ジョーカー・ゲーム(ジョカゲ・Joker Game)のネタバレ解説・考察まとめ

『ジョーカー・ゲーム』とは、柳広司による日本の短編ミステリー・スパイ小説および、それを原作とした漫画、アニメ作品である。「D機関シリーズ」と呼ばれている。2016年4月から6月までAT-X、TOKYO MX他にて放送された。第二次世界大戦前の帝国陸軍内に結城中佐によって、スパイ養成部門「D機関」が秘密裏に設立される。そのD機関員たちが世界で暗躍する全12話のストーリーである。

『ジョーカー・ゲーム』の概要

『ジョーカー・ゲーム』とは、柳広司原作の短編ミステリー・スパイ小説であり、アニメ、映画、漫画にもなっている。2008年度の「このミステリーがすごい!」で第2位に、週刊文春ミステリーベスト10で第3位にランクインした。また2009年、第30回吉川英治文学新人賞及び第62回日本推理作家協会賞を受賞した。
世界大戦の火種がくすぶる昭和12年の秋、帝国陸軍の結城中佐によって、スパイ養成部門「D機関」が秘密裏に設立された。機関員として選ばれたのは、一般の大学を卒業し、超人的な選抜試験を平然とくぐり抜けた若者たちだった。彼らは結城中佐のもと、爆薬や無電の扱い方、自動車や飛行機の操縦法だけでなく、スリ、金庫破りの技に至るまで、スパイ活動に必要なありとあらゆる技術を身につけ、任地へと赴く。
「死ぬな、殺すな」と目立たぬことを旨とするスパイにとって自決と殺人は最悪の選択肢であるとするD機関は陸軍中枢部から猛反発を受けながらも、味方を欺き、敵の裏をかき、世界中で暗躍する。
作者である柳はデビューから一貫して歴史上の偉人を重要な役割として扱ってきた。しかし本作においてオリジナルのキャラクターを主役として扱うという、これまでの作風から変化を見せた。

『ジョーカー・ゲーム』のあらすじ・ストーリー

ジョーカー・ゲーム

武藤大佐の命令で、D機関の訓練生と共にスパイ容疑がかけられているゴードン邸を捜索した佐久間中尉だったが、スパイの証拠となるものは何も見つからなかった。

昭和12年の秋、陸軍中枢部の多数の反対意見を押しのけて、結城(ゆうき)中佐の提案でスパイ養成学校「D機関」が設立された。参謀本部からのD機関の監視をするよう密命を受けた佐久間(さくま)中尉が目にしたのは、超人的な選抜試験を易々とくぐり抜けた若い訓練生たちだった。

ある日、佐久間は武藤(むとう)大佐の命で、D機関の訓練生らと共に陸軍の暗号書を盗んだとしてスパイ疑惑のあるアメリカ人ジョン・ゴードンの家宅捜索する事になる。
佐久間達は憲兵隊に偽装して捜索を始める。しかしその際ゴードンが「二度目の捜索」と口走ったことで、既に一度武藤が家宅捜査を行い失敗している事が判明。武藤はD機関の設立に反対している人物だった為、D機関に再び家宅捜査をさせ、失敗をさせる事でその責任追求からD機関を解体しようと目論んでいたのだ。
2度も家宅捜査をされた事に突如憤慨し始めるゴードン。すると彼をなだめる為、訓練生の1人・三好(みよし)が、「何も見つからなかった場合は佐久間が詫びとして腹を切る」と進言する。

佐久間は切腹を覚悟するが、その時、本物の憲兵隊なら絶対に探さない場所である御真影(ごしんえい:天皇・皇后の写真のこと)の裏を探していないことに気がつく。そして訓練生に命じて、御真影の裏からスパイの証拠を発見させる。

後日、佐久間は結城が武藤の失敗に気づいていたのではないかと考える。
なぜ気づく事ができたのかと疑問を抱いた佐久間は、武藤がゴードン邸の家宅捜査を命令した日、二日酔いであったことを思い出す。そこで武藤が馴染みにしている料亭「花菱」を訪ねる。結果、佐久間は酔った武藤が、本来なら外部に漏らしてはいけない家宅捜査の件を芸姑に漏らした事、それを隣の部屋で客に扮していた結城が聽いていた可能性に気づく。
本来なら機密保持違反にあたる為、武藤は失脚するしかなかったが、結城はそれを不問にする事にしていた。武藤に貸しを作り、そこからD機関への予算を引き出すことを狙っていたのである。

結城は、武藤の陰謀を見抜いた佐久間をD機関に勧誘する。だが、あくまでも軍人である佐久間はそれを断るのだった。

誤算

1940年6月22日、ドイツにフランスは占領される。

その頃、D機関の波多野(はたの)は島野亮佑(しまの りょうすけ)という名でフランスのとある街に潜伏していた。ある日彼は、ドイツ兵に石を投げ、射殺されそうになっていた老婆を救う。
その結果、老婆を助けた波多野を守る為に立ち上がった市民とドイツ兵がもみ合いになってしまう。さらにドイツ兵が持っていた銃が波多野の側頭部に直撃。波多野は意識を失う。

次に目が覚めた時、羽多野はドイツ軍の支配に抵抗するレジスタンスのアラン・マリー・ジャンの3人に保護されていた。しかし記憶喪失に陥っていた彼は、所持しているパスポートから、自分が島野亮佑という名の男であると信じてしまう。
するとそこで彼は、心の奥底から、警戒を呼びかけてくるもう一人の自分が居る事に気づく。

一方レジスタンス側は、羽多野がただの日本人ではないのでないかと怪しんでいた。だがそこへ、レジスタンスを捕まえようと目論んでいたドイツ兵達がやってくる。羽多野は機転を働かせて3人を助ける。
アランは羽多野に気を許そうとするが、その時、マリーがドイツ側に人質として取られた家族を守る為にレジスタンスを監視していたスパイである事が発覚する。
羽多野は自分達をドイツ側に引き渡そうとしていたマリーを捕えるが、マリーを慕っていたジャンにより殴られ、気を失ってしまう。だがそれにより、次に目が覚めた時には己が何者であったのかを思い出す。

その後、自分を看ていてくれたアランと別れた羽多野は、結城と接触する。実は羽多野の役目は、フランス国内における傍観者、レジスタンス、コラボの割合を調査する事だった。
その為、羽多野は最初からレジスタンスの指導者的立場にあったアラン達と接触するつもりで、今回の騒動を起こしていたのだ。また結城からいざという時の為に、無意識のレベルで任務に必要な情報を体に染み込ませる方法を覚えていた羽多野は、それを用いて任務を行っていた。彼が聞いたもう一人の自分の声は、この無意識のレベルに刷り込まれた情報だったのだ。

結城は羽多野に日本へ帰国するように命じる。そして日本がドイツと同盟を結ぶ事を羽多野に告げる。それを知った羽多野は、以前自分が国に報告した「イギリスを相手にドイツは明確なビジョンがあるとは思えない」という情報が生かされなかった事を悟り、落胆するのだった。

魔都

本間軍曹に及川大尉の自宅の爆発は抗日活動家によるものではなく、大尉自身の自演であると言及され、それを居直りながら認める及川大尉。

上海派遣憲兵隊に配属されて3ヶ月目を迎えた本間英司(ほんま えいじ)軍曹は、ある日及川政幸(おいかわ まさゆき)大尉に呼び出される。
及川いわく、日本の情報が上海に漏洩されている可能性があり、憲兵隊内部に潜む内通者を捜査するようにとの事だった。その仕事は、実は本間の前任者の仕事でもあった。

するとその時、及川の自宅が爆破される事態が発生。及川、そして彼の部下である吉野(よしの)上等兵と共に現場に向かった本間は、そこでかつて取り調べを行った事がある日本記者の塩塚朔(しおづか さく)と再会する。
そして彼から、今回の爆破テロに草薙行仁(くさなぎ ゆきひと)という人物が関わってる事を教えられる。
草薙は、抗日活動家で、塩塚とは同じ大学の出だった。その晩、本間は草薙の姿を見つけ、彼の後を追う。だがその先で目にしたのは、ダンスホールにて違法賭博をしていた及川の姿だった。
それにより、本間は及川の爆破テロが起こった時の行動に違和感があった事を思い出す。そこから今回のテロが彼の自演ではないかという可能性を導き出した彼は、翌日、及川の下へその事を追求しに向かう。

言い逃れが出来ない事を察した及川は、己が違法賭博に手を染めてアヘンを横流しにしていた事実を隠蔽する為、抗日爆弾テロを装って自宅を吹き飛ばした事を認める。
上海の中でも治安が最も悪い地区に配属された及川。最初の頃こそは任務を完璧にこなそうとしていたが、次第に心身が疲弊し、酒や違法賭博に溺れるようになってしまったのだ。そしてその事に気付いたのが本間の前任者だったが、及川は金で雇った男娼の少年を使い彼を始末する。そしてその少年を始末する為に、自身の自宅に居た彼ごと家を爆破したのだ。

自分の罪を認めつつも、たとえ更迭されたとしても死刑にはならない事を知っていた及川は、「恥辱にまみれようと人間は生きることができる」と狂ったように本間に告げる。
だがその時、吉野が「恋人の敵だ」と及川を射殺する。実は吉野の恋人は、及川が爆死させた少年だったのだ。驚く本間の前で吉野は自決し、亡くなる。

一方その頃、塩塚の方は上海派遣憲兵隊の不正について国に報告していた。実は塩塚、そして草薙の正体はD機関の福本だった。彼は1人2役を演じる事で本間に近づき、及川の不正を暴かせようとしていた。
実は及川はアヘンの横流しだけではなく、情報漏洩の犯人でもあった。福本はそれに気付いた結城の命により動いていたのである。

憲兵隊の問題を隊内で解決させた事で、憲兵隊の顔を立てる事に成功したD機関。これにより彼らは、D機関が上海の軍で活動する事を国に認めさせる事に成功する。

ロビンソン

1939年、D機関の神永(かみなが)は、伊沢和男(いざわかずお)という名でロンドンに一市民として潜伏していた。だがある日突然、英国諜報機関に拘束される。

そこで神永は自分が日本のスパイであると疑われている事を知る。執拗な尋問を受ける事になるが、神永はそれでも己の正体を明かす事はしなかった。
すると痺れを切らした英国諜報機関が、スパイ・マスターと呼ばれるハワード・マークス中佐を尋問に投入する。ハワードは神永に自白剤を打ち、尋問を開始する。神永は抵抗するも、ハワードの口ぶりから自分が結城に売られたらしい事を知り、ハワードに二重スパイとして己を使わないかと持ちかける。

その後、神永はハワードからイギリス側で用意した偽情報を日本に打電するように指示をされ、その通りにする。そうして食事の時間になり、ハワードの前から離席した隙をついて、英国諜報機関からの脱出を試みる。
だが建物内にあった地図は偽物で、神永は機関の人間に追い詰められてしまう。しかし彼を捕まえに現れたのは、日本のスパイが捕まった時に逃がす役割を担った・スリーパーと呼ばれる人物達だった。

実は神永がイギリスに渡る3ヶ月前、日本陸軍の機密情報が外交官を通じてイギリスに漏れていた。陸軍はそれを阻止しようとしていたが、外務省は情報の漏洩を認めなかった。
しかしそれによりD機関の存在を漏らせば、外務省の責任問題が発生する。それを利用して陸軍の申し入れを受けさせるというのが結城の目論見であり、神永の拘束はそれを成功させる計画によるものだったのだ。

英国側の自白剤対策の為にスリーパーに関する情報を結城から教えられていなかった神永はその存在に驚くも、彼らの手を借り無事に脱出に成功する。

アジア・エクスプレス

D機関の田崎(たざき)は、瀬戸礼二(せと れいじ)と名乗り、満鉄の超特急あじあに乗車していた。
そこで彼は、ソ連の機密情報を自分に流していた在満ソ連領事館に勤務する二等書記官のモロゾフが死んでいるのを見つける。事が起こる3日前、モロゾフは田崎に緊急連絡を取ってきていた。
機密性の高い内容と判断した田崎は、この車内で情報を受け取る予定だった。モロゾフの傍にはタロットカード「吊るされた男」が落ちており、その絵柄の意味から田崎は彼が裏切り者として制裁を受けた事に気づく。

田崎は事件にソ連の諜報機関・スメルシュが絡んでいると判断する。実行犯はモロゾフの接触相手である自分も狙っている可能性もあり、田崎は下手に動けなくなる。
考え事をしながら癖である手品を行っていると、それに惹かれた乗客の子ども達がやってくる。そこで田崎は子ども達を利用して、乗客の中から犯人を探す事にする。すると、田崎の指示通りに動いた子ども達により、車掌が犯人のスメルシュである事が発覚。

田崎が犯人を追い詰めると、モロゾフの殺しには彼が入れあげていた踊り子のエレーナが関わっていた事が判明する。
モロゾフはエレーナと共に日本に亡命し、その後渡米しようと考えていた。だがエレーナはそれを望んでいなかった。
田崎はエレーナをスメルシュに引き渡すつもりはなく、日本の為に働くようにと告げる。そうして列車の終点駅にて、田崎はエレーナ達をD機関のメンバーに引き渡す。

だがそうして田崎を含むD機関のメンバーが苦労して収集した情報が日本国内で生かされる事はなく、欧米との戦争へと話は着々と進んでいく。その事に瀬戸は歯痒い思いをするのだった。

暗号名ケルベロス

D機関の甘利(あまり)は、内海脩(うつみ しゅう)という名で、日本へ向かう効果客船・朱鷺丸(ときわまる)に乗船していた。
その最中彼は、フラテという名の犬を連れた、シンシア・グレーンとエマ・グレーン母娘と知り合う。

体調が悪そうなシンシアの代わりに一時期エマの面倒を見る甘利。回復したシンシアにエマを渡した甘利は、今度はサンフランシスコの貿易会社を営んでいる老人・ジェフリー・モーガンと知り合う。

実はこのジェフリーこそが甘利のターゲットであり、彼を日本に入国させない事が甘利の任務だった。ジェフリーの正体は、かつて第一次世界大戦でイギリスの秘密諜報機関に雇われ、ドイツの暗号「エニグマ」の解読で活躍したルイス・マクラウドだった。
ケルベロスという組織に追われていた彼は日本への亡命を考えていた。日本ではドイツと同様の暗号形式を使っている自国に彼を入国させる事は危険であると判断され、結果、甘利にそれを阻止する命がくだったのだった。

甘利がルイスの正体について言及していると、イギリス海軍の船がやってくる。海軍はルイスを連れ戻す為、朱鷺丸に砲撃を開始。ルイスはそれに乗じて逃げようとするが、その際祝杯気分で飲んだ酒に毒が仕込まれていた事から、「ケルベロス」と呟いて息絶えてしまう。
彼の言葉が引っかかった甘利はケロベロスの正体を探リ始める。結果、調査中に彼はテラスにいたフラテの首輪の中に、ルイスと1人の男が写った写真を見つける。その男はシンシアの夫だった。
それにより甘利は、シンシアがケロベロスであると確信する。

甘利に自分がケロベロスである事を見破られたシンシアは、ルイスに利用され亡くなっていた夫の敵討ちの為に、ドイツのスパイになった事を明かす。甘利に全てを打ち明けたシンシアは、自分がルイスを殺したと海軍に自首する。甘利は残されたエマとフラテを預かる事にする。

ダブル・ジョーカー

統帥綱領を英国領事に横流ししたのではないかという疑いがかけられている白幡樹一郎の屋敷に出入りするように風戸中佐から命じられたのは、徴兵逃れを言及された書生森島邦夫だった。彼の正体はD機関の実井であり、この後D機関を排そうと目論む風機関を一網打尽にする。

風機関の蒲生次郎(がもう じろう)はある日、元外交官の白幡樹一郎(しらはた きいちろう)と英国領事アーネスト・グラハムの繋がりを探るように命じられる。
彼の所属する風機関は、D機関に対抗するために日本帝国陸軍中佐の風戸哲正(かぜど あきまさ)が作った陸軍内の組織だった。

蒲生のターゲットである白幡は、陸軍の統帥綱領(軍事機密として特定の将校だけに閲覧を許された軍事書物)を盗読した疑いをかけられていた。また親英家でもあった事から、ドイツと同盟を結ぼうとする陸軍の方針への反対から英国領事アーネスト・グラハムとつながっているのではないかと疑われていた。
蒲生は調査の為、アーネストと接触する。だが彼と白幡の繋がりに関する証拠は何も見つからず、蒲生はそのように風戸に報告する。

その半年前、阿久津(あくつ)中将は、統帥綱領の一件を利用してD機関と風機関を競わせようとしていた。
阿久津はD機関の「死ぬな殺すな」のやり方に好印象を持っていなかった。対し、風機関の心情は必殺にあった。
その為、風機関が統帥綱領の証拠を掴んだ暁には、彼らを正式な陸軍の特務機関として承認しようと阿久津は考えていたのだ。

風戸は白幡邸に出入りしている書生・森島邦雄(もりじま くにお)が徴兵逃れをしている事を逆手に取り、白幡の情報を教えるように彼を脅す。森島は白幡邸の統帥綱領の在処を、宿にいた風戸と風機関員に教える。
すると褒美として酒を振る舞われ、酔ったところを蒲生に殺されそうになる。
だが実は森島の正体はD機関の実井(じつい)であり、逆に蒲生を返り討ちにする。

一方風戸の方は、残った風機関の者達と白幡邸に向かっていた。だがそこで待っていたのは、主人の居ない屋敷と彼らの策略を見抜いていた結城だった。
結城は風戸達に統帥綱領は最初から存在していない事、そして存在していたとしても横流しするような価値がない事を告げる。

実はD機関側は、風機関よりも前にアーネストと白幡に注目していた。「英国との関係が冷えていく中で数少ないチャネルである白幡を殺すべきではない」と風戸に告げた結城は、そして屋敷に誰も居ないのは宿屋の仲居のおかげである事を彼らに明かす。
大陸の戦争が激化する中において男ばかりで宿に泊まった風機関を怪しんだ仲居が、森島が酔い潰されるのを目にし、白幡に危機が迫っている事を察知してその事を白幡に伝えていたのだ。

仲居にすらも正体を見抜かれるような風機関を結城は「粗末なスパイごっこ」と称し、その場を去る。D機関の相手にすらされなかった風戸中佐は自害をするのだった。

追跡

英国タイムズ紙極東派遣員のアーロン・プライスは、結城の正体を暴こうとしていた。
その結果、彼は陸軍幼年学校を首席で合格しながらも素行不良で退学となったある生徒・有崎晃(ありざき あきら)に目をつけ、彼こそが結城の正体ではないかと考える。

そこでアーロンは、有崎家に仕えていた里村老人に話を聞くことにする。結果、現在の晃の行方はわからないとの事だった。しかしそれが逆に晃が結城である証拠にアーロンには思えた。
だがそのタイミングで、アーロンは日本憲兵にスパイ容疑をかけられ拘束されてしまう。実は本当に英国諜報機関のスパイであったアーロン。憲兵からの尋問を受ける事になるが、その最中、突然釈放される。

驚くアーロンだったが、結城の正体を暴く任の為、再び里村のもとを訊ねる。だがそこで里村から見せられたのは、痩せこけた1人の老人だった。老人いわく、この痩せこけた人物こそが有崎晃本人であるという。
義勇兵として第一次世界大戦に参加したが、ドイツ側の毒ガス攻撃に巻き込まれ20年以上昏睡状態にあるのだという。
晃の治療を陸軍に要請しても帝国軍人ではないことから断られ、里村が途方にくれていたその時、そこに現れたのが結城だった。

「欧州で晃と親しかった」と言う結城は、彼が持つ館の費用を賄う事を条件に、自分(結城)の名を尋ねない事、将来誰かが晃の事を尋ねに来たら自分が作った嘘の過去を教える事を里村に約束させる。
それはつまり、結城の正体を暴こうとする他国のスパイが居た際、その人物を暴く為に昏睡状態の晃が利用されていたという事実に他ならなかった。

さらにアーロンを捕縛した憲兵は、D機関員であった事も判明。彼らの目的は、アーロンが10年近くかけて集めてきた日本の情報や人脈を抑えたマイクロフィルム入りの結婚指輪だった。
スパイ生命にも関わるそれを、尋問の最中に奪われてしまった事に気付いたアーロンは途方に暮れる。だがそこに彼の妻であるエレンがやってくる。エレンの姿を見たアーロンは、スパイを引退し、余生を彼女と過ごす事に決める。

D機関の三好は、真木克彦(まき かつひこ)という名で美術商をしていた。だがある日、列車事故に巻き込まれ死亡してしまう。

その後、現場にやってきたドイツ軍国防軍が、1人のコソ泥が三好から盗んだマッチを持っている事に気づく。ドイツ軍国防軍情報部所属の軍人であるヴォルフの副官であるヨハン・バウアーは、三好(真木)の身辺を洗うが、彼にまつわる情報は何も出てこなかった。

しかしヴォルフの方は三好はスパイであると確信していた。日本はドイツの友好国であるのに、日本のスパイがドイツで何をしているのかとヨハンは訝しむ。
そこで彼はヴォルフから、彼が22年前からスパイマスター「魔術師」と呼ばれる日本のスパイと因縁があった事を聞く。この魔術師こそが、若かりし頃の結城であった。
魔術師の尋問中に、彼が左腕を手榴弾で吹き飛ばして脱出経路を開いた所為で、ヴォルフは右目を負傷する羽目になった。

情報の協力者を操るスパイマスターでもあった三好が死んだということが広まれば、協力者たちの間に動揺が広がり、ドイツ国内での情報網が崩れる。
それを防ぐ為、結城が協力者の情報を回収しにくるのではないかとヴォルフは考える。そこで結城に会う為、三好の遺体があるベルリン病院へ向かう。するとそこで遺体のシャツの襟元が小さくちぎられている事に気づく。
それは遺体が回収された時にはなかったものだった。

実はこの時、三好の遺体は訪れる者の監視の為に個室に移されており、その前は老人の遺体と一緒にあった。その際、老人の身元確認に1人の杖をついた老人がやってきていた。
それは結城が変身した老人であり、彼はヴォルフがやってくるよりももっと前に、三好の襟元にあった協力者のリストが記されたマイクロチップを回収していたのだ。

その事に気付いたヴォルフは、己がまたしても魔術師に出し抜かれた事を察したのだった。

JINJIN21873
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