ヴィンランド・サガ(VINLAND SAGA)のネタバレ解説まとめ

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『ヴィンランド・サガ』とは、幸村誠による漫画。講談社発刊・月刊アフタヌーンにて連載された。主な舞台は11世紀初頭の北欧。主人公のトルフィンは、幼い頃に父・トールズをヴァイキングに殺され、復讐を果たすために戦士となる。やがてその道程での心の成長と共に、平和な場所『ヴィンランド』を求める旅へ。戦乱や紛争、暴力や罪、愛の中を生き抜く人間たちを描いたアクション・ヒューマンドラマ。

『ヴィンランド・サガ』の概要

『ヴィンランド・サガ』とは、幸村誠による漫画作品である。舞台は11世紀初頭の北欧が中心で、ヴァイキング、王国、宗教、奴隷、民草が登場する西洋の時代劇でありアクション・ヒューマンドラマ。
文化や登場する兵器や武器や防具や馬具、農工具(農耕具)、その他の衣食住に関しては細かな時代考証がなされているが、台詞回しや言葉遣いに関しては現代的なものが殆どであり、当時の人物の会話やそのやりとりは専門的な知識を必要とせずに読むことができる。

2005年4月から講談社発刊・週刊少年マガジンで連載開始。週刊連載に執筆のペースが合わず、2005年10月に同誌での連載を終了し、同年12月から月刊アフタヌーンにて月刊ペースで連載を再開。単行本は週刊少年マガジン版で1~2巻が発売されたが、版型や収録話数を改めた月刊アフタヌーン版として新たに1巻から再版された。
2009年に平成21年度・第13回文化メディア芸術祭マンガ部門大賞受賞。
2012年に平成24年度・第36回講談社漫画賞「一般部門」受賞。

西暦1002年、ヨーロッパの海や川は蛮族・ヴァイキングで溢れかえっており、人民の恐怖の対象となっていた。
そんな中、少年・トルフィンは父、母、姉と裕福ではないが幸せに暮らしていた。そんな家族の元へ北海最強の戦闘集団である『ヨーム戦士団』のフローキが現れる。実は父は以前ヨーム戦士団に所属しており、「戦鬼(トロル)」の名で恐れられた戦士だった。しかし、ある日突然、首領の娘と共に姿を消していた。フローキは断りもなく駆け落ちしたことを不問にする代わりに、イングランドと戦うように父親に告げた。父親はそれを了承し、数人の仲間と旅立った。戦いに憧れていたトルフィンは黙ってついて行くことにした。しかしそんな一行を待っていたのは、フローキからの依頼で父を殺さんとするアシェラッド兵団だった。父は人を殺さない誓いを守って素手で戦い、頭領以外を打ちのめす。しかしトルフィンが捕まってしまう。父は仲間に手を出さないことをアシェラッドに誓わせ、命を落とした。
約束どおり、一行は開放されたが、復讐に燃えるトルフィンはアシェラッド兵団に残るのだった。

『ヴィンランド・サガ』のあらすじ・ストーリー

プロローグ

11世紀初頭。ヨーロッパ各地の海や川で襲撃や略奪を繰り返す北海の蛮族・ヴァイキング。彼らの存在は、人々の平穏とは対極にあり、恐怖そのものであった。ある時は大国の領土拡大や領地接収の為の傭兵として。ある時は彼らの信じる北欧神話の神々の名に於いて。凄惨な営みは続いていた。

物語は、西ヨーロッパ・フランク王国領での領主同士の小競り合いに便乗する、あるヴァイキングの船団の姿から描かれる。
膠着した小競り合いは湖を背にした砦での攻防戦で、互いの兵を消耗しながら続いていた。その様を眺める船団の首領はアシェラッドという狡猾でツキのある腕利きの男。どちらに加勢すれば迅速でハイリターンな戦果を得られるか見極めたアシェラッドは、攻め側の領主に加勢する旨を伝えて渡りをつけて来いと、船団の少年に命令する。少年の名は、トルフィン。返事は、その見返りにアシェラッドとの決闘を求めるものだった。そして、守り側の大将首を獲れるなら、という条件で作戦は始まる。
怪しまれながらも攻め側の領主に渡りをつけ、船団に火矢で合図を送るトルフィン。翌日、一向に姿を見せない船団に業を煮やしながらも、攻め側の領主は自軍に突撃命令を出し続ける。守り側は一見不利だが、砦の背後の湖と、山々に囲まれた地形により地の利を得ていて、膠着は依然として続いていた。
しかし、戦局は突然に一変する。無数のヴァイキングの船が、山の中から走りこんで来た。驚愕する攻め側と守り側の領主軍の目を尻目に、船団は砦の背後の湖へと駆け抜けていく。北海の猛者たちは、自分たちの船を担いで山を越えて来たのだ。呼んで字の如く背水の陣だったはずの砦の背後の守りは手薄で、砦正面との挟撃に遭う形となった守り側。攻め側も一気に畳みかけろと意気を挙げる。辛うじて戦線を保とうとする守り側の指揮官だったが、そこへ2本の短剣を携えたトルフィンが切り込んでくる。一瞬にしてその首を撥ねたトルフィン。ためらいも無く、冷酷に迅速に、正確に。
攻め側の軍がようやく砦正面の大門をくぐる頃。守り側の兵は残っておらず、どころか、価値のある金品も全てもぬけの殻となっていた。攻め側の領主は怒鳴りちらし、ようやく気付いたヴァイキング達の狙いに地団太を踏む。しかし、湖から再び船を担いでの脱出は困難で、追撃も可能かと思われたが、そこはアシェラッドの計算積みの領域。湖から流れる川を通り、不可能だと思われた経路である滝の様な急流を下って海へと脱出していくのだった。
追随するも間に合わず、すっかり消沈してしまった領主にアシェラッドは言う。約束通り、戦果の取り分は半々で、勝利を貴殿に、財宝は我らに。

そして、命令通りに敵将の首を持ち帰ったトルフィン。報酬は、首領アシェラッドとの決闘。奇妙な関係ではあるが、トルフィンはこのアシェラッドを決闘で倒す為にアシェラッドの下で働いている。全ては、父トールズの復讐のためである。

トルフィンの過去

物語はプロローグから10年遡り、舞台は1002年のアイスランドへ。
父であるトールズと母ヘルガ、姉のユルヴァとの4人で暮らしていた幼少期のトルフィン。トールズの友人である船乗りレイフは様々な航海や冒険の話を子どもたちに聞かせていた。その話の中、緑豊かで平穏な場所「ヴィンランド」に胸をときめかせるトルフィン。
そこへ北海最強の軍団ヨーム戦士団のフローキが軍船を引き連れて現れる。かつてトールズは「戦鬼(トロル)」と呼ばれ、ヨーム戦士団の大隊長として恐れられていたが、ある日、戦士団の首領シグヴァルディの娘でありトールズの妻であるヘルガとともに姿を消していた。二人の間にユルヴァという娘が生まれ、戦から身を遠ざけるためであったが、フローキはトールズの敵前逃亡、戦線放棄の出奔を不問とする代わりに、イングランドとの戦に参加せよというシグヴァルディの命令を伝える。表向きは戦闘中に海に落ちて戦死していたとされていたが、実情を知られ、追われていたのだった。
島民が戦に巻き込まれる事と引き換えに、その命令に応じたトールズは、数人の若者と友人であるレイフとともに、軍団との合流地点であるヨムスボルグへの海路の途中、中継地点であるフェロー諸島へ向かう。戦とは無縁だった島民や若者達は、フローキの口上で義勇軍を募ると聞かされ、俄かに湧きたっていたが、それはいかに凄惨なものであるかを誰よりも知るトールズは、自分以外の乗船者をフェロー諸島で降ろし、一人だけで戦地へと行くつもりだった。
一抹の不安を抱えて出港したが、なんと、息子であるトルフィンが、樽の中に姿を隠して乗り込んでいた。初めての船旅に笑顔を見せるトルフィンだが、守る者が増え、更なる不安を抱えて船は進む。
トールズの怪力と若者たちの必死の櫂漕ぎで、フェロー諸島の入り江へと到着する一行。行商も営み、航海に慣れているレイフは、何度も立ち寄っている入り江の様子がおかしいと違和感を覚えそれを口にすると同時に、断崖に囲まれている地形に警戒するトールズは、何者かが自分たちを包囲している事に気付く。
実は、トールズを暗殺するための、フローキによる奸計であった。そしてその実行部隊は、当時まだ何の面識もなかったアシェラッド船団。逃げ場を失ったトルフィンとトールズ一行。レイフが感じた違和感は、入り江に在ったはずの家屋が減っていた事。静かすぎた事。悪い予感は的中し、破壊された家屋の木材や家財道具が断崖から投げ込まれる。頭上からの落下物を間一髪交わしたが、退路を断たれて戦闘を余儀なくされてしまう。相手が手練れである事を瞬時に察知したトールズは自分一人で戦う事を心に決めていた。トルフィンに小さな短剣の一振りを渡し、身を守るためだけに使えと告げると、単身、大立ち回りを展開。あっという間に敵の戦力を奪っていく。しかし、脅威なのは、トールズはすべての相手を素手で倒している事だ。それ程の腕前。感心するアシェラッドだが、その腹心であるビョルンは、狂戦士のキノコという興奮・強壮作用のあるキノコを食べて、怪力を振るいながらトールズに襲い掛かる。しかし、それも冷静で正確な打撃で倒してしまう。ここまでで敵戦力のおよそ半分を削ったトールズは、「去れ」と口上を挙げる。断崖の上で潜む弓兵は、アシェラッドの合図を待っていると気付いていたトールズ。簡単に引き下がる相手ではないともよく解っていた。敵兵の中で首領がアシェラッドである事を見抜いたトールズは、一対一の決闘を申し込む。少しの会話の中で、自分の出自をアシェラッドが知っていて、フローキの策だと知りながら、トールズは剣を手に、無造作に間合いを詰めていく。はじめに仕掛けたのはアシェラッド。一瞬の隙をついた不意打ちの一手だったが、寸でに身を躱したトールズの傷は浅い。この時点で、お互いの力量が脅威であると認識する。力強い剣で追い込んでいくトールズ。だが、互いの剣の耐久力を意識して大降りになったアシェラッドの油断を誘う熟練の戦術でもあった。自らの剣を折り、油断したアシェラッドの剣を奪ったトールズは、遂にアシェラッドの首に切っ先を向けるが、勝敗は決していて殺す必要はない、と、『本当の戦士』としての在り方を主張する。『本当の戦士には剣など要らぬ』と、自らの未熟さを語るほどに。
寸毫だが、アシェラッドの内心は、確かにこのトールズに興味を抱いていたが、気絶から目を覚ましたビョルンが現状を察して、トルフィンを人質にとってしまう。俺たちは戦闘の作法を守るわけがない。そう冗談めいて形勢を逆転させたアシェラッドに、トールズは自分の命と引き換えに、トルフィンやレイフ、同乗した若者達の安全を約束させ、剣を捨てて、無数の矢に射抜かれて死んでしまう。今際の言葉で、アシェラッドに戦士の約束を違えるなと。レイフに、自らの首をヨーム船団の首領に届けて島民に戦火が及ばないように計らって欲しいと頼み、立ち往生した。

そして目の前で父を失ったトルフィンは、そのまま単身でアシェラッドの船に。父の復讐を誓う彼の言葉は、屈強な猛者達の固唾を吞ませるに充分な迫力に満ちていた。ほっとけ、どうせすぐに死ぬ。そう口にしたアシェラッドだが、ここからアシェラッド船団と幼き復讐者トルフィンとの、ヴァイキングとしての日々が描かれていく。

アシェラッド船団との行軍、猛将トルケルとの対峙

西暦1003年以降、デンマーク・ヴァイキングによるイングランド攻略は激化の一途を辿る。9世紀初頭に始まったこのイングランド攻略は300年を経るうちにアングロサクソン王朝の打倒を目的とした征服戦争の様相を呈するようになり、豊かで広大なイングランドは、常にヴァイキング諸部族のあこがれであった。

そして11世紀に至り、デンマークの王・スヴェンの時代に佳境へとさしかかる。

1013年8月。イングランドの要衝ロンドン攻略のため、デンマーク側の兵力としてアシェラッドの船団はヨーム戦士団と共に参戦していた。未だ一騎打ちでアシェラッドに勝てずにいるトルフィンもまた、尖兵の一人として行軍している。
ロンドンに流れるテムズ川に、要塞の様に頑強な橋が架かっており、デンマーク勢力として終結した数々の船団、ヴァイキング諸部族は足止めを喰っていた。トルフィンを含むアシェラッドの一行もまた同じであり、要塞化した橋の堅固な護りに加え、この橋を仕切っている敵将は、「のっぽのトルケル」と呼ばれる猛将であった。トルケルは、かつて、デンマーク側の勢力であるヨーム戦士団の将であり、首領・シグヴァルディの弟である。イングランド側の戦力が乏しく、戦好きの彼の性分から、戦って面白い相手はデンマーク側だろうという発想で寝返っていた。巨漢で怪力で戦好きの、桁違いの戦力を有するトルケルを落とさない限り、テムズ川侵攻、即ちロンドン攻略は困難を極めるといった状況だった。旧知の仲であるフローキの説得も虚しく、戦闘でトルケルを負かせる事を余儀なくされるが、アシェラッドとの決闘を褒美にという条件で、トルフィンがトルケルに挑戦する事となる。
短剣2本で素早く立ち回るトルフィンは、大振りな攻撃を得意とするトルケルに対して善戦するも、結局片腕を掴まれて体の自由を奪われ力任せの猛攻を受ける。繊維を消失しているかと思われたが、わずかな隙をついて掴んでいたトルケルの右手の小指と薬指を切断し、間合いを改めるトルフィン。だが、既に全身はボロボロ。トルケルは、この小さな戦士の闘志に敬意を表しつつも、何者であるかと問いかける。「トールズの子」でると答えると身を翻して川に落ち延びるトルフィンの背中に、必ず決着をつけようと思うがままの台詞を吐くトルケルであった。

そして、いよいよロンドン攻略が困難な上に自軍の消耗も激しく、また、他の地域への侵攻を早めたい事を鑑みたデンマーク王・スヴェンは、全軍の5分の1にあたる4千の兵のみを残し、本隊を移動させよと命令を出す。全軍でも敵わなかったトルケルの撃破及びロンドン攻略に対してあまりに戦果の期待が乏しいこの4千の兵の指揮を任される事となったのは、当時まだあどけなさの残る17歳のデンマーク第二王子・クヌートであった。かの王子が戦の指揮を執るには脆弱な性分であると知る、クヌートの世話役でもあったラグナルという男が、同時に近衛兼補佐役を任命する事なる。

時は少し流れ、同年11月。この頃既にデンマーク側の本隊は北へ撤退をしていたが、トルフィンを含むアシェラッド一行はロンドンから西へ150㎞のバース近郊の農村にて襲撃・略奪の最中だった。本隊に合流しなかった事を疑問に思う部下も居たが、この時はまだアシェラッドの真意は誰にも明かされていない。
そこへ、クヌート隊から本隊へと馬を走らせる伝令の兵が一人通りかかった。戦況を把握するために話を聞いてみると、猛将トルケルがクヌート隊を撃破し、本隊を追ってすぐそばまで来ている事を知らせる。そして、トルケルの率いる500程の兵の戦力が凄まじい事と、クヌートが捕虜として捕まっている事も明かされると、おもむろに伝令兵の首を撥ねるアシェラッド。一計、何かを画策している様だった。

クヌート王子との出会い

クヌートの救出を自隊のみで敢行する事を決めたアシェラッドは、マールバラ近郊でデンマーク側の部隊と戦闘中のトルケル軍に接近し、火計をけしかけて混乱に乗じてクヌート、近衛兼補佐役のラグナル、神父でありクヌートの教師であるヴィリバルドの身柄確保に成功するが、トルケル本人にトルフィンが再会してしまう。迫り来る火の勢いに剣を交えこそしなかったが、少しの会話の中で、トルフィンの父がトーリルズでありその妻がヘルガである事、トールズがヨーム戦士団にあって比類なき強さを持ち唯一自分より強い男であり、「本当の戦士」である事をトルケルは告げるのであった。
いよいよ火の手が迫り、クヌート以下三名を連れて戦場を離脱するアシェラッド一行。そのまま、クヌートの近衛として行動を共にする事となる。そしてアシェラッドは、デンマーク王国内での地位を狙う為に第2王子であるクヌートを担ぎ上げて王座に就かせようという腹積もりであった。

トルケルの追撃から逃れるためにイングランドを更に西へと行軍するも、斥候の存在に気付き、位置を捕捉されている事に気付いたアシェラッドは、セヴァーン川の対岸にあるウェールズに書簡を出し、援軍を要請。実はアシェラッドは純粋なデンマーク人ではなく、険しい山岳地帯であるウェールズの出身であり、母親は伝説的な英雄アルトリウス公(アーサー王伝説のモデルになったとされる人物)の血をひいていた。イングランドの中部でそのような援軍が頼めるものかと事情を知らない部下達の不安をよそに、ウェールズの小国モルガンクーグからの援軍は軍船と共に現れ、渡河の手助けを。陸路での追撃のために船を持たないトルケル軍をここでひと時離す事に成功する。対岸に着いたアシェラッド一行に、モルガンクーグの将軍グラティアヌスはクヌート王子の逃避行に協力する代わりにウェールズのへの不可侵、ひいてはイングランド統一後の一切の干渉を強いらない事を約束させよと迫って来た。重臣達の画策や目を背けたくなる様な同族同士の地位の奪い合い、命の奪い合いを見て来たクヌートは、こういう場面で自身の言葉で何かを主張する事を避けて生きて来た。世話役を続けてきたラグナルに頼らねば、殆ど言葉を口に出来ない程であった。
陸路の行軍は続き、隣国のブリケイニオグを通るアシェラッド一行。政治的な建前を互いに保つために、ここでもアシェラッドの血筋や、デンマークの王子であるクヌートに国政の取引を持ち掛けられる会話がなされた。クヌートはやはり自らの言葉では何の主張も出来ず、同い年であるトルフィンに「ダッセェ」とコメントされてしまう始末。代わりにアシェラッドがグラティアヌスと共にブリケイニオグの使者と密談する。それはアシェラッドの、クヌートを旗印にデンマークでの権力を手に入れウェールズに不可侵の采配を約束する、という計画を打ち明けるものであった。そして結局、ブリケイニオグを通過し、用意された書簡に署名するクヌート。

更に続く行軍。ウェールズを北上し、デーンローへの帰還を目指すアシェラッドの一団であったが、吹雪や降雪の厳しい順路では消耗も激しい上に迅速な行軍が難しく、進路を東へとり、マーシア伯領を通る事になる。宿営の為に襲撃したとある村で、行軍の足跡がトルケル軍に察知される事を懸念し村民を皆殺しにするはずが、偶然にも村の娘が一人、この襲撃から逃れてしまう。翌朝、行き倒れとなったこの娘を発見され、イングランド軍にアシェラッド一行の位置を知られてしまう事に。
俄かに戦闘となるが、この機会にと、クヌートの甘えを断ち切り、王者への道を歩ませるために、アシェラッドは近衛兼補佐役であり世話役でもあったラグナルを暗殺する。突然のラグナルの死に動揺し混乱し、その事実を受け入れられないクヌート。
だがこのタイミングでトルケルの軍の接近を知るアシェラッド一行。兵団の部下達はアシェラッドの魂胆も勿論知らず、行先不安なままの強行軍に不満や疑念を抱いているも者も少なくなかった。トルケルやトルケルの率いる軍勢の強さを恐れ、その大半がトルケル軍に降伏し、命乞いをしようと寝返る。その為に真っ先に狙われたのがクヌートの身柄確保であり、また、アシェラッドの足止めであった。
この動きを察知したアシェラッドは指示を出し、アシェラッドの右腕であり一番付き合いの長い部下ビョルンとトルフィンはクヌートとヴィリバルドを連れて馬車で一旦離脱を図るも、馬を攻撃され馬車ごと転倒。トルフィン達と離れたアシェラッドは孤立し、寝返った部下たちに取り囲まれる。
しかし、ついに到着したトルケルは、この寝返った部下たちの降伏を受け入れる事無く、戦に於いて戦士が戦いを放棄する事を情けないと嘆きながら惨殺してゆく。
一方、馬車の転倒で気絶したクヌートは夢の中でラグナルと対話する。この対話により、自らが進むべき道を見出したクヌートは王者の気質を覚醒させる。自らを守るために狂戦士のキノコを口にして錯乱しながら暴れるビョルンを抱きしめ、前後不覚の意識を取り戻させる。また、自分を包囲していた敵兵にも争いをやめよ、と命ずると、トルケルの元へ案内しろと続けるのであった。
時同じくして孤立したアシェラッドの危機を察知したトルフィンは敵の馬を奪い、トルケルと対峙するアシェラッドの元へと踵を返していた。そしてアシェラッドの首とクヌートの身柄を賭けて決闘する事に。拳で馬をも殴り飛ばす怪力のトルケルに、アシェラッドの奇策で対抗。アバラと右腕を折るも作戦は成功し、トルケルに膝を着かせ、片目を潰すところまで追い込んだが、そこへ別人の様な風格を湛えたクヌートが現れる。この決闘は無意味であり、真に戦うべき相手は父王・スヴェンであると諭し、決闘を中断させ、敵兵たちを帰順させる。

こうして智将アシェラッド、猛将トルケルとその軍を従えてデンマーク軍の本拠地へ帰還するのであった。

デンマークの王スヴェンと王子クヌート、そしてアシェラッドとトルフィンの別れ

1014年1月、デンマーク軍本拠地ゲインズバラにて。生還すら不可能と見込まれていたクヌートが、敵対していたはずのトルケルを従えて帰還する。
クヌートはトルケルに、諸部族との交流を持たせるために族長達を誘って宴会を開けと命令し、自らはアシェラッドとトルフィンを共に父王スヴェンに謁見する。会話の上辺では我が子の帰還を喜ぶスヴェンと、それに感謝する姿を演じるクヌートだが、腹の中では互いに命を狙っている事を察知の上でのやりとりであった。トルフィンは王の間に伏兵の気配を感知し、また、アシェラッドも警戒を悟られない様に振る舞っていたが、王の何たるかを語るスヴェンとクヌートは王冠を譲る気はないというものと、我こそは王冠にふさわしいのだという主張を互いに交差させる。そして伏兵が取り囲み、一触即発の状態でスヴェンはクヌートに郊外の領地を与える代わりに王冠を諦めろと持ち掛け、拒否するならばこの場で死ねと告げる。だがこの場面でアシェラッドが口を開く。クヌートが難攻不落のロンドンから猛将トルケルを奪い取り、自軍の戦力として帰還した。ロンドン侵攻の多大な犠牲の上でこの功績は第一級の戦果であり、これを成したクヌートを罰する様な事があれば臣下や諸部族に対して動揺を与える事になると弁護するものだった。この機転に富む弁に、スヴェンは伏兵の包囲を解かせるが、同時に、アシェラッドに対して警戒心を抱く。こうしてこの場での謁見は幕を引く事となった。

あくる日。ゲインズバラに無事に着けた時の褒美としてアシェラッドに決闘を挑むトルフィン。だが、先約が有ると言うアシェラッド。先の対トルケル軍の戦いの折に深手を負っていたビョルンが名誉と友情を賭けてアシェラッドとの決闘を約束していた。自分は友達だと思っていると、今際の言葉を残して決闘の末に死んでしまうビョルン。直後にトルフィンの相手をするアシェラッドであったが、これまでの飄々とした態度とは一変していて、徹底的にトルフィンを痛めつける。力量や技量には元々かなり差もあったわけだが、戦いの中で冷静さを失うトルフィンに、殺したい相手を確実に仕留める方法として、かつて自分が父親を殺した経緯を語る。自らが、ヴァイキングに攫われ奴隷として扱われた母親の子であり、母や自分をないがしろにしたそのヴァイキングを殺すための冷血で狡猾な日々。黙して聞くしかないトルフィンであった。

そして5日後。1014年2月上旬。ゲインズバラ北西に位置するノーザンブリア地方・ヨーク。豊かさに加えて戦略・交通上の重要性から9世紀以来、この地に移住するヴァイキングは多く、10世紀前後にはノルウェー人の王が一帯を独立支配をする影響力を持つ様にもなり、その後短期間のイングランド帰属の周期を経て、1014年現在にはスヴェン率いるデンマーク軍の支配下にあった。
ここで商われているものはたくさんあったが、「奴隷市」も例外ではなかった。そこに目を付けた、トルフィンの亡き父トールズの友人レイフは、かつてはぐれてしまったトルフィンが奴隷として商われているのではと踏んで奴隷商に熱心な聞き込みをしていた。
時を同じくして、ヨークの街に流れる川に要人を乗せた船が通ると役人がふれて回る。クヌートを乗せた船だ。どうやら民草の前でクヌート王子のお披露目といったような趣向のようだが、岸辺から矢が放たれ、クヌートの影武者が命を落とす事となる。実はこれらは全てアシェラッドの計略で、クヌート暗殺を王であり父であるスヴェン側が企んでいるという噂を広めるための自作自演の策であった。
実行犯役として雇われた男を賊として追い詰めて瞬殺するトルフィン。その場面に偶然居合わせたレイフ。つかの間の再会であったが、故郷へ帰って来いと言うレイフに対して、トルフィンは父の仇を獲るまではアシェラッドの元を、即ち戦の中を、ヴァイキングの戦士としての日々を離れないと語りその場を去ってしまう。
アシェラッドの策は効果を見せ、ヨークの町中にスヴェンがクヌートの暗殺を画策しているという形で噂となり広まっていた。第一王子であるハラルドとの跡目争いは臣下共々の知るところであり、それ故対外的に表面化させまいと振る舞うスヴェン。そこへきてこの状況下で、翌日の再びの謁見でクヌートを僻地へ送ったり、トルケルを遠ざけたりするような命令は出せまいという算段であった。クヌートを含めてトルケルにも感心される智将ぶりを発揮し、かつてクヌートの世話役であったラグナルの弟グンナルも表面上は話を合わせて協力的な態度をとるが、スヴェンの手の者である事を察知した上で敢えて内通させようと泳がせる程の計算を持つアシェラッドであった。
だが、謁見の当日。アシェラッドの智将ぶりに警戒し、自作自演の首謀者でもあると勘付いたスヴェンはその素性を調べ上げていた。諸部族達も集まり新領割譲の沙汰を知らせる場でもあるこの機会に、クヌートの功績を讃えつつ、アシェラッドの読み通りに、豊かな土地マーシアを領地として与えると告げるスヴェン。だが、ここからスヴェンの策が始まる。ウェールズを侵略せよと全軍に命を出すものであった。これは完全にアシェラッドの出自を知った上での恐喝であり、動揺を悟られぬ様に振る舞うアシェラッドを他所に、ウェールズ進軍の言葉に僅かに顔色を変えた事を見逃さなかったフローキの耳打ちを機に、スヴェンはたたみかける。打ち合わせでは当面は水面下で王暗殺の為の準備を進める為に表立った言動は控えるという方針で、クヌートにさえ釘を刺していたアシェラッドはここで不要な言葉を重ねてしまい、ウェールズこそが弱みであると悟られてしまう。そしてスヴェンはついにウェールズかクヌートか選べと詰めてくる。クヌートの首さえ渡せばウェールズは見逃すと。黙すアシェラッドに、ウェールズなど奴隷の産地でしかないと続けたが、ここで事態は一変する。

自分の真の名がルキウス・アルトリウス・カストゥスであり、その血統が高潔なものであると告げると、アシェラッドはスヴェンの首を撥ねてしまう。
呆然と立ち尽くすクヌートに、アシェラッドは目配せをする。アシェラッドの真意を知ったクヌートは、乱心者としてアシェラッドを包囲し切り捨てよと声を上げる。ウェールズとクヌートの両方を救う唯一の手立てが乱心者を演じて王を屠る事であり、また、王殺しの罪を一身に背負い逆賊としてクヌートに討たれれば今後のクヌートの立場も強固に出来るという命を懸けた苦肉の策であった。
斬りかかる兵たちを次々に倒すアシェラッド。建物の外で待機していたトルフィンは騒ぎに気が付き中を覗いてみると、アシェラッドが取り囲まれている。そして押し寄せてすし詰めとなる兵をかき分けてアシェラッドの救出を試みるが、来るなと叫ぶアシェラッド。何が起きているのか事態を把握出来ないでいるトルフィンの目の前で、ついにクヌート自らの剣によりアシェラッドは絶命してしまう。決闘で仇を打つ事に全てを懸けて生きて来たトルフィンに告げるアシェラッドの最期の言葉は、トールズの行った世界の先へ、子であるお前が行けというものであった。「それがお前の本当の闘いだ。本当の戦士になれ。」
錯乱したトルフィンはクヌートに斬りかかるが、顔に切り傷を残す程度で取り押さえられてしまう。

王殺しの逆賊であるアシェラッドを自らの手で仕留めたクヌートは、転がる王冠を被り、全軍の指揮及びイングランドの統一は自分が代行すると諸侯達に宣言するのであった。

戦士から奴隷となったトルフィン

クヌートに剣を向けた罪でデンマーク軍を追放されたトルフィン。アシェラッドへの復讐も果たせずに生きる目的を失っていた彼は、奴隷の身分に落ちてデンマークはユトランド半島の南部にある農場で働いていた。ここに広大な土地を有するケティルという富豪によりその身を買われていたのであった。
1015年6月下旬。そこへ新たに奴隷として買われてきたエイナルという男がやって来る。
ケティルはトルフィンとエイナルに、森林の開墾をしその後の収穫物を正規の値段で買い取り、その価格が二人の奴隷としての価格を上回れば自由の身とする事を語る。意志希薄なトルフィンに対し、この待遇に期待を持つエイナルは意気を挙げ、早速森林の開墾に取り掛かるのであった。元は奴隷であったが、ケティルの元で自らの身分を買い戻した奉公人と呼ばれる者の中にパテールという誠実な男も居て、彼の手助けも受けながら、過酷な労働の中で少しずつ開墾は進んでいく。中には意地の悪い奉公人も居て、その嫌がらせを受けたりもするが、トルフィンとエイナルは努力を辞めなかった。
エイナルは自分の村はイングランドの兵に焼かれ、その後デンマークの兵にも襲われたと語る。トルフィンは黙してその話を聞くだけだった。戦士は人の皮を被ったケダモノだというエイナルの言葉に、自らを重ねていた。
トルフィンは悪夢に魘される夜を過ごしていた。だが、起きてみるとどんな悪夢を見ていたのか覚えていない。生きていく意味。生きてきた意味。その両方を見失っていたトルフィン。
ケティルの農場には盗賊などに対して目を光らせる用心棒として「客人」と呼ばれる戦士達が雇われていた。ケティルの次男であるオルマルは、その未熟さ故に誰にも自分を認めてもらえない事を嘆いていたが、そこへ「客人」の一人でキツネと呼ばれる男が「一人前になるには人を殺す経験が必要だ」とそそのかす。怖気づくオルマルであったが、その白羽の矢は奴隷であるトルフィンとエイナルに向けられてしまう。トルフィンはキツネの脅しにも怯まず、殺すなら自分にしてくれと告げる。生きていて何になるのかと。今日まで生きてきて何もいい事は無かったと。逆上するキツネにジワジワと斬りつけられていくトルフィン。だがその場に、蛇と呼ばれる「客人」の頭目が現れ、キツネにやめろと一括。ことの次第を知った蛇は、おもむろに剣を一閃走らせる。トルフィンは無意識の内にこれを躱し、蛇の頭部に目掛けて蹴りを放ち、一瞬で間合いを離す。この予想以上の反応に感心しながらも、蛇は「お前の体は生きたいと言っている」とトルフィンに告げる。トルフィンは、無意識だったが、確かに戦いの構えをとっていた。「俺は、生きたいのか?生きて、どうするんだ?」誰よりもこの事実に驚いていたのは、トルフィン本人であった。
トルフィンが元は戦士だった事を知るエイナルであったが、悪夢に魘される度にトルフィンを起こしてやっていた。何故優しくしてくれるのかとトルフィンは問いかけるが、自分たちは友達だとエイナルは返す。こうして二人は少しずつ絆を深めていくのだった。

続く森林の開墾作業の中で粗方樹木は切り倒せたが、残った切り株と土に張った根を掘り起こさなければ整地は出来ない。馬の力で引けば作業は大幅に進むのだが、またも奉公人達の意地悪で馬を貸してもらえない二人。そこで農場の外れの方で一人暮らしをしていたスヴェルケルという老人に偶然にも出会う。この老人は実はケティルの父親で、大旦那と呼ばれる人物だった。農場の経営拡大にやっきになるケティルとの見解の相違から離れて暮らしているのだが、小さな畑を持ち、時には魚なども獲って自立した生活を送っていた。スヴェルケルは二人に、馬を貸す代わりに自分の畑仕事や巻き割りなどの手伝いをしろと提案する。この時点ではまだ素性を知らないこの老人にやや不信感を抱くエイナルであったが、背に腹は代えられず、この話を呑む事に。そして幾らかの下働きの見返りとして、約束通りに馬を借りる事が出来た。だが、トルフィンは殆ど作物を育てないアイスランドの出身で、その上幼くして戦乱の中に身を投じたため、整地した土に何の種を蒔くのかも知らなかった。エイナルはこの点に関しては以前の暮らしで十分に詳しいため、エイナルの指導の下、畑を耕し、麦の種を蒔き、そしてその麦が芽を出しはじめていった。自分達の手で育つ作物。その過程で深まっていくエイナルとの絆やスヴェルケルの助けを受けて、トルフィンは徐々に生きる事の意味を見出しつつあった。

1015年11月。トルフィンの顔は戦士の顔ではなく、虚無感に苛まれる奴隷の顔でもなくなっていた。
だが、順調な作業を妬んだ奉公人達によって育っていた麦畑を荒らされてしまう。パテールに相談し、調べが終わるまでは大人しくしていなさいと助言を貰う。奴隷(スレール)は自由民(ヤルル)より立場が弱く、正式に意義を申し立てないと逆に罰せられてしまう事をわが身を以てよく知っていたパテールは、二人に挫けず頑張れとを励ますのだが、やり場の無い怒りを抑えるのに必死なエイナルであった。同じく奴隷としてケティルに身柄を買われているアルネイズという女性とも親しくなっていたが、アルネイズは自らの身を買い戻せる手立ての無い条件で働いている。この事もあり、エイナルは、つくづく奴隷の身分の低さや、そこに付け込まれる生き辛さを嘆いてもいたのだ。
パテールとの相談の帰り道、件の奉公人達とかち合ってしまうトルフィンとエイナル。トルフィンはエイナルの怒りを知っているため、奉公人達に突っかかるなと制するが、エイナルはお前たちが犯人だろと問い詰める。奉公人達は白を切るどころか、二人に対してどうせ奴隷の作ったものなんか臭くて食えたもんじゃないと暴言を吐いた。この言葉に我慢の限界を超えてしまったエイナルが拳を振り上げるのだが、意外にもその拳より早く奉公人を殴り飛ばしたのはトルフィンであった。そして俄かに殴り合いの喧嘩となるが、自身の行動に動揺したトルフィンは不意を突かれて後頭部を強打されて失神してしまう。

失神したトルフィンは、夢をみる。
故郷アイスランドの静かな暮らし。だが、父トールズは、その剣で誰を殺したと問いかける。トルフィンは血まみれの剣を握り、かつての戦士だった頃の姿に戻っていた。教えなければいけなかった事がたくさんあり、すまなかったと語るトールズ。今のお前にならわかるだろうと。お前に敵などいない。誰にも敵などいない。傷つけてよい者など、どこにもいない。いなかったのだと。足元から這い出る亡者の手に捕まり、地の底へと引きずり込まれるトルフィン。そこには亡者たちが笑いながら互いを斬り付けあい、殺しあう戦場の様な風景が広がっていた。そこには狂戦士となったビョルンの姿もあり、そして、アシェラッドの姿もあった。アシェラッドは冷静に語り掛ける。まだこんなところで引っかかっているのかと。ここはあの世では無く現世そのもので、自分以外は全員敵という究極の戦争状態にあり、勝ちも負けもなく、終わりのない場所である。かつてはトルフィンもここの住人だったが、復讐の機会を逃して虚ろになったために抜け出すことが出来た、と続けるアシェラッド。だが、虚ろになった自分の中に何があるのかと問われて、まだ「戦士」しかなく成長のない自分を嘆くトルフィンの足元に山となった亡者達が迫ってくる。その者達は、これまでに自分が殺めた人間の無念であり怨念である。しかしトルフィンは涙しながら、その者達が誰であったかも覚えていない自分の罪を思い知る。どうする事も出来ないトルフィンを、アシェラッドが一括する。そいつらをぶら下げたまま、登れと。それがお前の戦いだ。お前が殺したそいつらを連れて、本当の戦いを戦え。本当の戦士になれ、と。その言葉に、一心不乱に崖を登るトルフィン。

全身全霊を懸けて地割れの崖を登りきると、そこは奉公人達と喧嘩していたあぜ道だった。目が覚めたトルフィンは、傍で倒れているエイナルを見つける。喧嘩には勝ったが、自分達はどん底だとぼやくエイナル。トルフィンは夢の中での出来事を胸に、涙をしながらエイナルに語りかける。自分がこれまで暴力の中で生きて来た人間で、今日もまた暴力に頼ってしまったが、暴力では何も解決しない。金輪際暴力と決別し、生まれかわって罪を償い、本当の戦いを戦う決意を告げるものだった。よくわかったと返すエイナル。二人はボロボロの体を互いに支え合いながら帰路に就くのであった。
翌日、パテールの根気強い調べにより奉公人の衣服の一部がトルフィン達の荒らされた畑から発見され、大事になる事を嫌うケティルの計らいで、トルフィンとエイナルはお咎め無しとなった。再び希望を持ち、畑仕事により一層の身を入れるトルフィンとエイナルであった。

動き出すクヌートの版図と、崩壊していくケティル農場

3年ほど経ち、1018年9月。順調に収穫を挙げ、ついに任された土地の開墾も完成に近付いていた。次の収穫を待たずに、最後に開墾した土地への種蒔きを終えれば二人は自由の身だと告げるケティル。大喜びのトルフィンとエイナルであった。

同年10月。デンマークはユトランド半島のイェリングにて。クヌートは兄王子ハラルドの居館に駐留していた。
そこへハラルドが病に伏せていると聞きつけたケティルは、見舞いの品々を以て謁見の為に訪れる。だが、この時既に、クヌートの奸計によりハラルドはこの世を去っていた。
思いがけずこのイェリングでトールギルという男と再会するケティル。トールギルはケティルの長男でありクヌートの従士であった。ことの次第を聞き出すと、ケティルは自らの農場や財産を守るために、ハラルドの代わりの後ろ盾としてクヌートに口を利いてもらえる様に計らってくれとトールギルに頼み込む。貨物船3隻分に及ぶ土産の品々を見たトールギルはこれだけ有れば十分だと快諾する。
時を同じくしてケティルが連れて来た次男オルマルは、市場でひと騒ぎしていた。道端でぶつかって、どちらからぶつかっただの、そのせいで売り物が汚れて台無しになっただのという諍いで、商人の子である青年が台無しになった売り物の弁償を迫ると、オルマルはこれを当たり屋の詐欺だと侮辱する。ついに拳を挙げる青年だが、剣を抜いて更に突っかかるオルマル。そこへケティルが現れ、オルマルを叱りつけ、青年に詫びとして金を渡すが、そこへもう一人の男が現れる。ケティルに釣りを渡さない青年を「ギョロ目」と呼びりつけるこの男は、なんとトールズの友人であり、トルフィンを探し続けているレイフであった。このひょんな出会いから、互いに倅には手を焼いている事などを話して意気投合するレイフとケティル。「ギョロ目」は本当の名をトルフィンであると語る。勿論、レイフが奴隷市の中からトルフィンを探し出す過程で出会った別人なわけだが、そのまま養子となったのだ。ケティルはその名を聞いて、自分の経営する農場にも同じ名前の奴隷が居る事を告げると、レイフはそれが探していたトルフィン本人であるかを確かめる為に、ケティル一行とともにユトランド南部の農場へ行く事を決意する。

だが、翌日。トールギルの計らいでクヌートへの謁見を実現させたケティルであったが、同行したオルマルがクヌートの従士になりたいと勝手な進言をしてしまう。自軍の兵力維持のための財政確保に領地の接収を画策していたクヌートは、腹心であるウルフという男とともに、このオルマルを利用してケティルの豊かな農場を手に入れようと一計を用いるのであった。
従士に加える為に、豚を剣で両断するという試験を課すが、ウルフの見込み通りにこれを通過出来ないオルマル。野蛮で気の小さい、プライドだけは一丁前の若者であるオルマルをからかい、諍いを起こさせ刃傷沙汰にして、その罪を償わせる形としてケティルの農場を接収するという計画で、事はその通りになってしまう。狙い通りに動くオルマルだったが、偶然居合わせたトールギルは、オルマルの腕前で兵一人に勝つなんてあり得ないと違和感を察知し、これは嵌められたのだと悟ると、オルマルを取り囲む兵を瞬殺。これにより、ケティル一家は反逆者の汚名のもと、クヌートの軍に追われる身となってしまった。
この一変した事態に慌てふためくケティルだが、もともと戦好きで血の気の多い猛将であるトールギルは既にクヌートの軍勢を農場で迎え撃つ事を決めていた。
どうにかレイフの船でイェリングを脱出したケティル一行。だが、到着した農場ではもうひと騒動起こっていた。
近隣の村で賞金のついた凄腕の逃亡奴隷が目撃されたという噂があり、農場の用心棒「客人」のキツネ、トカゲ、アナグマはそれと思しき人物を発見していた。無謀にも三人で挑むがこれに失敗。逃亡奴隷の名はガルザル。同じく奴隷となって生き別れた妻アルネイズを探していたのだった。「客人」の一人トカゲを殺害し、スヴェルケルの家で過ごしていたトルフィン、エイナル、蛇、そしてアルネイズの元へと駆け付けて来た。ガルザルはアルネイズとともに農場を去ろうと持ち掛けるが、蛇はこれを制する。その手を取ればお前を斬るとアルネイズに迫ったのだ。対決する蛇とガルザルだが、手負いである事を察知した蛇は、ガルザルの猛攻の一瞬の隙を突いて捕縛に成功する。
傷つくガルザルに涙するアルネイズであったが、二人での逃亡を勧めるエイナルに気丈に振る舞う。かつてはエイナルと同じように、戦乱に巻き込まれて家族と離れ離れになった事などを話し、そして、現在、自分はケティルの子を身ごもっていると告白する。この子を護るために、ガルザルという嵐を耐えて過ごさねばならないという決意を持っていた。エイナルはこの話に、為す術がないと思わざるを得なかった。
だがその夜。傷の手当だけでもと、情に駆られてしまうアルネイズの姿があった。勿論蛇はこれを許さなかったが、その後留守にしてしまい、その間に部下たちはアルネイズの手当を許してしまう。気丈な決意を胸にしていたはずアルネイズだったが、もとの暮らしに戻ろうと言うガルザルに、心が動き、縄を解いてしまった。こうして包囲していた人間を皆殺しにして二人はこの場から逃亡する。
翌朝。この事情をまだ知らないトルフィンとエイナルだったが、「客人」達は殺気立ってガルザルの捜索にあたっていた。一方、アルネイズは平静を装い、いつもの仕事をこなしていた。ガルザルの逃亡を察知したトルフィンはエイナルとともにアルネイズから事情を聞き出す。ガルザルが客人の見張りを皆殺しにした事。その際に更なる深手を負い、スヴェルケルの家に匿っている事。そしてトルフィンとエイナルは、アルネイズとガルザルには逃亡するしか選択肢がなく、これを手助けしようと決意する。エイナルが囮となり、「客人」達の注意を引く事には成功したが、これが偽者だったらという懸念から蛇は単独で踵を返した。蛇の懸念通り、トルフィンがアルネイズと共に意識を失ったガルザルを運んで逃亡中だった。そこへ駆けつけた蛇は、交渉の余地など無く、ガルザルを渡せと剣を抜いて迫る。この場で結局暴力以外に対抗出来る手段を持たないトルフィンは、素手で蛇に応戦する。互いの強さを再認識しつつも蛇はこの立ち回りの最中、蛇はガルザルの乗った荷車に接近し、スヴェルケルの容赦せよという説得を振り切り、部下の命を奪った代償としてガルザルの胸に剣を突き立てた。ここで観念したトルフィンだったが、油断した蛇の背後からガルザルが羽交い絞めにする。とうに満身創痍で意識の混濁したガルザルは、アルネイズの言葉でようやく蛇を放すも、その後の道中で絶命する。そしてトルフィン、エイナル、アルネイズは「客人」達によって身柄を拘束されてしまう。

ここへ帰って来たケティル一行。アルネイズの献身に依存していたケティルは、心の動揺を癒そうと真っ先にアルネイズ元へ足を向けるが、逃亡未遂の事実を知り豹変する。棒で滅多打ちにしているところを蛇に止められるが、同行したレイフとの約束でトルフィンとエイナルの身柄は渡すが、アルネイズは譲らないと主張する。怒りと疑心暗鬼が綯い交ぜになり錯乱したケティルは、自らの財産を横取りする盗賊共に制裁をと戦の支度を始める。追って来るクヌートの軍勢迎撃しようという考えだった。
自由の身となりレイフに連れられ、瀕死の状態となったアルネイズの元を訪ねるトルフィンとエイナル。パテールの手当でも生死の保障が出来ないこの現状に、やり場の無い気持ちが込み上げてくる。
一方でケティルは農場中の男手を集めて時の声を挙げていた。一家に少なからずの恩と、傭兵としての職業意識から「客人」である蛇も参戦を決意していた。長男のトールギルの機転で兵を集める際に敵がクヌートである事を伏せていたため、また、この戦に参戦すれば借金を帳消しにすると吹き込まれたため、人数だけは集まっていたが、蛇の目にはこれが負け戦であることは明白だった。
レイフはトルフィンとエイナル、そしてアルネイズをどうにか連れ出して戦になる前に離脱しようと話すが、トルフィンはここが戦場になる事を黙って見過ごせず、また、アルネイズの容体が落ち着くまで時間がかかる事から、一同は身動きがとれないでいた。
そしてついに、ヨーム戦士団を引き連れてクヌートが上陸。農場は、そのまま戦場となった。クヌートの軍勢の圧倒的な強さの前に次々に兵力を失うケティルの軍勢。あまりの形勢の不利と部下の負傷を以て退却命令を出す蛇。相手の強大さを知った寄せ集めのケティルの兵達は散り散りに退いていく。あくまで領地の接収が目的であり、無益な虐殺は控える様にと命を出したクヌートであったが、絶望の中で、ケティルはヨーム戦士団の兵により深手を負わされてしまう。また、従士の離れた隙を狙って奇襲を掛けたトールギルの剣も届かず、側近のウルフの横槍に遭い敗走。
その最中、アルネイズは臨終を迎えていた。何もかもを失い、生きる希望を失ったアルネイズにトルフィンは声をかける。自分が幼い頃にレイフから聞かされた豊かで平和な土地「ヴィンランド」の話を語って聞かせるのだった。俺たちと一緒にそこへ行こう、と。そのまま息を引き取るアルネイズに、涙を流す一行。そこへ落ち延びた蛇と、彼の背負うケティルの姿が現れる。アルネイズの復讐をと怒りを抑えきれないエイナルだが、トルフィンの当身でどうにか制する。自身の体験から、経験から、怒りは復讐を遂げても収まらず、次の怒りを生む。同じ道を歩いてほしくないと語り掛けるトルフィン。

戦はケティル側の完全敗北で幕を下ろした。
生きる事よりも魅力のあるものを全て失ったアルネイズに胸を張って語れるものが欲しいと、ヴィンランドに平和な国を作るという新たな旅の目的を決意するトルフィンとエイナル。

故郷へ帰ろうと言うレイフだったが、トルフィンは忘れ物があると言い、クヌートの元へと向かった。エイナルも後を追う。兵の前で門前払いを食ったが、自分がかつてはクヌートの従士であった事を明かす。それでも信じてもらえず、兵の一人が100発殴って立っていられたら信じてやってもいいと言い出した。そんな事ならと、条件を呑むトルフィン。戦で培った身のこなしでダメージを最小限に抑えるコツを知っていたトルフィンは、どうにか32発まで耐えていた。そこへ降伏の宣言をクヌートへと伝える為にオルマルが蛇を伴って通りかかる。トルフィンはクヌートに会って農場の接収を軽減するように説得しにいくのだと語り、農場のためにそこまで献身する姿に驚くオルマルと蛇。そして、条件通り、100発の殴打を耐え抜いたトルフィンに、感服の意を示す兵達。様子を見ていたウルフは、何故殴り返さないのかと問うが、和平交渉の相手を殴ってれば世話はないし、大勢集まって血を流すなんて馬鹿々々しい事であり、自分たちは今日会ったばかりで、自分達にとってあんたがたは敵ではない、俺に敵はいないと返すトルフィン。

そして再会を果たすトルフィンとクヌート。
クヌートはヴァイキング達を束ねて、その力を楽土建設の為に用いる事こそ自らの使命だと語り、エイナルはその路傍で踏みにじられた民草の嘆きと怒りを訴える。トルフィンは農場から手を引かないなら、ケティルの一家ごとその戦火から逃げると主張する。暴力ではない方法で平和な世界を作りたいという考えのトルフィンは、ただそれを伝える為に謁見したのだ。クヌートの力の及ばない場所に、クヌートとは違うやり方で平和な国を作ってみせると宣言するのだった。
トルフィンの清々しく美しい心に触れたクヌートは軍を撤収し、ケティルの農場とその他の村々の接収も白紙に戻す事を決意した。

接収を免れたものの、働き手の大半を失ったケティル農場の面々はこの度の災難を大いに反省し、「客人」達も一丸となり農場再興に向けて畑仕事に精を出していった。ケティルは虚脱感から立ち直れずに半ば隠居状態に。代わりにオルマルが心を入れ替えて、農場主として誰よりも働く姿があった。

そして、いよいよアイスランドへ帰郷の帆を挙げるトルフィン一行であった。

帰郷するトルフィン、そしてヴィンランドへ向けて

1018年12月。アイスランド南部の小村。
ついに生家へと帰って来たトルフィン。だが、生きている事も諦められていたトルフィンの突然の帰郷に、村民の誰もが目を疑い、姉のユルヴァでさえ一目見ただけでは本人だと信じない始末。だが、母親であるヘルガは、トルフィンの目を見て、トールズの面影を重ねながら、間違い無くトルフィンであると確信する。
フェロー諸島でのアシェラッドとの一件以降の事を皆に語るトルフィン。そして、新たな友と新たな目的を持ち、そのため旅へ出る事を語ると、ヘルガは激励してくれるのであった。
まずは建国に当たって出資者を探している旨を話すが、アイスランドで貯えをもつ人物と言えば、ハーフダンという男ぐらいのものだった。このハーフダンは「鉄鎖のハーフダン」と恐れられ、定められた掟や取り決めを破る者には容赦無く、かつてトルフィンが住んでいたこの村とも幾度か諍いになった事もあった。だが、まずはどんな相手であっても話してみなければ分からない。一行はハーフダンの農場へと向かった。

農場へ着くと船着き場には船が何隻も停泊しており、奇しくも、ハーフダンの倅が結婚式を挙げるというタイミングだった。借金の話をするにはどうなのかと思案しているところへ、樽を被った娘が一人やって来る。この娘はグズリーズという名で、レイフの義理の妹にあたる。幼い頃からレイフには懐いており、ことあるごとに船に乗せろとせがんでは、その度に幼さと女だからという理由でレイフが断っていた。樽を脱いで姿を現したグズリーズはここでも再会したレイフに船に乗せろと迫って来る。が、結局は女だからという理由で乗船を許さないレイフ。口論の末に、グズリーズは自らの髪を短刀で切り落としてしまう。これなら女じゃないだろうという主張らしいが、そのまま足を滑らせ、桟橋で頭を打ち気絶する。この騒々しい場面についてゆくのがやっとの一行だが、そこへ更に声を荒げる男が現れる。人攫いだと叫ぶその男は、ハーフダンの息子シグルズであり、なんとその結婚する相手というのがグズリーズでなのだ。髪を切られ気を失う自分の結婚相手を運ぼうとするトルフィン一行を、完全に人攫いだと勘違いしたシグルズ。容赦無く鎖を振り回して襲い掛かって来るが、その鎖を受け止めるトルフィン。だが、更に鎖付きの剣を放ち、トルフィンに手傷を負わせるシグルズ。血生臭くなってきたこの事態を収めたのは、騒ぎを聞いて駆け付けたハーフダンであった。
グズリーズはレイフの弟に嫁いで来たのだが、その弟が戦死し、未亡人となり、レイフの妹の世話になり一緒に暮らしていた。そこへハーフダン側から結婚の申し出があったとの事。
ひとまず人攫い云々の件は落着し、ハーフダンにヴインランド開拓資金の融資の交渉を持ち掛けるトルフィン一行。レイフが開拓計画の概要を説明し、エイナルが流通に使われる農作物育成の指導を担当するところまで説明するが、ハーフダンは失敗の可能性を言及し、かつてレイフの弟ソルヴァルドが開拓団を率いてヴィンランドに渡り、先住民との戦闘で命を落とした事を語る。レイフは自身はこのソルヴァルドの開拓団に参加していない。だが、ソルヴァルドは攻撃的な性格で先住民との最初の接触で戦闘になったが、トルフィンが開拓団の指導者ならそんな事にはならないと信じていた。
トルフィンが指導者であり借金の名義人であるならと、一対一の交渉を求めるハーフダン。
対話するトルフィンとハーフダン。ハーフダンはトルフィンの父トールズを知り馬が合わなかった事などを話すが、本題に入りヴィンランド開拓の事業が失敗した時にはトルフィンの家族から資財を回収する事を条件に挙げるハーフダンに対し、トルフィンは自分の一存で始める事なのでその条件は呑めないと主張。しかし、現時点で金に換えられるようなものを何も持っていないトルフィン。ハーフダンは、ならば金ではなく誇りを渡せと迫る。それは、靴に口づけをしろというものだった。ハーフダンの予想に反して、これを易々と受け入れ、ハーフダンの靴に口をつけようとするトルフィン。本当に何も持っていないトルフィンに出来る事はこのぐらいなのだが、トルフィンにしてみれば安いっものだった。だがハーフダンは冗談だと言ってトルフィンを帰してしまう。
結局金を借りる事は出来なかった。ハーフダンの息子シグルドの結婚式に出席するという条件で祝いの礼としてイッカクの角24本を受け取ったが、これはアイスランド一帯ではありふれた工芸品の材料でしかなかった。だが、レイフはこれをハーフダンの挑戦状であると語る。イッカクの角は、遠いグリッシャランド(ギリシャ)では伝説上の生き物ユニコーンの角として珍重され、商いを上手に出来れば、この角と同じ重さの黄金と換えられる程の高値で売れる。しかし、ギリシャはヴィンランドとは正反対の方向に位置し、また、その道程は決して楽なものではなく、片道で1年はかかる距離である。つまり、これはトルフィンの熱意を試すハーフダンなりのメッセージでもあったのだ。
改めて互いの覚悟を再確認し、ギリシャへの旅を決心するトルフィン一行であった。

一方。
グズリーズは、幼い頃から、広くて未知なる世界への自由な旅を夢見続けている。
何度もレイフに船に乗せろとせっついてはその度に「女だから」と断られていた。性分の問題だろうが、婚礼の作法も、機織りなどの繊細な作業も、家事も、女らしい振る舞いの全てを苦手としており、この「女だから」という縛りに納得しておらず、ハーフダンの息子シグルドとの結婚も半ば政略結婚であり、ここで求められる「女としての役割」は本人の意思とは反していた。
結婚式当日も、ギリシャ行きの荷造りを始めていたレイフに力仕事をしてみせて船乗りとしての資質をアピールするが、返答は「男だったらよい船乗りになれた」というものだった。これに、複雑な顔で「それが聞けてよかった」と返し、結婚式へ向かうグズリーズであった。
結婚式そのものは滞り無く執り行われ、実感の無いままに宴は進行し、あれこれと思い返しているうちに結婚初夜の営みのためシグルドと二人きりに。浮かない顔をしているグズリーズに、これが政略結婚であり両家にとってどれ程の価値が有るかを語るシグルド。話の殆どが耳に入らなかったグズリーズだが、これも「女の役割」として割り切ろうと、シグルドを受け入れる事にした。

だが、気が付くと、シグルドの脚に、短刀を突き刺していたグズリーズ。
これにより、あわや追われる身となってしまった。船着き場のレイフ達の元へ駆けつけるグズリーズは事の次第を告げる。そして「花嫁に足を刺された」という事実がシグルドをはじめハーフダンの一家にとって如何な汚名であるかその深刻さを知るトルフィンは、このまま帰してはただでは済まない事を懸念し、同時にここからの航海が険しいものになる事を説いた上で乗船の意思をグズリーズに問う。グズリーズの答えは、船に乗る、であった。事後の不安を口にするレイフだが、そこにレイフの妹でありグズリーズの世話を担っていたチューラが駆け付けていた。グズリーズの「女らしくない」服装一式を渡し、あなたの行きたいところへ行きなさいと背中を押すのであった。
こうしてグズリーズを乗せてギリシャ行きの船は走り出した。だがこの航海は、シグルドが追っ手となる、逃避行でもあるのだった。

逃避行であり、贖罪であり

船酔いに苦しむグズリーズだが、航海は続く。追っ手であるシグルドを躱しながら。

一行は、かつてトルフィンの父トールズを亡くしたフェロー諸島へ立ち寄っていた。
エイナルはレイフがどの土地でも好かれるレイフは凄い人物だと話し、トルフィンは振り返る。レイフはただ船の扱いがうまいだけじゃない、剣に劣らない力を持っているレイフだが、自分の父は、争いを避ける為にアイスランドまで移住したのに、争いを嫌うその父が最後まで剣を捨てられなかった事。
この旅の先で、きっと争いに巻き込まれる事もあるだろう。その時に剣を手にせず航海を続けられるかと自問自答するトルフィンに、生きて帰れるかよりも相手を傷付けずに済むかを心配するその姿を見てエイナルは語る。もし、最後の手段を選ばざるを得ない事態にまで追い詰められたとしても、自分も同じ気持ちでいる事を忘れないでくれと。トルフィンは、「ありがとう兄弟」と応えるのであった。

そして船は進み、シェトランド諸島へ。
レイフの友人アルングリムの一家が、戦に巻き込まれて死んでいた。脅威は未だ去っていない事を懸念したトルフィンは、自分以外を船に残して偵察に出る。
女や子供まで殺され、焼かれた村の中で、一匹の犬と出会う。犬は最初警戒したが、トルフィンは腕を噛ませて誠心誠意語りかけると、犬は焼け落ちた家屋の地下に生存者がいる事を伝える。そこには赤子を抱く一人の女性が居た。女性は致命傷を受けており、赤子の名前がカルリである事を告げると、トルフィンに託して息絶えた。トルフィンはこの赤子カルリを育ててくれる親を探すため連れて行く事にする。
まず、レイフはカルリの親戚を探そうと提案。赤子の世話などした事のない一行は四苦八苦しながら情報を辿り、ようやくアルングリムのいとこの家へ。
だが、カルリがアルングリムの血縁だと知ると扉は閉められる。事の発端はアルングリムの一族と他の一族との諍いが原因で、何年もの間もめにもめて死人が出て、その報復のためにまた死人が出て、ついに戦にまでなってしまったのだという。更なる報復の連鎖を絶つための皆殺しであって、ここでアルングリムの血族が生きていたと知れればまた血を見る結果になる。薄情者と扉越しに声を荒げるグズリーズだが、トルフィンには解る部分も有った。ノルドの男社会では報復は義務なのだと。いつかカルリが大きくなった時にこの事実を知っていれば一族の名誉のために報復せねばならず、また、それを恐れるが故、カルリは素性を知られれば殺される。だが、カルリが報復をしなければ自分の一族から罰を受ける。殺しは許されない罪で、その処罰は例外を許してはならない。報復は、平和のための殺しなのだ。
トルフィン一行は勿論、それに納得はしていない。カルリは、この一族同士の争いの届かないところで育てるべきなのだった。

そうこうしているうちに追っ手となったシグルドに追いつかれるも、口八丁手八丁でなんとか撒いて。
1019年1月。ノルウェーはスカンジナビア半島西岸部。いよいよ大陸の一端に差し掛かった。
この森で、トルフィンは冬眠していない熊に遭い、襲われてしまう。短刀一本で抵抗するが苦戦を強いられる。その窮地を救うために鍋を叩き注意を引き受けるエイナルだったが、間一髪で熊は倒れる。それは、ある女狩人の放った弩(いしゆみ)の一矢で仕留められていた。

女狩人は『凪の入り江』のフラヴンケルの娘、ヒルドであると名乗る。解体した熊の肉で鍋を囲み会話をしていると、かつて、『凪の入り江』の地を治めていた首領フラヴンケルの首を狙った襲撃を受け、その襲撃してきた兵団の首領の名がアシェラッドであり、森へ逃げたフラヴンケルとヒルドは一人の若い戦士に見つかり、フラヴンケルはその戦死に喉を割かれて死んだ。そして2本の短剣を携えたその若い戦士は仲間から『トルフィン』と呼ばれていた事をよく覚えていると語った。つまり、ヒルドの父フラヴンケルを殺したのは、トルフィン本人に違いないのである。
自作の強力な弩を構え、この場で復讐を果たすと言うヒルド。だが、トルフィンは覚えていなかった。
トルフィンを庇おうとするエイナル。今はそんな人間じゃないと説得を試みるグズリーズ。だが「昔の事」で済ませられるかとヒルドは迫る。そして鍋に毒を盛り、解毒剤が欲しければ一対一で決着をつけさせろと詰める。エイナルは止めるが、トルフィンはこの勝負を拒む権利が自分には無いと言い、武器を持たずにヒルドが待ち構える森へ向かった。足場の悪い雪山。木陰からトルフィンを狙い、追い詰めてゆくヒルド。自分はまだ死ねない、生きて罪を償いたいと懇願するトルフィン。だがヒルドの恨みは深く、簡単には退いてくれない。トルフィンは矢の装填に時間がかかると読んで、どうにかヒルドとの距離を詰めて取り押さえようと持ち前の俊足で走るが、ヒルドの手製の弩は矢の再装填を軽々と行える特別製で、トルフィンの予想よりはるかに速く再装填をしてみせた。そしてトルフィンの脚は射抜かれてしまう。それでも怯まずに接近するが、目前まで辿り着いた時には足に何本も矢を刺されていた。脅威の速度の連射。ついにトルフィンは跪いてしまった。かつてトルフィンが戦士だった時ヒルドに吐いたセリフを、そのまま返して迫る。「これは狩りだ。私が狩る側でお前が狩られる側だ。」と。自分の行いを思い出すトルフィン。ヒルドはその様子を見届けると、とどめを刺そうと構える。
だがそこへ、エイナル、カルリをおぶったグズリーズ、レイフ、ギョロ目が駆け付ける。復讐は自らを蝕み、必ず後悔する。トルフィンは改心し善い人間に生まれ変わった。エイナルとグズリーズが説得に入る。カルリも大声で泣いて何かを訴えているようだ。ヒルドは自分の家族を生き返らせられないのなら、償う方法は死でしかないと叫ぶ。トルフィンは仲間たちに感謝を述べながら、自分の言葉でヒルドに願う。赦せとは言わない。だが、生きて償う時間が欲しいと。
激昂したヒルドは矢を放った。だがその矢は空に向かって飛んで行く。ヒルド自身が誰よりも驚いた。そしてヒルドは、殺された父親と狩りを教えてくれた師を傍らに感じていた。「赦せと、おっしゃるのですか。」

トルフィンは、ヴィンランドという新天地に自分が壊した平和よりも平和な国を作り、自分が殺した人よりも多くの人を育む事で、生きて償うのだと訴えた。
ヒルドは、やってみせろと応える。だがトルフィンが口先だけの男なら、即座にその頭を射抜くのだと続ける。
こうしてヒルドは「監視者」として度に同行する事となった。

ヨーム戦士団からの誘い

トルフィンが受けた矢傷は深く、満足に動けるようになるためには春まで静養しなければならない。
ヒルドとの一件で、互いにヴィンランド建国を果たすまでは命を盾にしてはいけない事を再確認したトルフィンとエイナル。

1019年4月。ノルウェー南西部のベルゲンにて。
静かなこの土地で静養し、春を迎えたトルフィン一行。トルフィンは自在に動けるまでに回復し、赤子のカルリは自力で立ち上がれるようになった。
逗留先のこの地で世話になった夫妻がおり、里親としてカルリを預ける事に。
だが、既に情が移ってしまったグズリーズは別れに耐えられず、結局カルリを連れ出してしまう。トルフィンもそれを受け入れた。

同年同月。デンマーク。王の拠点イェリングに寄港。
レイフの提案で、ここイェリングで商いの基本をメンバー達に体験させる事が目的だった。
賑わう市を見学する一同だったが、トルフィンに声を掛けてくる男が居た。男は「お前、トルフィンだろ?トルフィン・カルルセヴニ(侠気のトルフィン)だよな?」と。かつての二つ名まで知るこの男は明らかにヴァイキングであり、自分の過去を知る者から遠ざかりたいトルフィンは、それは自分ではないと否定する。男はトルケルの名前も出すが、トルフィンはこれも否定。男は剣を抜いて、躱せればトルフィンだと殺気を見せる。物陰からこの様子を監視し、男の手を射抜いたヒルドだが、トルフィンは事が大きくなる事を回避するために、自分がトルフィン・カルルセヴニである事を明かす。
騒ぎを治めるため、そしてこの事態の真相を知るためにトルフィンは単身、トルケルの元へ出向く。
再会したトルフィンとトルケル。トルケルはトルフィンの成長を認めながらも、そこでフローキを紹介する。お互いに初対面であり、トルフィンは自分の父親が殺されたあの一件の首謀者がこのフローキである事は知らなかった。
フローキは、先代のヨーム戦士団の首領シグヴァルディが跡継ぎを指名しないままに急死し、現在首領の座が空席となっており、その座をヴァグンという野心家が力を蓄えつつ狙っている事を語る。そして軍団の規定で50歳以上の人間は該当せず、若すぎても入団資格が無い。フローキ本人は前者の理由で首領の座に就けないが、孫が出自血統で最適だと主張する。しかしトルケルは、トルフィンがトールズの子であり、シグヴァルディの孫に当たる事に目を付け、トルフィンこそ首領に相応しいと持ち掛ける。当然トルフィンは跡目争いに興味は無く、ヨーム戦士団と関わること自体を拒否し、城をあとにした。
だが、トールズの子が生きている事を知ったフローキはトルフィンの暗殺を企むのであった。

急いでイェリングを出港するトルフィン一行。しかし、それを軍船が追って来た。
自分が狙いである事を知っているトルフィンは自分一人でこれを引き受けると提案するが、ヒルドはトルフィンの生死を監視するために共に船を下りる。
自分達だけで追っ手を引き付けて撒く算段であったが、近隣の民が殺されていく。これに耐えかねたトルフィンは、追っ手の戦士達と直接戦う事に。
ヒルドの助けもあり、素手で粗方の相手を倒すトルフィンだったが、相手が仲間割れを起こす。
フローキの手下を殺した戦士二人は、自分達がヴァグンの使者である事を明かし、トルフィンにヴァグンの派閥に力を貸して欲しいと伝える。
今や自分は商人であり、戦士ではない。争いに関わりたくないという旨で返すトルフィン。
だが、その場に居合わせた村民は、恐怖の目でトルフィンを見つめていた。

ヴァグンの使者はトルフィンに語る。フローキが再び刺客を送り、今日のような事が何度も起こる。
トルフィンは、もう羊の中では暮らせない。少なくとも、ここバルト海では。
そう、告げるのであった。

『ヴィンランド・サガ』の登場人物・キャラクター

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