蟲師(漫画・アニメ・映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

蟲師(むしし)は漆原友紀の手による漫画作品。1999年から2002年にかけてアフタヌーンシーズン増刊にて連載された。見慣れた動植物とは異なる生き物「蟲」と人々の営みを蟲師・ギンコの視線を通して描く。第30回講談社漫画賞・一般部門賞受賞。2005年フジテレビ系列にてアニメ化、数々の賞に輝き、2007年オダギリジョー主演で実写化されている。

生命の源となるエネルギーが集まった地の底を流れる大河。
光脈筋とは光脈の上にある土地のことで、一際豊かになる。

ワタリ

蟲が見える体質のために土地を追われた人間たちによる集団。
光脈を追って常に移動し、行く先々で得た光脈筋に関する情報や蟲の噂などを蟲師に売って生活している。
かつて日本に存在した回遊民族・サンカをモデルにしている。

ヌシ

光脈筋にある山の精気を抑え、統制する、山のすべてを知る存在。頭に草が生えるのが特徴。

光酒(こうき)

光り輝く命の水。酒。

蟲煙草(むしたばこ)

ちいさな蟲を払うことのできる煙草。蟲を寄せる体質の者には欠かせない。

狩房文庫(かりぶさぶんこ)

狩房家の筆記者たちが書き留めてきた蟲についての記録書。
記録は非常に貴重であるため、蟲師たちは自分の経験を提供する代わりにこの狩房文庫の記録書を読む許可を貰う契約をしている。
すべての文字が禁種の蟲を封じるものであるため、取り扱いには細心の注意が必要。
紙はいずれ傷むため、筆記者が独自の方法で時折文字を新しい紙に写し替えている。
現筆記者である淡幽の趣味で、巻物に紙魚(しみ)がいる。

『蟲師』のあらすじ・ストーリー

第1巻

■緑の座(みどりのざ)

山奥に一人暮らす少年・しんら。
彼が「神の筆(かみのひだりて)」と呼ばれるその左手で描いたものはそれが何であれ命を持って動き出す。
噂を聞いて調査にやってきたギンコは、しんらの家の中で少女の形をした蟲に出会う。

■柔らかい角(やわらかいつの)

片耳を病んだ村人たちを助けて欲しいと雪の深い山里へ呼ばれたギンコ。
村人の耳に巣食った音を食う蟲「吽」を追い出したギンコに、村の長は、村でただ一人両耳を病み、4つの角が生えた孫・真火(まほ)を救ってくれるよう頼む。

■枕小路(まくらのこうじ)

予知夢を見る男の元を訪れたギンコは「夢の中に棲む蟲のせいだから」と薬を渡して去る。
1年後、男の住む村を再度訪れたギンコの前に広がっていたのは、荒廃した村の跡だった。
1人その場に残った男は「騙したな」とギンコを責める。

■瞼の光(まぶたのひかり)

光が当たると目が激しく痛む病のため、蔵で暮らす少女・スイ。
暗闇の中でスイはふたつめの瞼の裏に光る河と蟲、そして対岸に片目の男を見る。
「それ以上その河に近づくな」という片目の男の忠告を破ったスイは闇に目玉を喰われる。

■旅をする沼(たびをするぬま)

山脈を越える途上でギンコは現れてはきえる沼と、「沼と共に旅をしている」という緑の髪をした少女に出会う。
「私、この沼の一部になるの」という少女が大事に晴れ着を纏うのを見たギンコは、海のほとりに住む医者・化野と旅する沼を捕獲する作戦を練る。

第2巻

■やまねむる

山腹にぽっかり穴の空いた山を見かけたギンコは、麓の村人に頼まれ山で行方不明になった蟲師・ムジカを探す。
ムジカは山のすべてを知る山の「ヌシ」だった。
気遣うギンコにムジカはヌシになった経緯を話す。その夜、山に向かって鍾の音が鳴り響く。

■筆の海(ふでのうみ)

狩房家の人間に代々伝わる墨色の痣。
それはその昔、狩房家の先祖の肉体に封じられた禁種の蟲が未だその肉体の中で息づいている証である。
狩房家では痣を持って生まれた者が、一生をかけて蟲を殺す話を文字に起こすことで禁種の蟲を少しずつ屠ってきた。
その狩房家の4代目筆記者・淡幽(たんゆう)の元をギンコが訪れる。

■霧を吸う群(きりをすうむれ)

周囲を海に囲まれた断崖の島。島の住人の支えは「生き神」の存在であった。
生き神とは島の当主の一族に代々現れる、1日で老いて死んで生き返る人間のこと。
その生き神が「生き神になる前」友人だったという少年・ナギに「生き神を診て欲しい」と頼まれ、ギンコは島を訪れる。

■雨がくる虹がたつ(あめがくるにじがたつ)

旅の途中、ギンコは虹を探す男・虹郎に出会う。
虹郎は「地面に生えた姿形の変わる虹」に魅せられた病気の父親を持ち、村に居場所のない不安をごまかすため虹を求めていた。
その虹を虹蛇(こうだ)という蟲だと見抜いたギンコは虹探しの相棒を買って出る。

■綿胞子(わたぼうし)

婚礼の最中、着物についた緑のシミ。婚礼から1年後、女の産んだ子は緑のへどろ状の物体だった。
いったんは消えた緑の物体は床下から赤ん坊の姿で現れた。
半年ごとに床下に現れる赤ん坊。
3年後、緑の斑点が浮き出した子のため夫婦はギンコに救いを求めるが、子を殺すしかないと告げられる。

第3巻

■錆の鳴く聲(さびのなくこえ)

14年前、ある村で体を動かせない病に悩まされる人々が現れた。
原因と目される少女・しげは一切口をきこうとしない。
村を訪ねたギンコは、村中の至るところ、人体にまで蔓延る錆に似た蟲を見る。
ギンコはしげの声で集まった蟲はしげの声によって散らすことができると話す。

■海境より(うなさかより)

駆け落ちの最中に些細なことで嫁と喧嘩をした男は、地元へ向かう船で海蛇を見る。
直後もやが湧き、嫁は行方不明になった。
2年半のあいだ嫁を待ち続ける男の藩士を聞いたギンコはその現象について調べ、男と共に沖へ出る。

■重い実(おもいみ)

天災のたびに必ず豊作になる村がある。
村人の中で最も弱い者の命を犠牲にして得られるその豊作には、蟲師最大の禁じ手とされる「ナラズの実」が関わっていた。
そのナラズの実を祀る祭主にあったギンコは、ナラズの実への祭主の考えを聞き、ナラズの実を使って祭主に不老不死を与える。

■硯に棲む白(すずりにすむしろ)

化野が収集品を入れている蔵に忍び込んだ子供たちが体温が下がり続ける病に冒された。
ギンコは原因となった硯を作った職人・たがねに会いに行く。
たがねが原料にした石は雲喰み(くもはみ)という蟲の化石だった。
たがねの住居が高地にあることに着目したギンコは子供たちを山へ連れて行く。

■眇の魚(すがめのうお)

少年・ヨキは行商の旅の中で崖崩れにより母親を失う。
ヨキは彷徨った果てに行き倒れ、蟲師・ぬいに救われる。
蟲のこと、蟲との付き合い方について教わる中で、ぬいが消えた家族を探して山中にいることを知る。
ヨキを遠ざけようとするぬい。その秘密を探る中でヨキは、庵近くの池に棲む蟲・トコヤミと銀蠱(ぎんこ)のことを知る。

第4巻

■虚繭取り(うろまゆとり)

放浪することの多い蟲師が連絡のために使う「ウロ繭」の作り手・綺(あや)。
ウロとは密室に現れ、密室と密室を繋ぐ風穴を空ける蟲。
綺にはウロに連れ去られた双子の姉・緒(いと)がいた。
姉のことを諦められない綺を、ギンコはウロの通り道である「虚穴」へ案内する。

■一夜橋(ひとよばし)

3年前、駆け落ちの最中に吊り橋から谷底へ落下した少女・ハナ。
到底助からぬ高さにも関わらず自力で歩いて戻ってきたハナは心を失っていた。
抜け殻のようなハナを治すため、ハナの駆け落ち相手・ゼンと共にギンコは谷底の調査を始める。
そこで見つけたのは日の光を求め、生物の死体に寄生するニセカヅラだった。

■春と嘯く(はるとうそぶく)

蟲を愛する少年・ミハルは、冬が来るたび懐に冬には決して取れない山菜を抱えて行き倒れ、春まで目覚めない。
ミハルを気遣う姉・すずに頼まれてミハルに蟲について教えるギンコだが、ギンコとすずの前から不意にいなくなったミハルはその年、春になっても目覚めなかった。
ギンコはミハルが目覚めるために足りない「なにか」を探しに山へ向かう。

■籠のなか(かごのなか)

竹林の中で休むギンコは「どうしても竹林から出られない」という男・キスケに声をかけられる。
竹と人との間に生まれた鬼蠱(おにこ)・セツとの間に、筍の子供のいる彼の夢は、妻子を伴って村へ降りること。
ギンコはキスケの願いを叶えるため、セツの親にあたる白い竹こと「間借り竹」について調べる。

■草を踏む音(くさをふむおと)

生命の源・光脈(こうみゃく)を追って放浪するワタリの人々。
五月雨の季節に山へやってくるワタリの少年・イサザと親しくなった地主の少年・沢(たく)は、父親の死をきっかけにワタリになることを望むが、裏山から突如移動を始めた光脈を追ってワタリはどこかへ行ってしまい、戻ってくることはなかった。
大人になった沢は村へやってきたギンコを通してイサザの話を聞く。

第5巻

■沖つ宮(おきつみや)

生みなおしの島へやってきたギンコは島の沖にある竜宮と呼ばれる海淵の話を聞く。
竜宮で命を落とした者は全く同じ姿でもう一度生まれてくるという。
ギンコは島で澪(みお)とイサナの母娘に会う。イサナは、澪が母親を生み直した子供だった。
ギンコは竜宮へ巣食っているのは生き物が生きた時間を食べる蟲だということに気付く。

■眼福眼禍(がんぷくがんか)

父親が持ちかえった腐らぬ目玉に入っていた幻の蟲・眼福によって視力を得た盲目の娘・周(あまね)。
見えるようになったことを喜ぶ彼女の目はやがて、見えるはずのない景色や変えられぬ未来を見るようになる。
彼女の話を聞いたギンコは彼女の目をなんとかできないか調べ始める。
しかし彼女が望んだのは「自分の目を捨ててもらうこと」だった。

■山抱く衣(やまだくころも)

羽織の裏に描かれた山から立ち上る煙。
一昔前に名を馳せた天才絵師の筆によるその絵に、蟲の気配を感じ取ったギンコは描かれた山を探してある村へ辿りつく。
そこには絵の描けなくなった絵師が姪っ子と共に暮らしていた。

■篝野行(かがりのこう)

山の開墾作業の途中、掘り起こされた溶岩石の亀裂から生えた1本の草。
その草が瞬く間に山を覆い尽くし周囲の草木を枯らし始めた。
蟲師・野萩(やはぎ)は村を守るため草ごと山を焼くことを決意するが、ギンコに止められる。

■暁の蛇(あかつきのへび)

最初はカニ、次に団子、柄、くしゃみ――少しずつ記憶を喪失していく母親を治して欲しいと息子はギンコに依頼する。
1年前の春から夜眠らなくなった母親の記憶は遭遇率の低いものから影魂(かげだま)という蟲に食われていた。
行商の旅に出ている夫を忘れることを危惧する母は息子をつれて夫へ会いに行く。

第6巻

■天辺の糸(てんぺんのいと)

空から伸びる糸を引っ張って消えてしまった少女・吹(ふき)は記憶を失って木の上にいるところをギンコに保護される。
村へ戻った吹は主家の息子に嫁として請われるが、強い蟲の気を帯びたため、人間の世界に留まりにくくなってしまっていた。

■囀る貝(さえずるかい)

サエズリガイの声を聞いたために声を失ってしまった娘・ミナ。
妻の死が原因で村を離れた父親は「人の声を聞くことでミナは声を取り戻せる」と話すギンコや、サエズリガイが教える海の凶兆をきっかけに村へ足を向ける。

■夜を撫でる手(よるをなでるて)

腐ったような肉ばかりを売る少年・卯助の露天を覗いたギンコは卯助の家へ向かう。
卯助の兄・辰は掌に目玉模様で獲物を思いのままに操る力を持っていた。
薬で抑えないといずれ蟲の世界へ行ってしまうと話すギンコだが、辰は力を抑えることに恐怖を覚える。

■雪の下(ゆきのした)

冬の湖で妹を失った少年・トキの周りには常に雪が降っている。
船で湖に出たトキは「妹は湖の底にいるのではないか?」と考えるうち湖に落下してしまう。
自力で戻るトキだったが妹を湖から助けようともう一度湖に行き、それを止めようとした幼馴染が湖に落ちてしまう。

■野末の宴(のずえのうたげ)

名杜氏であった父が昔遭遇した宴で飲んだ「光る酒」の製造を目指す蔵人の男はその年、ついに黄金色に輝く酒を造ることに成功する。
父に飲ませるため酒を持って帰る道中、動くけものの毛のようなものにまとわりつかれ、蟲師の宴に紛れ込む。

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