四畳半神話大系(小説・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『四畳半神話大系』とは、森見登美彦による日本小説、及びそれを原作として制作、放送されたアニメ作品。
小説は単行本では2005年に太田出版から、文庫本では2008年に角川書店から刊行されている。
アニメは2010年に放送された。
そして森見登美彦原作の「夜は短し歩けよ乙女」の映画化を受け、2017年1月から特別放送が開始された。

四畳半の世界から脱出する直前の「私」の台詞。

「私」は、薔薇色の学生生活を夢見ていながら、決定的な場面で、決断を下すことを避けたり、自分の思いを相手に伝えることを避けてきた。
特に、淡い思いを寄せていた明石さんからのアプローチに対しては、そのような態度が常になっていた。
自分の思いが拒まれてしまうのが怖いからである。

しかし、それでは何も変わらない。
明石さんからのアプローチは好機以外の何ものでもなく、その明石さんのことが好きなのであれば、その好機を捕まえるために足を踏み出さなければならない。
そのことにようやく気が付いた「私」の思いが込められた言葉である。

「俺なりの愛だ。」

小津スマイルを浮かべた「俺」。

物語のラスト。骨折をした小津から、どうして自分に興味を持つのか、と聞かれた際に「私」が口にした言葉。
こんな言葉をしれっと口にできたことこそ、「私」が変わった証拠だとも言える。

ちなみにこの後、小津は、そんな汚いものいりません、と拒否をしている。

『四畳半神話大系』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

ロケ地には京都市が多く使われている

京都市は、日本人は勿論のこと、外国からの観光客にとっても非常に魅力あふれた街である。

森見作品の多くは、著者が大学生時代を過ごした京都市が舞台になっている。
今作もそのひとつである。

京都市は京都の南部に位置する同府最大の市。そして県庁所在地でもある。
清水寺や京都御所、平安神宮など京都を代表する建物が多く存在している一方、本社を置く上場企業も多いことから、ビジネスの地と言う性質も持っている。
更に京都大学をはじめとする、多くの大学、短期大学などもキャンパスを置いている。
そのため学生の街と言うイメージも強い。

アニメ制作にあたっては、市内や下鴨神社、京都大学など、作品に登場する舞台に徹底的なロケハンが行われた。
ちなみにロケハンとは、撮影舞台に適した場所を探すことで、そこから転じて、その場所を下調べしたりすることにも利用される用語である。
それにあたり、京都市や下鴨神社、地元企業なども「協力」と言う形で参加している。

京都大学

主人公たちが在籍している大学。1897年に設立された国立大学である。
「自由な学風」を建学の精神としている。
そのためキャンパス本部にある正門には、学生たちによる様々な文言が描かれた立て看板が所狭しと設置されていたり、卒業式には様々なコスプレで参加する学生がおり、それが度々、ニュースでも取り上げられたりする。

しかし、教育機関としての水準は非常に高く、そのレベルは日本は勿論のこと、世界的にも認められている。
数々の著名人を輩出していることでも有名である。

鴨川デルタ

右が高野川。左が賀茂川。

京都市内の東から流れてくる高野川と、西から流れてくる賀茂川の合流点のこと。
このふたつが合流して鴨川になる。
人々の憩いの場所として親しまれている一方、様々な映画やドラマのロケ地としても利用されることが多い。

本作においては、「黒いキューピット」活動の一環で、「私」と小津が、この地で愛の時間を楽しむカップルたちにロケット花火を放っている。
また、自虐的代理代理戦争の後継指名の際にも、賀茂大橋が舞台になっている。

オープニングでも、「私」がこの鴨川デルタを前に立つシーンが挟まれている。

オープニングの一コマ。これを見ると、いかにロケハンが丁寧に行われ、実際の風景がそのままにアニメとして描かれているのかがよくわかる。

『四畳半神話大系』の用語

もちぐま

「私」にとって薔薇色の学生生活を得るためのチャンスは、いつも目の前にぶら下がっていたのだ。

明石さんが好きなクマのぬいぐるみである。
小説では餅のように柔らかいので、彼女がそう名付けていると言う設定で、アニメは固有のキャラクターとして設定されている。
5匹揃って「ふわふわ戦隊モチグマン」と言う設定。
この内、キーとなっているのは白色のもちぐま。

物語中において、この白のもちぐまは様々な場所で紛失されてしまう。
しかし必ず、紆余曲折を経て「私」の手に渡り、「私」が住む四畳半の部屋の蛍光灯の紐に吊るされる。

このもちぐまは、いわば「私」と明石さんを近づけるためのアイテムである。
つまり「私」にとっては、薔薇色の学生生活をゲットするための重要アイテムとも言えるのである。
実際、物語中においても、「私」と明石さんが会話をするシーン、その距離が近づきそうになるシーンは度々、登場する。
しかしその都度、「私」は、何かと言い訳をつけて、明石さんとの関係を進展させようとはしない。

「私」の学生生活が薔薇色にならないのは、勿論、小津のせいだと言う側面もある。
だが、それ以上に、目の前にぶら下がっているチャンスを勇気を出して掴もうとしない「私」にもある。

目の前にぶら下がっているチャンス=蛍光灯の紐に吊るされているもちぐま。

だからこそ、十一話においてそれを手にした瞬間、「私」は四畳半の世界から解放されたのである。

猫ラーメン

見るからに怪しそうな佇まいである。

下鴨神社界隈に出没するとされている屋台ラーメン屋。
猫から出汁をとっているとのうわさがあるため、このように呼ばれているが真偽は明かされない。
ただ、味は無類のようである。

無口な店主は自虐的代理代理戦争の立会人である。
そのため、自虐的代理代理戦争の和解の際は、この猫ラーメンを利用するのが習慣である。

自虐的代理代理戦争

賀茂大橋。次の代への引き継ぎはここで行われる習慣がある。

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