ヴィンランド・サガ(VINLAND SAGA)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ヴィンランド・サガ』とは、幸村誠による漫画。講談社発刊・月刊アフタヌーンにて連載された。主な舞台は11世紀初頭の北欧。主人公のトルフィンは、幼い頃に父・トールズをヴァイキングに殺され、復讐を果たすために戦士となる。やがてその道程での心の成長と共に、平和な場所『ヴィンランド』を求める旅へ。戦乱や紛争、暴力や罪、愛の中を生き抜く人間たちを描いたアクション・ヒューマンドラマ。

アシェラッド

ヴァイキング集団の首領。金の短髪で金の顎髭。普段は冷静沈着で飄々とした態度でいるが、拘る事に関しては怒りを表出させる事も。
人の格や器を見抜く事に長けており、対極を見て先読みが出来る才能を持ち、歴史などにも博識。
戦闘でも機転が利き、また、剣で人間を縦に両断するほどの腕前を持つ。素手で相手をいなしたり投げたりする柔術のような体術も習得している。

トルフィンが幼い頃、ヨーム戦士団のフローキに雇われてトールズの命を奪う。その復讐のためにアシェラッド兵団の船に乗り込んだトルフィンを、生かしつつ育てつつ、事ある事に決闘を褒美として下働きさせていた。

アシェラッドとは「灰まみれ」という意味の仇名で、奴隷である母親から生まれた彼に父親は名前を付けなかった。父親はデーン人の豪族ウォラフで母親リディアはウェールズの元王女だったがウォラフに攫われ奴隷となっていた。
幼い頃は馬小屋で育てられていたが、11歳の頃に気を病んでいたリディアがウォラフに殺されそうになり、この時に剣を初めて握りウォラフと対峙。剣の筋を買われてウォラフの館に住みはじめ、2年で他の兄弟達に溶け込み信頼を得て館の中での地位を確立。そしてウォラフと仲が悪かった兄の仕業と見せかけてウォラフを暗殺。14歳で余命僅かなリディアを連れて彼女の故郷ウェールズへ行き、そこでウェールズの人脈を手に入れる。
母リディアはアーサー王伝説のモデルとなった英雄アルトリウス公の子孫であり、アシェラッドはその血筋の末裔に当たる。普段の誓いの言葉では他のヴァイキング同様にオーディン神に誓う一方、トルフィンとの決闘やトールズとの約束を守る際にはアルトリウスの名に誓う事などを見ても、彼のウェールズに対する帰属意識は高く、デーン人とウェールズとの混血でありながら、自らが率いる兵団も含めてデーン人の野蛮な気質や暴力のままに略奪を繰り返す様を嫌っており、また、ブリタニアを滅ぼしたアングロ・サクソン人に対しても情を持っていない。例外として兵団で最も付き合いが長く腹心であったビョルンを、唯一、「友達だ」と認めた。
そしてデンマークの王スヴェンの首を撥ねる際に、母から受け継いだ真の名は「ルキウス・アルトリウス・カストゥス」であると告げる。

今際の言葉でトルフィンに、復讐などに拘らず、その先へ行けと語る。父親であるトールズがなれなかった「本当の戦士」に、その子であるお前がなれと。

レイフ

大西洋を旅して廻っている、冒険好きの中年男。口髭姿で身長は低め。グリーンランドの出身であり、キリスト教徒。エイリークの子。
船乗りとしてかなりの腕を持ち、商いにも精通している。また、人当たりも好く義理にも厚いため旅の各地で好かれ、「”幸運者”のレイフ」呼ばれとている。
トールズとは旧知の仲で、弟ソルヴァルドと結婚していたグズリーズの義理の兄にあたる。妹はチューラ。

幼いトルフィンに豊かな土地「ヴィンランド」の事を語った張本人であり、トールズが殺された一件以降、行方の知れなかったトルフィンを11年間探し続けていた。そして後に再会を果たし、トルフィンとともにヴィンランドを目指す旅に出る事となる。

尚、彼は実在の人物であり、初めて北米に到達したヨーロッパ人として知られているそうだ。

ヘルガ

トルフィンの母。金髪。
ヨーム戦士団の首領シグヴァルディの娘。トルケルの姪にあたる。
娘であるユルヴァが生まれた事で戦乱から離れる事を決意したトールズと共に、ヨーム戦士団から逃げる形でアイスランドへ移住する。

ユルヴァが生まれた時、父親としての実感を持たずにいたトールズに対して「この子に名前を」と語り掛けたが、愛着もないままそれを拒否したトールズ。この時に怒りを露わにしたが、トールズ曰く、ヘルガが怒ったのはその後の15年間でこの時だけだった。

無口で無骨なトールズだが、彼の言わんとする意思を汲み取り、子供たちに思い遣りを以て接する良妻賢母。
行方不明になったトルフィンと再会し、その目を見て瞬時に我が子であると理解し、また、再び度に出るトルフィンの目的を聞いた時には命を懸けて存分におやりなさいと激励する場面も。

ユルヴァ

トルフィンの姉。金髪で長身。母親であるヘルガに似た美貌を持ち、暮らしている小さな農村では嫁候補として人気だった。
また、父親譲りの体力も兼ね備えており、トールズが死にトルフィンが行方不明となった後は力仕事もこなし、普通は女性の参加しないクジラの狩りにも
参加して一番槍を果たすなど、逞しく勇ましい面も。
だが、敢えて忙しく働く事でトールズやトルフィンの事を無意識に考えまいとして涙をこらえていた。

後に同じ村に住むアーレと結婚。1018年の時点で4人の子の母となっている。
再会したトルフィンを、レイフが気を使って連れて来た別人であるとか名前を騙った詐欺師だとか主張し、なかなか本人だと認めなかった。本人だと解ったら解ったで、何の便りも無く放蕩していた事に激怒し、見事な拳の一撃で殴り飛ばすなど、豪快かつ現実的な個性を光らせる。

また、西本英雄によるスピンオフ『元祖ユルヴァちゃん』という作品の主人公である。

フローキ

ヨーム戦士団の小隊を率いる。短髪で顎髭。額から頬にかけて右目を縦断する傷がある(右目は無傷)。
狡猾な謀略家であり、利己的な性格。
かつてヨーム戦士団の使者としてトールを戦士団に招集すると伝えに来たが、実はトールズを暗殺するための奸計であり、実行部隊としてアシェラッドの兵団を雇いけしかけた張本人。
知恵も周り、洞察力や観察眼も冴えたものを持っているが、圧倒的な権力や戦力には屈してしまう。
トルケルやスヴェン王など、与すべしと考えた相手に接近し、補佐を装って色々な悪巧みを実行してきた。

1019年4月の時点で、空席となったヨーム戦士団団長の座を争うバルト海での戦いにトルケルを誘い込むが、その過程でデンマークの王の拠点イェリングに偶然立ち寄ったトルフィンと再会する。この時初めて、トルフィンがトールズの子でありヨーム戦士団の団長として正当な血統である事を知る。
自分の孫を団長の座に推す事を画策していたフローキは、再びトールズの血統であるトルフィンに刺客を差し向ける。

ハーフダン

アイスランド一帯で「鉄鎖のハーフダン」として恐れられている男。黒の長髪。口髭、顎髭。目つきが鋭く、鉄の鎖を武器にしている。
トルフィン一家が暮らしていた村の隣村の長。規律や掟こそが最も優先すべき事だと信じ、冷徹に人や物事を見極める。
金を貸した相手から借金を回収出来なくなるとその相手の身柄を担保として拘束するが、それは借金を返して更生する機会を与える為でもあり、見た目や態度とは裏腹に、彼なりの哲学を理解する者には慕われている。
息子にシグルドがおり、レイフの義理の妹であるグズリーズと結婚させようとするが、このグズリーズに逃走される。この事態に怒るが、妻のアスレッドの「女は将棋の駒ではなく、意思を持っている」という発言に一本取られたという表情を見せる。
また、トルフィンのヴィンランド開拓計画に融資こそしなかったが、代わりにイッカクの角を渡し、これをうまく商って資金に換えろという無言のメッセージを送る。
トールズやレイフとも旧知の仲だったが、トールズとは馬が合わなかったと、トルフィンに語っている。
かつてまだトルフィンが幼かった頃に、ハーフダンの村から逃走した奴隷をトールズが匿った事があった。この時、掟で逃亡奴隷は罰を受けさせなければいけないというハーフダンの主張に対し、トールズは私財である家畜との交換を提言。結果、トールズはこの逃亡奴隷を助けた。「いい買い物だった」と強がるハーフダンであったが、利己的な面を持たないトールズに釈然としない部分も垣間見せている。

トルケル

北海最強を誇るヨーム戦士団首領シグヴァルディの弟。「のっぽのトルケル」と呼ばれる大男。金髪、口髭と顎髭。バンダナのようなものを額に巻いている。
丸太を落として船を破壊する、槍を遠投して数人の人間を貫く、拳一つで馬を殴り飛ばすなど、怪力無双甚だしい猛将。
とにかく戦が大好きなデーン人であり、戦場の前線で暴れまわる事を生きがいとしている。デンマークのイングランド侵攻において、ヨーム戦士団の与するデンマーク側の勢力に属していたが、戦う相手としてイングランド側の戦力では物足りなく、戦うならデンマークと戦った方が面白いからという理由で一時的にイングランド側に就いたほどだ。また、北欧神話における「まさに戦い、まさに死んだ者だけが、戦乙女(ヴァルキリー)に連れられ虹の橋(ビフレスト)を渡り、オーディーンの住まうヴァルハラに行く事を許される」という信仰を強く持っている。男の戦いの矜持として決闘の作法には厳しく、また、それを汚す者には容赦しない。その腕っぷしと豪快な性格から荒くれ者の部下達から慕われている。

かつて、トールズと同じくヨーム戦士団の大隊長を務めており、首領シグヴァルディの娘ヘルガを娶ったトールズは義理の息子にあたり、その子トルフィンは義理の孫にあたる。トールズに対しては唯一自分より強い男として認めており、またその精神性の高さにも一目置いていて、トールズを振り返る時には「本当の戦士」という概念についてこだわる面も。

トルフィンとは二度対決しており、一度目はロンドンにおけるデンマーク軍からの防衛戦。この時は単身飛び込んで来たトルフィンの意気に関心を寄せるも返り討ちにして逃がした。二度目はクヌートの身柄を巡っての追撃戦で、部下に裏切られ孤立したアシェラッドを救うために再び単身で駆け付けたトルフィンとの決闘となる。アシェラッドの機転と策により、剣に反射させた日光で目を眩まされた隙に唯一の弱点と言われていた顎先に蹴りを受け、膝を着いてしまう。俄かに決着となるかと思われたその場面では、クヌートの提言で決闘が中断された。これによりトルフィンがトルケルと渡り合ったとか、トルケルを負かしたという噂が広まったが、本人はこれを完全には認めていない。因みに、トルフィンとの一度目の戦闘では右手の薬指と小指を切断され、二度目の戦闘では左目を潰されているが、全く意に介していない様子。

クヌート

デンマークの第二王子。デンマーク王スヴェンの次男。少年期は金髪で長髪。この頃は特に女性と見間違われる程の中性的な美男子だったが、後に短髪で顎髭を生やし、精鍛な青年となる。

17歳の頃、同い年のトルフィンと出会う。幼少の頃から王宮内の覇権争いや政権争いの渦中に晒され、また、その立場故に父である王スヴェンから抑圧されて育ったため、無口で臆病な性格となっていた。世話役であるグンナルとは実の親子以上の絆で結ばれており、自分の意思を自分の言葉で話せる相手はこのグンナルしかいなかった。実質クヌートの戦死を厭わない命令であるデンマーク本隊と別れてのロンドン侵攻では大敗し、トルケルに身柄を拘束されるが、そこから救出したのがアシェラッドの兵団とトルフィンであった。この時クヌートの顔を初めて見たアシェラッドの部下ビョルンは「姫の間違いじゃねぇの?」と言う程で、態度も顔つきも、女々しいと言われてしまう。だが、無遠慮に暴言を吐くトルフィンに対しては何故か饒舌に反論するなど、心を開きかけていた場面も。

アシェラッドの計画で、クヌートを自立させるためにラグナルが暗殺される。ラグナルは自分の存在がクヌートを甘やかしている事を悟っても居た。ラグナルの死をなかなか受け入れられないクヌートではあったが、トルケルの追撃を受けた時に馬車から放り出されて気絶をし、その夢の中でラグナルの霊と対話する。そして目覚めた時に、地上には生きる人間には愛が存在せず、そのために争いを繰り返す世界には、自分が王となり楽土を建設しなければならないという使命を悟る。ここから、クヌートの覇道は動き出すのだった。

トルケルを自軍に帰順させ、アシェラッド、トルフィンを従えて父王スヴェンに挑戦する。目下暗殺の為に策を巡らすが、アシェラッドが出身地であるウェールズに拘っている事をスヴェンに察知されてしまい、「ウェールズ侵攻かクヌートの首か選べ」とアシェラッドは究極の二択を迫られる。この時にアシェラッドの命を懸けた機転で、アシェラッドの手により王スヴェンの首が撥ねられた。そして逆賊としてアシェラッドを討つ事で、クヌートはその場に居合わせた諸部族をはじめ、デンマークでの地位を一挙に確率したのだった。
復讐の機会を奪われて混乱したトルフィンはクヌートに剣を向けたが、顔に傷を負わせたところで取り押さえられる。本来は処罰を受けるところだったが、クヌートはトルフィンを解放した。ここで、一時トルフィンと別れる事となる。

兄王子ハラルドの毒殺や、その他、領地の接収や領主の懐柔など、イングランド統一或いは楽土建設に向けたクヌートの版図拡大は勢いを増してゆく。
そして自軍の兵力維持などのために画策した領地接収の的としてケティル農場が挙がり、ケティルの次男オルマルが利用が利用された。クヌート自らケティル農場に侵攻するが、ここで奴隷となっていたトルフィンと再会する。互いに違う方法で平和な国を作るのだと決意を交わし、久しぶりに会った友人の美しい夢に触れて、農場から手を退き、その他の接収計画も白紙に戻すクヌートであった。

覇道の為には手を汚すことを厭わないクヌートだが、無益な殺生は好まず、自軍にも略奪や追撃は控える様にと命令を出すなど、あくまで楽土建設が目的であり、無駄に命を散らし、無駄に人が傷つく事を嫌う面も。

スヴェン

イングランド制覇を目論むデンマークの王。クヌートの父。黒髪。長い黒髭。王冠を頂くその顔は疲れており、シミも多く、肥満。
デーン人支配領域(デーンロー)に滞在しヨーク(ヨルヴィーク)を拠点とする。
かつて自分の父が王だった時代に、その暴力に満ちた圧政に苦しめられる王国を憂いて父から王位を奪ったが、やがてその王冠の持つ権力の強さに魅入られてしまい、その力の保持と拡大の欲にかられて暴君となってしまった。
次代の王位継承については、地位や権力欲しさに動く家臣達がそれぞれの王子を旗頭に内紛を起こす事を予見し、これを避けるために、長男ハラルドよりも貧弱で臆病な次男クヌートを戦死させる方が自身の名も汚れまいと考え、ロンドン侵攻の折に本隊を退却させその僅か五分の一の兵力とクヌートのみを、トルケルが猛威を振るう戦場に残した。
ところがクヌートは戦死するどころか猛将トルケルを自軍の戦力として帰順させ、再びスヴェンの前に帰還する。そして智将アシェラッドの策でスヴェンの子殺しの企みが噂となって広まり一手後れをとってしまうが、アシェラッドがその首謀者である事を察知し、その弱みがウェールズである事を悟ったスヴェンは、ウェールズかクヌートか、どちらかを差し出せとアシェラッドに迫る。だが、追い詰められたアシェラッドはウェールズとクヌートの両方を生かす為に自ら謀反人の罪を被りスヴェンの首を撥ねたのだった。

落命したスヴェンだが、その後覇権を手に版図を広げるクヌートの前に度々幻となって現れては語りかける。
クヌートの楽土建設の道程での罪悪感や良心の呵責との葛藤を表すかの様な存在で、心の奥底にある迷いや怖れを言及してくる。

1dkamesama
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@1dkamesama

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