ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生(ゲーム)のネタバレ解説まとめ

『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』(Danganronpa: Trigger Happy Havoc)とは、2010年11月スパイク(現スパイク・チュンソフト)から発売されたPSP向けのゲーム。ダンガンロンパシリーズの第1作目となる。
2013年にはアニメ化、2014年には舞台化されている。
今作は才能あふれる「超高校級」が集められる希望ヶ峰学園で16人の高校生が監禁され、コロシアイを強要されるストーリーとなっている。

『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』の概要

『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』(Danganronpa: Trigger Happy Havoc)とは、2010年11月スパイク(現スパイク・チュンソフト)から発売されたPSP向けのゲームである。
ダンガンロンパシリーズの第1作目となる。
ソフト発売後もスマホアプリ配信、アニメ化、舞台化、続編との同梱版発売、PC移植版を世界で発売等、ダンガンロンパシリーズの中でも高い人気を誇っている。
推理アドベンチャーを軸に、アクションの要素を加えたゲーム内容となっている。
公式が発表しているのは「ハイスピード推理アクション」という独自のジャンル。
モノクマの声優を務めた大山のぶ代の『ドラえもん』以来5年ぶりの出演作になった事も話題となった。
今作では才能あふれる「超高校級」という称号を持つ高校生が集められる希望ヶ峰学園で監禁された16人が、ある日「学園長」を名乗るモノクマというクマのぬいぐるみにコロシアイを強要され、学園の謎やコロシアイを仕組んだ黒幕に迫るストーリーとなっている。

『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』のあらすじ・ストーリー

本作主人公でありながら、「超普通」の高校生・苗木誠

都会のど真ん中にそびえ立つ「私立 希望ヶ峰学園」。
あらゆる分野の超一流高校生を集め、国の将来を担う「希望」を育て上げる事を目的とした、政府公認の超特権的な学園だ。
世間では希望ヶ峰学園を卒業すれば、「人生において成功したも同然」とまで言われている。
何百年という歴史を持ち、各界に有望な人材を送り続けている伝統の学園。
希望ヶ峰学園の入学資格は、「現役高校生である事」、「各分野において超一流である事」の2つ。
そして、新入生の募集は行わず、学園側のスカウトによってのみ入学が可能となる。
そんな学園の前に一人の男子高校生が立っている。
苗木誠、外見も中身も平均的な普通の高校生だ。
苗木には性格、趣味、特技、成績、どれを取ってもこれと言った特徴がない。
好きなアイドルやマンガ、音楽、映画は、ランキングの1位が苗木の大抵好きな物だ。
そんな苗木の唯一の取り柄は「人よりもちょっと前向きな事」。
普通の中の普通である苗木が、何故希望ヶ峰学園なんていう普通ではない場所に来ているのか。
理由は希望ヶ峰学園から届いた1通の手紙。
手紙には「今回、我が校では平均的な学生の中から、抽選によって1名を抽出いたしました。その結果、当選したあなたを『超高校級の幸運』として我が校に招き入れる事になりました」と書かれていた。
苗木は、ただの「運」によって希望ヶ峰学園の入学を許されたのだ。
そして今日の入学式。
ただの「運」で選ばれた普通の高校生は、希望ヶ峰学園を前に尻込みをしていた。
苗木は再度、手にしていた入学案内に目を通す。
そこには、「新入生は8時に玄関ホールに集合」と書かれている。
まだ8時まで時間はあったが、外に居ても落ち着かない為、苗木は意を決して希望ヶ峰学園に足を踏み入れた。
キレイで大きな玄関ホールには、誰も居ない。
ホールに置かれている、立派な置時計は7時10分を指していた。
苗木は緊張のあまり、50分も前に学園に着いていたようだ。
集合時間にはあまりにも早い為、先に学園内を見る事に決めた苗木。
希望ヶ峰学園での最初の一歩を踏み出した瞬間だった。
突然、苗木の視界は歪み、すぐさま意識も飛んだ。

苗木が意識を取り戻した時には、どこかの教室の机に突っ伏していた。
何故自分が机の上で寝ていたのか、何故見覚えないのない教室に居るのか、苗木には分からない事だらけだった。
ひとまず苗木は立ち上がり、辺りを見回した。
苗木が突っ伏していた机には、小学生が描いたようなイラストと文字の手書きの入学案内が置かれていた。
「心機一転、これからはこの学園がオマエラの新しい世界となります」という悪ふざけのような文章だった。
それから、教室の中には黒板の手前に監視カメラが設置されている。
希望ヶ峰学園という特殊な学校だから、不審者対策なのだろうと苗木は納得した。
しかし、教室の窓の状態には苗木も納得はしかねた。
そこには、白い鉄板のような物が大きなボルトで打ち付けられていたのだ。
それから、教室の時計を確認すると既に8時を回っている所だった。
苗木はひとまず、廊下へ出て玄関ホールへと向かった。

苗木が目を覚ました、不気味な教室

教室同様、廊下も異様な雰囲気だった。
ピンクのタイル床に、ピンクの壁紙。
おおよそ学校の中とは思えないような雰囲気だ。
苗木は玄関ホールへ向かい、扉を開けた。
するとそこには、14人の人間が集まっていた。
どうやら、彼らも苗木と同じく、今日希望ヶ峰学園に入学する予定だった新入生のようだ。
苗木は自己紹介をすると共に「色々あって、いつの間にか寝ちゃって…それで遅れちゃって…」と言った。
それから、遅れてきた苗木の為に自己紹介を再度していく流れになった。
まずは、白い詰襟をキチッと着こなし、腕章をつけた短髪の男子生徒。
彼は「超高校級の風紀委員」である「石丸清多夏」と名乗った。
苗木は、希望ヶ峰学園にやってくる前、事前情報を集めるのを目的としてネット上の巨大掲示板を訪れ、自分と同じ時に入学する超高校級を調べていた。
それによると、石丸は有名進学校で常にトップの成績を取り続け、素行も非の打ち所がない超優等生だと書かれていた。
石丸は「苗木誠だったな、いい名前じゃないか。その名前に負けぬよう、日々精進したまえよ!人生には努力を費やすだけの価値がある!」と言った。
苗木は、少々暑苦しく、面倒臭そうな人物と石丸を位置づけた。
続いて、三つ編みもスカートも長く、眼鏡をかけた大人しそうな少女。
彼女は「超高校級の文学少女」である「腐川冬子」。
苗木は掲示板で見た腐川の情報を思い出していた。
腐川はわずか10歳の時に書いた小説が話題となり、小説家デビュー。
2年前に執筆した「磯の香りの消えぬ間に」という恋愛小説は、社会的大ヒットとなった。
若くして、数々の文学賞を受賞し、ベストセラーを連発している、今最も売れている作家だ。
実際の腐川はあまり喋るようなタイプではないようだが、彼女を見ていた苗木に向かって「何よ…?人の顔をじっと見て…汚らしい物を見るような目で見ないでよ!」と言った。
慌てる苗木に腐川は更に「どうせ…ここまでのブスは…初めて見たとか…そう思ってるんでしょ…?」と続けた。
どうやら腐川には、被害妄想癖があるようだ。
苗木は逃げるように腐川から離れた。
次に挨拶をしたのは、黒髪ロングヘアの清楚なイメージの少女だ。
彼女は「超高校級のアイドル」である「舞園さやか」。
国民的アイドルグループで、センターを務める舞園はテレビや雑誌で見ない日はないという程の人気を誇っている。
そして、話をしている途中、舞園は何かに気付いたように「あれ…苗木君って…」と何かを言いかけた。
しかし、そこへ石丸が「おい、君達ッ!いつまで長話をしているのだ!自己紹介は決して雑談の場ではない!」と割って入り、舞園が何を言いかけたのか分からないまま話は終わってしまった。
続いて、舞園の横に居たのは髪や顎髭を伸ばし、多くのピアスをつけたチャラい印象の少年だ。
彼は「超高校級の野球選手」である「桑田怜恩」。
掲示板情報によると、桑田は高校野球大会の優勝チームの4番エースバッター。
プロも注目している野球選手だ。
桑田は野球は好きでもなんでもなく、今まで一度も練習等していないらしいが、そこには確かな才能があり、優勝チームのエースを務めていたようだった。
苗木はプロアスリートとして想像していた桑田と、目の前に居る桑田とのギャップに驚きを隠せなかった。
以前は大会の決まりで坊主にした事もあった桑田だが、「もう切らねーし、髪の色も変えねー!」と彼なりの決意を固めているようだ。
そして桑田は今何故かミュージシャンを目指しているらしい。
よく分からないまま、桑田との自己紹介が終わり、次に挨拶をしたのは小太りで眼鏡をかけた少年だ。
彼は「超高校級の同人作家」の「山田一二三」だ。
山田は2次元業界では有名な同人作家らしく、学校の文化祭で同人誌を1万部売り上げた事もあるようだった。
2次元の世界へ勧誘してくる山田を何とかすり抜けた苗木は、他のメンバーと自己紹介を続ける事にした。

2次元の世界へ苗木を勧誘する山田

次に話したのは、リーゼントに特攻服という出で立ちの「超高校級の暴走族」である「大和田紋土」。
前情報によると、大和田は日本最大最凶と称される暴走族の2代目総長を務めている。
全国のヤンキーから尊敬と畏怖を集める程の人物だ。
苗木が「よろしく…お願いします…」と言うと、大和田は「…おう」と短く返事した。
続いて自己紹介したのは、ピンク色の髪を2つに結び、派手な印象の少女。
彼女は「超高校級のギャル」である「江ノ島盾子」。
全国の女子高生の憧れであり、カリスマ的存在の人物だ。
ただ、雑誌で見る江ノ島と実際に会った江ノ島は印象が違うように苗木は感じた。
思わず声に出て、本人にも言ってしまったが、江ノ島は怒る事もなく「アハハ、当たり前じゃーん!あれは雑誌用に盛ってるんだって!」と言った。
どうやら、雑誌で見る江ノ島は、画像編集ソフトで加工された状態らしい。
業界の裏側を知った苗木は驚きを隠せなかったが、江ノ島は「いまどき、雑誌のカバーショットで盛るなんて全然当たり前なんだって!」とあっけらかんとしている。
次に話し掛けたのは、薄紫色の髪に両手に黒い革手袋をしている少女だ。
だいぶ無口で、苗木が「あの…名前を教えてもらってもいいかな?」と尋ねてようやく「名前は…霧切響子…」と少女は名乗った。
名乗った後も霧切はまた黙り込んでしまった。
苗木が確認した巨大掲示板では、「霧切響子」という名前は目にしなかった。
希望ヶ峰学園に来る以上、抽選で選ばれた苗木を除き、何らかの才能があるはずだ。
しかし、前情報には霧切の名前や才能すらも明かされていなかった。
苗木は思い切って、霧切に「キミにはどんな「超高校級」の才能があるの?」と聞いてみた。
霧切はしばらく考えた後「なんで…教えなくちゃ駄目なの?言う必要がないなら…言わなくていいでしょ…」と自分の才能を明らかにする事はなかった。
その後、霧切はまた無口を貫いた為、苗木は次の人物に話し掛ける事にした。
霧切の隣に居た小柄で小動物のような少女は「超高校級のプログラマー」の「不二咲千尋」と名乗った。
不二咲は「これから…よろしくね…」と言ってほほ笑んだ。
先程の無口で表情一つ変えなかった霧切と違い、不二咲はとても話しやすい印象を苗木は受けた。
不二咲は、その見た目からは想像がつかない程、数々の革新的なプログラムを構築している天才プログラマーだ。
続いて話し掛けたのは、褐色の肌に体操服のような服を着ている少女だ。
彼女は「超高校級のスイマー」である「朝日奈葵」。
「こんちわっすー!朝日奈葵っすー!ヨロシクねー!」と見た目通りの挨拶を苗木に投げる朝日奈。
前情報によると、小中高と過去に参加した大会で次々と新記録を塗り替え、今やオリンピック候補生となっている注目の水泳選手だ。
苗木が朝日奈と話していて受ける印象は、とにかく「明るい」だった。
ただ、勉強は苦手らしく、苗木が名乗ると「ねぇ、「なえぎ」ってどういう字?」と朝日奈は聞いた。
苗木は「え…普通に「苗」っていう字だけど…」と答えると朝日奈は「なえ…なえ…アハハー分かんないやー」と言った。
スポーツに関しては飛びぬけているが、どうやら勉強は苦手らしい。
次に話し掛けたのは、筋骨隆々の大柄な体のあちこちに傷がついている人物。
「超高校級の格闘家」である「大神さくら」。
どこからどう見ても男性に間違う見た目だが、れっきとした女性である。
苗木が前情報を仕入れた掲示板で大神は「オーガ」とあだ名され、「霊長類ヒト科最強に最も近い女子高生」と書かれていた。
すると大神は「おい、お主…」と苗木に話し掛けた後、苗木の体をベタベタと触り始めた。
一通り触り終えると「筋肉の質、量、共に、ごくごく普通の一般的な高校レベルといったところか…その程度では我の訓練相手は務まらぬ…」と大神は苗木に言う。
苗木はむしろ、そんな最強女子の訓練相手に任命されずに済み、安堵していた。

筋骨隆々だが、女性格闘家である大神さくら

続いて話し掛けたのは、茶髪でメガネを掛けたスラっとした男子生徒だ。
彼は「超高校級の御曹司」である「十神白夜」。
巨大財閥である十神一族の御曹司で、幼少時からあらゆる帝王学を叩きこまれ、十神自身既にいくつもの会社経営に携わっている。
その為、一族としてではなく、十神白夜個人としても莫大な資産を築いているという噂だ。
そして十神は「おい、自己紹介は終わったはずだ。いつまでそこにいる…?目障りだ。下がれ…」と苗木にだいぶ上から目線で言葉を投げた。
苗木は、おずおずと引き下がり、次の人物へと話し掛けた。
爆発したのかと思うようなボリューミーなドレッドヘアに制服をだいぶ着崩した男子生徒。
彼は「超高校級の占い師」である「葉隠康比呂」。
占い界の超新星であり、新風を巻き起こしている占い師だ。
一応「高校生」ではあるが葉隠は3度留年していて、実際は20歳になっている。
本人が「色々あって」と留年の理由については誤魔化していた為、苗木もそれ以上葉隠の留年については追及しなかった。
続いて話し掛けたのは、黒髪巻き髪にゴスロリファッションの少女。
彼女は「超高校級のギャンブラー」である「セレスティア・ルーデンベルク」。
思いっきり日本人顔だが、彼女は「セレスと呼んでくださって結構ですわ」と自己紹介に続けて言った。
苗木はセレスの言葉を理解しきれずに「えっと…出来れば本名も…」と言ってみた。
セレスは顔色一つ変えずに「わたくしの本名は、セレスティア・ルーデンベルクですわよ」と言った。
そしてセレスはもう一度「セレスと呼んでくださって結構ですわ…!」と力強い口調で苗木に言った。
そう言われて苗木は、掲示板で見かけたセレスの情報を思い出した。
セレスは「ゴスロリ服を愛するという事以外の素性が、すべてウソのベールに包まれている謎の女子高生」と掲示板で書かれていた。
ギャンブルに関しては「負けなし」と言われていて、セレスが打ち負かした相手の人生を破滅に追い込んだ事があるという噂もあるほどだ。

全員との自己紹介が済んだ後、十神が「おい、そろそろ本題に入るぞ」と話を切り出した。
すると、舞園が十神に続いて「苗木君…言ってましたよね?色々あって寝ちゃってたって…それって私達も…一緒なんです…」と言った。
どうやら、苗木だけでなく、ここに居る全員が玄関ホールに入った直後に気を失い、気付いた時には校内で寝ていたらしい。
全員が同じ状況に陥るなんて事が有り得るのだろうか?
おかしいのは、気を失った状況だけではない。
教室の打ち付けられた窓の様子や、持っていたはずの個人の荷物が無くなっている等、異常な事ばかりだ。
葉隠が「学園側のドッキリイベントかなんかだべ!」と言うと、場は少しばかり安堵の空気が流れた。
しかし、その安堵は一瞬にして破られる事となる。
突如、「キーンコーン、カーンコーン」とチャイムが鳴ったのだ。
ホールの壁に掛けられていたモニターには、丸いフォルムの影が映し出されている。
そして「あー、あー…!マイクテスッ、マイクテスッ!校内放送、校内放送…!大丈夫?聞こえてるよね?」と声が聞こえた。
今のよく分からない状況に響く、能天気でやたらと明るい声。
苗木は、その場違いな程明るい声に不快感を覚えた。
「新入生のみなさん…今から、入学式を執り行いたいと思いますので…至急、体育館までお集まりくださ~い」と言い終わると放送は切れた。
ほとんどの人間がブツブツ言いながらも、体育館へ向かう中、苗木は立ち尽くしていた。
根拠はなかったが、何故だか苗木の頭には「嫌な予感」が浮かんでいた。
体育館へ向かうのを躊躇してしまう程の嫌な予感。
しかし、そう思っていたのは苗木だけではなく、舞園や江ノ島も先程の放送に違和感を覚え、体育館へ向かうかどうか悩んでいた。
その様子を見ていた霧切は「でも、ここに残っても危険から逃れられるわけじゃない。それに、あなた達だって自分に何が起きてるか気になるでしょ?」と促すように言った。
霧切の言う事に納得した面々は、先に行った生徒達を追うように体育館へと急いだ。

体育館の中は、入学式の装飾が施されていた。
「本当にさっきまでの事は入学式のドッキリだったのかもしれない」と誰もが思ったその時だ。
「オーイ、全員集まった~!?それじゃあ、そろそろ始めよっか!!」と、先程放送で流れていたのと同じ声が体育館に響き渡った。
その直後、その声の主は姿を現す事となる。
体育館のステージ中央に置かれた教壇の上に出てきたのは、白黒のクマのヌイグルミだった。
ヌイグルミは「ボクはヌイグルミじゃないよ!モノクマだよ!キミたちの…この学園の…学園長なのだッ!」と言った。

自分を希望ヶ峰学園の学園長と自称するクマのヌイグルミ「モノクマ」

喋って動くヌイグルミを目の前にし、呆然とする超高校級達。
訳の分からない状況が続く中、モノクマはお構いなしに「えー、ではではっ!起立!礼!オマエラ、おはようございます!」と高らかな挨拶を生徒達に投げた。
その挨拶に応えたのは、超高校級の風紀委員、石丸のみだった。
モノクマは更に「では、これより記念すべき入学式を執り行いたいと思います!」と事を進めていく。
「まず最初に、これから始まるオマエラの学園生活について一言…」とモノクマは前置きし、「オマエラのような才能溢れる高校生は、『世界の希望』に他なりません!」と言った。
続けて「そんな素晴らしい希望を保護する為、オマエラには…『この学園内だけ』で、共同生活を送ってもらいます!みんな、仲良く秩序を守って暮らすようにね!」とモノクマはとんでもない事をさらりと言ってのけた。
そして「ボクの言葉が本当かどうかは、後でオマエラ自身が確かめてみればいいよ。そうすればすぐにわかるから」とモノクマは冗談でも、悪ふざけでもない事を証明出来る口ぶりで言った。
モノクマの言葉を受け、セレスは「そんな…困りますわ…こんな学校でずっと暮らすなんて…」と言うとモノクマは「オマエラは自ら望んで、この希望ヶ峰学園にやって来たんでしょう?」と首を傾げた。
更にモノクマは「まぁでも、ぶっちゃけた話、ない訳じゃないよ。ここから出られる方法…」と続けた。
出られる方法があると聞き、驚くと共にわずかな希望に喜んだ。
モノクマは「学園から出たい人の為に、特別ルールを設けた」と言い、『卒業』というルールについて話し始めた。
超高校級達は、これから「秩序を守った共同生活」を始める。
もし、この秩序を破った人間は、学園から出て行ってもらう。
これが『卒業』というルールだった。
十神は「その『秩序を破る』とは…何を意味するんだ?」という当然の質問をモノクマにぶるける。
モノクマは「うぷぷ…それはね……」と嬉しそうにした後「人が人を殺す事だよ…」と言った。
殺し方は問わず、「誰かを殺した生徒だけがここから出られる」それが、卒業のたった一つのルールだ。
超高校級という「希望」同士が殺し合う、「絶望的」シチュエーションに、モノクマはドキドキワクワクしている様子だった。
生徒達はいきなりそんな事を言われ、理解出来るはずもなく、何故自分達が殺し合いをしなければならないのかモノクマに詰め寄る。
しかしモノクマは「とにかく殺し合いをすればいいんだよ!」と理由については語らない。
いい加減、頭に来た大和田は、「超高校級の暴走族」らしい凄みをきかせ、「ラジコンだかヌイグルミだか知らねぇが…バッキバキに捻り潰してやんよっ!」と言ってモノクマを掴み上げた。
モノクマは「キャー!学園長への暴力は校則違反だよ~ッ!?」と言い空中でジタバタしている。
その後、モノクマは妙な機械音を出しながら黙り込んだ。
「今更シカトか!?」と更に怒りをぶつける大和田に、霧切が突然「危ない、投げて…ッ!」と叫んだ。
霧切の言葉に首を傾げた大和田だったが、「いいから早く!」と霧切に急かされ、言われるがままモノクマを頭上に放り投げた。
すると、大和田が放り投げた直後、モノクマは空中で爆発した。
生徒達が爆発に驚く中、爆発したのとは別のモノクマがしれっと現れた。
どうやら、モノクマにはスペアが存在しているようだ。
大和田が「テ、テメェ…!さっきの…マジに俺を殺そうとしやがったな…」とモノクマに怒りをぶつけた。
モノクマは「当たり前じゃん。校則違反するのがイケナイんでしょ?今のは、特別に警告音だけで許すけど、今後は気を付けてよね」と爪を立てて言った。
その後、江ノ島が復活したモノクマに「ね、ねぇ…ひょっとして、アンタみたいなのって、他にもたくさんいるの?」と疑問をぶつけた。
モノクマはあっけらかんと「モノクマは、学園内の至る所に配置されております。校則違反者には、今みたいなグレートな体罰を発動しちゃうからね!」と答える。
最後にモノクマは「入学祝い」と称し、カードキーのような形状をした「電子生徒手帳」を生徒達に配った。
この電子生徒手帳は、学園生活をしていく上での必需品になるらしい。
そして「豊かで陰惨な学園生活をどうぞ楽しんでください!それじゃあ、まったね~!」と言って、モノクマは去って行った。

電子生徒手帳を配るモノクマ

モノクマが去った後、生徒達は目の前で起きていた出来事を理解しきれず、呆然としていた。
そんな中、霧切は「みんな…落ち着いて…とりあえず、今の話をもう1度まとめてみましょう」と冷静だった。
先程のモノクマの話では、生徒達に向けて2つの選択肢が提示された。
1つ目は全員この学園で「終わりのない共同生活」を送る事。
2つ目は生きて学園から出る為に「仲間の誰かを殺す」事。
いきなり訳の分からない場所に閉じ込められ、いきなり「仲間の誰かを殺せば外に出られる」という冗談のような状況に、体育館は再び戸惑いに包まれた。
霧切同様、冷静な十神は「ここで問題となるのは…この中に、その話を本気にするヤツがいるかどうかだ…」と言った。
十神のその言葉に全員が黙り込み、お互いの顔を見合わせた。
「誰かを殺した生徒だけがここから出られる」というモノクマが提示したルールにより生まれてしまった生徒同士の疑心暗鬼。
「誰かが裏切るのではないか」「殺されるのはもしかしたら自分なのではないか」そんな思いをそれぞれが抱き、体育館はすっかり恐怖と不安で覆いつくされていた。
そんな重たい空気を破ったのは「それで、これからどうする気?」という不愛想な霧切の一言だった。
霧切の淡々とした言葉は、恐怖と不安に支配されていた場を通常に引き戻した。
お互いを疑い続けていても仕方がない。
ひとまずは、何かしら行動を起こす他ないのだ。
出口を探し、モノクマを動かしている人物を探し、自分達が無事に出られる方法を探そうと息まきだした生徒達。
そんな中、不二咲が「念の為、さっきもらった電子生徒手帳を見ておこうよぉ…」と提案する。
学園内では校則を破った時点でモノクマからの制裁が待っている。
動き回るならばなおさら、校則はよく確認しておく必要がある。
それぞれが電子生徒手帳を起動させると、画面にはでかでかと個人の名前が表示された。
モノクマが定めた校則は下記の通りだった。
1.生徒達はこの学園内だけで共同生活を行いましょう。共同生活の期限はありません。
2.夜10時から朝7時までを『夜時間』とします。夜時間は立ち入り禁止区域があるので注意しましょう。
3.就寝は寄宿舎に設けられた個室でのみ可能です。他の部屋での故意の就寝は居眠りとみなし罰します。
4.希望ヶ峰学園について調べるのは自由です。特に行動に制限は課せられません。
5.学園長ことモノクマへの暴力を禁じます。監視カメラの破壊を禁じます。
6.仲間の誰かを殺したクロは『卒業』となりますが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません。
7.なお、校則は順次増えていく場合があります。
全員、電子生徒手帳とにらめっこをしながら渋い顔を浮かべていた。
どういう目的で設定された校則なのか分からない上に、罰の内容についても明記はされていない。
大和田は「校則なんかに支配されてたまるか!」と怒りを露にしていたが、罰というのがどういうものか分からない以上、結局全員校則に従うしかなかった。
それから舞園が「校則の6番の項目なんですけど…これって、どういう意味だと思います?」と他の生徒に疑問を投げかける。
「他の生徒に知られてはならない」の部分については、苗木も同様に気になっていた。
その会話を聞いていた十神が「…卒業したいなら、誰にも知られないように殺せという事だろう」とボソっと言った。
しかし、その真意について分かるものは誰も居なかった。
ひとまず、校則が分かったところで学園内の捜索をみんなで開始しようとした時だった。
十神が「…俺は1人で行くぞ。すでに他人を殺そうと目論んでいるヤツが、この中にいるかもしれない…そんなヤツらと行動できるか」と突き放すように言った。
その言葉を聞き、大和田は今にもブチ切れそうになりながら「んな勝手は許さねぇぞ…」と十神に言う。
十神は大和田に対して「何をしようが、広い海に影響を及ぼす事のないちっぽけなプランクトン」と呼び、大和田の怒りを煽った。
苗木は必死に「ケンカはマズイよ!」と大和田を止めようとする。
しかし、もう既にキレてしまっている大和田には逆効果だったようで、怒りの矛先は苗木に変わり、大和田の拳が容赦なく苗木に直撃した。
苗木は殴られた衝撃で吹っ飛び、意識を失ってしまった。

電子生徒手帳に映された校則

苗木が目を覚ました場所は、見覚えのない部屋に居た。
ビジネスホテルのように、中央にはベッドが置かれ、部屋の端にはテーブル等が置かれている。
ベッドの頭上付近には引き出しが置かれており、開けてみると中に入っていたのはビニール包装がされた新品の工具だった。
何に使うか不明の上、今の所使う予定がなかった為、苗木は再び引き出しに工具を戻した。
部屋には掃除用の粘着テープクリーナーや、テレビモニター、ご丁寧に苗木の名前が入った部屋の鍵が置いてあった。
そして壁には「モノクマ学園長からのお知らせ」という紙が貼られている。
そこには以下の事が書かれていた。
「部屋の鍵には、ピッキング防止加工が施されています。鍵の複製は困難な為、紛失しないようにしてください」
「部屋には、シャワールームが完備されていますが、夜時間は水が出ないので注意してください」
「また、女子の部屋のみ、シャワールームが施錠出来るようになっています」
「最後に、ささやかなプレゼントを用意してあります。女子生徒には裁縫セットを、男子には工具セットをご用意しました」
「裁縫セットには人体急所マップもついているので、女子のみなさんは、針で一突きするのが効果的です」
「男子の工具セットを使用する場合は、頭部への殴打が有効かと思われます」
苗木は、殺人を促すようなその文章が書かれた紙をひっぺがし、丸めてゴミ箱に捨てた。
一通り部屋の中を回り終えた苗木は、ようやくここが校則に書いてあった「寄宿舎」の個室である事に気付いた。
他の生徒達がどうしているか確認しようと、苗木が外に出た瞬間だった。
出会い頭に舞園とぶつかってしまった。
どうやら舞園は苗木を呼びに来たようだ。
というのも、これから全員で食堂に集まるという事で苗木の具合が良ければ参加してもらおうという事らしい。
苗木が気絶した後、生徒達は手分けして学園内を捜索していた。
その調査結果を共有し合おうと食堂に集まるようだ。
苗木は「もちろん行くよ!」と言い、食堂へ向かった。

食堂は意外と開放感があり、大きな窓が印象的だ。
苗木と舞園が到着した時には、まだ誰も集合していなかった。
2人の食堂で舞園が「自己紹介の時の続きになっちゃうんですけど、苗木君に確認したいことがあるんです」と切り出した。
苗木は気になり「確認したい事って…?」と聞くと、舞園は「苗木君って、ひょっとすると六中じゃないですか?」と、出身中学校の確認をしだした。
舞園が口に出した「六中」は確かに苗木が卒業した中学校だった。
「そうだけど…」と苗木が言うと、舞園は笑顔で「やっぱり!」と言った。
実は、クラスこそ違えど、苗木と舞園は中学の同窓生だったのだ。
中学生の頃から既に有名人であった舞園の存在は、当然苗木は知っていた。
逆に平凡な中学生であった自分の事を覚えていた舞園に苗木は驚いた。
クラスが同じだったわけでもなく、まともに話した事すらない苗木の事を舞園は覚えていたのだ。
舞園は「だって同じ中学じゃないですか」と、苗木を覚えていた理由を述べた。
そして「…でも、ホントに良かったです!知ってる人がいてくれて…それに、苗木君と話していたら、なんだか元気が出てきたかも!」と舞園はニッコリ笑った。
続けて「私も精一杯、手伝いますから、一緒にここから出ましょうね!」と言われ、がぜんやる気が出てきた苗木。
そうこうしているうちに他の生徒達も食堂に集まってきた。
全員が集まったところで、石丸が議長のように「よし、全員揃ったようだな!では、さっそく会議を始めようと思う!」と話し合いの開始を宣言した。
しかし、江ノ島の指摘により、霧切が来ていない事が発覚。
捜索開始後、誰も霧切の姿を見ていない事で、一瞬場は不安に包まれたが、石丸は「何事も時間厳守だ」と言って、会議を再開した。

食堂に全員集まり、会議を開始した超高校級達

苗木は、一人ずつ調査内容について聞く事にした。
まずは十神だ。
十神は、超高校級達を閉じ込めた犯人の手がかりについて捜索していたようだ。
しかし、それ以上話さない十神に石丸が「そ、それだけか?」と問う。
十神はしれっと「発見があれば報告するつもりだったが、ないのだから仕方あるまい?」と言った。
続いて、寄宿舎エリアを調べていたという石丸。
「世紀の大発見」と息巻く石丸だったが、その内容は「全員分の個室が存在していた」という他の生徒も分かっていた事実だけであった。
江ノ島と不二咲も寄宿舎について調べたらしく、二人が確認したところによると、個室の中は隣の部屋で大声を出しても聞こえない程の完全防音になっているという事だった。
江ノ島と不二咲は、他にも廊下や教室の窓に打ち付けられた鉄板についても調べていた。
窓については桑田も一緒に調べていたようで、「鉄板はビクともしなかった」らしい。
朝日奈、大神、大和田は学園エリアの方を調べていた。
外との連絡手段が何かないかと調べたようだが、結局何も見つからなかったようだ。
それから、玄関ホールの鉄の扉についても確認したようだが、大神と大和田二人がかりでもビクともしないという窓同様、どうにも出来ない物らしかった。
大神は「外との連絡手段とは関係ないが、少々気になるものを見つけたぞ」と調査報告の続きを話しだした。
どうやら、学園と寄宿舎の廊下には2階に上がれそうな階段が存在していたらしい。
しかし、残念ながらその階段前にはシャッターが降りていて、入る事は出来ず、スイッチらしき物も見つけられなかったという。
ただ、現時点では入れずとも、出口が存在するかもしれないという可能性は僅かながら残されているようだ。
続いて、セレスと腐川と山田だ。
セレスは「正確に言えば、わたくし達は『一緒に行動していた』ではなく『一緒に何もしていなかった』という事になりますね。ずっと、体育館にいただけですから」と言った。
どうやらグループ分けであぶれた3人が体育館でずっと過ごしていたというだけで、収穫は何もなかった。
最後に食堂を調べていた舞園の話だ。
食堂の奥には厨房があり、冷蔵庫も設置されているようだ。
冷蔵庫の中にはびっしりと食材が入っていたという。
更に、調べていると舞園の前にモノクマが現れ、冷蔵庫の食料については「毎日自動で追加される」と言っていたらしい。
やはりモノクマは、生徒達に一生この学園で過ごさせるようにするつもりのようだ。
一通り報告が終わった所で、ようやく霧切が食堂に姿を現した。
霧切を見るやいなや石丸が「霧切くん!今まで何をやっていたんだ!!」と当然の疑問を投げかける。
しかし、霧切はその問いに答える事はなく、代わりに1枚の紙をテーブルの上に置いた。
そこには見取り図のような物が書かれている。
「希望ヶ峰学園の案内図らしいわよ…」と霧切は言った。
「どこで手に入れたのか」と問う石丸だったが、霧切は相変わらず「どこだっていいじゃない」と突き放すように言う。
続けて霧切は「この見取り図を見る限り…今、私達がいる建物は、希望ヶ峰学園の構造とまったく同じみたいよ」と言った。
つまり、構造だけで考えれば、超高校級達はどこか知らない場所に連れ去られた訳ではなく、今居るこの学園が正真正銘の希望ヶ峰学園という事になる。
しかし、窓は鉄板で塞がれ、玄関ホールにも鉄の扉が存在し、他の生徒達も居ない、そんな物が本当に希望ヶ峰学園なのだろうか。
セレスは「調査の甲斐がありましたわね。逃げ場のない密室に閉じ込められたというのが、紛れもない事実だという事が判明しましたもの」と真顔で全員に向けて言った。
セレスのその言葉に他の生徒達は黙るしかなかった。
認めたくない事ばかりが起きているが、調査の結果、自分達の手で結局は現実を再認識してしまったのだ。
それでも「諦めずに出口を探そう」「しかし出口なんか無かった」と堂々巡りの会話を繰り返す他の生徒達に対し、セレスは「ここでの生活に適応すればいいのです」とニッコリ笑った。
続けてセレスは「適応する事を踏まえた上で、わたくしから、みなさんに提案があるのです」と切り出した。
セレスの言う「提案」とは、校則に書かれていた「夜時間」のルールに更に「夜時間の出歩きは禁止」という追加ルールを設ける事だった。
このまま生活するにしても、夜になる度に「いつか殺されるかもしれない」という不安に襲われる事になる。
疑心暗鬼のまま何日もそんな夜を過ごせば、すぐに憔悴してしまう。
そうならない為の、夜時間についてのルール追加だ。
ただし、校則と違い強制力は無いので、結局は個人の裁量に任せられる事になる。
それでも無いよりはマシ、という意見も多々あり、セレスの提案には賛成する形となった。
夜時間が近づいている事もあり、調査等はまた明日にして今日の所は解散になった。

「夜時間の出歩き禁止」のルール追加を提案するセレス

特にこれといった進展もなく、希望ヶ峰学園での監禁生活も4日目となった。
苗木は不安や恐怖からあまり寝られず、睡眠不足となり疲労感が増していた。
重たい体を起こした後、部屋のインターホンが鳴った。
ドアを開けた先には石丸が立っていた。
挨拶をすると、ズカズカと石丸は苗木の部屋に入り込んだ。
そして「苗木くん。僕は昨日の夜からずっと考えていたんだ。僕らはもっと固く協力し合うべきだってね」と石丸は話を切り出した。
「そこでだ…これから毎朝、起床時間後にみんなで朝食を共にしようと思う」と石丸は真面目に言った。
続けて「そして、今日をその記念すべき最初の日にするのだッ!だから、すぐに食堂に集まってくれたまえ!」と熱く語った。
それだけ言うと、「他のみんなにも伝えるから」と言って苗木の返事も待たず、石丸は出て行った。
何が何やら、理解が追い付かない苗木だったが、ひとまず食堂に行けば良いという事だけは分かった。
石丸が苗木の所に来たのは最後の方だったのか、苗木が食堂に着いた時には既に全員集まっていた。
全員集まったところで石丸が「では、さっそく朝食会を始めるとしようかッ!諸君、わざわざ集まってくれてありがとう!」と言った。
すると桑田が「断ったのに、オメーが無理矢理、連れて来たんじゃん…」とボソっと呟いた。
どうやら、石丸の強引な誘いにより参加せざるを得なかった生徒も居るようだった。
石丸は、脱出の為にお互いの協力が必要不可欠と考え、その第一歩としてこの朝食会を思いついた。
先程、苗木も説明されたように、これからは起床時間後、食堂にみんなで集まり、仲間同士の信頼を築いていこうという狙いだった。
一通り石丸の演説が終わった後、江ノ島が「そんな事よりさ、あれから手掛かりを掴んだヤツはいないの?」と話を持ち出した。
その問いについて、他の生徒達は黙ってしまう。
監禁初日から今日まで、誰も何も手掛かりを見つけられていないのが現状だ。
そんな中、不二咲が「ひょっとして、犯人って…例の殺人鬼だったりしないよね…?」と不安そうに言った。
不二咲の言う、例の殺人鬼とは、今テレビやネットで話題となっている「ジェノサイダー翔」の事だ。
ジェノサイダー翔は、猟奇的かつ残忍な手口で殺人を繰り返す、凶悪な連続殺人犯。
一番の特徴は、現場に必ず残されている、被害者の血で書かれた「チミドロフィーバー」の文字。
しかし、通り魔的で無差別、おまけに突発的な犯行ばかりの為、警察も足取りを掴めない厄介な殺人鬼だ。
ちなみに「ジェノサイダー翔」というのは、ネット上の誰かがつけたあだ名であり、実際は名前もよく分かっていない。
この猟奇的な学園生活を強いる人物が、ジェノサイダー翔なのではないかというのが、不二咲の推論だった。
食堂内に再びざわつきが現れ始めた時、朝日奈が「でもさ、私達がここに閉じ込められてから数日経つんだよ…急に連絡が取れなくなった私達を心配して警察も動き出す頃なんじゃない?」と言った瞬間、どこからともなく笑い声が聞こえた。
「警察だって!警察なんかあてにしてんの?」と朝日奈の言葉を嘲笑うように現れたモノクマ。
続けてモノクマは「…っていうかさぁ、そんなに出たいなら、殺しちゃえばいいじゃーん!」と不気味に笑う。
その言葉に怒り出す生徒達に向かってモノクマは「学園生活が開始されて数日経った訳ですが、まだ誰かを殺すようなヤツは現れないね!そっか、足りないものがあったんだ!」と何かを閃いた様子だ。
モノクマの言う「足りないもの」とは「動機」。
人が人を殺す時に、ほとんどの場合そこには動機が存在している。
その動機をモノクマが生徒達に与える事で、殺人を促そうとしているのだ。
「オマエラにはちょっとした映像を見せたいと思います」とモノクマは言った。
しかし、食堂にある訳ではないらしく、「学校内の『ある場所』に行けば、その映像が見られるよッ!」と意味深に言ってモノクマは去って行った。
結局、またモノクマからこの学園について聞き出す事は出来なかった。
仕方なく、映像が見られる場所を探す事にした。
扉の近くに立っていたというだけの理由で、大和田から「苗木、ちょっくら行ってこいよ」と言われ、渋々外へ出た苗木。
後ろから舞園もついてきて「苗木くん、私も行きます」と言い、苗木と舞園で探す事にした。
学校内で映像が見られる場所と言えば、やはり視聴覚室だろう。
2人が視聴覚室に入ると、真っ先に大きなスクリーンと共に段ボール箱が目に入った。
その中には、監禁されている生徒の名前が書かれた人数分のDVDが入っている。
DVDを確認するやいなや「私、みんなを呼んできますね!」と舞園は食堂で待っている生徒達を一人で呼びに行った。
舞園が去った後の視聴覚室で苗木は時間を持て余していた。
ひとまず、自分の分だけみんなが集まる前に確認しておこうと近くの机に設置されていたデッキにDVDを入れた。
しばらく暗い画面が流れた後、映像に映し出されたのはなんと、苗木の父、母、妹の姿だった。
苗木の家族達は、希望ヶ峰学園に選ばれた苗木に対し応援メッセージを送っている。
そこまでは、普通のビデオレターだった。
しかし次の瞬間映し出されたのは、窓が割られ、ソファーや壁に引っ掛かれたような跡が残った苗木の家族達が映っていた家。
そこには父も母も妹の姿もない。
そして「希望ヶ峰学園に入学した苗木誠クン…そんな彼を応援していたご家族のみなさん。どうやら…そのご家族の身に何かあったようですね?」というモノクマのナレーションが入ってきた。
ナレーションは更に「では、ここで問題です!このご家族の身に何があったのでしょうかっ!?」と言い、その後には「正解発表は『卒業』の後で!」という文章が流れた。
そこでDVDは終わっている。
自分の家族の身に何が起こったのか。
映像の家の状態を見る限り、ただ事ではない。
苗木は震えが止まらなかった。
恐怖や怒り等の感情をモノクマに持ちつつ、「今すぐここから出て、みんなの無事を確かめなきゃ!」という考えにたどり着く苗木。

苗木の名前が入ったDVDに映っていた苗木の実家の映像

苗木が慌てて視聴覚室を出ようとしたところに、全員を連れて舞園が戻ってきた。
慌てた様子の苗木に、何があったのかと尋ねる生徒達。
苗木はただ黙って、DVDの入っている段ボール箱を指差した。
全員段ボールに群がるように自分の名前が書かれたDVDを取り、それぞれ映像を確認し始めた。
映像を見た生徒達は、もう恐怖と混乱を隠す事はなかった。
その反応を見る限り、苗木と同じような映像を全員が見せられたのだろう。
しかし、そんな中でも霧切だけは「なるほどね…これが、あいつの言っていた『動機』の意味…」と呟き、ただひたすらに冷静だった。
霧切は淡々とこのDVDこそがモノクマの言う『動機』だという事を理解していた。
全員に「ここから出たい」という気持ちを持たせ、不安と恐怖を煽り、殺し合いをさせるように仕向ける事がモノクマの目的だったのだろう。
「誰かが殺すという行動を起こすかもしれない」「自分が殺されるかもしれない」という疑心暗鬼が再び全員の心に戻ってしまった。
そこで江ノ島は「まずは、お互いに話し合ってみるってのは?自分がどんな映像を見せられたのか…きっと話した方が楽になるしさ…」と提案した。
苗木も確かにどんな映像だったのかは気になるところではあった。
しかし、それが疑心暗鬼の解決策になるかと言えば、それも疑問だった。
苗木は近くの舞園に話し掛けようとしたが、舞園は顔面蒼白で震えていた。
「舞園さんは、どんな映像を見せられたの?」と問い掛ける苗木だったが、舞園は黙ったままだ。
というよりも、苗木の声が聞こえていない様子だ。
苗木が舞園に呼び掛けようと、肩に手を置こうとした瞬間、「…やめてッ!」と舞園は苗木の手を払い、その場から走り去って行った。
慌てて追いかける苗木。
ある教室の片隅で、まだ顔面蒼白のままの舞園が居た。
苗木が「大丈夫?」と話し掛けると「はい…大丈夫……な訳ないじゃないですか」と表情を変えず言った。
そして独り言のように「私達が…何をしたって言うの…?どうして…こんな酷い事をするの…?」と言い、最後には「出してッ!今すぐ私をここから出してよッ!」と叫ぶように舞園は言った。
暴れる舞園の肩を掴み、落ち着かせるようにする苗木。
「気持ちはわかるよ…でも、ボクらの冷静な判断を奪う事こそが黒幕の狙いなんだ…映像はでっち上げだよ。だから…冷静になろ?」と苗木は諭すように舞園に言う。
舞園に向けて言ってはいたが、苗木自身、自分にも言い聞かせるような言葉だった。
そして苗木は「きっと…みんなで協力すれば、逃げ道を見つけられるはずだよ。ボクがキミを出して見せる!どんな事をしても!」と続けて言った。
すると突然、舞園は苗木の胸に飛び込んだ。
「お願い…助けて…殺すとか、殺されるとか…そんなの…もう堪えられないッ!」と舞園は泣いていた。
しばらくしてから、舞園はようやく顔を上げ、「さっきの言葉…信じてもいいですか?」と苗木に聞いた。
突然の質問にどういう事か聞き返す苗木。
舞園は「苗木君が…私をここから出してくれるって言葉…信じられるのは…苗木君だけなんです。だから…苗木君だけは…何があっても…ずっと私の味方でいて…」と言った。
苗木も「当たり前じゃないか!何があってもボク達は味方同士だって!」と舞園の言葉に応えるように言う。
「そう言ってくれると頑張れる気がします」と、まだ少しぎこちない笑顔で舞園は笑った。
それから苗木は、舞園と一緒に寄宿舎エリアへと戻り、まだ顔色が優れない舞園に休むように言った。
舞園を部屋に戻した後、苗木は1人視聴覚室に戻り、他の全員に舞園の状況を説明し、その後部屋へと入った。
1人になった苗木は先程の映像を思い出していた。
「早くここから出たい」という思いもあったが、誰かを殺せるはずもなく、思考はループしいつの間にか眠りについていた。

部屋のインターホンが鳴り、苗木は目が覚めた。
時間はもうすぐ夜時間になろうとしている午後10時前だ。
こんな時間に誰が訪ねてくるのだろう。
ドアの前には青ざめた顔で小刻みに震えている舞園が居た。
苗木は舞園を部屋に招き入れ「こんな時間にどうしたの?」と聞く。
どうやら、先程舞園が1人部屋で横になっていたら、急にドアがガタガタ揺れだしたというのだ。
それはまるで、誰かが無理矢理舞園の部屋のドアを開けようとしているようにも思える揺れ方だったようだ。
当然、鍵はかけていた為ドアが開く事は無かった。
しばらくすると揺れが収まった為、舞園は恐る恐るドアを開け、誰がやったのか確認しようとしたが、誰も居なかったらしい。
夜時間の出歩きは現在、一応は禁止になっている。
しかし、校則と違い強制力は無いので、夜時間になっても出歩く人間が出てきてもおかしくはない。
そこで苗木は舞園に部屋を貸す事を提案した。
校則には、「就寝は寄宿舎の個室で」とは書いてあったが、「必ず自分の個室で」という条件はなかった。
その為、今晩だけ苗木の個室で舞園が、舞園の個室で苗木が寝る事となった。
そうこうしている内に夜時間を告げるアナウンスが流れた。
お互いの鍵を交換し、苗木は舞園の個室へと向かった。
念の為、苗木は廊下に出た際に辺りを見回してみたが、各個室のドアはしっかり閉まっていて、人の気配もなかった。
そのまま、苗木は舞園の個室へ入り、眠りについた。

翌朝、苗木は目覚めてから朝食会の為に食堂へと向かった。
苗木が着いた時には数人が集まっており、次第にほぼ全員が揃っていた。
しかし、その中には十神と舞園の姿が無い。
十神はこれまでの態度からも、あまり馴れ合う気はないようだったのでまだ納得出来た。
ただ、舞園は基本的に時間や約束を破るようなタイプではない。
すると、その直後十神が現れた。
ここまで揃って舞園が来ない状況に、苗木は胸騒ぎがした。
苗木は「ボ、ボクちょっと…」とだけ言い、食堂を飛び出し、自分の個室へ向かった。
舞園が居るはずの、苗木の個室だ。
部屋に入ると、昨晩とは全く違う室内になっていた。
床や壁には刃物でつけられたような無数の傷、倒れたテーブル、ズタズタになったベッドシーツ、扉が開けられたままのシャワールームの扉。
しかし、舞園の姿だけがどこにもない。
シャワールームを覗き込んだ苗木の視界に飛び込んできたのは、腹部に包丁が刺さり、血塗れの中座り込んでいる舞園の姿だった。
苗木は思わず叫び声を上げ、そのまま気を失ってしまった。

苗木の個室のシャワールームで死んでいる舞園

keeper
keeper
@keeper

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