魔法使いの嫁(まほよめ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『魔法使いの嫁』とは、ヤマザキコレによるマンガ作品。2014年1月号から9月号まで「月刊コミックブレイド」で連載された後に「月刊コミックガーデン」へと移った。この物語は、夜の愛し仔(スレイ・ベガ)である「チセ」が異形の魔法使い「エリアス」に買われるところから始まる。人ではない者が見えることにより、たくさん傷ついてきたチセは、その能力により様々な出会いを繰り返し自分と向き合っていくのであった。

CV:種﨑敦美

本作の主人公。
特殊な魔法体質「夜の愛し仔(スレイ・ベガ)」と呼ばれる存在で、作中でも非常に珍しい存在。
「智世」は作中ではカタカナの「チセ」で表記される。
人と接してこなかったため口下手で自己評価が低いが、困っている人を見捨てられず、他人のために身を削って行動するなど他人想いの性格でもある。
しかしそれは自己犠牲で自分の居場所を得ようとする行為でもあった。
始めは自滅願望のあったチセであったが、エリアスたちとの出会いで成長し、生きたいと願うになっていく。
死期の近いドラゴンの「ネヴィン」に出会い、死後菩提樹となったネヴィンの枝から自分の杖を作った。
魔法使いとしてはスレイ・ベガ)であるために天才的な才能を持っているが、スレイ・ベガであるために体が脆く、大きな魔法を使うたびに倒れてしまう。
また、スレイ・ベガであるが故に妖精から好かれ「愛し仔(ロビン)」と呼ばれる。
しかし妖精の愛し方が人間にとって良い物とも限らず、エアリアルたちには一度妖精の国へ連れて行かれそうになった。

チセの母親もチセと同じく特殊な体質を持っており、父親はそんな母親を害する者から助け、チセの弟「史輝」と4人で暮らしていた。
しかしある日父親は弟を連れて失踪、母親は一人でチセの世話をするが、それも限界になり精神を病んでチセの首を締めた後、投身自殺した。
チセは体質から親族達にも疎まれ一人孤独に暮らしていたが、自暴自棄になり身投げしようとした所をセスに声を掛けられ、自ら人身売買に身を投じ、イギリスの闇オークションにかけられる。
そこでチセを買ったのがエリアスで、チセはエリアスの「弟子」兼「お嫁さん」となる。
しかしスレイ・ベガであるために短命で、何の対処もしなければあと3年の命と宣告される。
チセは「墓守犬(チャーチ・グリム)」のユリシィと使い魔の契約をし、ユリシィに新しく「ルツ」という名を与える。
エリアスはチセに体の負担を失くす「魔力の生産を抑える指輪」をプレゼントするが、チセは妖精の塗薬を作った際に壊れてしまう。
その後どんどんチセの様態は悪化し、さらにドラゴンを救う為にドラゴンの魔力を自分の身へ移し、ドラゴンの呪いを受け左手がドラゴンの腕になってしまう。
その事でチセはさらに寿命を短くしてしまい、エリアスとルツはチセの友人「ステラ・バークレム」の命を身代わりにチセを救おうとする。
しかしチセはそれを許さず、これまで心を許していたエリアスとルツを遠ざけ、一人カルタフィルスの元へ行く。
カルタフィルスと目を交換したことで、母親に殺された過去の悪夢を見せられ、チセは記憶の中の母親と向き合う。
自分と似たカルタフィルスをほおっておけず、彼を救う為に子守唄を歌って眠りの魔法で眠らせた。
死へ導くドラゴンの呪いとカルタフィルスから移された不死の呪いは折り合いをつけ、チセはいつか来る時が来たら死ぬ、つまり普通の人間と同じになった。

エリアスに対しては、始めは自分を必要としてくれるならどんな風に思われていても良いと思っていたが、次第にもっとエリアスの事が知りたいと思うようになり、掛け替えのない存在となっていく。
ルツに対しては隠し事が出来ないため、本心で語り合い、口下手なチセの気持ちをルツが代弁する事もある。
アリスとステラという人間で同性の友人ができ、アリスとはクリスマスのプレゼントを買いに二人で出かける仲になった。
チセの事情を何も知らないステラとは、初めて出来た普通の友人として接するようになる。
これによりエリアスは嫉妬するようになり、この辺りを境にエリアスが駄々っ子の子供でチセが母親のような関係になっていく。

エリアス・エインズワース

CV:竹内良太

チセを買った異形の魔法使い。
姿を自在に変える事ができ、チセの影に隠れたり、人間の男性の姿になったり、人間の女性の姿になることも出来る。
茨の蔓のような触手を持ち、破壊を得意とし、「影の茨(ソーン)」「裂き喰らう城(ピルム・ムーリアリス)」の異名を持つ。
正体ははっきりと明かされておらず、「元は精霊」「影に属する存在」「肉の殻を持つ者(リャー・アナム)」「人間になろうとした精霊」など断片的に語られる。
チセがカルタフィルスから攻撃を受けた際には怒りで獣のような姿になり、そちらの姿が本来の姿な模様。
かなりの力を持つ魔法使いであるため、教会の神父に監視されている。
教会と問題を起こすのも面倒なため、適度に言う事を聞き、程度に自由に振舞う。
人間嫌いの世捨て人で、いつもは家に引き篭もっている。
そのためチセを買い取った事は周囲から意外だと驚かれる。
チセの前では大人っぽく紳士に振舞うが、実際には他人の気持ちが分からないため言葉が足りず、常識に欠けたところもあるなど、チセからも段々と問題児扱いされるようになる。
他人の気持ちが分からないと言うのは言葉の比喩ではなく、本当に理解できておらず、チセに人間の感情について教えを請う。
チセが人間の女の子であるステラと仲が良い事に嫉妬し、ステラを生贄にチセを助けようとしチセの逆鱗に触れてしまう。
チセはエリアスと一緒に考えて行動したかったし、そう約束したと思っていたが、それをエリアスが破った事に腹を立てていた。
エリアスは、初めて自分だけの存在になってくれたチセに対して強い依存心と独占欲を持ち、チセ曰く子供のまま大人になってしまったかのような存在。
ステラの件でチセに弁解を求められるが、何でも勝手に決めてしまうチセも悪いと反論し、お互いに話し合い折り合いをつけることになった。
その時に決めたルールで、チセは危ない事に首を突っ込まない・何かする時は誰かに相談するなどの約束をした。
その後ドレス着てヴェールを被ったチセから指輪をプレゼントされ、お互いに左手の薬指に指輪を嵌めた。

遠い昔、エリアスは何故歩いてるのか分からず森を歩き続け、森の中でリンデルと出会う。
その後、自身の正体を知るためにリンデルの師匠に会うことになるが「妖精寄りだがわずかに人間が入っている」と言われる。
リンデルの師匠から歩き出す前に何か覚えていることはないかと問われたエリアスは「赤」と答え、それだけしか覚えていなかった。
しかしエリアスはリンデルが人間に怪我をさせられた際に、「恐らく自分は人間を食べたことがあると思う」と告白するのであった。
リンデルとは現在は離れた場所に住んでいるが、チセを一人で託すなど信頼関係を持っている。

シルキー

CV:遠藤綾

エリアスの家に住む妖精で家事全般をこなす家事妖精(ブラウニー)。
「銀の君」や「銀の花」と呼ばれている。
人間に似た姿をしているため、エインズワース家に訪ねてきた人たちの対応をしている。
サイモンを毛嫌いし、自分1人の時は家に入れない。
人間の女の子であるチセを特に可愛がっており、チセ不在時には寂しそうな顔をしたり、チセがエリアスの部屋から一晩出て来られなかった時は、部屋の扉の前でハンマーを持ってエリアスが不埒な事をしないよう監視していた。
魔法で壁紙を張り替えるなどの模様替えをする事が出来る。
普段は無口且つ無表情であるが、何も考えてない何も感じていないわけではなく、シルキーの小さな表情の変化や行動に感情が表れている。
『シルキーちゃん日記』では感情豊かな姿が見られる。

エインズワース家に来る前はバンシーであった。
バンシーとはアイルランド及びスコットランドの妖精で、人の死を予告するといわれている存在。
憑いていた家が絶えてしまい、行く当ても無く一人泣いていたところを「丘の防人」にエリアスが住む前のエインスワース家と思われる家に導かれた。
バンシーの頃は、バンシーの伝承通りのフードを被った姿であったが、「丘の防人」によって現在の姿にしてもらう。
その際に銀の花のような姿だと褒められ、シルキーの名を貰う。
『シルキーちゃん日記』では「丘の防人」と文通を行っている描写がある。

ルツ

ルツ(普段の姿)。

ルツ(人間の姿)。

CV:内山昂輝

教会の墓場でチセと出会った「墓守犬(チャーチ・グリム)」、「黒妖犬(ブラックドッグ)」という名もある。
元々は普通の犬「ユリシィ」であったが、飼い主のイザベルの死後、墓から離れず寄り添い続けて死亡し墓守犬となった。
生前自分が犬だと言う自覚が無く、イザベルの兄(人間)だと思っていたため、現在は人間の姿になる事も出来る。
チセにイザベルを重ね、自ら望んでチセと使い魔の契約をし、新しい名「ルツ(ヘブライ語で「哀れみ深い友」の意味)」の名を貰った。
チセとは一心同体になり、思っているや過去を共有し、チセが死ぬとルツも死ぬ。
そのためチセはルツには嘘をつけず、自分の口から気持ちの言えないチセの代わりにルツがフォローする事もしばしば。
結界など張られていない限りは、チセが何処にいるのか感知できる。
普段は犬の姿あるいは人間の姿でチセの側にいて、チセを色々な危機から守る。
イザベルの時と同じく、チセに対しても兄のようなつもりでいる。

学院(カレッジ)

ミハイル・レンフレッド

CV:日野聡

魔法使い嫌いで有名な魔術師。
一方的にエリアスと対立している。
顔の傷は、弟子であるアリスを庇ってできたもの。
カルタフィルスに研究素材集めの協力を頼まれ一度は断るが、アリスをキメラの材料にすると脅され、仕方なく手伝う。
その際に、左腕をカルタフィルスに奪われ失った。
カルタフィルスとの繋がりが切れた後はチセを心配するなどし、根は良い人。
酔うと泣き上戸になる。

アリス

CV:田村睦心

レンフレッドの弟子であり護り手。
薬物中毒であった両親により、麻薬を仕入れるために無理やり薬物中毒者にさせられ売人となる。
しかし偶然出会ったレンフレッドに魔術師の才能を見いだされて救われた。
最初こそレンフレッドを信用していなかったが、自分を庇ったことでレンフレッドがケガを負ってしまったことを機に「護り手として次は護る」と約束をする。
レンフレッドを慕っており、彼のためなら何でもしたいと考えている。
始めはエリアスやチセに対して敵意を持った態度を取るが、1人の男性に拾われ弟子になった女という境遇の似たチセと仲良くなっていく。
クリスマスにはチセと2人で街に行き、チセはエリアスにループタイを、アリスはレンフレッドへのプレゼントにお酒を買った。

妖精

オベロン

CV:山口勝平

妖精王。ティターニアの夫。
お調子者でドMであるが、時折鋭い発言をする。

オベロンとは中世・ルネサンス期に文学や伝承で登場する妖精の王。
シェイクスピアの戯曲『夏の夜の夢』では、妖精の女王タイターニア(本作ではティターニア)の王配として登場。

ティターニア

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