ダンジョン飯(漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ダンジョン飯』とは、年10刊漫画誌「ハルタ」(KADOKAWA)にて2014年2月から2023年9月に連載されていた、九井諒子原作の長編連載作品である。古典的ファンタジーな世界観をもつ作中のダンジョンに登場する魔物を、現実にある方法で料理し食す、グルメ&アドベンチャー漫画となっている。作中で作られた料理にはレシピが記載され、これにより作者の持ち味である、架空と現実が融合した世界観が存分に発揮されている。

『ダンジョン飯』の概要

『ダンジョン飯』とは、年10刊漫画誌「ハルタ」(KADOKAWA)にて2014年2月から2023年9月に連載されていた、九井諒子原作の長編連載作品である。登場人物たちが、作中に登場する魔物たちを、現実にある方法で料理し食べ、ダンジョンの踏破を目指すという、グルメと冒険的要素を兼ね備えたファンタジー漫画である。この「架空のモンスターを論理的に考察し、現実的な料理で食す」という斬新な設定で評判を呼び、人気作品となった。2015年度コミックナタリー大賞・第1位、このマンガがすごい!2016(宝島社)オトコ編1位、THE BEST MANGA 2016 このマンガを読め! 第1位、漫画大賞2016・第2位、全国書店員が選んだおすすめコミック2016年度・第1位、Amazon ランキング大賞 2016 Kindle本コミック・1位(※第3巻)など、数々の賞を受賞している。
物語完結後の2023年12月時点で、累計発行部数は1000万部以上を記録し、2024年1月からはTRIGGERの制作でアニメが発表されている。
作中で作られた料理にはレシピが記載され、これにより作中料理へのリアリティーが増し、作者の持ち味である「架空と現実が融合した世界観」が存分に発揮されている。
世界観の設定には、1981年に発売されたサーテック開発の3DダンジョンRPGゲーム『ウィザードリィ』の影響が多くみられる。

『ダンジョン飯』のあらすじ・ストーリー

序章:迷宮の発見

ある日、離島の小さな村で地鳴りと共に地下墓地の底が抜け、中から朽ちかけた男があらわれる。
男は1000年前に滅びた王の名デルガル・メリニを名乗ると、かつて栄華を誇ったその国が“狂乱の魔術師”によって地下に囚われ続けていると話す。さらに「その魔術師を倒したものには国のすべてを与える」と言い残し、男は塵となって消えていった。
その言葉を信じた多くの冒険者が迷宮(ダンジョン)に集い始める。

ファリンの死とパーティの再編

物語の主人公ライオス・トーデンは、魔術師である妹ファリン・トーデンとハーフエルフの魔術師マルシル・ドナトー、ハーフフットの鍵師チルチャック・ティムズ、東方の剣士シュロー、ドワーフの女戦士・カーカブルードのナマリとパーティを組み、迷宮踏破を目指していた。
ライオス一行は迷宮の深部で炎竜(レッドドラゴン)と戦闘になるも、深部到達までに迷宮に迷い、罠で食料を失ったことによる空腹で連携攻撃の精彩を欠き、全滅の危機に陥る。

炎竜がライオスを襲おうとした瞬間、ファリンは身を挺し兄を庇うと、炎竜に捕食されながらも転移魔法で一行を地上に送り届ける。しかし炎竜に捕食されている最中だったファリンには魔法が効かず、1人迷宮に取り残されてしまった。
地上で目を覚ましたライオスは、すぐにファリンを助けに行こうとするが、迷宮に荷物を置いてきたため無一文になっていた。さらに、シュローとナマリがパーティ離脱したことをマルシルから聞かされる。ライオスは、一刻でも早くファリンを救出するため、離脱したメンバーを補充せずマルシル、チルチャックとともに再び迷宮に挑むことにする。これは、「迷宮では死者であっても条件を満たせば蘇生が可能」であり、竜の中でファリンの身体が少しでも多く残っているうちに救出するというタイムリミットがあったからである。そのため、食料調達などの準備に時間をかけないよう、ライオスは迷宮内に自生する植物や虫・魔物などを調達して食料にしていくことを提案する。これを、マルシルやチルチャックは激しく拒絶した。
実はライオスは、以前から魔物に関心が高く、「迷宮グルメガイド」という本を熱心に読み込むほどであった。これにより早速大サソリと歩き茸を収穫し、食べてみようと提案する。
そこへ、迷宮内で長年魔物食を研究してきたドワーフのセンシが現れる。
センシは慣れた手さばきで干しスライムや藻、サカサイモなどを加え「大サソリと歩き茸の水炊き」を振舞う。
この美味さに、当初は拒否していたマルシルやチルチャックも感嘆し、渋々ながらも魔物食に賛同していくことになる。
またセンシも魔物食に関心の高いライオスに感銘を受け、さらに彼らの目的が炎竜を討伐し妹を救い出すことだとわかると、旅への同行を申し出た。
これにより、ライオスパーティは新たにセンシを加え4人で迷宮に挑むことになった。

黄金卿の謎

ライオス一行は地下2階層へ進み、人食い植物、バジリスク、マンドレイク、大蝙蝠、動く鎧などを次々討伐し食していく。またライオスは動く鎧を討伐した際に剣を失い、代わりに動く鎧から拝借した剣が魔物であると理解しながらも、これに「ケン助」と名づけ携行した。
地下3階層の酒場に到達した一行は、そこでオーク達の襲撃に出くわす。オーク達はセンシと面識があり、彼らは地下5階層にあった集落を炎竜に襲われ、族長のゾンを筆頭に3階層へ避難してきたのであった。
ライオス達の目的が自身らの集落を荒らす炎竜であると分かったオーク達は、集落の場所を告げ、ライオス一行を見送った。

宝虫を食べ、亡霊たちも撃破し進む一行は、「襲い掛かる絵」が飾られる広間にたどり着く。その絵には黄金卿の王の戴冠式と、それを祝う宴の様子が描かれ、触れば中に入れる様になっていた。中の食事が食べられるのではないかと絵に侵入したライオスだったが、王の従者であるエルフの魔法使いに見つかってしまい、危機一髪で抜け出した。

先へ進み地下4階層の湖でケルピーを討伐した一行は、人魚や魚人に襲われ全滅した冒険者達を発見する。実はこのパーティは、以前宝虫に襲われ全滅していたところをライオスたちが救出した、カブルー一行であった。水上歩行の魔術が切れて水没するのを防ぐため、ライオスとチルチャックはそれぞれカブルー達を水上から救出すると、死体回収屋がカブルーたちを発見しやすい場所へと移動させ安置した。
翌朝、マルシルが不手際で水の精霊ウンディーネの怒りを買い、執拗な襲撃を受け重傷となってしまう。偶然にもそこへ元メンバーであるナマリが現れる。ナマリはノームの学者夫婦タンス・フロッカとヤーン・フロッカに用心棒として雇われていた。タンス夫妻はライオスに請われ、マルシルを回復させる代わりに調査を手伝わせる。無事にタンスによって回復させられたマルシルは、枯渇した魔力を補うため、センシとナマリによって捕獲されたウンディーネを食し、さらに深層へと先を急いだ。

レッドドラゴン討伐とファリンの蘇生

いよいよ5階に着いた一行は、炎竜が頻繁に活動しているであろう痕跡を見つけ、不安を募らせる。通常はあまり活動をせず消化も遅いドラゴンがこれだけ動いていれば、ファリンが消化されてしまっている可能性が高まるからである。ライオス達は炎竜相手に手酷い傷を負いながらも、なんとか討伐に成功する。
竜を倒した一行は竜の体内からファリンを捜索するが、出てきたのはファリンの骨であった。さらに、ファリンの魂と肉体の繋がりが脆くなっていた。このため、ここから動かすのは危険だと判断し、マルシルは自身が密かに研究していた古代魔術でファリンを蘇生することにする。この古代魔術は禁忌とされており、それらを扱ったりすることは重罪であった。
素材に炎竜の血肉を使い、古代魔術で無事蘇生したファリンは、生前と変わらぬ姿で4人と接する。

しかしその夜中、ファリンは何者かに呼ばれるように姿を消してしまった。
気付いたライオス達が炎竜の死体のそばでファリンを見つけるも、以前絵の中で襲ってきたエルフがあらわれた。このエルフこそが、“狂乱の魔術師”と呼ばれる迷宮の主シスルであった。シスルはライオスを「汚らわしい盗賊」と詰ると、ライオス達を地面に開けた大穴に落としてしまった。
そしてシスルは、ファリンを「竜」と呼ぶと「デルガルを捜索する」という任務を与え下半身を炎竜に変えてしまった。

罠に落とされた4人は突如現れた亡霊たちによって、地下5階層にとどまったオーク達の拠点に誘われる。このオーク達のリーダーは3階で出会った族長ゾンの妹リドであった。リドは顔見知りだったセンシから事の経緯を聞くと、炎竜を討伐した礼として4人を一時匿う。シスルの登場により、再びファリンとはぐれたライオス一行であったが、チルチャックは1度地上に戻り装備を整えるべきだと判断する。ライオスとマルシルが納得するとは思えず、騙してでも連れ帰ろうと画策するチルチャックに対し、リドは「素直に言えば良い」と諭す。このリドの後押しで、チルチャックは「おまえ達を失いたくない」と目に涙を浮かべて訴え、ライオス一行は地上を目指すことになった。

ドラゴンのキメラと化したファリンの襲撃

オーク達の元を離れ地上を目指していたライオス達は、道に迷っていた。シスルによって迷宮内の地形が変化し、魔物の活動も活発化し始めていたためである。
また回復を一手に引き受けていたマルシルの負担を補うため、ライオスはマルシルから回復魔法を含むいくつかの魔術を学ぶことになる。慣れない魔術を行使したライオスは、魔力酔いを起こし倒れると、以降しばしば幻覚や幻聴に悩まされるようになった。
この階層でライオス一行は、食事休憩中にシュロー一行と鉢合わせた。
シュローはライオスの元を離脱したあと、故郷から連れてきた父の家臣である術師のマイヅル、忍者のヒエンとベニチドリ、オーガの戦士イヌタデ、獣人のイヅツミとともに迷宮に挑んでいたのである。
さらに、水上で全滅していたカブルー一行が、タンス夫妻によって蘇生された後帰還する道すがらシュローと合流し、ファリン捜索を手伝うため行動を共にしていた。
そんな彼らのもとに下半身を竜の姿に変えられたファリンが現れる。想像を絶する姿に言葉を失うのも束の間、ファリンの攻撃にライオス達は次々と倒されていく。カブルー一行の魔術師リンシャ・ファナの呼び起こした落雷のおかげで形勢は逆転したかに見えたが、ファリンはそのまま一行の前から逃亡した。

ファリンの姿を見たシュローはライオス達のしてきたことを責め詰る。ライオスが「狂乱の魔術師を倒しファリンを取り戻す」と宣言しても、シュローはふざけていると一蹴する。これに対しライオスは「寝食を取ってここまできた自分たちのほうがずっと本気だった」と殴り返す。2人は素手の殴り合いに発展し、さらに本件の関係のないことまで言い争いになったが、最終的にはライオスが勝利した。
これによりシュローは、ファリンによって壊滅させられたメンバーとカブルー一行とともに「帰還の術」で迷宮を後にすることにした。

狂乱の魔術師追跡

シュロー達と別れたライオス一行は、地上に戻るのを諦め再び深層を目指す。これは、シュローが最低限の道理として、「地上に戻ったらマルシルが古代魔術を使用したことを島主に警告する」と告げたためである。地上に戻れば4人は証人として捕えられてしまい、ファリンの捜索が出来なくなってしまうため、やむを得ず先を目指すことになったのだ。
最初に炎竜によって全滅しかけた地下6階層に足を踏み入れた一行は、その先でシュロー一行にいた獣人イヅツミと出会う。イヅツミは古代魔術によって魔獣の魂を混ぜられた獣人であり、元に戻る方法を求めて古代魔術に詳しいマルシルを頼ったのである。しかしこの魔術はマルシルにも非常に難しく、イヅツミは古代魔術に長けたシスルを新たな目標にし、ライオス一行に加わった。

夢魔、アイスゴーレムなどを倒したライオス一行は、休憩中にしばしば虚空を振り返るイヅツミの様子から、周辺に黄金卿の亡霊が彷徨っていることに気づく。さらにライオスが魔力酔いを起こして以来感じ続けていた幻覚や幻聴も、この亡霊によるものであった。ライオスと対話できるようになった亡霊たちは一行を黄金卿へ招き入れる。
そこには、迷宮に取り込まれ老いも死もない1000年におよぶ悠久の時を、無為に過ごす人々の姿があった。
黄金卿を統治していたデルガルの孫ヤアド・メリニは、突然現れたライオス達を歓待する。実はヤアドは、黄金卿の守り神・有翼の獅子による「翼もつ剣を携えた者が狂乱の魔術師を打倒し我々を解放する」という予言を信じており、それがライオス達であると確信したのである。
ライオスはシスルとの対話を望んでいたため、ヤアドにシスルの居所を尋ねると、「最深部にとらわれている有翼の獅子の力を借りればシスルの力を抑えることができる」と助言を受けた。

黄金卿を離れ先に進んだライオスたちは、バイコーンやサキュバスなどを討伐していく。ライオスはサキュバスに襲われた際に、自身の夢の中で、有翼の獅子とも呼ばれる「翼獅子」との対話を果たす。翼獅子はライオスのもつケン助を通して彼らの旅路を見ていたと明かし、ライオスに迷宮の主になるように諭す。そしてシスルの家の所在地を明かすと、そこを目指すように助言したのである。

カナリア隊上陸

シュローたちとともに地上へ帰還したカブルー一行は、海岸に西方エルフの船が到着していることに気づく。
西方エルフには「カナリア隊」と呼ばれる迷宮調査部隊があり、これは迷宮の危険性が一定の基準を超えた際に調査に訪れるものであった。カブルーは島主に圧力をかけていたカナリア隊のもとに赴き、迷宮の封鎖を提案する。また迷宮内に残った冒険者たちを退避させるためのツテを持つと明かす。実はカブルーはかつて迷宮によって壊滅したウタヤの生き残りであった。それゆえカブルーは迷宮の制圧を掲げ冒険者となったのである。何もかもわからぬままエルフに迷宮を引き渡したくなかったカブルーは、自身の持つ裏島主のツテを使うことを考え、このように提案したのである。カブルーの提案を聞き入れたカナリア隊は、カブルーやシュロー達を伴って迷宮に赴く。

迷宮内では人々が溢れかえっていた。カブルーは迷宮内を管理している裏島主に冒険者たちを退避させるよう依頼するが、すでに裏島主は迷宮によってもたらされる富に目がくらんで心を取り込まれていた。
カナリア隊が人々の欲望をあおり狂乱の魔術師シスルを誘き寄せようと画策すると、地下1階層でありながら大型の歩き茸が押し寄せ、人々は混乱に陥る。さらに、シスルもこの混乱に乗じて現れる。カナリア隊長であるケレンシル家のミスルンは、シスルを捕らえ「デルガルは塵となって消えた」という事実を突きつけた。デルガルを捜索していたシスルはこの事実を受け入れられず、ファリンを呼び寄せると、ミスルン達を攻撃する。ライオスの目的であるファリンを守るため、カブルーがミスルンを拘束しカナリア隊の攻撃を阻止すると、シスルはファリンを伴って地下へ姿を消した。さらにカブルーとミスルンもこれに巻き込まれ、地下6階層へと転落した。

カブルーはミスルンとともに、浅層に取り残した部隊との合流を待機することになる。カブルーはその間、ミスルンの生活全般の世話を依頼される。実はミスルンはかつて迷宮の主であったものの、その迷宮の崩壊の際に大半の欲望を悪魔に食われ、食欲や睡眠欲など生命活動に必要な欲望を失っていたのであった。
さらにミスルンは目的の方向とは違う方向へ向かう習性があった。これは一見すると方向音痴のように思われていたが、実際には迷宮の主であった名残としての方向感覚であり、2人は迷宮の奥地へと先へ進んでいった。
カナリア隊の中でも使い魔の使役を得意とするフレキによって探し当てられたカブルーとミスルンは、転移の巻物を通って浅層へと戻ろうとする。しかしちょうどその時、けたたましい鈴の音が鳴り響いた。これは、シュローが別れる間際ライオスに持たせたものであり、2人は知らずのうちに深層に挑むライオス達の近くまで追いついていたのだ。この音を付近で聞いたカブルーはライオスとの合流を希望し、結果ミスルンと転移の巻物の向こう側にいたカナリア隊員ヴァリ家のパッタドルらもライオスを追うことになった。

打倒・狂乱の魔術師

翼獅子に導かれ、ライオス一行はシスルの自宅までたどり着く。中は雑然と散らかっていたため、シスルの書棚を片付けようとしたマルシルが、その奥に隠すように置かれていた古代魔術の本を見つける。この本こそが、翼獅子の半身が囚われている本であった。マルシルがその封印を解くと、翼獅子の頭部だけが本から現れた。半身だけが解放された翼獅子は、シスルがこの事実に気づきファリンを伴って一行の元へ一目散に向かっていることを告げる。そして翼獅子は自身がシスルを引きつけている間にファリンを戦闘不能にするよう助言する。
ファリンとの直接対決を回避して戦闘不能にするよう考えを巡らせたライオスは、ドラゴンのキメラとなったファリンが、小さな口のせいで体格に見合った栄養を摂取できておらず激しい空腹に陥っていると仮説を立てる。そしてファリンを満腹にし、酒を盛って眠らせるという作戦を立てた。この料理の材料となった兎は、足に生えた刃で冒険者たちの首を刈る「迷宮の兎」であった。この戦闘により、回復要員として首を保護する鎧を借りていたマルシルだけが生き残り、残りは全滅することになる。マルシルはライオスらの遺体を魔術で操りながら、閃光を放つ魔術を繰り出し1人での討伐・捕獲に成功する。
全員の遺体と捕獲した兎をシスル宅に誘導したマルシルは、1人になった不安と安全地にたどり着いた安堵から涙を流した。このマルシルの様子を見ていた翼獅子は、以前から長命種と短命種の間にある寿命の差に頭を悩ませていたマルシルに、「半身を取り戻したら力になると約束する」と甘い言葉を囁く。

マルシルの蘇生術によって意識を取り戻したライオス達は、ファリンのために大量のカレーを作り上げた。
翼獅子を再度封じにきたシスルは、体格の大きいファリンを自宅の外で待機させると、単身で入室する。単独行動となったファリンは、匂いに誘われカレーを発見すると、空腹に耐え切れず完食する。すると、ライオス達の想定通りに眠り込んでしまった。
ライオスはファリンを戦闘不能にするため、穏やかな顔で眠り込んでいる彼女の鼻と口を布で覆うと、窒息死させる。

一方、自宅に入室したシスルは、飛びかかってきた翼獅子を静止させると、力技で封印の魔術書を閉じてしまった。
ファリンを倒したライオス達は翼獅子に加勢するため、再度シスル宅を訪れるが、すでに翼獅子はシスルによって閉じ込められたところだった。迷宮を荒らしその力を奪おうとするライオスたちに腹を立てていたシスルは、緑竜やワーム、リヴァイアサン、ホワイトドラゴンなど数々の竜を召喚しライオス達を襲わせる。
これらの竜により、ライオスを残しパーティは全滅してしまう。回復役であるマルシルを失ったライオスは絶望にくじけそうになるが、竜たちがシスルの命令を聞きながらも習性には逆らえない生き物であることに気づく。
これによりライオスは竜の特性を利用し、ワームの放つ毒霧をホワイトドラゴンの毛並みに紛れることで回避し、密かにシスルの背後から近づいて封印の魔術書を奪おうとする。しかし危険を察知したシスルが魔術書を手放したため、リヴァイアサンによって満たされた室内の水の中へ落ちていった。
ライオスはシスルを拘束し背中に背負うと、仲間たちの遺体を集め、魔術書を回収する。さらにシスルを解放し対話を望むと、ライオスは「黄金卿の人々は眠ることも食べることも必要のない永遠の生に疲弊している」と諭す。
これを「生き物には永遠に食事が必要」と曲解したシスルはライオスを拘束し、お礼とばかりに無理やりに食事を食べさせる魔草を召喚する。この植物に囚われたライオスはフォアグラのように無理やり食事を与えられ、活動不能に陥ってしまった。
新たな知見を得たシスルは、邪魔者を一掃したことを上機嫌で喜ぶ。そんなシスルの背後から翼獅子が飛びかかり、彼の肩に食らいついた。さらに翼獅子はシスルの身体を貪る。
翼獅子は、迷宮の主の欲望を食らう悪魔であり、1000年かけて熟されたシスルの複雑な欲望を食べる時を待ち望んでいたのである。シスルの欲望が残らず食べ尽くされてしまう間際、シスルは最後の力を振り絞って死亡しているマルシルの手を取ると、意識を完全に手放した。

新たなる迷宮の主の誕生

シスルの欲望を食らって満足した翼獅子は、ライオスを救出する。ライオスは何の欲望もなくなり抜け殻のようになったシスルを見つけると、翼獅子の手によるものかと問いかけるが、翼獅子はそれに対し「仲間をなんとかするか迷宮の主になるように」と質問に対して返答しなかった。
マルシルが死亡したことで翼獅子のもう半身の解放も、仲間の蘇生もできないとライオスは焦っていたが、ライオスの予想に反してマルシルは意識を取り戻し起き上がった。
実は、シスルは全ての欲望を奪われる寸前に、マルシルを蘇生させていたのである。
マルシルによって全員の蘇生が完了すると、翼獅子はもう半身の解放を望んだが、蘇生直後で疲れ果てていたマルシルはそれを後回し、しばしの休息をとることになった。

翌朝、ライオス一行の元にミスルン率いるカナリア隊の面々とカブルーが到着した。ライオス達を警戒させないため、フレキの使い魔を連れたカブルーは、「会わせたい人達がいる」とカナリア隊を紹介する。そして、カナリア隊に古代魔術を使用したことが知れると厄介なことになる、と密かに忠告する。
カナリア隊のパッタドルがシスル宅内でライオス達に「迷宮の主と遭遇したか」と問いかけると、ライオスは不審な挙動でそれを否定する。当然カナリア隊の面々はこれによりライオスを一気に警戒した。幻覚術を得意とするシスヒス・オフリは、のらりくらりとごまかそうとするライオスを許さず、ライオス、センシ、チルチャックは幻覚術にかけられ全ての質問に洗いざらい答えさせられてしまう。
一方ミスルンは、悪魔の気配を頼りに単身シスル宅内を物色していた。ミスルンは昨晩の酒盛りで完全に二日酔いになって別室で休んでいたマルシルを見つけ出すと、マルシルが隠し持つ魔術書を奪おうとする。そしてミスルンに追い詰められたマルシルは、窮地を脱するために自ら翼獅子を解放し、迷宮の主となってしまった。

新たに迷宮の主となったマルシルが迷宮の形を作り替えたため、迷宮内にいた冒険者たちやカナリア隊、オークたちは大混乱に陥る。この状態からライオス達は迷宮の力に良くないものを感じ、マルシルを説得しようとするも、失敗しマルシルの許から逃げ出す。マルシルは邪魔なカナリア隊と戦うよう翼獅子に唆され、魔物を率いて地上を目指す。悪魔は閉じ込められた迷宮から地上へ出ることを本願としていたのだ。
逃げ出したライオスたちはカブルーやシュローたちと合流すると、マルシルが迷宮の主となったことを伝える。さらにカブルーから翼獅子の正体が悪魔だと知らされると、再度マルシルを説得し悪魔を倒すため、マルシルと合流する。しかしマルシルは翼獅子によって抑制心を失い、悲願を果たすことしか考えられなくなっていた。ライオスたちはマルシルの気を逸らして時間を稼ぎつつ、彼女の悲願の無謀さと迷宮の力の歪さを説き、遂にマルシルの説得に成功する。
だが、迷宮の主を辞める方法は、主となった者が死ぬか悪魔を倒すしか方法がなかったのである。

迷宮の悪魔 対 魔物ライオス

翼獅子と対話する中で「人間の欲望を永遠に味わいたい」という特質であり本能をもつことに気付いたライオスは、悪魔を倒した暁には迷宮にいる全員に食事を振る舞うという約束をとりつけ、翼獅子と対決する。実は、迷宮の蘇生の条件として「他の生き物に消化された肉は蘇生する権利を失う」ことが明らかになっており、ライオスはファリンの下半身の竜の肉を食べることで、ファリンを人の姿で蘇生させようとしていたのだ。
マルシルに替わって迷宮の主となったライオスだったが、ライオスは自身の根底にある「魔物になりたい」と言う誘惑に負けてしまう。結果、ライオスは自身の考えたオリジナルの魔物と化し、代償として肉体を翼獅子に乗っ取られてしまった。ライオスの肉体を介して迷宮の主となった翼獅子は、自身の願いを叶えるべく、迷宮から出て全ての人類を異界へ連れ去ろうとする。しかし魔物と化したライオスが翼獅子を襲い、その習性として翼獅子の“食欲”を食べ尽くしたことで、悪魔は自身の欲望と「あらゆる願いを叶える」能力を失い、「意志なき魔力」に戻った。

悪魔の消滅後ライオスは無事元の姿に戻ると、以前取り付けた食事の約束を人々に再度示す。それが「ドラゴンとなった妹の半身を一緒に食べてほしい」という常軌を逸したものだったため猛烈な反発にあったが、最終的には妹を救いたいという意思が伝わり、多くの人々の協力を得て、7日7晩に及ぶ大宴会となった。
ライオスは「狂乱の魔術師を倒したものに黄金卿の全てを与える」という条件を満たしたこと、本当に迷宮の悪魔を倒したことで、西方エルフやノームなどの諸外国の人々を中心に王として認められ、「悪食王」の二つ名を受ける。
竜の肉は食べ尽くされ、ファリンはエルフの蘇生術の専門家などの力を借りて人の姿で復活を果たした。
以降、この国の王としてライオスは食材の保存や生産の研究に力を入れた。

『ダンジョン飯』の登場人物・キャラクター

Kyazu0818t2
Kyazu0818t2
@Kyazu0818t2

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