黒い家(The Black House)のネタバレ解説まとめ

1999年に日本で公開された、貴志祐介原作の映画。監督は森田芳光。2007年には韓国でも映画化された。保険金殺人をテーマにした作品で、当時使われだした「サイコパス」という表現にも焦点が当てられた。心理学的な「反社会性人格」(サイコパス)という存在についての警告や残酷な描写が含まれ、殺人鬼を演じる大竹しのぶと主人公を演じる内野聖陽との攻防が手に汗握るホラー・サスペンスとなっている。

途中で織り込まれる菰田家の拷問部屋や風呂場は『黒い家』というタイトル通り血でどす黒くなっており、作り込まれた小道具が世界観を際立たせている。
また、若槻の勤めている会社が大手であるのがわかるよう、大通りに面した場所に会社を配置したり、菰田家が潰れそうな陰気な空気を漂わせた古めの一軒家を使用して撮影されているのが細かい。
菰田家の玄関は整理整頓されておらず、自分の利益に関係ないことには興味がないという幸子と重徳の性格を表している。

「サイコパス」という言葉を浸透させた

当時サイコパスという言葉は出始めで、心理学の分野では主に「反社会性人格」というパーソナリティ障害とされていた。
これは自分の利益や気分によっては人を殺しても構わない、傷つけても構わないという自己中心的な社会になじまない性格のことで、この作品では菰田幸子と菰田重徳がそうだとされている。
菰田重徳は「指狩り族」の生き残り、ということで、働かないでお金をゲットするためには自らの肉体を損壊することにまったくためらいがない。
さらに初対面の保険屋に息子の遺体を発見させるため、さも殺した息子はまだ生きているかのような振る舞いをし、「ちょっとそこの襖を開けてもらえませんか、その部屋にいつもいるんです」と巧妙に若槻を罠に仕掛けた。
保険がおりるか審査中にも、ただひたすら「困るな〜困るんだよ〜」と「息子の葬式もまだで…」などと感情に訴えかけ、若槻が折れて保険金を支払うよう何度も毎日のように通いつめた。
菰田幸子の「サイコパス」さは、主に「殺人」と「拷問」という点で目立つ。
邪魔だったり目障りだと思った人間を特に深く考えないで殺し、「自分の気分を悪くさせた」という理由で意味のない拷問にかける。もちろん拷問後は全員が死亡する。
犯罪の発覚を抑えるためにまた殺人をくりかえし、床下の死体置き場からは何体もの遺体がみつかり、ちょっと気にくわない人間がいたらすぐに殺していたことがわかる。また、若槻の部屋に侵入した時も、部屋のものをめちゃくちゃに荒らして、ランニングマシンを勝手に使用し、走りながら飲み物を口にしては巻き散らかすという奇行をとっている。
実際の「サイコパス」という言葉がまるっきりこのパターンに当てはまるわけではないが、「サイコパス」らしい「サイコパス」を演じていると言える。

原作との違い

若槻の会社の設定

原作では若槻のバックボーンがしっかりと書かれてからの事件突入になるが、映画ではその描写はない。
そのかわり繰り返される保険会社での会議の様子が、緑色のライティングであやしく描かれており、印象に残る仕様になっている。
映画では舞台は金沢になっており、原作者の貴志祐介は京都支社の営業マンとして登場する。原作では若槻のつとめる支社が京都支社となっている。

拷問シーン

金石はハモのように「一寸切り」にされて死亡している、という描写も、映画では「ひどい拷問を受けた」という描写にとどまっている。
原作では遺体の状況をかなり克明に伝えているが、映画では金石の遺体が映るシーンでは、遺体の顔のアップとちぎれた左腕が映るのみで、「水しか与えられずに一週間から10日ほどひどい拷問を受けていた」とされている。

菰田家の臭い

原作では「嗅覚異常」と「人格障害」の関連について考察するシーンがあり、菰田家はひどい臭いがするという文もあるが、映画ではそれには触れられていない。
ただしそれを指し示すシーンはあり、家に入った若槻が顔をしかめるシーンや、恵の捜索のために乗り込んでいくシーンでは、ものすごい悪臭に嗚咽をもらす場面もある。

韓国映画としてのリメイク

2007年6月21日に、韓国映画としてリメイクされた。
主人公のチョン・ジュノは、初出勤の日にシン・イファという女性から「自殺の場合保険金はおりるのか」という電話を受ける。その電話に親身に相談に乗り、ジュノは自らの名前も告げてしまう。
数日後、パク・チュンペの家で彼の息子が首吊りしているのをチュンペの前で目撃。その後チュンペと再婚したイファによる保険金催促が始まる。
観客動員は約140万人。韓国ではホラーは100万人以上動員で大ヒットとなるのでヒット作に入る。
アイドル俳優を配置することの多い韓国ホラーにおいて、演技派の俳優ばかりを集めたところもポイントであり、物語の面白さで観客を増やしたと言える。

尼崎事件と「黒い家」の相似

2012年に世間を震撼させた、兵庫県尼崎市の連続変死事件。“尼崎事件”と呼ばれるこの事件は、遺体遺棄容疑で逮捕された女性の周辺で行方不明者が続出しており、その関係者がほとんど殺されていたことで世間を驚かせた。
なんと大量殺人事件としても珍しく、書類送検者の数は17人。
尼崎事件とは、少なく見積もって25年もの間、中心人物Xと呼ばれる女性たちの元に、血縁関係にない人間を多く集め疑似家族を築き、共同生活を営んでいたことが始まり。同居していた女性が失踪したことを発端として、複数の不審死、失踪事件が相次いで起きたが、事件が表沙汰されることはなかった。
しかしXたちに監禁されていた40代女性が逃げ出し警察に駆け込んだことで、Xは障害容疑で逮捕される。そして発覚した殺人事件の捜査が進められるが、Xが事件を全て暴露しないまま留置所で自殺。
Xに命じられて犯行に及んでいた人間の供述を元に捜査が行われ、判明した内部の事件は「A家母失踪事件」、「B家母不審死事件」、「B家母の長男の長男転落死事件」、「C家母死亡・死体遺棄事件」、「D家父の兄死亡・死体遺棄事件」、「A家長男転落死・保険金詐欺事件」、「D家母連れ去り事件」、「主犯Xの同居人女性U死亡・死体遺棄事件」、「D家長女死亡・死体遺棄事件」、「D家母不審死事件」、「A家次男死亡・死体遺棄事件」、「F家母死亡・死体遺棄事件」、「C家長男・C家母年金窃盗事件」と多岐にわたる。
このとき取りざたされたのが映画の原作となった貴志祐介の「黒い家」であり、「邪魔な人間はなんともおもわず殺す」「犯罪者に従った人間も犯罪を犯す」、「保険金や年金を狙う」という手法が共通している。

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