氷菓(Hyouka)のネタバレ解説まとめ

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氷菓とは米澤穂信の小説「古典部シリーズ」をアニメ化したもの。省エネを信条とする主人公「折木 奉太郎」はひょんなことから「古典部」に入部することとなる。好奇心旺盛なヒロイン「千反田 える」、中学生からの腐れ縁「福部 里志」と「伊原 摩耶花」、彼ら4人が神山高校を舞台に数々の事件を推理していく青春学園ミステリー。
アニメは2012年4月から9月まで放送された。

『氷菓』の概要

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「氷菓」とは、「米澤穂信」の推理小説「古典部シリーズ」をアニメ化したもの。
タイトルの由来は古典部シリーズ一作目の「氷菓」から。
制作を「京都アニメーション」が手掛け、2012年4月から9月まで放送された。
テレビシリーズ22話とOVA1話の全23話構成。
OVAはコミック版「氷菓」三巻の付録で、テレビシリーズの11話と12話の間に当たるオリジナルエピソード11.5話を収録。
アニメでは「氷菓」「愚者のエンドロール」「クドリャフカの順番」「遠まわりする雛」のエピソードを放送。

文化系部活動が活発なことで有名な進学校「神山高校」で、主人公で探偵役の「折木奉太郎」の周りで起こる疑問を解決する、人が死なない日常ミステリー。
奉太郎は廃部寸前の部活「古典部」に入部し、ヒロイン「千反田える」、友人の「福部 里志」「伊原 摩耶花」と共に学園生活に隠された謎に挑む。
アーサー・コナン・ドイルの「シャーロックホームズシリーズ」に例えて作られており、奉太郎がホームズ(探偵役)、里志がワトスン(探偵の助手)、えるが依頼人、摩耶花がレストレード(警官)に当てはめられている。

本作はシリーズを時系列順に構成し、その中で大筋においては原作を踏襲しているが、古典部の部室の場所など、原作から変更されている部分も一部存在する。
最も大きな変更点は時代設定で、原作の2000年という時代設定が、放送年と同じ2012年に変更されている。
それに伴い作中に出てくる「33年前の真実」が「45年前の真実」となり、関係者の年齢もそれに合わせて変更されている。

『氷菓』のあらすじ・ストーリー

「氷菓」

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廃部寸前の古典部で出会う、折木奉太郎(右)と千反田える(左)

主人公「折木奉太郎」は神山高校に入学したばかりの1年生。
普段から積極的には物事に関わらない「省エネ」なスタイルをモットーとしている奉太郎だったが、古典部OGである姉の「折木供恵」の強い勧め、もとい指令で廃部寸前だった古典部を存続させるべく入部することになった。
部員は奉太郎ただ一人のはずだったが、鍵を開け部室に入ると同じく一身上の都合で古典部に入部したという同級生「千反田える」の姿があった。
面食らう奉太郎だったが、えるが入部したなら古典部は存続できる為自分は入部する必要がない、と考え去ろうとする。
戸締りをえるに頼むと、鍵を持っていないという。
奉太郎が自分の鍵を渡そうとすると、えるはなぜ奉太郎が鍵を持っているのか疑問を口にする。
「鍵がなければロックされた教室には入れないだろ。」「千反田さんはなぜこの部屋に入れたんだ?」と問う奉太郎。
それに対して「鍵がかかってなかったからです。」とえるは答えた。
「俺が来たときには閉まってたけど…」と言いかけた奉太郎に「と、いう事は私は閉じ込められていたという事でしょうか?!!」「私、気になります!」と目を輝かせて言うえる。
なぜ、えるが部室にいたのに、内側からは施錠できない部室にカギがかかっていたのだろうか。
奉太郎は用務員の姿を部室に来る時に見た事や、えるが下の階から音がすると言ったことにより閃き、ちょうど下の階で今回の事件が再現されているはずだと連れ出す。
下の階では用務員がマスターキーを使って部屋を開け、蛍光灯の交換をしていた。
貸し出し用の鍵は奉太郎が持っている為使えない。ならばマスターキーで施錠するしかないが生徒は使えない。
奉太郎は、用務員がえるが教室にいることに気付かず、施錠してしまったと謎を解いた。
えるは奉太郎の推理力に驚く。
その後、奉太郎の親友兼ライバルもしくはデータベース兼ワトソン役とも言える同級生「福部里志」、里志に片思い中の「伊原摩耶花」の2人を加えて古典部のメンバーは4人となり、古典部の活動が始まった。

部長になったえるの号令により、当面の目標は10月に行われる文化祭、通称「カンヤ祭」に向けて文集をつくることに決定した。
ある休日、えるは個人的な相談を奉太郎に持ち掛ける。
えるには関谷純というインドで消息を絶った伯父がいて、近日中に葬儀が行われるのだという。
えるは幼い頃に伯父と話している時に泣いてしまったことがあった。えるはその内容が思い出せなかった。
伯父は古典部に所属していて、えるは「あの時、叔父は何を言ったのか」「なぜ自分は泣いてしまったのか」を求めて古典部に入部したのであった。
ずば抜けた推理力を持つ奉太郎に、伯父が話したことを思い出すのを手伝ってほしいとえるはお願いし、奉太郎は成り行きで探偵役を務めることになる。

奉太郎たちは古典部の文集をつくるためバックナンバーを調べることになった。
古典部の文集「氷菓」第2号の序文に書かれていたのは、「関谷純」と「45年前の事件」に関する内容であった。
そこには『関谷先輩が去ってからもう、1年になる。この1年で、先輩は英雄から伝説になった。文化祭は今年も5日間盛大に行われる。争いも犠牲も、先輩のあの微笑みさえも、全ては時の彼方に流されていく。いや、その方がいい。何故ならあれは、英雄譚などでは決してなかったのだから。』という表記があった。
そして氷菓第2号の表紙にはお互いを噛みあう兎と犬、そしてそれをとりかこむ大勢の兎たちの絵が描かれていた。
えるによれば、関谷純は高校を中退しているそうだ。
45年前になにがあったのか、事の真相が判明すれば、それ自体を今年の文集の題材にもできるという理由から古典部メンバーで謎を解明していくこととなる。
夏休みになり、古典部のメンバーはそれぞれ調査した「45年前の事件」に関する資料をもって、える家へと集合する。
古典部の4人はえる、摩耶花、里志、奉太郎の順で「45年前の事件」についての資料と仮説を発表していくが、える、摩耶花、里志の仮説はことごとくお互いの資料により否定される。
奉太郎が調査した資料は学校史で、古典部メンバーはこれまでの内容を踏まえて改めて推理を立ててみる。
氷菓の序文には『文化祭は今年も5日間盛大に行われる』とある。
つまり、5日間の文化祭期間こそが関谷の上げた戦果ということである。
学校史によればこの年に学力重視への方向転換が提唱されている。
同時に初めて『文化祭を考える会』が設けられている。
そこから奉太郎は、ある仮説を立てる。
その仮説は45年前、学校側は文化祭の期間縮小を決定したが生徒一同はそれに反発し、反対運動の指揮を執ったのが関谷純だった。
学校側は文化祭の縮小を断念したが、騒動が収まる文化祭後を待ってリーダー・関谷を退学にした、というものであった。
関谷の犠牲によって文化祭は守られたのである。
まるで矛盾がない仮説に古典部メンバーは納得し、これをもって謎の解明は果たされたかのように思われたが、なぜえるが叔父の話を聞いて泣いたのかの謎は残されたままだった。
帰り道、里志は奉太郎に何故えるのために積極的に推理するのか問う。
奉太郎は里志たちメンバーを見ているとなんだか落ち着かないという。
省エネをモットーに灰色の青春を送っている奉太郎に、里志は薔薇色の青春が羨ましいのかと聞くが、奉太郎は否定しなかった。
薔薇色とは何なのか考える奉太郎。
そこに供恵から電話があり、事のあらましを供恵に報告する奉太郎であったが、供恵は奉太郎に「カンヤ祭はまだ禁句なの?」と聞き、奉太郎はその言葉に違和感を覚える。
奉太郎の推理は間違っている可能性がある。
「犠牲(ぎせい)」とは「生贄」という意味だったのではないだろうか。
事件の謎を真に解明するため、奉太郎は氷菓第2号の序文を書いた学生時代に古典部だった現神山高校司書・糸魚川養子に話を聞くことにした。
奉太郎が仮説を話すと、糸魚川司書は全面的に仮説を認め、糸魚川は奉太郎たちに45年前の真実を語る。
45年前、全生徒は文化祭縮小に怒り反発したが、処罰を恐れてリーダーに名乗り出る人はいなかった。
そこで貧乏くじを引かされたのが、関谷純であった。
実際の運営は別の人がやっていたが、その人は自身の保身を考え決して表には出なかった。
運動が過熱する中、キャンプファイヤーが飛び火して学校の格技場が半壊する火事が起きた。
学校側は警察沙汰にはしなかったが、生徒の関心が薄れる文化祭終了後にリーダー格・関谷純を責任者として退学にした。
供恵曰く、しばらく禁句になっていたという『カンヤ祭』という文化祭の通称は『関谷祭』(せきや)を意味していた。
古典部文集の表紙の絵に描かれていた噛みあう犬と兎はそれぞれ学校側と関谷純、取り囲む兎たちは生贄を出した全校生徒を表していた。
関谷純は望んで全校生徒の盾となったのではなかった。
そして、当時、古典部部長だった関谷が強引に名付けた『氷菓』というタイトルの意味を知ることとなる。

氷菓→アイスクリーム→アイ・スクリーム(I scream)

「I scream」(私は叫ぶ)、氷菓という名前は関谷の心情を表したものだった。
えるは伯父から聞いた言葉をようやく思い出した。
「伯父はわたしに、強くなれと言ったんです。もしわたしが弱かったら、悲鳴も上げられなくなる日が来るって。」
「折木さん、思い出しました。わたしは生きたまま死ぬのが恐くて泣いたんです。…よかった、これでちゃんと伯父を送れます…」
千反田えるの追う謎がようやく解明された。
「折木さんのおかげです」と素直に感謝を述べるえるに、奉太郎は「たまたま」と照れくさそうに言い目をそらした。

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えるは小さい頃に祖父から聞いた話を思い出したのであった。

「愚者のエンドロール」

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生徒会長・入須から自主映画の試写会に招かれた古典部。

夏休みの終盤、生徒会長「入須冬実」は、クラスメイトの「本郷真由」に「君が望む方向にはならないだろう」と記したメールを送る。
入須は良く使うチャットルームにログインし、「名前を入れてください」という名前で「あ・た・し♪」という名前の人物と2年F組が文化祭で披露する自主制作映画の話をしていた。
入須の映画製作に対する相談に、「あ・た・し♪」はある人物の話をする。
入須にチャットルームに呼び出された「L(千反田える)」は、古典部で試写会に来て欲しいと招待された。

後日、えるは古典部のメンバーを連れて、視聴覚室へ行く。
そこには生徒会長の入須がおり、古典部のメンバーに映画の感想を求めた。
えると入須は家同士で付き合いがあり、古くからの知り合いであった。
映画はミステリーものであった。
登場人物は、「海藤武雄(CV: 小西克幸)」「杉村二郎(CV:入野自由)」「山西みどり(CV:小清水亜美)」「瀬之上真美子(CV:広橋涼)」「勝田竹男(CV:泰勇気)」「鴻巣友里(CV:茅原実里)」の六人の男女。
六人は廃墟に立ち寄り、館内を探索する。
すると「海藤」の姿がない事に気づき、5人は館内を探す。
鍵の掛かった部屋があり、マスターキーでドアを開けると、部屋の中には右腕を切断された海藤の遺体があった。
そこで映画は終わっており、入須は古典部メンバーに「犯人は誰だと思う?」と尋ねた。
この映画は、映画の脚本家「本郷真由」が体調不良で倒れ、筆を折ってしまったため、続きが分からないままになってしまったのだという。
入須は作った所までのヒントだけで犯人を捜し、脚本を完成させようとしていたのである。
本郷はミステリーの勉強をしてから脚本を書いたため、ミステリー作品としての最低限のルールは守っている。
入須はこの企画に参加しておらず、最近まで遠出していたため本郷から話を聞く機会もなかった。
しかし2年F組の生徒としてプロジェクトを失敗させるわけにもいかず、入須が動く事になったのである。
そして古典部が関谷純の事を突き止めた話を知り、古典部に探偵役が出来ないかと頼んだのである。
奉太郎にえるたちの期待が集まるが、省エネな奉太郎はやる気が全く無かった。
入須はあっさり引き下がるが、えるは入須の依頼を引き受けると言い出す。
責任が持てないと奉太郎は反論すると、入須はオブザーバーとして関わるのはどうかと提案する。
2年F組の探偵役として選ばれた生徒が考えた推理を聞いて、それが正解なのか判断するという役割である。
入須は、その整った容姿や冷静な判断力などから生徒達から「女帝」というあだ名がついていた。
里志は女帝に準え、古典部のメンバーをタロットカードの名称の称号をつける。
摩耶花を「正義」、里志自身を「魔術師」、えるを「愚者」、奉太郎「力」とした。
翌日、古典部のメンバーは本郷の親友「江波 倉子」に2年F組に案内される。
F組の探偵役は三人いた。

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2年F組の映画。6人のキャラに豪華声優陣が声を当てているが、全員大根役者であるため棒読みという演出。

一人目の探偵役・助監督「中城順哉」は、犯人は窓から逃げたという説を説き、映画の題名を「古丘廃村殺人事件」と名づけた。
しかし窓の外には窓ギリギリまで夏草が生い茂っており、実行不可能であった。
その矛盾点を中城は、本郷が下見に行った際に草は生えておらず脚本ミスとした。
また、中城は病気がちな本郷は撮影に参加しておらず、海藤の死はその場のアドリブであった事を話した。
奉太郎は犯人の心理状態を考えると、そもそも窓から逃げるのは人目につくためこの説は却下だと江波に伝えた。

二人目の探偵役・小道具班「羽場智博」は、登山部だった鴻巣が二階からザイルを使って降りて一階にいた海藤を殺したと説き、映画の題名を「不可視の侵入」と名づけた。
羽場は本郷からザイルを用意するように指示されていたことや、本郷から用意するよう言われた血糊の量が少なかったため、気を利かせて多く持って行った話をした。
また、本郷がシャーロックホームズを読んでミステリーを勉強し、作品ごとに◎○△×などの記号をつけていたことも話した。
羽場は製作した映像を見ておらず、窓の立て付けが悪い事を知らなかった。
ザイルにぶら下がったまま立て付けの悪い窓を開けるのは不可能、且つその間、海藤が気づないはずがない。
もし窓が重要なトリックになるのなら、本郷が下見に行った時に窓の開け閉めを確認するはずであるとし、奉太郎はこの説を却下した。

三人目の探偵役・「沢木口美崎」は壁をすり抜けられる怪人の犯行説を説き、映画の題名を「Bloody Beast」と名づけた。
沢木はミステリーと言えばジェイソンの出てくる「13日の金曜日」とし、7人目の登場人物(怪人)がいて、皆で怪人と戦うストーリーを話す。
また、沢木は本郷が脚本家に決まったのは他薦で、ミステリーに決まったのは多数決、作中の死者の数など作品内容についてもクラスでアンケートを取って決めた事を明かした。
奉太郎は、もしホラー展開にするのであればもっと血糊を用意したはずで、死人が一人なのもありえないとし、この説を却下した。

結局誰の推理も釈然としないまま、奉太郎たちは帰宅する。
帰り道の道中、一人になった奉太郎の前に入須が現れ、奉太郎を茶屋に連れて行った。
入須は奉太郎の推理力を噂で聞いており、奉太郎の事を「特別」な存在であると言い、改めて映画の推理を依頼した。
入須は初めから推理力に優れた奉太郎が目当てで、知り合いのえるを通じて試写会に古典部を招いたのである。
渋る奉太郎に、入須は実力がある人間の言う「運が良かった」は謙遜では無く、それができなかった人にとって嫌味になる事を話す。
もっと自分を自覚するように入須に言われた奉太郎は、自分が特別なのかどうか、自分を正しく見積もれているか考えた。
翌日、奉太郎は犯人探しに協力する事にしたと里志に話す。
奉太郎は里志に、自分にしか出来ない事はあると思うかと問うと、里志は「ない」と答えた。
里志は自分には才能が無く、何事も第一人者にはなれず、また情熱もないと言う。
自分を過小評価する里志を奉太郎は咎める。
里志は「うらやましい限りだね、全く」と暗い表情で呟いた。
えるは前日食べたウィスキーボンボンで二日酔いになり休みで、里志と摩耶花はそれぞれ部活に行かなければならなくなり、奉太郎は一人もう一度映画を見直した。
そして、入須に推理を披露する。
奉太郎は、登場人物は6人の物語であるが、ライトが当たるシーンがありながら誰もライトを持って居ない事を指摘し、7人目が居ると推理する。
7人目とはカメラマンであった。
カメラマンは6人から無視されており、それが動機となって殺人を行う。
6人が探索に出たあと、カメラを一端置いた後にマスターキーを盗み、海藤を殺害してまた戻ってきてカメラマンを続けるという叙述トリック(作り手が読者の先入観などを利用してミスリードを仕掛けるトリック)だと奉太郎は語る。
入須は結論に納得し、奉太郎に感謝し奉太郎を褒めた。
奉太郎はこの映画のタイトルを「万人の死角」と名づけた。
始業式の日、古典部のメンバーは再び試写会に招待され、完成した映画を見せてもらった。
しかし里志・摩耶花・えるの反応は微妙な物であった。
摩耶花は本郷が用意するように言っていたザイルが出てこない事を指摘する。
そして里志は、本郷がシャーロックホームズでミステリーを勉強したなら、シャーロックホームズには出てこない叙述トリックは無いはずだと言う。
本郷が他のミステリーを読んでいて叙述トリックを知っていた可能性もあると奉太郎は言うが、里志は本当にそれで良いのかと奉太郎に問う。
2人の指摘から、奉太郎は自分の推理に間違いがあった事を自覚する。
帰り道、えるは奉太郎に気になっていることがあると話す。
それは推理の結末ではなく、本郷についてのことであった。
本郷が倒れて脚本が書けなくなったとはいえ、本郷は物語を最後まで考えていたはずである。
ならば入須は何故本郷の親友である江波に話を聞かなかったのか、江波なら本郷の話を聞いていたのでは無いかという。
えるは本郷がトリックを人に話さなかったのは何か理由があり、追い詰められていたのでは無いかと考えていた。
奉太郎はえるの話で、自分がトリックのことばかりで本郷という人間の事について考えていなかった事に気づく。
奉太郎はもう一度自分の推理を見直した。

翌日、奉太郎は入須を茶屋に呼び出した。
奉太郎は、入須が自分に求めたのは「探偵役」ではなく「推理作家」だったのではないかと聞く。
入須は何がヒントになりその結論に辿り着いたのか問う。
本郷はシャーロックホームズでミステリーの勉強をしており、作品に◎○△×などの記号をつけていた。
この記号は作中で人が死ぬかどうかであり、人の死ぬ作品を×、死なない作品を◎と記していた。
さらにF組が事前にクラスで行った死者の数のアンケートには無効票が一票あった。
これは本郷の一票であると奉太郎は言う。
本郷は脚本の中で死者を出す気はなく、海藤も明確に死んだとは表記されていなかった。
しかし現場に居た人たちのアドリブと暴走で、海藤は死んだ事になってしまったのである。
元々気が弱かった本郷は、アンケート結果を無視して脚本を書いたことを後ろめたく思っており、入須は本郷が悪役にならないように庇って病欠にさせ、結末を不明にした。
そしてシナリオコンテストを開いて、一番面白かったシナリオを出した奉太郎の「万人の死角」を採用した。
奉太郎は、入須が自分に向けた言葉は嘘だったのかと問うと、入須は心からの言葉ではなかったと話した。
入須は特別という甘い言葉で奉太郎をその気にさせ、優秀な推理力を持った奉太郎を自分の手の平で躍らせたのであった。
帰り道、人形劇のポスターの「君にこの謎が解けるか?」という煽り文句を見た奉太郎は、八つ当たりにシャッターを殴った。

チャットルームでは、「まゆこ(本郷)」と「名前を入れてください(入須)」が会話をしていた。
本郷は入須に感謝を告げ、映画が完成して良かったと言った。
本郷が退室後、「あ・た・し♪」がログインしてくる。
入須は奉太郎には悪いことをしてしまったと言う。
「あ・た・し♪」は、入須はつまらない脚本を本人が傷つかないように却下したかったのだろうと言う。
プロジェクトを失敗させるわけにはいかなかったのだと反論するが、「あ・た・し♪」は返事を返さずにログアウトした。
「あ・た・し♪」が入須に奉太郎を紹介した人物であり、正体は不明のままであった。

後日、えるは奉太郎に本郷が本来はどんな脚本を書いていたのか尋ねる。
奉太郎は、鴻巣がザイルで窓から現れ、海藤を死なない程度に刺したのだと話し、鍵が掛かって密室になっていたのは海藤が閉めたからだという。
えるはその話を聞いて、海藤が自分を刺した鴻巣を庇い鍵をかけて窓まで移動してから倒れたのではないかと思う。
海藤と鴻巣はどんな関係性だったのか、全ての真相は本郷だけが知るのであった。
奉太郎はえるに、何故そこまで本郷本人に拘ったのかと尋ねると、えるは自分も「人が死ぬ話は嫌いだった」と話し、奉太郎は「お前らしいな」と言った。

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入須に乗せられた奉太郎は苦い思いをする事になった。

「クドリャフカの順番」

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カンヤ祭で発行した文集「氷菓」は、発行ミスで200部の在庫を抱える事に。

古典部は、文集「氷菓」の謎を題材にカンヤ祭に向けて文集作りをした。
そして神山高校の年間最大イベント・カンヤ祭一日目が始まった。カンヤ祭は三日間行われる。
しかし摩耶花がカンヤ祭で出品する文集「氷菓」を発注の手違いで刷りすぎてしまい、200部という大量の在庫を抱えてしまう。
文集は一冊200円であるが、古典部はネームバリューがない上に部室のあるのは三階で立地も悪く、全部売り切るのは困難であった。
まず立地と知名度をどうにかしようということになるが、当日に売り場を変更する事は難しい。
とりあえず、生徒会長か総務委員長にえるが声を掛けてみることになった。
そして祭だからと派手な服装をしていた里志は、カンヤ祭のイベントで古典部の名前で参加して目立とうと計画を立てる。
摩耶花は掛け持ちしている漫画研究部の方に行かなければならなかった。
奉太郎は交渉事をえるに、宣伝を里志に任せ、自分は部室でまったりと売り子を担当する事になった。まさに省エネ主義である。
目標は「氷菓全部完売」とし、古典部はそれぞれの役割を全うするために一端解散した。

開会式では生徒会長「陸山宗芳」が開会宣言をし、ステージでは様々な催し物が行われた。
えるは総務委員長「田名辺治郎」を探し、総務委員会の本部へ行き飾ってあったポスターに見惚れていた。
田名辺に出会ったえるは前置きも無く単刀直入に本題を切り出し、田名辺から当日に売り場変更は出来ないと言われる。
しかし田名辺は古典部の事情を聞き、他の部の売り場に委託してみてはどうかと提案し、えるはその提案を喜んで受け入れた。
一方その頃漫画研究部では、摩耶花のコスプレに陰口を言う部員がおり、摩耶花と他の部員達に不穏な空気が流れていた。
自分の意見をはっきり言う摩耶花は、漫画研究部では少し浮いてしまう存在であった。
摩耶花は部長の「湯浅尚子」に古典部の文集も売って良いかと相談しようとしたが、後ろめたくなり言い出せなかった。
奉太郎は、一人の時間を堪能しながら部室で文集を売っていた。
窓からアカペラ部の発表を見ていると、「アカペラ部」のメンバーが所持していた「アップルジュース」が無いと騒ぎ出す。
奉太郎が騒ぎをあまり気にとめずにいると、そこへパンクロッカー風の服を着た男性がやってくる。
男は文集を一冊買い、奉太郎の持っていた万年筆を褒めた。
フォーマルな服に合わせる小物が欲しかったという男に、奉太郎は万年筆を譲る。
すると男は代わりに「被服研究会のイベントの優先券」を奉太郎に渡した。
里志はクイズ部の主催するクイズ大会に参加し、見事決勝へ進み、古典部のPRに成功。
すると囲碁部の「谷惟之」が話しかけてきて、校内で起こった面白い事を聞かされた。
えるは壁新聞部へ行って新聞に広告を乗せてもらえないかと頼むが、壁新聞部が載せる新聞の内容は既に埋まっており、カンヤ祭2日目の昼以降でなければ載せられないという。
しかも話題性がある部を優先するため、古典部に優先する程の話題性が無ければ載せることも出来ないと言われてしまう。
えるが肩を落としていると、里志のクラスメイトでえると知り合いの「十文字かほ」が話しかけてきた。
かほは部員が自分一人の「占い部」に所属しており、えるはかほにタロットカードで占って欲しいと言うが、かほはタロットカードが使えない状況にあった。
かほの苗字と同じ「十文字」を名乗る者が、かほが不在の間にタロットカードの「運命の輪」を盗み、盗んだという犯行声明のカードとカンヤ祭が終わったら返すというメモがカンヤ祭のしおりの上に置いてあったのだという。
その頃、クイズ大会の決勝戦をしていた里志と谷は、もうひとりの参加者・清水に負けてしまう。
谷は先ほどした面白い話の続きを里志に話す。「囲碁部」で「碁石」が盗まれたのだという。
谷は前から何故か里志にライバル心を抱いており、二日目にある「お料理研究会」のイベントに出るように言う。
一方の里志は囲碁部の盗難も、勝負にも全然興味が無かった。
売り子をしていた奉太郎の元には、園芸部部員の男子生徒が文集を買いに来た。
男子生徒は服が破けており、奉太郎は先ほど貰った被服研究会の優先券についていた安全ピンを彼に渡した。
園芸部員はお礼にハンドガンそっくりの「水鉄砲」を奉太郎に渡した。
漫画研究部では、お客さんが全然来ず、摩耶花の先輩「河内 亜也子」は発行したレビュー誌に文句を言い始めた。
その文句は摩耶花を挑発するものであり、摩耶花と河内は「名作とは何か?」についての言い合いになる。
河内は名作なんて物はなく漫画の面白さは皆平等で、読み手の主観で評価が左右されるだけだという。
それに対して摩耶花は河内が本当の名作に出会ったことがないからだと喰って掛かり、去年のカンヤ祭で発行された「夕べには骸に」という同人誌がまさに名作だったと言う。
そのタイトルを聞いた途端、河内は複雑そうな顔をし「知らない」と答えた。それを聞いた摩耶花は明日持ってくると約束した。
カンヤ祭一日目が終わり、古典部の文集は14冊売れた。
二日目はお料理研究会のイベントに参加するという里志に、摩耶花がそのイベントは三人一組で参加するものだと教える。
里志は摩耶花とえるに一緒にイベントに参加して欲しいと頼んだ。
摩耶花は帰宅後、「夕べには骸に」を探すが見つからなかった。

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「お料理研究部」から「おたま」が盗まれる。

翌日、カンヤ祭二日目が始まった。
摩耶花は「夕べには骸に」を持ってこられ無かった事を河内に素直に謝ると、河内は怒らずあっさりとしており、摩耶花にポスター製作を手伝うように言った。
しかし摩耶花は河内が「夕べには骸に」という作品名を覚えていた事に気づく。
摩耶花はポスター製作のためお料理研究会のイベントに参加するのが難しくなったと里志に言う。
イベントは11時半からで、12時10分までには間に合うようにと里志は摩耶花に言った。
総務委員の里志は総務委員会に顔を出し、田名辺に囲碁部で碁石が盗まれたことを報告する。
田名辺はアカペラ部でも飲み物が盗まれたと里志に教えた。
えるは入須に事情を話し、F組でも文集を置いてもらえる事になった。
200円で売っている文集を、入須は150円に値下げして20部置いて行くようえるに言い、えるは承諾した。
入須は見本を貰おうと手を出すが、えるは勘違いしてお手をしてしまう。
何も持ち歩かずに交渉しようとしているえるに、入須は文集の見本を持ち歩くよう助言した。
えるは入須の助言に喜び、人に物事を頼む方法を聞く。
入須は相手に「期待」を持たせて、精神的な満足感を与えて、相手自ら動くように仕向けることが大事だと言い、「なるべく人目に付かないところで、異性に頼め」と教えた。
売り子をしていた奉太郎の元には、ジャックオランタンの姿をした製菓研究会の2人組が来て、園芸部部員から貰った水鉄砲に興味を示す。
奉太郎は文集を買えば水鉄砲をつけると言い、二人は喜んで文集を買い、お礼にお菓子と薄力粉を奉太郎に渡した。

校庭では、お料理研究会のイベント「ワイルド・ファイア」が始まるが、摩耶花はやはり忙しく来るのが遅れていて、古典部は里志とえるの2人だけだった。
ルールは、持ち時間一人20分でリレー方式で料理を作るというもの。
最初に料理する里志は食材を集め豚汁1品を作り、料理の得意なえるは野菜の巻物・伊勢焼・いももちの3品を作る。
しかしえるはうっかり全ての材料を使いきってしまい、どうにか自分の番までに間に合い到着した摩耶花には食材が残されていなかった。
残っていたのは料理で余ったエビの頭・小さい玉ねぎ・ねぎの切れ端などであった。
奉太郎は部室で一人、ワイルド・ファイアの実況の声を聞きながらソワソワしていた。
摩耶花は何もできず立ち尽くしてしまい、残り10分のところで里志を呼ぶ声がどこからか聞こえてくる。
声の主は奉太郎で、校庭にいる生徒たちに注目されて顔を赤くしながらも、里志に古典部の窓の下まで来るように言う。
里志が言われた通りにすると、奉太郎は持っていた薄力粉を里志に投げ渡した。
摩耶花は薄力粉と余った食材でかき揚げを作り、焚けていたご飯に乗せてかき揚げ丼を完成させた。
調理器具には何故かおたまがなかった。
優勝は古典部であったが、摩耶花はおたまが無かった事で手際良く出来なくて不満げであった。
するとお料理研究部の部員が来て、ちゃんと確認したはずなのにおたまが無かった事を謝罪する。
キッチンには十文字からのおたまを盗んだという犯行声明とカンヤ祭のしおりがあった。
えるたちは犯行声明を奉太郎に見せる。
えるは興味津々であったが、奉太郎は文集を売ることが最優先だと言う。
里志は古典部の名探偵として奉太郎と十文字が対決すれば話題になって、古典部が注目されるはずだという。
摩耶花のいっそ十文字が古典部を狙えば良いのにという言葉から、奉太郎は十文字がこれまで狙った物を見直してみる。
これまで十文字に物が盗まれたのは、「アカペラ部」でアップルジュース、「囲碁部」で碁石(いし)、「占い研究会」で運命の輪、「お料理研究会」でおたまで、あいうえお順であった。
里志と摩耶花は「ABC殺人事件」を思い出す。
ABC事件とは、アガサ・クリスティの推理小説で、アルファベット順に犯行が行われるというもの。
さらに園芸部でも水鉄砲(AKという銃に似たもの)が盗まれたことが発覚し、あいうえを順の部活から一文字目が同じ物が盗まれていた。
奉太郎は「十文字」は「じゅうもんじ」ではなく「じゅうもじ」だと指摘し、十文字分の犯行が行われるのではないかという。
そして十文字目は「こ」であり、古典部が狙われる可能性もありえるため、それをネタに新聞部に売り込めば良いとえるに提案する。

えるは壁新聞部へ行き新聞部元部長の「遠垣内 将司」に、入須に教えてもらった通りの事を実行しようとするが上手く行かない。
しかしえるが十文字事件の事を話すと、遠垣内は興味を示し、壁新聞部もカッターナイフを盗まれたとえるに話した。
情報提供をしたことで壁新聞に古典部を少し取り上げて貰う事になった。
里志は次に狙われるのが「き」の「奇術部」ではないかと予測し、単独で奇術部のショーを見に行く。
すると谷があらわれ、谷もまた十文字を追っていると言い、里志に勝負だと絡んできた。
壁新聞部が早くも十文字の話を記事にしたのである。
部室に居た摩耶花は奉太郎に薄力粉のお礼を言う。
奉太郎は貰った物を交換し続け薄力粉を手に入れたため、「わらしべプロトコル(わらしべ長者のルール)」に乗っ取り、摩耶花にも交換を要求する。
摩耶花は持っていたコスプレグッズの「鏡」を渡した。
奇術部のショーには既に十文字を追った人たちが大勢来ていたが、ショーが始まる前に既に「キャンドル」が盗まれていたことが発覚する。
里志は空振りしてしまい落ち込んだ。
漫画研究部では摩耶花が陰口を言われ、それを河内がたしなめるが、居た堪れなくなった摩耶花は部室を離れた。
渡り廊下で湯浅に会い、「夕べには骸に」の作者「安城春菜」の話を聞く。
「夕べには骸に」の作者は「安心院鐸玻」としているが実は合作の合同ネームであり、原作を春菜がやっていたが、春菜は既に転校してしまったという。
部室に戻ってきた里志は奉太郎に奇術部の報告をする。
盗む瞬間が見れなかったという里志に、奉太郎は十文字はそもそも犯行時間を指定して無いと指摘し、里志はムッとする。
入須に預けた文集は売れ行きが良いらしく、文集は一日で合計26部売れた。
帰宅後、えるは自分の交渉ごとの下手さを痛感し、「疲れた」と口にする。
摩耶花は去年買った同人誌「ボディートーク」を読み、自分の漫画の出来栄えと比べて落ち込む。
ボディートークも良い出来であるが、摩耶花は「夕べには骸に」と比べたら一枚劣ると評価していた。
里志は自分一人で十文字を捕まえようと意気込む。
奉太郎はカンヤ祭には通販もあると知り、呑気にあくびをした。

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総務委員会の壁には、カンヤ祭のポスターが飾ってある。

カンヤ祭三日目が始まる。
壁新聞部が十文字を取り上げ、犯人を捕まえた者に号外の特権を与えると言ったことで、校内には十文字を追う探偵役が沢山いた。
里志は皆が十文字を追ってる事ことで、まだ十文字が捕まっていないのだと知り、自分が捕まえるのだと燃える。
次は「く」の「グローバルアクトクラブ」ではないかと張っていたが、「け」の「軽音部」が狙われた。
奉太郎は十文字事件で古典部が注目されたとしても、200部全ての完売は無理ではないかと気づく。
すると奉太郎の姉・供恵が部室にやってきて文集を買う。
供恵は、奉太郎が摩耶花から貰った鏡に興味を持ち、わらしべプロトコルに乗っ取り奉太郎にある物を手渡した。
それは摩耶花が名作だと言っていた「夕べには骸に」であった。
奉太郎が「夕べには骸に」読むと、作者の「安心院鐸波」があとがきで原作のAが「クリスティの超有名事件」をモチーフに「クドリャフカの順番」という作品を作る予定だと書かれていた。
奉太郎は順番という言葉に引っかかりを持つ。
えるは放送部に声をかけられ、放送部の校内ラジオにゲストで出る事になった。
里志は軽音部が狙われた話を奉太郎にするが、奉太郎は「夕べには骸に」を読むのに夢中だった。
えるは「夕べには骸に」の絵柄に興味を持つ。
カンヤ祭のポスターの絵が、「夕べには骸に」の絵柄とそっくりだという。
漫画研究部では、絵を描いていた摩耶花に同級生が意地悪でバケツの水滴を飛ばそうとするが通り掛かった人とぶつかってしまい、摩耶花は水滴どころか、上半身に水を被ってしまう。
摩耶花は体操着に着替え部室を去り、廊下でえるから奉太郎が「夕べには骸に」を持っていた話と、カンヤ祭のポスターの絵の件を聞く。
2人はポスターがあった総務委員会の所へ行き、田名辺からポスターの絵と「夕べには骸に」の作画は同じ人で、生徒会長の陸山が描いた事を聞かされる。
古典部の部室に戻った二人は奉太郎に、「夕べには骸に」の作画担当が陸山だと話す。
奉太郎は興味が無かったのか生徒会長である陸山の名前すら全く知らず、陸山の読み方は「くがやま」、「安心院鐸波」は「あじむたくは」と読むことを知る。
推理材料が揃った奉太郎は、ある企みを思いつく。
しかし自分がこれからやろうとしているその企みはえるに反対されると考え、里志だけ呼び出そうとするも、えるが興味を持ってしまい2人で何の話かと聞かれる。
苦肉の策で、奉太郎はこれから里志と凄い卑猥な話をすると言ってえるを遠ざけ、里志だけに十文字事件について話す。
里志はずっと部室にいて大した情報網も持ってない奉太郎が既に真相に気づいている事に驚き、思わず詰め寄ってしまう。
奉太郎が着目していたのは、「何故あいうえお順なのか」「何故犯行声明のカードを残すのか」「そのカードは何故「失われた」という言い方をするのか」「なぜカンヤ祭のしおりを置くのか」「なぜ「園芸部」「お料理研究部」を狙ったのか」「なぜ「く」を飛ばしたのか」だった。
園芸部のAKは語呂合わせにしても少々無理があること、普通なら「お」をつけない「お料理研究部」をターゲットにしたことを疑問に思う。もっと条件の良い部活があったのではないだろうか。
そして「夕べには骸に」のあとがきを読み、「クリスティの超有名事件」とは「ABC殺人事件」であると推察。
「クドリャフカの順番」というタイトルに含まれる「順番」と、ABC順に行われる殺人が類似しているからである。
しかし今年のカンヤ祭では「クドリャフカの順番」という同人誌は売り出されなかった。
その代わりにABC殺人事件に似た十文字事件が起こり、「夕べには骸に」と十文字事件には関連があると言う。
しかし「く」を飛ばした理由がまだ奉太郎には分からなかった。
奉太郎はこのまま推理を続け、「こ」で古典部が狙われるなら「こ」の付く盗まれる物を用意して置くように里志に言う。
里志は「校了原稿」を用意すると言い、去り際推理に耽っている奉太郎を見て「期待しているよ」と暗い顔で呟いた。

えるはゲストで出た校内ラジオで古典部のPRをし、古典部に「こ」の付く物を盗みに来るであろう事を話し、十文字を追う生徒達に古典部を監視して欲しいと頼んだ。
摩耶花はラジオを聴きながら、文集の数が妙に減っている事に気づいた。
えるの放送を聴いた生徒達が古典部に集まり、文集はどんどん売れて行った。
集まった中には谷や田名辺の姿もあった。
しかし監視していた校了原稿が突如炎上し、犯行声明のカードが出てきたことで、古典部は十文字に敗北したのであった。
えるはこのことを入須に残念そうに話すが、入須から預かっていた文集は全部売れたと聞き喜ぶ。
入須はえるに他人の期待を煽る交渉ごとには向いてないと指摘し、えるももうこりごりだと言った。
里志はカンヤ祭で谷から挑まれた勝負にほぼ勝ち続けるが、全く嬉しそうではなかった。
里志は「期待」という言葉は諦めから出る言葉であり、自信から来る言葉じゃ無いと摩耶花に話す。
そしてあることを思い出した。

里志は、十文字が古典部から校了原稿を盗む少し前の時刻に、奉太郎と十文字が対面しているのを目撃していた。
十文字の正体は田名辺であったのだ。
奉太郎は「失われた」という言い方と、「く」を飛ばしたことで、「く」の付く物は既に失われたと言いたかったのではないかと田名辺に言う。
そしてその「く」の付く物は「クドリャフカの順番」と「陸山宗芳(くがやまむねよし)」を指すと語る。
「く」だけ部活の名前じゃ無いと反論する田名辺であるが、奉太郎はいつも犯行声明が置いてあったカンヤ祭のしおりの中に名前が載っているものがターゲットになったのだと言う。
古典部を含め被害に遭った部活は全てしおりの中に名前があり、同じページに陸山の名前も載っていた。
しおりを作ったのは総務委員会であり、犯人は総務委員会の中にいると考えたのである。
奉太郎は、「夕べには骸に」のあとがきから、陸山が「クドリャフカの順番」の原稿を紛失し、それが失われた事を表しているのではないかという。
そして「夕べには骸に」の作家名で合同ネームの「安心院鐸波(あじむたくは)」とは、原作の安城春菜の「あ」と「は」、作画の陸山宗芳の「く」と「む」が入っている。
残りは「た」と「じ」の付く人物で、この人物が背景とあとがきを書いている事になる。
苗字と名前の一文字目を取っているため、残りは「た」と「じ」の付く、2年生以上の総務委員会関係者で、陸山が漫画を描けることを知っている人物。
それに該当するのは「田名辺治郎」だけだったのである。
田名辺は奉太郎の推理を賞賛し、影で聞いていた里志は暗い顔で奉太郎を褒めた。
田名辺の動機は、原作の安城への想いや、カンヤ祭を盛り上げるための悪戯心などであった。
そして何より自分の気持ちを口で言えなかったから、あえて謎掛けのような事件を起こし、陸山が自分の思いに気づくかどうかを試したのであった。
奉太郎はこの事を公表しない代わりに、文集を総務委員会が買い取ってカンヤ祭の通信販売で売ってくれないかと持ちかける。
話題性が無ければ通信販売で取り扱えないと言う田名辺であるが、奉太郎は最後の「こ」で古典部を狙えば話題になるし、通信販売でも完売可能だと言う。
利害が一致した田名部は奉太郎の案を受け、奉太郎は次に十文字がどう古典部を狙えばお互いに良い結果になるのか、作戦を話す。
古典部は「こ」の付く物として「校了原稿」を用意しており、他の生徒達が沢山いる中でナトリウムと水を混ぜた炎上を起こすという。
水とナトリウムをかけるための道具は水鉄砲で、それは園芸部にあると言い、奉太郎は田名辺にそれを取ってくるように頼む。
さらに水鉄砲をかける隙を作るために里志の携帯電話を鳴らし、全員の気がそれた所で水鉄砲をかけ、犯行声明のカードとしおりを落とすように田名辺に言う。
古典部から校了原稿が奪われた件は、全ては真相に辿り着いた奉太郎が仕組んだことだったのである。

奉太郎と田名辺の会話を思い出していた里志に、摩耶花は里志の言う「期待」とは奉太郎に向いているのか、奉太郎に勝ちたかったのかと問う。
里志は肯定し、しかし「データーベースは結論を出せない」といつもの調子で言った。
里志にかける言葉が見つからなかった摩耶花は、そっと里志の裾を摘んだ。

カンヤ祭の閉会式で、陸山は十文字事件を変な事件があったと笑いを取り、田名辺に小さな声で「おつかれ」と言う。
陸山は田名辺の仕業だと気づいていたのだろうか、田名辺がなぜそんな事をしたのかその意味が分かっていたのだろうか、陸山の表情からはイマイチ読み取れない。
田名辺は気まずそうに複雑な顔をした。
カンヤ祭の撤収作業の中、摩耶花は渡り廊下で河内と出会う。
安城の知り合いだった河内は、友人である安城の才能に嫉妬し、「夕べには骸に」を半分しか読まなかったと語る。
全部読んで名作だと認めるのが怖かったのである。
そして河内はそこから、「名作など無い」という態度を取るようになった。
河内は手すりに落書きし、その場を立ち去る。
摩耶花が落書きを見ると、それは摩耶花が「夕べには骸に」には一枚劣ると評価した同人誌「ボディートーク」のキャラクターだった。
ボディートークの作者は河内だったと知り、いたたまれなくなった摩耶花は涙した。

奉太郎は田名辺と話した時の事を思い出していた。
奉太郎は陸山が「クドリャフカの順番」の原稿を紛失した事を責めた犯行だと思っていたが、田名辺はそれを否定する。
天才的な物語製作能力の才能を持った安城と、天才的な作画能力の才能を持った陸山、2人が揃っていれば「夕べには骸に」以上の名作が出来たはずだった。
しかし安城は引越し、陸山は「夕べには骸に」以降漫画を描かなくなった。
陸山にとって漫画を描く事は遊びだったのである。
田名辺は背景を手伝う程度の事は出来たが陸山のような作画能力は持っておらず、陸山の才能に憧れもしていたが、嫉妬もしていた。
「絶望的な差からは期待が生まれる」と語り、ずっと陸山に「期待」していたのだと言う。
陸山は十文字事件の事も特に気にとめず、この事件に隠されたメッセージも気づいてなかった、その事実を信じたくないという田名辺。
奉太郎は、十文字事件で田名辺が陸山に言いたいけど言えなかったメッセージとは、「陸山、お前は「クドリャフカの順番」を読んだのか?」だったのではないかと聞く。
何故描かないのか、漫画を描くのは所詮遊びだったからかという、言葉にならない当てこすりであった。
田名辺は肯定し、空を仰いだ。

文集「氷菓」は最後にメンバーが一冊ずつ買えば無事完売となった。
えるは十文字事件の真相に興味を示す。
三日間のカンヤ祭は無事終了したのであった。

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「遠まわりする雛」

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「生きびな祭り」で雛の役をするえる。

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@keeper

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