乙嫁語り(A Bride's Story)のネタバレ解説まとめ

『乙嫁語り』とは作者、森薫による漫画作品であり、作者の長編漫画第2作である。
19世紀後半の中央アジア、カスピ海周辺を舞台にイギリスからの旅行者「ヘンリー・スミス」が出会う人たちの物語。古語である「乙嫁」を「美しいお嬢さん」ととらえ、第1の乙嫁「アミル」、第2の乙嫁「タラス」、第3の乙嫁「ライラとレイリ」、第4の乙嫁「アニス」、第5の乙嫁「パリア」とそれぞれの話が進んでいく。

概要

2008年10月14日よりエンターブレイン発行の隔月紙「fellows!!」にて連載を開始する。その後、同紙が年10回刊行の「ハルタ」に紙名変更された現在でも基本的に毎号連載中である。
漫画大賞2014にて大賞受賞。
作品の特徴として、雅で絢爛豪華な衣装や布地、装飾品、工芸品などの綿密な書き込みが上げられる。

あらすじ・ストーリー

第1の乙嫁

19世紀、中央アジアカスピ海周辺の地方都市に住むエイホン家の末子、「カルクク・エイホン」の元に山を越えて遠くの村から「アミル・ハルガル」という花嫁がやってきた。カルククは13歳。対してアミルは20歳。最初は歳の差から違和感があるものの、少しずつ夫婦としての絆を深めていく。そしてカルククの家族もアミルを家族として受け入れていく。

そんなある日、カルククとアミルは遊牧で生計を立てている遠縁の親戚の家に父からお使いを頼まれる。結婚の挨拶もしたいからと、2人は方々を探しまわるが見当たらない。夕暮れにヤギの子供を見つけ、それを頼りにやっと家を捜し当てた。
しかし20歳になるアミルを見て、面と向かって嫌味は言わなかったが2人が寝床に帰って行ってしまった後、歳のいった嫁には子供はあまり産めないのではないかと親戚たちは複雑な胸中を口にしていた。

そのころ、エイホン家に3人の男が現れる。それは北の半遊牧民であったアミルの実家のハルガル家の長男、「アゼル・ハルガル」と親戚の2人だった。
3人はカルククの父親の前にて「アミルを嫁に出したのは手違いだったから、お返し願いたい」と突拍子もないことを口走る。もうすでに家族の一員として過ごしていたアミルを簡単に返せるわけもなく、特にカルククの義理の兄であるユスフと喧嘩腰になり、見かねた父は一方的にハルガル家との族縁を切る。

ハルガル家は北の山で半遊牧をして生活をしていたが、冬になると厳しい寒さに耐えるために定住をする。そのときに馬や牛の遊牧地を確保するため、有力部族であるヌマジ家に縁を作らないといけなかった。そのためアミルの妹たちを嫁に出していた。
しかしヌマジは女性の扱いがひどく、病気や怪我で皆死んだと言われていたが、実際は蹴られて骨折の末に死んだというのだ。そんな先に父親以外はアミルを嫁には出したくないとは思っていたが、なんとしても領地が欲しいアミルの父はアミルを連れ帰るために父親とアゼル達を連れてエイホン家に出向く。

実の父の強引な要求に戸惑うアミル。そして妹たちが死んだという事実を知らされショックを隠せなかった。
その強引な手法に、今度はエイホン家だけではなく町全体の人たちがアゼル達を追い出そうとしていた。町の人たちとハルガル家の小競り合いの隙を見てアミルの父は隠れていたアミルを強引に連れ出そうと、二階に潜んでいたアミルの元へやってくる。それに気がついたカルククは、急いでアミルの元に駆けつけると父の足を刺して追い出したのだった。

そうして一旦町は落ち着いた。
そんなとき、居候のエイホン家に居候をしていたイギリス人「ヘンリー・スミス」が家を出て、アンカラへ行くことになった。アミルとカルククは途中までスミスを送り届け帰途につく。

スミスがエイホン家を出てしばらくして、アミルのことを諦めきれないアミルとアゼルの父は、遠縁だがロシアに寝返っているとあまりいい噂の聞かないバダンの長「オル=タムス」と手を組む。しかしバダンはエイホン家のある町の土地にも目を付け、ハルガル家ごと町も攻め落としてしまおうと企んでいた。
そしてバダンとハルガルは手を組み、町を襲う。バダンにはロシア製の大砲や銃が沢山あり、勝機はないと思われた。しかしいざ戦闘になるとバダンは急にハルガルを裏切り、大砲をハルガルに向けた。その結果アゼルは負傷する。オル=タムスを父ほど信用していなかったアゼルは、偶然残っていた残党を撃ったことで街の人たちを救ったことになり、街の人たちを逃がすことに成功。そして狂気にかられたオル=タムスはアゼルの手で殺される。
しかしアゼルは町の者達に敵だと襲われ、処刑寸前になる。
そのときこの土地を納めていた藩王の直属の部隊がやってきてその場の騒ぎは収束され、街のものたちを逃していたアゼルを見ていた老女たちはアゼルをかばい、一命を取り留める。

アゼルは解放され、地下でアミルの手当を受けていた。そんな2人の元にカルククの祖母、「バルキルシュ」がやってくる。そして彼女はアミルの父が死んだことを伝える。もう二度とハルガルがここに襲ってくることはないのだ。

第2の乙嫁

アンカラを目指すスミスがアンカラまでの案内人と落ち合う約束をしていた町「カラザ」にて案内人を捜している途中、エイホン家からもらった馬とロバの盗難にあってしまう。
途方に暮れていると、一人の女性が泣きながら「馬を捕られた」と訴えてきた。2人は市場の場長に相談する。すると2人の馬はあっという間に2人の手元に戻ってきた。そして女性はスミスに「宿が決まっていないなら、自分の家に泊まりませんか。」と誘ってくる。
アンカラまでの案内人が見つからないスミスは、宿のあてもなかったため、その女性からの誘いは幸運だったのかもしれない。女性に案内されるまま、街のはずれにある家にやってくる。そこには彼女の姑が一人いるだけだった。

姑は、スミスにゆっくりと2人で暮らしている理由を語り出した。
姑には5人の男の子供がいた。そこへ16になるタラスという女性が長男の元に嫁に来た。それとともに、彼女が今でも大事にしている白馬を嫁入り道具として父から譲り受けた。
ところがタラスが嫁に来て何年もしないうちに、長男は病気で死んだ。子はいないまま夫と死に別れた妻は、夫の兄弟と結婚するのが習わしであり、タラスも次男と結婚した。しかし次男も毛皮を売りに行く途中の山道で、荷物ごと崖から落ちて死んだ。
次は三男、四男、そして五男も長男と同じ病気で死んだ。
跡取り息子5人を一気になくした父親は、見る影もなく気を落とし、そのまま消えるように死んだ。残されたのは姑とタラス、そして父親が結婚祝いにと残した「チュバル」と名付けられた白馬だけだった。

事情を知りスミスは彼女らに同情をするが、それが裏目にでることになる。姑はスミスの好青年ぶりに印象を良くし、このままタラスと結婚してもらえないだろうかと思い始めていたのだ。まだ若いタラスが、血のつながりのない姑とずっと一緒にいるのは良くないと思っていたのだ。
スミスは当初あまり情が移ると悪いと思い、早々に出ていこうとしていたがタラスの願いと姑の願いに押され、数日間滞在することになる。
ある日、親戚の男がタラスの家に乗り込んでくる。自分の息子の嫁にタラスをもらいたいとずっと言ってきていたのだ。しかし、男の家は男やもめであり家政婦代わりに嫁をもらいたいのと広大な土地と羊たちが目当てだと姑は思っていた。そんな所にタラスを渡したくない。
そこで姑はスミスを引き合いに出し、タラスはスミスと一緒になり一旅をする予定だと口走った。スミスは驚いて、姑をみるが姑は本気だった。

こんな状況になっては、この家にいるわけにはいかない。スミスはタラスの協力も得て姑の目を盗み、家を出ることに成功する。
しかしタラスの親戚の男の策略にて、スミスは「ロシアのスパイの可能性がある」という罪で投獄されてしまう。身分証などの類は偽造ができると信用してもらえなかった。このまま罪に問われてしまうのだろうかと思ったが、噂を聞きつけたカルククとアミル、そしてアミルの女友達の「パリヤ」が駆けつけた。カルククの書状と案内役である「アリ」がハザンというこの辺りの権力者に書いてもらった書状によりにてスミスはやっと解放された。そしてラクダや馬、食料を手に入れ、投獄された時とは雲泥の差の扱いを受ける。
そこへ投獄されたと聞きつけたタラスが、慌ててやってくる。親戚の男から逆恨みを買っているスミスを心配にしてやってきたのだ。しかし、それだけではなかった。彼女は最初からスミスに特別な感情を持っており、一緒に過ごしている間、タラスは本気でスミスを愛してしまったのだ。
アンカラへ行かなければいけないスミスだったが、彼もまたタラスを愛していた。帰国する前、ここに戻ってきてタラスを迎えに来ると約束し、タラスに金でできた懐中時計を渡す。

タラスを家に送るため、スミスはタラスとともに家に戻る。そこには、姑とあの親戚の男がいた。広い土地とそれを放牧している羊の面倒をみることを約束し、姑は親戚の男と結婚することを決めたのだ。
スミスとタラスの結婚をその男が許すはずもなく、スミスは一人で町に戻ってきた。
そしてカルクク達と別れ、アリとともにアンカラを目指す。ペルシャまわりでアンカラを目指すことを決め、その日は野宿をする。
アリが眠ってしまった後、スミスは一人起きだし、姑から突き返された金時計を崖の上から捨ててしまった。

第3の乙嫁

カラザを離れ、アラル海の付近を進んでいたスミスとアリ。
ラクダに乗っていたスミスは、その揺れの心地よさと昨晩の睡眠不足によりラクダから滑り、湖の中に落ちてしまう。
そこで「ライラ」と「レイリ」という双子の女の子達に助けられる。2人の歯に着せぬ語り口と、正直すぎる性格に傷心のスミスは徐々に明るさを取り戻していく。
スミスは旅行者を名乗ると何かと危険なため医者を名乗っていた。それを知りライラとレイリはスミス達を家に連れて帰り、祖父の脱臼の治療をさせる。すると脱臼はあっという間に治ってしまう。
その翌日からスミス達はその町で評判の医師になり行列が出来てしまう。

一方、ライラとレイリは嫁に行く年頃であり、結婚話がぜんぜん無いことに焦っていた。それもそのはずで「二人で一緒に」という条件だけでも話は限られてくるのに、彼女たちはあるはずもない玉の輿をねらっていたからだ。
そんな中、ライラとレイリの父親が昔なじみの同業者から、うちの息子たちと結婚しないかと相談を受ける。彼の息子達にも結婚適齢期の息子がいたのだ。
幼なじみ同士の結婚の話に、ライラもレイリも、そして相手のサマーン(兄)とファルサーミ(弟)も戸惑いを隠せなかった。しかしデートを重ねているうちに、ライラはサマーンとレイリはファルサーミと少しづつ意識をするようになり、結婚することが決まる。

結婚の前に家事が苦手なライラとレイリは、母親と近所に住む妹とともに家事のイロハを習い、投げ出した結婚衣装を必死で仕上げ、やっと結婚式を迎える。
わがままでパワフルなライラとレイリに2人の夫は手を焼きながら、何とか結婚式を終えた。その間に、医者として立ち去りづらかったスミスとアリはやっと町を出ることができた。
その後、サマーンとファルサーミは父親からの1艘ずつの船を結婚祝いとして貰い、ライラとレイリとともに漁に出る。大漁の魚に、ライラとレイリの妄想はさらに膨らんでいく一方だった。

第4の乙嫁

ペルシャにやってきたスミスとアリは、スミスの知り合いの便宜により富豪の家に世話になる。
その家には、「アニス」という妻がいた。儚い印象のアニスだったが、ハサンという子宝にも恵まれ、優しい夫と使用人と何不自由なく幸せに暮らしているように見えた。
しかし不在がちな夫。話し相手は飼い猫と、庭に遊びに来る小鳥達くらいしかおらず、孤独な毎日に何かが足りないと思うようになった。
使用人の「マーフ」にそれを伝えると、彼女はアニスを町のお風呂屋へ誘うことにした。そこではいろんな人がいて、アニスの友達になってくれるような人もいると思ったからだ。

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