十二国記(ラノベ・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『十二国記』とは、小野不由美による小説、及びそれを原作とするアニメなどのメディアミックス作品である。女子高生の中嶋陽子は、人の顔色を気にして生きてきた。そんな陽子の前に、麒麟の景麒を名乗る青年が現れ彼女を王と呼ぶ。陽子は本来の故郷である十二国世界へ渡り、様々な戦いを経て王になる覚悟を決めるのだった。ある者は権力とそれに伴う責任に向き合い、ある者はコンプレックスに向き合って成長を遂げる。古代中国風の異世界を舞台にした異世界ファンタジーでありながら、不思議なリアリティを持つ作品である。

声:松下美由紀

芳国の麒麟。二人の王を選んだが共に暗君であり、峯王の圧政が元で失道の病にかかっていた。月渓から二代続けて暗君を選んだ民の失望を言い渡されて討ち取られる。王の死に際し、王気が絶えたと口にしている。
峯麟の死後、捨身木には新たな芳国の麒麟の卵果が実り、峯麒が生まれたとされるが、そちらは行方不明らしい。

月渓(げっけい)

声:田中正彦

芳国の元恵州侯。峯王・仲韃の信頼を得て、月渓自身も王を慕い忠臣として仕えていた。しかし王によって法が厳しくなり、毎日のように死刑が行われることで民が怯え暮らすことになる。法を緩めるよう王に通達したものの聞き入れられなかった。ついには自ら剣を取り、謀反を起こす。王と王妃を討ち取り麒麟まで手にかけた。公主の祥瓊だけを生き永らえさせたのは、祥瓊の成長と更生を望んでのことである。また、目の前で家族を討たれる気持ちを分からせる意味もあった。
誠実な性格ゆえに民からは慕われており、仮王の座に就くことを望まれ供王からも玉座を勧められた。本人は、長く玉座に腰を据えることは天命に背くとして拒んでいた。景王の使者である垣魋に峯王を討ったのはこれ以上王を憎みたくないとの私怨だと語る。垣魋から月渓にとっての良き王とは、民の為になる王だったと指摘を受けた。更に、「仮王でも偽王でもない、月に乗じて暁(新王の登極)を待つ月陰の王になってはいかがか」と勧められる。
月渓は、垣魋が慶国の内乱に加わっていたこと(間違えば逆賊になっていた)、祥瓊が自らの過ちに気付いて景王に仕えていることを聞いてく。「人は変われる」との言葉通り、祥瓊が成長をし、垣魋が行動を起こした結果将軍となったことを知った月渓は、自分にすべきことが新王が現れるまで国を預かることだと認め、仮王となることを決意する。

沍姆(ごぼ)

声:竹口安芸子

祥瓊が送られた里家で閭胥(ちょうろう)を務める老婆。閭胥とは里家のまとめ役である。息子を処刑されたことから峯王を恨んでいた。祥瓊が公主であることは知っており、陰で虐待を行う。それは祥瓊の仕事が遅いためだが、王の娘という理由もあった。月渓を王位簒奪者だという祥瓊に、月渓が玉座が欲しくて王を討ったわけではないことを告げ、「お前の性根が芯から腐っていることがよく分かった」「自分が恥知らずだからと言って他の人間も恥を知らないと思わないがよかろうよ」と、そのことを見抜けない心根に対する皮肉を言った。
沍姆とのやりとりで、祥瓊が峯王の娘であることが里家に伝わる。峯王を恨む人々により、祥瓊の処刑が行われそうになったが、沍姆が月渓の部下に里家の者たちによる私刑を知らせたことで、処刑は中止された。
本心では祥瓊を憎んだところでどうにもならないのは分かっていたのだが、仲韃の娘であることや自分の過ちに気付いていない祥瓊への憎しみがどうしても抑えられなかったと月渓に語る。祥瓊の身柄が恭国に渡った後、月渓から「もう我々は仲韃を忘れてもいいだろう」と仲韃親子を憎しみながら生きることをやめるよう言われた。沍姆の息子が処刑されたのは、刑場に運ばれる子供を哀れみ、刑吏に石を投げたのがきっかけである。

戴極国(たいきょくこく)

戴極国は十二国の一つである。別名戴国、または戴。現在の王は泰王・驍宗、麒麟は胎果の泰麒。戴国では先王の圧政で国が傾いていた。雁国とは隣り合っている。十数年前に泰麒の卵果が実るが、それは蝕で蓬莱に流された。延麒、廉麟の協力もあり泰麒が帰還を果たす。泰麒は麒麟の本能をほぼ失っており、迷いながらも驍宗を王に選ぶ。『風の海 迷宮の岸』において、泰麒の卵果が蝕で蓬莱に流されてから、十二国世界に帰還するまでが回想の形で描かれた。
この章では日本での様子も描かれる。日本では、優香が高里要(泰麒)と、その弟卓に接触していた。優香がこの兄弟に近づいたのは、「要が1年間神隠しに遭っていた」「要を傷つけた者は祟られ怪我をする」といった噂があり、要が十二国世界と関係があるのではないかと思ったためである。泰麒と共に蓬莱にやって来た辿子は要(泰麒)を守る為、「お前(優香)は王の敵か?」とに対し圧をかけてきた。優香は姿こそ見えなかったものの辿子の存在から要が十二国世界の者であると確信したようだった。

泰王・驍宗(たいおう ぎょうそう)

出典: mydramalist.info

声:藤原啓治

王となるため昇山してきた人物。姓は乍(さく)。驍宗は字。元は王直属たる禁軍の将軍職にあった。知略に長け、人望に厚いとされる。凄まじい威圧感(実は王気)を持ち、泰麒からは恐れられていた。同じく将軍職にある李斎をして「敵に回すと恐ろしい」と言わしめる猛者。
泰麒から、王ではない人物にかけられる挨拶である「中日まで御無事で」と言われたことで自分が王ではないと思い、下山をしようとした。元々自分が王でないと分かったらあとは黄海で騶虞を捕らえようと考えており、李斎、泰麒を連れて騎獣狩りに出かけた。この時に伝説級の最強の妖魔である饕餮に襲われる。泰麒により饕餮が使令として下されたのを目撃した。
その後、改めて山を下りる際、麒麟の姿で追って来た泰麒が頭を垂れて誓約をした為に、泰王として即位する。即位後、泰麒に蒿里(こうり)の字を与えた。蒿里は十二国世界における死者を葬る山であり、蓬莱での泰麒の姓、高里にちなみ「いっそ不吉で縁起がいい」としてつけたものである。
将軍を務めているだけあって剣の腕にも長けており、剣の名手とされる延王と試合をして一本を取ったことがあった。驍宗が腰に帯びているのは、延王から賜った剣である。
聡明で実行力や判断力にも長けるが、それだけに独善的な部分もあり、旧勢力や敵対する勢力を粛清したこともあって反乱を招く(いくらか部下の意見を聞くだけの分別はある)。地方で起きた反乱を、自ら鎮圧しに向かい、行方不明となる。

泰麒蒿里(たいき こうり)/高里要(たかさと かなめ)

出典: baike.sogou.com

声:釘宮理恵/岡野浩介(高校生)

『風の海 迷宮の岸』に登場。戴国の麒麟。胎果であり、高里要の名で10歳まで蓬莱で暮らしていた。ある夜、水の入ったコップを落としたとして厳しい祖母から雪の降る外に出されていたが、その時に廉麟の協力もあって十二国世界に帰還。
初めこそ皆にかしずかれる生活や、自分が人ではないことなどに戸惑ったが、家族の中で自分が異分子であることは蓬莱にいた頃から感じ取っており、すぐ十二国世界に順応する。ところが人としての生活が長すぎた為か、麒麟の本能がほぼ失われており、本来の麒麟が遊びのように行う妖魔の折伏(妖魔を自分の下僕とする為の誓約。「絡めとる」「使令に下す」ともいう)、および自然な動作であるはずの麒麟の姿への転変はやり方さえ分からずにいた。ホームシックに陥ることもあり「お家に帰りたい」と涙をこぼすこともあった。

景麒から王の選び方、転変の仕方を聞くものの、「王気は自然に分かります」「腕を上げる方法を人に尋ねますか」といった、胎果の麒麟の気持ちが分からない不器用な景麒の発言は却って泰麒の不安を煽るものとなった。それでも折伏の仕方などを教えられたことから景麒の気持ちを汲み取り「景台補はお優しい方です」と言って送り出す。
夏至を過ぎた頃に昇山が始まり、そこで将軍職を務める驍宗や李斎と出会う。李斎には親しみを覚えるが、驍宗には威圧感や恐怖心を感じる。彼らには王ではない人物への挨拶である「中日まで御無事で」との言葉をかけた。その後も李斎とは親しく話していたが、恐ろしいと感じるはずの驍宗のことも何故か気になっていた。

泰麒は騎獣に興味を持ち、李斎、驍宗らと共に騎獣狩りに連れ出されることとなった。この時、最上級の妖魔・饕餮(とうてつ)に出くわしている。饕餮を絡めとった(使令に下した)麒麟はいないと言われていたが、逃げ切れないと悟り、折伏を選択。驍宗を守るべく気力を振り絞り、饕餮(名は傲濫)の折伏に成功。初の使令とする。
驍宗が山を下りると聞いた際傲濫に驍宗の護衛を頼むが、泰麒の安全が最優先と言われる。驍宗を引き留めたいとの衝動から駆け出し、無意識のうちに麒麟の姿に転変して驍宗一向に追いついた。もはや驍宗を引き留める手段はこれしかないと、頭で「彼は王ではない」と思いながらも膝を折り、誓約をしてしまう。これにより驍宗の即位が決まったが、泰麒自身はいけないことをしたと気が沈んでいた。景麒と再会した際、罪の意識にさいなまれて驍宗に行ってほしくなくて頭を下げてしまったと告白。
後日、延王、延麒が戴国に訪れた時に礼を尽くせと延王への土下座を強制されるがどうしても頭を下げられなかったことから、麒麟は自国の王以外に頭を下げることができない、偽りの誓約はできないと思い知る。尚、土下座の強制は延王、延麒、景麒らの芝居である。麒麟としてはまだ雛同様で成長の余地があり、蓬莱に戻った後も年齢より幼く見えるとされながら15歳程度まで成長した。
「蒿里」の字は、即位直後の驍宗により賜ったもの。泰麒の蓬莱での名前を聞いた驍宗が、「いっそ不吉で縁起が良い」として与えたものである。
原作では陽子の助力で十二国世界に戻ったが、アニメでは蓬莱にとどまったままであった。これは泰麒が十二国世界に戻るエピソードが放送されなかった為である。

白汕子(はく さんし)

声:藤生真沙子

泰麒の女怪。女怪の本能により、生まれた直後から泰麒の卵果を見守っていた。蝕で泰麒の卵果が流されて以降、ずっと行方を探しており、10歳の要=泰麒を連れ戻した。泰麒を守る意識が強く、危害を加えた者はもちろん、「蓬莱の話がしたい」と腕をつかんだ鈴にまで攻撃を加えた。これは女怪の本能だが、蝕で卵果が流され10年間も泰麒が行方不明状態にあったことも一因と思われる。泰麒が帰還した際には涙を流し喜んだ。
泰麒が角と記憶を失って蓬莱に戻ってからも守り続けている。魚の首、人間の女性の上体、ヒョウの脚とトカゲの尾を持つ。泰麒には懐かれており、一緒に遊んだり、昇山してきた人物を御簾越しに見ることになった時「汕子を呼んでもいい?」と言われている。
蓬莱に戻った要(泰麒)には十二国世界の記憶はないが、何となく白汕子の存在は感じ取っており、女性的な印象からムルゲンと呼んでいる。ムルゲンとは上半身が人間の女性、下半身が魚もしくは鳥という怪物、セイレーンのことである。
使令の傲濫と共に、泰麒を守っている。要を傷つけた者は祟られるという噂の一因になったが、一つには血を浴びすぎて歯止めが利かなくなっている事情もある。要の描く絵から汕子のものと思われる手がカンバスに生えるように出ているが、これが幻覚なのか汕子の繋がりが一時的に強まったものなのかは不明。要と接触した優香に「お前は王の敵か?」と圧をかけたが、「私は(慶国の)王の友人だ」と返された為、本格的な手出しをしなかった。蓬莱の人物には姿が見えず声も聞こえないが、優香に声をかけることができたのは海客として十二国世界に渡った為かもしれない。

傲濫(ごうらん)

出典: www.quora.com

声:うえだゆうじ

泰麒が唯一使令として下した妖魔。妖魔の最高位に君臨し、麒麟でも絡めとられた(使役された)例はないとされる饕餮(とうてつ)と呼ばれる種族。泰麒が驍宗らとともに騎獣狩りに赴くいた際、一行を襲おうとした。泰麒にも攻撃を加えたが、驍宗を守ると決めた泰麒により折伏されて、使令に下る。戦闘時よりその姿はいかようにも変化していたが、使令となった後は赤い毛並みの犬のような姿を取っていた。
泰麒から山を下りようとしていた驍宗を守るよう頼まれるが、王でもない驍宗の護衛はできないと返答している。この傲濫と泰麒のやりとりは、泰麒に驍宗を引き留めたい、それには驍宗を王にするしかないとの考えを芽生えさせる。傲濫は、間接的に驍宗との盟約を結ばせるきっかけになったと言える。
泰麒が蓬莱に戻っても使令として、白汕子と共に泰麒を守っている。泰麒(要)を傷つける者に容赦なく制裁を加える為、要には「祟る」との噂が付きまとうようになった。要は傲濫の気配を獣のようなものと感じ、グリフォン(上半身と翼がワシで下半身はライオンの怪物)と呼んでいる。

醐孫(ごそん)

戴国馬州の司寇大夫(法令に関する役職)。泰麒が戻ったと聞き蓬山に来た。泰麒を捕らえようとし、鎖で強引に引き寄せて泰麒をひざまずかせた。この時、自ら泰王即位の宣言をするが、泰麒が醐孫に王気を感じていなかった(麒麟が自ら膝を折った正式な契約ではない)為、女仙たちに追い返される。初めは泰麒の髪色が黒いことから、麒麟ではないただの子供かと疑った。後に門が開くのを待って昇山をしてきたが、「泰麒を捕らえた自分が王になるべきだ」と主張する中、驍宗に一撃で返り討ちにされている。

えどまち
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@edono78

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