魔法使いの嫁(まほよめ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『魔法使いの嫁』とは、ヤマザキコレによるマンガ作品。2014年1月号から9月号まで「月刊コミックブレイド」で連載された後に「月刊コミックガーデン」へと移った。この物語は、夜の愛し仔(スレイ・ベガ)である「チセ」が異形の魔法使い「エリアス」に買われるところから始まる。人ではない者が見えることにより、たくさん傷ついてきたチセは、その能力により様々な出会いを繰り返し自分と向き合っていくのであった。

『魔法使いの嫁』の概要

『魔法使いの嫁』とは、作者「ヤマザキコレ」による漫画作品。
2014年から「月刊コミックブレイド」で連載を開始し、同年9月にオンライン雑誌「月刊コミックガーデン」で同時連載を開始。
2016年にドラマCD化、さらに三部作のOVA「魔法使いの嫁 星待つひと」を発表。
2017年には、WIT STUDIO製作でテレビアニメ化。
テレビアニメは2クール編成で放送され、作者が製作したネームを元に原作の先の展開を先行アニメ化した。
アニメは2クールで終わるが、原作は続き新章へ突入する。

本作は一巻発売から重版が決まるなど反響を集め、2017年11月の時点でコミックの類型発行部数は500万部を突破。
2014年「コミックナタリー大賞」で2位、同年「2014年コレ読んで漫画ランキング」で6位を取得。
2015年「書店員が選んだマンガランキング2015」で1位、同年「次にくるマンガ大賞2015「これから売れて欲しいマンガ」部門」では2位を取得した。

世界観や設定など細部まで拘って作られており、2017年には公式副読本「魔法使いの嫁 公式副読本 Supplement」が発売。
単行本の裏側には、書き下ろし漫画『シルキーちゃん日記』や家の間取りが書かれている。

主人公「羽鳥智世(はとり ちせ)」は、特殊な魔法体質を持つ「夜の愛し仔(スレイ・ベガ)」と呼ばれる存在であった。
チセはスレイ・ベガであるために、小さい頃から人に見えない物が見える体質であり、その事が原因で家族を失い、他人から疎まれて生きていた。
自暴自棄になり生きる気力を失くしてしまったチセは、自らイギリスの闇オークションの商品として売られる事を望んだ。
チセを500万ポンドもの高値で買ったのは、骨頭の人外魔法使い「エリアス・エインズワース」であった。
エリアスはチセを弟子及びお嫁さんにするつもりであることを告げ、チセの生活は変化していく。

『魔法使いの嫁』のあらすじ・ストーリー

魔法使いの弟子

主人公・羽鳥智世(はとり ちせ)ことチセは、生まれたときから人でも動物でもない何かが見えており、常にそれらに脅かされる生活を送っていた。父がいるときは安全だったが、あるとき父が弟を連れて家を出て行ってしまう。チセと同じ体質を持つ母は懸命にチセを育てていたが、生活は苦しく、あるときチセに「あんたなんか生まなきゃよかった」と言い放って自殺してしまう。
それからチセは親戚をたらい回しにされながら、ひとりぼっちで生きていた。15歳になったチセは人生に何の希望もなく、母と同じように死のうとしていたところを見知らぬ男性に声をかけられる。「生きることを投げ出したいなら、貴方を欲しいと思う誰かに自分を預けてみないか?」という言葉に頷いたチセは、自分を人身売買のオークションに出品する。
チセを買ったのは、獣の頭骨のような頭をした人外の魔法使い、エリアス・エインズワースだった。
エリアスはチセが「夜の愛し仔(スレイ・ベガ)」という、無限に魔力を生み出す極めて珍しい体質であると説明する。そして自分の目的を、チセを「弟子にする」ことと「お嫁さん」にすることだと語った。
こうしてチセはエリアスと共にイングランドで暮らすことになった。

竜の国

エリアスはチセを連れてハニームーン(蜜月、ハネムーンのこと)に出かける。ふたりが訪れたのはアイスランドにある竜の国だった。
貴重なドラゴンは密猟の対象になることが多く、人間社会から隠れて暮らしている。チセは竜たちの管理者である魔法使い、リンデルに出会った。彼は一般の人間たちからドラゴンを隠す仕事をしており、エリアスの師匠でもあった。
チセは死期の近いドラゴン、ネヴィンと知り合う。ネヴィンは体に樹木の種を埋めており、死んだら樹木そのものになるとチセに語る。ネヴィンはチセの心を見透かし、「生きる者が死者を羨むものじゃない」と諭す。ネヴィンは空を飛んだ時の記憶をチセに見せ、「生きるために飛びなさい」と、生きることを促した。自分の樹でチセの杖を作るように言い残すと、ネヴィンは安らかに眠りにつき、その体は立派な大樹となった。チセはネヴィンの穏やかな最期を羨ましく思うのだった。

猫の王

エリアスに連れられてウルタールを訪れたチセは、猫の王・モリィに出会う。チセはモリィからある相談を持ち掛けられる。その地にはかつて猫を殺して回る者がいたが、初代の猫の王に退治された。そのときに生まれた澱みが未だに湖にあり、代々の猫の王はその命と引き換えに澱みを封じてきた。しかし最近になって澱みが湖から出ようとしており、そうなってしまえば猫だけでなく人間にも被害が及ぶという。
チセはエリアスと共に湖へ向かうが、そこに魔術師のレンフレッドとその弟子のアリスが現れ、ふたりの邪魔をする。レンフレッドは澱みを回収しようとしていた。レンフレッドはエリアスを「好奇心のために哀れな子どもを利用している」と非難し、チセにスレイ・ベガが短命であることを教える。無限に魔力の吸収と生産を続けるスレイ・ベガの体質は人間には負荷が大きく、長生きできないのだという。チセをエリアスから助けようとするレンフレッドだったが、チセはレンフレッドを拒絶し、「例え嘘でも自分を家族と言ったのはエリアスだけ」「エリアスが私の手を離すまでは、私はあの人のものです」と断言する。
チセはエリアスにレンフレッドの足止めを任せ、澱みに触れる。するとチセの目に遠い昔の光景が映った。
昔、マシューとミナという若い夫婦がいた。ミナは重い病気で医者にも打つ手がないと匙を投げられてしまう。ミナを救いたいマシューは少年の姿をした魔術師に「猫には命が9つある」とそそのかされ、次々と猫を手にかけていく。ミナは少年が作った秘薬を飲まされるが、体が泥のようになって死んでしまう。少年は「失敗だ」と言って立ち去る。マシューはミナの飼い猫だったティムによって息の根を止められた。
チセの力で澱みは浄化され、マシューとミナは行くべきところへ行くことができた。

ルツ

レンフレッドに澱みの回収を命じたのは、マシューをそそのかした魔術師の少年だった。レンフレッドはアリスを人質に取られていた。
エリアスはチセを連れて、ある教会を訪れる。ブラック・ドック又はチャーチ・グリムと呼ばれる、墓を守る番犬の調査のためだった。その教会の墓地にいたブラック・ドックは、生きた犬だった頃に兄妹のように過ごした少女、イザベルの墓を守っていた。そこに魔術師の少年の命令でブラック・ドッグを捕まえに来たアリスが現れる。アリスはレンフレッドを守るためにブラック・ドッグを差し出そうとしていた。
ブラック・ドッグを守りたいチセとアリスが争っていると、アリスを口封じに始末しにきた少年魔術師が現れる。エリアスは少年を「カルタフィルス」と呼ぶ。カルタフィルスはイザベルの遺体を使ったキメラ(合成獣)でチセたちを攻撃してくる。
イザベルが二度と戻らないと理解したブラック・ドッグは、チセを守るために「結び」の契約を求める。魔法使いと使い魔の契約の中でも時間や感覚を共有する強力なものだ。チセによって「ルツ」という新しい名前を与えられたブラック・ドッグの力でカルタフィルスは退けられた。カルタフィルスは「僕の名前はヨセフだよ」と言い残して去っていく。
イザベルは今度こそ安らかな眠りにつき、チセはエリアスとルツと共に家に帰るのだった。

杖づくり

チセは自分の杖を作るため、ルツと共に竜の国へ向かう。約束通りネヴィンの枝から杖を作りながら、チセはリンデルからエリアスのことを聞かされる。
リンデルはエリアスよりずっと長く生きており、かつては遊牧の旅をしていた。その途中で、記憶をなくして途方に暮れているエリアスに出会った。リンデルは師匠のラハブのもとにエリアスを連れていき、エリアスはラハブから名前をもらった。それからリンデルとエリアスは一緒に旅をしていたが、あるときエリアスは「自分は昔人間を食べたことがあるかもしれない」と語る。
エリアスについてリンデルが知っているのはここまでだった。
夜、チセは家に残っているエリアスと会話をする。エリアスは「チセがいないと家の中が寒い」と語る。チセはエリアスともっと話したいと感じていた。
杖が完成すると、チセは妖精たちの力を借りて炎の鳥となり、空高く飛んでエリアスのもとへ帰るのだった。

ステラ

あるとき、チセは家の近くでステラという少女に出会う。ステラの弟が行方不明になる事件を経てふたりは親しくなり、チセは初めて魔法とは関係のない人間の友達ができた。ステラと交流を重ねるチセだったが、それを見たエリアスは複雑な感情を抱えていた。
生まれて初めて他人に嫉妬したエリアスは感情に任せてチセを取り込もうとしてしまうが、チセに叱責されてしぶしぶ引き下がる。

ドラゴンの呪い

チセとエリアスのもとに、ドラゴンの雛が密猟にあったという報せが飛び込んでくる。レンフレッドによるとカルタフィルスが絡んでいる事件だという。
チセは自分を売ったときのブローカーに連絡し、雛が競売にかけられる会場を特定した。
エリアスと共に会場に向かったチセだが、パニックになった雛が暴れ出して会場は火の海になってしまう。チセはスレイ・ベガの力で雛の魔力を吸収して落ち着かせることに成功するが、ドラゴンの呪いを受けてしまった。
雛を竜の国に帰すことはできたが、ドラゴンの呪いはチセの命を蝕み、近いうちに確実に死んでしまうという。もともと短命であることを受け入れていたチセは落ち着いていたが、エリアスは違った。チセを失うことを恐れて取り乱すエリアスに、チセは「どうしたらふたりで生きられるか一緒に考えよう」と言う。
一方、カルタフィルスはステラを通してチセたちを見ており、チセがドラゴンの呪いにかかったことを把握していた。

カルタフィルス

チセとエリアスは呪いを解く方法を探すが、成果は上がらない。思いつめたエリアスはルツを巻き込んで、ステラを犠牲にしてチセの命を救う手段を取ってしまう。
チセはエリアスの異変を感じ取り、エリアスがステラを犠牲にしようとしたことを知る。エリアスに失望したチセが彼を拒絶して家を飛び出すと、ステラの体を乗っ取ったカルタフィルスに取引を持ち掛けられる。チセが応えればカルタフィルスはチセが死なない方法を教え、ステラを解放すると言う。チセはカルタフィルスと共にエリアスの前から姿を消した。
カルタフィルスは死ねない呪いを受けており、それを解くためにチセの呪いと自分の呪いを交換しようとしていた。気絶したチセはカルタフィルスの過去を見る。
遠い昔、ヨセフという墓守の少年がいた。あるときヨセフはカルタフィルスという男に出会う。孤独だったヨセフは初めての友人を喜んだが、カルタフィルスはひどい病身で、それでいて死ぬことがなかった。まったく良くならないカルタフィルスを前に心を病んだヨセフは、ふたりがひとつになればふたりとも助かることができるのではないかと考える。
ふたりは融合したが、ひとつになったカルタフィルスとヨセフの体は病み続け、生きたまま体が腐っていく最悪の結果となってしまう。
駄目になったパーツを他人から奪っては付け替え、継ぎはぎを繰り返すうちに記憶が混濁し、自分が何者であるのかもわからなくなってしまった。
チセに記憶を見られたカルタフィルスは逆上し、チセから力ずくで呪いを奪おうとするが、そこにレンフレッドたちが現れる。チセは逃亡したカルタフィルスの後を追い、その途中でエリアスとルツに会う。チセは「まだ怒っている」と前置きした上でふたりに協力させ、カルタフィルスに追いつく。
チセはカルタフィルスを、「誰にもわかってもらえず、他人を羨み、自分が逃げ出すためなら何をしてもいいと思っているところが自分と似ている」と言い、カルタフィルスに眠りの魔法をかける。
チセは重傷を負ったが、カルタフィルスはチセの魔法で眠り続けることになった。チセの中に入り込んだカルタフィルスの欠片は死なない呪いでチセを生かし続け、ドラゴンの呪いはチセを殺し続ける。ふたつの呪いが均衡したことで、チセは今すぐに死ぬことはなくなった。いつかはわからないがいつかは死ぬ、普通の人間と同じ状態になったのだった。

魔法使いの嫁

目を覚ましたチセはエリアスと大喧嘩をした。チセはエリアスが自分に相談もせずにステラを犠牲にしようとしたことを怒り、エリアスは「相談せずに何でも自分で決めてしまうのはチセの方だ」と責めた。
長い喧嘩と話し合いの末、エリアスはチセに「危ない事に首を突っ込まない・怪我をしそうになったら手を引く・動く前に誰かに相談」の3つのルールを作った。
ふたりはこれからも話し合うことを諦めず、何かあってもきっとふたりで落としどころを探そうと約束する。チセがエリアスに「これからはあなたの隣で一緒に歩いてもいいですか?」と尋ねると、エリアスは「勿論。君は僕のお嫁さんなんだから」と答えるのだった。

『魔法使いの嫁』の登場人物・キャラクター

エインズワース家

羽鳥智世(はとりちせ)

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