺する光景。
「逃げるなよ。背を向ければ斬る」惨劇の恐ろしさに震える千鶴にそう鋭く言い放ち、刀を向けていたのは新選組副長・土方歳三だった!

原作は大人気乙女ゲーム。私自身普段からゲームは全くしないので原作のゲームもやったことはなかったのですが、史実に沿って進んでいく物語と、鬼や変若水、羅刹といったダークな要素に一気に引き込まれていきました。教科書にも載っている池田屋事件や蛤御門の変など、歴史を揺るがす大きな事件だけでなく、新選組が屯所として使っていた八木邸・前川邸、壬生寺や西本願寺など、とても丁寧に描写されています。倒幕と佐幕、両者がぶつかり合う混沌の時代に巻き込まれてゆく新選組と千鶴。そんな混沌とした乱世の中でも、「絶対に自分の信念は曲げない。絶対に後へは退かない」という新選組隊士たちの生き様と強さに胸が打たれます。物語は第二期「薄桜鬼 碧血録」へと続いていくので併せて観るのがおすすめです。