妖獣都市(Wicked City)のネタバレ解説まとめ

「吸血鬼ハンターD」「魔界行」などで知られる人気ホラー作家・菊地秀行の「闇ガード」シリーズの一作目のアニメ化作品。監督は、「SF新世紀レンズマン」「獣兵衛忍風帖」の川尻善昭。人間界と妖魔が蠢く魔界との間の平穏の維持を任務とする“闇ガード”の滝蓮三郎が、魔界側の闇ガード・麻紀絵と共に、邪悪な妖獣たちと死闘を繰り広げる、エロス&バイオレンスたっぷりのハードボイルド・タッチのホラー。1987年制作。

クモ女(声:横尾まり)

映画のオープニングで、滝を誘惑し、彼の体液を手に入れようとした魔界の妖獣。Mr.影の手下。
股間に鋭い牙のような歯を持ち、クモの巣を作る粘液が武器。両腕を鎌の刃物に変える能力も持っている。

ジン(声:戸谷公次)

麻紀絵の元恋人で、Mr.影の手下。「人間は下等な生き物だ、俺たち魔界の者に従わさせればいい」と人間界と魔界が調和することに不満を抱いている。
霊障壁を破ることができ、声を荒げて建物内部を破壊することもできる。

見どころ

「SF新世紀レンズマン」でアニメ監督デビューを果たした川尻善昭が、2作目となる本作では監督・作画監督・キャラクターデザインの三役をひとりでこなし、監督としての自信を初めて持てた作品と語っているだけに、彼の資質&映像センス全開の作品に仕上がっており、全編が見どころと言っても過言ではない。
研ぎ澄まされたスタイリッシュな画面構成、キレの良いシャープなアクション、グロテスクかつエロティシズムたっぷりの描写など、主人公・滝のモノローグを多用したハードボイルド・タッチながら、緩急に富んだメリハリのあるストーリー展開で、“大人のアニメ”としてのエンタテイメントに仕上がっている。

名シーン・名場面

空港での妖獣との戦い

滝の放つ特殊な銃で体が裂かれてしまう妖獣

麻紀絵の初登場シーン

滝が妖獣たちと戦う空港シーンは、当初の35分版で作画が終えていたものだが、人間の姿が見る間に恐ろしい妖獣に変化する描写は、見事なカット割りで、川尻監督のアクション演出が冴えわたっている。
麻紀絵が初めて登場するシーンでもあるが、妖獣の気味悪い目玉を長く伸びた赤い爪で一瞬にして切り裂き、冷ややかな眼差しを滝に向けるところなど、実にカッコいい。

教会での最後の戦い

滝と愛しあったことから強力なパワーを得た麻紀絵

持てるパワーを発揮しまくりMr.影に立ち向かうジュゼッペ

グロテスクな容貌に変化したMr.影

滝、ジュゼッペ、麻紀絵とMr.影のクライマックスの壮絶なバトル・シーンはハラハラの連続。ジュゼッペが、それまでとは打って変わって、目を血走らせ影と戦う姿はなんとも勇ましく頼もしい。滝がかすんでしまうほどに。
そして、素肌にシーツをまとっただけの麻紀絵が、教会の鐘塔から屋根に飛び降り、グロテスクな容貌となった影を長く伸びた爪の一撃でやっつけるところは、川尻監督のシャープな映像展開もあり、ググッと盛り上がる。
アニメならではの映像手法が存分に生かされた名シーンだ。

裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

「妖獣都市」は、最初は、アニメに乗り出したジャパンホームビデオにより30分程度のビデオ作品として制作がスタート。
プロダクション・マッドハウスに所属する川尻善明が監督指名を受け、絵コンテの作業を進めていたが、原作者・菊地氏と原作の版元との連絡がうまくいっておらず、最終的に80分強の作品に仕上げなくてはならなくなったらしい。
川尻監督は、すでに35分の絵コンテを完成させ、一部シーンの作画を終えていたが、突然の長編への変更に驚き慌てながらも、35分版の絵コンテをすべて生かし、50分近くのシーンを追加していったそうだ。
川尻監督は、後に「結果的に35分版よりずっとリズムのある作品に仕上がり、より奇怪なムードを醸し出せた」と語っている。
原作者の菊地氏も、作品の出来には満足したようで、菊地作品と川尻監督の相性が良かったのか、後に菊地氏の小説「魔界都市<新宿>」「バンパイアハンターD」等のアニメ化映画を川尻善昭は監督している。

スタッフ

監督・川尻善昭(かわじりよしあき)

1950年、神奈川県横浜市に生まれる。
高校卒業後、手塚治虫の虫プロ入社。「あしたのジョー」「ムーミン」「どろろ」などに携わる。
72年に虫プロ出身者によって結成されたアニメ制作会社マッドハウスに移籍。
84年、劇場用アニメ「SF新世紀レンズマン」を初監督(絵コンテだけのつもりが、いつのまにか共同監督にされてしまったらしい)。
87年の「妖獣都市」が、監督としての本当のスタートだったと川尻は語っており、「妖獣都市」は第5回日本アニメ大賞オリジナルビデオソフト最優秀作品賞、第1回ビデオでーたビデオソフト大賞・オリジナルビデオ賞を受賞。
山田風太郎の「忍法帖」シリーズの大ファンだった彼は、93年に自身の原作・脚本による「獣兵衛忍風帖」を発表。この作品で、ゆうばり国際冒険・ファンタスティック映画祭’93ゆうばり市民賞を受賞。

川尻作品は海外でも人気が高く、日米合作の「バンパイアハンターD」はアメリカで先行上映され、DVDが好セールスを記録。「妖獣都市」「獣兵衛忍風帖」も外国語吹替え版ソフトが発売されている。
ちなみに、(株)ジェネオンエンタテインメント発売のDVD「妖獣都市 secial edition」では、日本語に加え、米国版英語吹替え音声(日本語字幕)を聞くことができる。
また、ウォシャウスキー兄弟(姉妹)の「マトリックス」をモチーフにしたアメリカ制作のオムニバスアニメ「アニマトリックス」(03)の一編「プログラム Program」を作っている。

川尻善昭フィルモグラフィー(監督作のみ)
・「SF新世紀 レンズマン」(84)
・「火の鳥 宇宙編」(87)
・「妖獣都市」(87)
・「魔界都市<新宿>」(88)
・「ゴクウ MIDNIGHT EYE Ⅰ~Ⅱ」(89)
・「迷宮物語 Manie-Manie」短編<走る男>(89)
・「CYBER CITY OED 808」DATA1~3(90~91)
・「獣兵衛忍風帖」(93)
・「ザ・コクピット」<vol.1 層圏気流>(94)
・「鉄腕バーディー」(96)
・「バンパイアハンターD」(01)
・「アニマトリックス・プログラム Program」(03)
・「HIGHLANDER ハイランダー」(07)

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