ぬらりひょんの孫(ぬら孫)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ぬらりひょんの孫』とは、椎橋寛によって、『週刊少年ジャンプ』(集英社)で2008年から2012年まで連載されていた、妖怪任侠漫画である。妖怪の総大将・ぬらりひょんの血を継ぐ奴良リクオは、一見普通の男の子だが、祖父のような立派な妖怪の首領(ドン)になることに憧れを抱いている。現代の日本を舞台に、各地の妖怪同士が死闘を繰り広げる妖怪任侠活劇となっている。

妖怪のクウォーターであるリクオは本来人間の姿で小学校に通っているが、家は妖怪屋敷であり、百鬼夜行の総大将である祖父を持つ。いずれ3代目を継ぐ予定だったが、リクオの通う小学校のクラスメイトに妖怪のことを気味悪がられバカにされたことで、かたくなに人間として生きていくことを決めていた。しかし、人間のリクオが3代目若頭であることを良く思っていない組の者がリクオを狙い、誤ってクラスメイトを襲ってしまう事件が起きた。助けに行こうとするも、妖怪でもないリクオに百鬼夜行を動かす力はないと一蹴されてしまう。妖怪であればしもべたちを率いてもいいのだと知ると「だったら妖怪なんてやめてやる!」とリクオの中の4分の1の妖怪の血が覚醒し、妖怪の姿へと変化した。そこで、百鬼夜行を率いてクラスメイトを救出。計画を企てた奴良組系のガゴゼに一撃を加え、3代目を継ぐことを決意。「全ての妖怪はオレの後ろで百鬼夜行の群れとなれ」ととどめをさした名シーンのセリフ。

奴良リクオ(夜の姿)「だから『妖怪』は…オレに任せろ」

四国八十八鬼夜行の組長、玉章がリクオに宣戦布告。奴良組の土地(シマ)を奪うためにしのぎの核となる土地神を次々と襲い始めた。リクオは組を仕切り厳戒態勢となるが、非常時こそいつも通りの生活をすると、リクオは昼は学校に通い、夜は縄張りのパトロールに出かけ、ついには無理が祟って倒れてしまう。心配したぜんはリクオの元に駆けつけ、元々祖父の作り上げた百鬼夜行を動かそうとすること自体間違っている、鴆自身は直接リクオと盃を交わし、リクオに忠誠を誓っているからどこまでもついていくが、他の者はそうではない。だから、リクオはリクオの百鬼夜行を作れと叱咤激励した。その会話を盗み聞きしていたリクオを慕うしもべたちと盃を交わしたが、まだ自信が持てないリクオ。夜のリクオとの対話でも弱音を吐くリクオに夜のリクオは「人間のことはお前にまかす」と前置きをし、「だから『妖怪』はオレにまかせろ」と夜の姿へと変化し、つららと七分三分の盃を交わした名シーンでのセリフ。

鬼纏(まとい)の発現

京妖怪の宿願、鵺出産まで残り数日。土蜘蛛と対戦するリクオだったが、土蜘蛛の「畏れ」である「百鬼夜行破壊」で打ちのめされ、つららを連れ去られてしまう。窮地に立たされたリクオの元に、牛鬼が訪れ、「業」を手に入れるために修行を開始した。仲間を助けたい一心で力を手に入れたいと強く思い、修行に励むリクオ。束の間の休息時、ぜんと共に襲撃されてしまう。鴆を逃がそうとするリクオだったが、盃を交わしたしもべとして信頼し、背中を預けた瞬間に「業」を習得できた。助けて現れた牛鬼に業を仕上げてもらい、つららが捕らえられている土蜘蛛の元へ急ぐ。つららを救出するべく完成した業「鬼纏」により土蜘蛛に一撃を入れた名シーン。

奴良リクオ「逆にオレがあんたらの手を借りたい」

晴明復活の時。御門院家の清浄の魔の手が全国各地に迫り、九州が壊滅寸前に追い込まれる。阿蘇で応戦する土蜘蛛も瀕死の状態に追い込まれた所に土蜘蛛の兄と名乗る妖怪が姿を現す。そこは蜘蛛一族の隠れ里で御門院家の攻撃から逃れた一部の者だった。しかし、その隠れ里も見つかってしまい、攻撃を受けそうになったところで、リクオが到着する。絶対的に追い込まれている蜘蛛一族だったが、千年前、清浄を耐えきったプライドにより、リクオの救出を断り、自分の里は自分で守ると言い張る。そこで、リクオが「安倍晴明を倒すため…そして良き闇夜のため逆にオレがあんたらの手を借りたい。だからこそ…ここは絶対生き延びてもらうからな!九州の猛者さんよ!」と言い、御門院家に立ち向かう名シーンのセリフ。

『ぬらりひょんの孫』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

本誌打ち切りとなった最終回

『ぬらりひょんの孫』は2回もアニメ化された。さらに小説やファンブックの販売など多数メディア化された人気作品である。しかし、『ジャンプ』本誌では最後は打ち切られる形で終わる。『ぬらりひょんの孫』が連載されていた『ジャンプ』では、アンケート至上主義と言い、アンケート結果が連載に大きく影響し、結果が悪ければ人気作品であっても打ち切られることがある。アンケート結果が悪いと掲載順が後ろの方になる傾向があり、『ぬらりひょんの孫』も物語終盤にかけて後ろの方での掲載がほとんどとなった。本誌での最終回はリクオが晴明に立ち向かおうとする一番盛り上がりの部分で終わっている。しかし、単行本ではその後の晴明に勝利をおさめ、瀕死の状態から回復する最後の物語までがしっかりと掲載されている。本誌の後の物語は『ジャンプNEXT』へと続いて掲載され、単行本では『ジャンプ』と『NEXT』に分かれることはなく1冊で完結まで読める形となっている。

作者のこだわり「墨絵」と「手書き」

『ぬらりひょんの孫』では人物の細かい部分だけでなく背景までも手書きで描いているというこだわりがあることで、独特の世界観を引き出している。さらに、度々重要なシーンでは「墨絵」で描かれている。墨絵で描かれることにより、よりシーンに迫力とリアルさが出る作品になっている。

『ジャンプNEXT!』で掲載された番外編

リクオと鴆(ぜん)と猩影(しょうえい)の過去編

3人が語る幼い頃の思い出

初代総大将であるぬらりひょんの時代から奴良組に属してきたリクオの兄貴分のような存在でもある鴆。そして、父である狒々(ひひ)がぬらりひょんの盟友であったことで父亡き後から現れるようになった猩影に関してはあまり本編では描かれなかったものの、3人は幼い頃から親しい仲だった。晴明戦後、父の墓参りをしていた猩影の元へ偶然現れたリクオと鴆が3人揃い、昔話を始める。昔はリクオが先陣を切って3人で本家の妖怪たちにいたずらを仕掛けて遊ぶ仲であったが、リクオの父・鯉伴が亡くなり後を追うようにして鴆の父も亡くなった。その時に父の跡を継ぎ奴良組を盛り上げていくと誓うリクオのために、鴆と猩影それぞれが「一の子分」となることを誓っていたことが判明した。更に3人で手を合わせ「奴良組はボクら三人が守る!」と幼いながらに誓い合った絆の深い3人の様子が描かれている。

鯉伴と山吹乙女

半妖の里で再会した二人

晴明戦後、重症を負ったリクオを連れて半妖の里へと行った羽衣狐が半妖の地に眠る鯉伴と相まみえたことを思い出す。晴明戦の前、同じく半妖に地に眠っていた羽衣狐と鯉伴はお互いに連れ添った時のことを謝罪しあう。二人はお互いを想いあうがゆえに共に苦しむ道を選んでしまった。鯉伴は乙女亡き後心を慰めてくれた若菜のおかげでやっと生きていいと思えるようになっていた。しかし、そんな折記憶を操作されている少女の姿で現れた乙女に出会ったことで「乙女に許されていない」と思ってしまい刺された後許しを乞いながら畏れを失っていった鯉伴だった。二人が誤解しあっていたことを確認しこのまま二人で黄泉路を歩きたいと願う羽衣狐だった。しかし、晴明にもう一度会い、全ての運命の呪縛を解くために戻った羽衣狐。ついにリクオと共に晴明に勝利し狐にかけられた転生の念も消えたことでようやく二人は一緒になることができた。

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