四畳半神話大系(小説・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『四畳半神話大系』とは、森見登美彦による日本小説、及びそれを原作として制作、放送されたアニメ作品。
小説は単行本では2005年に太田出版から、文庫本では2008年に角川書店から刊行されている。
アニメは2010年に放送された。
そして森見登美彦原作の「夜は短し歩けよ乙女」の映画化を受け、2017年1月から特別放送が開始された。

太平洋戦争以前から行われていると言う、不毛極まりない悪戯合戦。
とにかく不毛に徹しなければならないと言う不文律が存在している。

何が原因で始まった合戦なのか、今となっては誰も知らない。
しかし、事があいまいになるのを防ぐために、後輩を代理に立てることで脈々と受け継がれてきた。

樋口師匠と城ケ崎先輩は29代目にあたる。
そして第四話においては、樋口師匠の後を「私」が、城ケ崎先輩の後を小津が引き継ぐことになってしまう。

大学の時計台

時計台のモデル。毎春、新入生が入学する季節には、サークル勧誘でにぎわうのだろう。

この時計台の前では、賑やかにサークル勧誘のチラシが配布されている。
その中から「私」が特定のサークルのチラシを受け取ったところから、各話は始まる。
そして物語の終わりは、やり直しを強く希望する「私」の思いを受けたかのようにして、時計台の時計の針が逆回転する。
モデルは京都大学の時計台記念館。

『四畳半神話大系』の評価

物語としては「私」が薔薇色の学生生活を叶えるべく、サークルを選ぶ。
しかし様々なことを原因として、薔薇色の学生生活が程遠いものになり、「私」は、自分の選択肢を猛烈に後悔する。
そしてやり直したいと願い、次の回ではその願いが叶い、新たな選択をする、と言う流れの繰り返しである。

だが、その単調な繰り返しの物語を独自のアニメーションで表現したことが高い評価を受け、2010年度文化庁メディア芸術祭アニメーション部門では大賞を受賞している。なお、同部門でアニメ作品が大賞を受賞したのは創設以来、初のことである。
更に東京国際アニメフェア2011、第10回東京アニメアワードでも、テレビ部門最優秀作品賞を受賞している。

また個性豊かな登場人物たちを演じた声優たちの演技にも、高い評価の声が上がっている。
特に主人公である「私」は、原作においてもその語り口調がひとつの魅力であった。
それを活かすべく、アニメにおいても、通常の作品に比べると台詞数が多くなっている。
そして第十話においては、出演者は「私」を演じた浅沼ただひとりで、彼が24分間にわたりしゃべりっ放しと言う異例の構成になっている。
そのため、アニメ作品で様々なキャラクターを演じている浅沼だが、アニメファンの中には、彼が演じた代表的キャラクターとして「私」を挙げる人も少なくはない。

『四畳半神話大系』の小説

作者の森美登美彦氏。

小説で扱われているエピソードは4話。

第一話『四畳半恋ノ邪魔者』は、映画サークル「みそぎ」に加入した場合のエピソード。
アニメで言うと二話に該当している。
ただしタイトルから見てもわかる通り、人の恋路の邪魔をする「黒いキューピット」の活動も描かれるので、アニメ一話の内容も含まれていると言える。

第二話『四畳半自虐的代理代理戦争』は、樋口師匠に弟子入りした場合のエピソード。
アニメで言うと四話がこれに該当する。

第三話『四畳半の甘い生活』は、ソフトボールサークル「ほんわか」に加入した場合のエピソード。
アニメでは五話に該当し、更に細かなエピソードを含めると六、七、八話もここに含まれる。

第四話『八十日間四畳半一周』は、「福猫飯店」に加入した場合のエピソード。
アニメでは、九話から最終話までがこれに該当している。

このように三話のみ、アニメ完全オリジナルで、後は原作を元にしつつ、森見同意の元、かなりの編集などが加えられたうえで、全4話の原作が全11話のアニメ作品として制作された。

原作がある作品が映像化される際、そしてそこに改編が加えられる場合には、それが蛇足となったり、原作の魅力を損ねる改悪となってしまっていることも少なくない。
しかし今作に関しては、原作者とアニメ制作側の話し合いがしっかりと行われたのであろう。
原作の持ち味を生かしつつ、決して蛇足でも改悪でもない、むしろ原作の面白さをより高めるような改変がなされている。
そのため、原作ファンからもアニメは高い評価を受けている。
また反対に、アニメから原作を知ったと言う人の中にも、アニメも原作もどちらも面白いと言う人が多い。

なお森美作品は他に『有頂天家族』がアニメ化されている。
また『夜は短し歩けよ乙女』もアニメ映画化が決定している。
そのメガホンをとるのは、『四畳半神話大系』の監督を務めた湯浅政明である。

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@4mfuchan_y15

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