ルビー・スパークス(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ルビー・スパークス』とは、2012年にアメリカで製作された、『リトル・ミス・サンシャイン』のジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス監督が送るラブロマンス映画である。小説家の青年カルヴィンは、天才と称されデビューを果たしたものの、極度のスランプに悩まされていた。そんな中、夢に出て来た理想の女性ルビーについて小説を書き始めると、寝食を忘れるほど夢中で書き進めることが出来た。するとある日突然、現実の世界でルビーがカルヴィンの前に現れたのだった。

『ルビー・スパークス』の概要

『ルビー・スパークス』とは、2012年にアメリカで製作されたファンタジック・ラブロマンスムービーである。
小説家のカルヴィンは周りから天才と称され、19歳の頃発表したデビュー作はベストセラーとなったが、その後10年極度のスランプに陥っていた。
心を開ける相手は兄のハリーと飼い犬のスコッティくらいで、カルヴィンは閉鎖的な毎日を送っていた。ある日、かかりつけの精神科医であるローゼンタール医師から、好きな人のことを書くよう提案される。その日から、夢に出て来た女の子について書き始めたカルヴィンは、今までのスランプが嘘のようにすらすらと夢中で書き続けることができた。その女の子の名前はルビー・スパークス。理想の女性を創作し、彼女の生い立ち、環境、性格などを綴っていた。
するとある日、カルヴィンが朝目を覚ますとキッチンに女性が立っていた。あたかも以前から共に生活をしていたように振る舞う彼女。現実世界にルビーが現れたのだった。
とうとう幻覚を見るまで精神に異常をきたしたのだと思ったカルヴィンだったが、ルビーが他の人の目にも映ることが分かり、カルヴィンは奇跡が起こったのだと感動する。
ルビーに現実世界で出会えたことで満足したカルヴィンは、そのままのルビーを愛すため、2度とルビーについて書いた小説に加筆はしないと決めていた。
楽しい日々を過ごす2人だったが、カルヴィンとは正反対の性格で誰とでもすぐ打ち解けるルビーに対しカルヴィンは独占欲を抱き始める。そしてルビーを自分の思うようにするべく小説を書き加えてしまう。
ルビーを操るようになってしまったカルヴィン。心のバランスを失っていくルビーに、カルヴィンはついにその事実を打ち明けるのだった。

理想の女性が現実世界に現れ恋をする男性の話だが、ルビーからの視点も加わることで、男性目線の作品という印象が変わり、新感覚な恋愛映画となっている。
ルビーが奔放になれば不安になり、ルビーにとってカルヴィンがすべてになれば疲弊する。自分の望むように変えられるという甘美的な行為はその不自然さゆえいずれ崩壊してしまうのだ。
ありのままを愛するということの尊さを見出だせる、ロマンティックな作品である。

小説家のカルヴィンを『それでも夜は明ける』のポール・ダノ、ルビーを『ザ・モンスター』のゾーイ・カザンが演じる。
監督は、『リトル・ミス・サンシャイン』のジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリスが担当している。

『ルビー・スパークス』のあらすじ・ストーリー

カルヴィンの見る夢

カルヴィンが見た夢の中の女性

夕陽を背景に、1人の女性が歩いて来る。「あなたを探してたの。私の片方の靴は?」。
逆光で顔がよく見えないが、白い歯が覗いている。彼女は笑っているようだった。

カルヴィンは目を覚ますと、毎朝の日課である飼い犬のスコッティの散歩に行く。家に戻った後、小説家であるカルヴィンはこの日も新作に取り掛かろうとタイプライターの前に座るも、何も思い浮かばす手が止まっていた。
気晴らしに兄のハリーとジムで汗を流すカルヴィン。「ゆうべ変な夢を見た。女の子が出て来て…」と、カルヴィンはハリーに話し始める。ハリーは「どんな女?」と食い気味で聞く。カルヴィンは「普通の子だ。想像の産物」と答えた。「それで?」と続きを促すハリーに、「話しかけられた」と、一言カルヴィンが答える。「それだけ?」と呆れたようにハリーは言った。「でも素敵な夢だった」と、カルヴィンは満足そうだった。

カルヴィンはかかりつけの精神科医、ローゼンタール医師の元へ行く。カルヴィンは極度のスランプに苦しめられていた。
「親父の話を書こうとしたけどすぐに挫折した。息子に失望した親の話なんて誰が読む?スコッティに対しても複雑な気持ちになる時があるんです。ヨダレに噛み癖。散歩に忙しくて1日がつぶれる」と、カルヴィンは愚痴をこぼす。ローゼンタール医師は「それが書けない理由?」と聞いた。「違う」と答えるカルヴィン。「ではなぜ書かない?」とローゼンタール医師は尋ねた。カルヴィンはそれには答えず、座っていたソファーに横たわる。ローゼンタール医師は「カルヴィン。君がスコッティを飼うと決めた時、何て言ったか覚えてるか?」と聞いた。カルヴィンは「外に出れるきっかけを作ってくれると期待してた。犬好きな人との出会いもある。だけどスコッティは人が近付くと怖がるんだ」と話す。「それで困ってると?」と、ローゼンタール医師は聞いた。カルヴィンは「別に」と決まりが悪そうに呟く。ローゼンタール医師は唐突に、「何か書いて来てほしい」と、セラピーの一環としてカルヴィンに提案した。「無理だ」と断るカルヴィンに「心配ない。読むのは私だけだ。君に書いてほしいのはヨダレまみれでも怖がっていても、ありのままのスコッティを気に入ってくれた人のことだ。書いてくれるかな」とローゼンタール医師はカルヴィンを説得する。カルヴィンは「下手くそでもいい?」と受け入れたように言った。ローゼンタール医師は「下手くそなのがいい」と答えた。

ある日、カルヴィンは付き合いのあるラングドン・サープというベテラン作家のトークイベントに招かれる。舞台に立ったラングドンは、「私が最初にカルヴィンに会ったのは彼が19歳の時だ。すでにタイムズ紙のベストセラー・リストで彼は数ヶ月間1位だった。アメリカ小説の傑作を、ニキビの残る高校中退者が世に出したのだ。それからは、彼が発表した短編小説を読んで来た。久しぶりに読み返すと、改めて彼は素晴らしい作家だと気付いた。では彼に登場を願おう。カルヴィン・ウィアフィールズ」とカルヴィンの功績を称え、カルヴィンを舞台上に招いた。

トークショーは終わり、カルヴィンは大勢のファンに囲まれる。中には「昔の栄光ってどんな気持ち?」とヤジを飛ばす者もいた。浮かない表情で舞台裏に戻ると、カルヴィンのマネジメントを担当するサイラスがやって来た。カルヴィンは「サイラス。恥をかいたぞ」と不満を言う。サイラスは励ますようにカルヴィンの肩を叩く。「こんな普段着なのに」とカルヴィンが言うと、「服なんか誰も見ていない。君は天才だ」とサイラスが言う。「天才はよしてくれ」と、心底うんざりしたようにカルヴィンは言った。

カルヴィンは19歳で小説家としてデビューし、その作品はベストセラーとなった。周りから天才と称されるもその後10年スランプに陥り、長編を書くことが出来ずにいたのだった。

夢の中のカルヴィン(画像左)とルビー(画像右)

夜遅く帰宅したカルヴィンは眠りについた。
1人の女性が「あなたの犬、かわいい女の子ね」とカルヴィンに言う。「一応オスなんだ」とカルヴィンは答えた。「オシッコの仕方がメスみたい」と女性が微笑む。カルヴィンは女性を見つめ「どこかで会ったことある?」と聞くと、「いいえ。初めてよ」と女性は言った。そして「ワンちゃんを描いていい?」とカルヴィンに尋ねる。「近付き過ぎないで。ちょっと人を怖がるんだ」とカルヴィンが伝えると、女性は少し離れた場所に腰を下ろす。「ワンちゃんの名前は?」と聞く女性に「スコッティだ。フィッツジェラルドからもらった」と答えるカルヴィン。女性はその名前に見当がつかないようで、スコッティを描きながら「誰?」と聞いた。カルヴィンは「スコット・フィッツジェラルド。”華麗なるギャツビー”の作家だよ」と説明する。「本は読まないの」とあっけらかんと答える女性に「彼の名前聞いたことない?」とカルヴィンは少し驚く。「なんで?その人有名なの?」と聞き返す女性にカルヴィンは「今世紀を代表する小説家だよ」と得意げに言った。すると女性が「なら失礼じゃない?」とカルヴィンに言う。思いもよらない言葉が出て来たことで、彼女の言いたいことが分からず「何が?」とカルヴィンは聞いた。「飼い犬に同じ名前を付けるなんて」と、彼女はスケッチしながら話す。カルヴィンは「好意を示してる」と、心外だとばかりに反論する。彼女は「敵意の表れね。たとえばあなたは作家で、彼を畏怖してる。だからわざと犬の名にしたの。彼を鎖につないで”悪い子”だと叱って優越感を味わえるから。偶像を破壊したのよ」と淡々と話す。カルヴィンは半ば呆れて「行こう。スコッティ」と言ってその場から立ち去ろうとすると「待って」と彼女が止める。そして完成したスコッティの絵をカルヴィンに渡した。「上手だね」と素直に彼女の絵を褒めるカルヴィン。「メスみたいにオシッコするけど、私この子好きよ」と、彼女はスコッティを見て言う。「今何て言った?」と聞き返すカルヴィン。「この子が好き。ありのままの」と彼女が言った。

勢いよく体を起こすカルヴィン。朝になっていた。同じ女性がまた夢に出て来たのだった。彼女はカルヴィンにとって、ローゼンタール医師が言った”ありのままのスコッティを気に入ってくれた人”だった。カルヴィンは急いで2階の書斎へ行き、タイプライターに向き合う。その日からカルヴィンはまるで取り憑かれたように夢に見た女性のことを書き始めた。

小説を書き始めるカルヴィン

ある日カルヴィンはローゼンタール医師を訪ねる。「先生は天才だよ!」と興奮気味に話すカルヴィン。「下手くそでいいなんて先生は頭がいいよ」とカルヴィンは言った。「君にひらめきを与えられたならよかったよ」と答えるローゼンタール医師に、カルヴィンは「ひらめきどころか圧倒されたよ。寝る間も食べる間も惜しんでひたすら書いたよ」と話すが、それまでの勢いをなくし何かを思い出したように突然、「どうしよう」とうなだれた。「どうした?」と心配するローゼンタール医師。カルヴィンは「バカげた話だ」と呟く。ローゼンタール医師は「バカ話は大歓迎だ」とカルヴィンを元気付けるが、「バカはバカでも大バカだよ。主人公の男はカルヴィンだ。僕の性格が主人公に反映してる。書いてると彼女と一緒にいるみたいになるんだ」とカルヴィンは話す。「彼女というのは誰のことだ?」と聞くローゼンタール医師に「僕が書いてる女の子だ。タイプライターをたたくと彼女と一緒にいられる。まるで恋だ」とカルヴィンは陶酔した様子だった。夢の中の女性だとは知らずにローゼンタール医師は「素晴らしいじゃないか」と目を輝かす。カルヴィンは「でも不可能なんだ。実在しない」と呟く。「彼女が?」と意外な展開に驚くローゼンタール医師。「彼女は僕の想像の産物なんだ」と声を上げ、カルヴィンはソファーに横たわった。そして「何でライラは僕にあんなことを」と話し始める。ライラは、カルヴィンが以前付き合っていた女性だった。「親父の死後すぐに消えるなんて」と振り返るカルヴィンに「君のことを愛せなかったんだよ」とローゼンタール医師が優しく諭す。「思いやりのない女だ」と不満を口にするカルヴィンにローゼンタール医師は「君が書いてる女性の話をしてくれ」と言った。「ルビー」と呟くカルヴィン。「ルビー・スパークス」と口にした。カルヴィンはルビーについて語り始める。
「オハイオ州デイトン出身の26歳。初恋の相手はジョン・レノン。すでに死んでると聞いて泣いた。教師と寝て高校を退学。相手は美術かスペイン語の先生。運転は出来ない。パソコンも持ってない。ティファニーという自分のミドルネームが大嫌いで、いつも弱者を応援する。難しい子だけどそこがまた好きだ。日常的なことが苦手で、請求書の開封も忘れる。元彼は49歳。その前の彼はアルコール依存症。何かが変わることを感じてて、それを探してる」。
「何を?」と尋ねるローゼンタール医師に、「新しい何か」とカルヴィンは答えた。

スコッティを連れてジョギングをするカルヴィンとハリー。家に戻ると、ハリーの妻のスージーが料理を作っていた。「カルヴィン感謝して。オーブンを掃除したの」とスージーが微笑む。「ありがとうスージー」とカルヴィンは言ってシャワーを浴びに行った。そして洗面所で見覚えのない女性用のシェーバーを見つける。スージーの私物だと思ったカルヴィンは聞こうとするが、家のあちこちで女性用の下着やサンダルなどをハリーとスージーに発見される。心当たりのないカルヴィンは、スコッティが近所のゴミを漁ったのだろうと思い込み、2人にそう説明する。
カルヴィンの家で夕飯を食べ終えしばらくすると、ハリーはカルヴィンの書いた小説を読んでいた。ハリーが気に入ってくれることを期待し、「どう?」とカルヴィンは笑いかける。「この後の展開は?」と、険しい表情でハリーが聞く。カルヴィンは「書き始めたばかりで」と戸惑っていた。「ラブストーリーだろ?読者層は女性?この本は女にはウケない」とハリーは言った。「どうして?」とカルヴィンは疑問を口にする。ハリーは「女は気まぐれでだらしない同性を嫌う。これお前の経験?」と聞いた。「知ってる子の話だ」と答えるカルヴィン。「ライラ?」と言うハリーに「ライラの名前は出さないで」とカルヴィンは制した。「でも付き合ってただろ?」と聞くハリーに、カルヴィンは「5年間ね」と答えた。ハリーは「一緒には暮らしてないだろ?浮かれ気分は最初の数ヶ月。そのうち素顔が見えてくる。スージーだってそう。彼女を愛してるけど時々理由もなく八つ当たりをする。人間だから」と言った。カルヴィンは黙っている。「これは人間じゃない。”女の子”だ」とハリーは言った。カルヴィンは「もういいよ」と言ってハリーから原稿を取り上げる。落ち込んだカルヴィンは「この段階で読ませたのが間違いだった。中身は人に言わないで」と言った。
ハリーとスージーが帰った後も、カルヴィンは小説を書き続ける。書いている間、カルヴィンは幸せの真っ只中だった。恍惚とした表情で、ルビーと自分の物語を書き続けた。

ルビーが現れる

突然現れたルビー

いつの間にか眠っていたカルヴィンは電話のベルで目を覚ます。サイラスと会う約束をしていたカルヴィンは、「見せたいものがある。きっと驚くよ」とサイラスに伝えた。カルヴィンは原稿を片手に急いで階段を下りる。「今出るから15分で着く」と言ったあたりで「まずい。スコッティが」と言い、スコッティの散歩をしていないことに気付く。「どうした?」と電話口で尋ねるサイラスに「なんでもない。うちの犬だよ。裏庭に放しておく」と言うと、「私がやっとく」と言う声がした。条件反射で「ありがとう」と返すカルヴィンだったが、キッチンに立つ人物の姿を見て唖然とする。そこにはルビーがいたのだ。「机で寝たでしょ。いいのが書けた?」と笑いかけるルビー。カルヴィンは後ずさり、「ついに来た。神経衰弱だ。家族に入院させられる」座り込む。カルヴィンは、とうとう幻覚を見たのだと混乱していた。「どうしたの?」とルビーがカルヴィンに触れると、感触があることに驚いたカルヴィンは「何がどうなってる!」と叫び出し、2階へ上がって行き部屋に入った。
「あれは実在しない。実在しない」と繰り返すカルヴィン。「これは夢なんだ。早く目を覚ませ」と何度も呟く。そして気持ちを落ち着かせ、忍び足で廊下に出る。そして1階のリビングに目を向けた。ルビーがいないことを確認し、安堵したのも束の間「カルヴィン?怒ってるの?」と言うルビーの声が聞こえて来た。カルヴィンはパニック状態になり、「これは夢だ。これは夢だ」と再び繰り返した。そしてローゼンタール医師に電話をし、「カルヴィンです。緊急事態が発生したのですぐ電話をください」と留守番電話サービスに伝言を残した。

恐る恐る1階へ下りるカルヴィン。ルビーはキッチンで料理をしていた。「ルビー?」とカルヴィンが呼びかけると、「お腹が空いてると思って卵料理を作ってるの」とルビーが答える。カルヴィンが弱りきった表情でルビーを見ていると「どうしたの?」と心配するルビー。カルヴィンは動揺し「別に。何でもない。ひょっとしてこれ君のもの?」と言って、下着を取り出した。ルビーは当然のように「そうよ。私のだけど。他に誰が考えられる?」と答える。そして、「ちょっと待って。あなた浮気してるの?」とカルヴィンを疑った。「まさか。それはないよ。他に女はいない。君だけだ」とカルヴィンが言う。そしてまた2階の部屋に行き、今度はハリーに電話をかける。ハリーは「ルビーが家にいる?」と怪訝そうに聞き返した。カルヴィンは「今朝からいるんだ。自分を想像の産物だと思ってない。僕らが実際に付き合ってると思ってる所が怖いんだ」と話す。ハリーは「今会議中なんだよ」と困惑する。「でも緊急事態なんだ。頭が変になる」とカルヴィンは訴える。ハリーは「家にルビーはいない。実在しないんだから」とカルヴィンに言い聞かせるが、「そんなの分かってる。彼女は架空の人物だ。でも見える。感触もあるんだよ。今キッチンで料理してる。本物の卵で!」とカルヴィンはまくし立てた。「カルヴィン。今重要な会議をしてる。そういう話には付き合ってられない。いいか。今すぐ家を出て友達に会うんだ。まともな友達と。様子を見てまた話そう」と、ハリーはカルヴィンを落ち着かせうように言った。「分かった。友達と会うよ」とカルヴィンは言って、電話を切る。ハリーも、とうとうカルヴィンが精神に異常をきたしてしまったのだと思っているようだった。

友達のいないカルヴィンは、以前ラングドンのトークイベント後のパーティーで連絡先を渡して来た女性と会うことにした。ルビーに気付かれないように家を出ようとするカルヴィンだったが、「どこへ行くの?」とルビーに聞かれる。「ちょっと買い物」と答えるカルヴィンにルビーは「私も連れてって」と言った。「だめだ」とカルヴィンは言うが「連れてって」と折れないルビー。そんな押し問答が続き、結局カルヴィンはルビーと一緒に出かけることになった。しかし、街を歩いている途中で「近くのカフェで友達と会う約束があるんだ」とカルヴィンは言い、その場にルビーを残しカフェへ向かった。

カルヴィン(画像左)とルビー(画像右)

パーティーで会った女性と落ち合うカルヴィン。2人で話をしているとルビーがカルヴィンの達のテーブルまでやって来た。「知り合い?」と女性がカルヴィンに聞く。ルビーは「彼の恋人のルビーよ。前にどこかで会った?」と女性に聞いた。女性は戸惑い、「いいえ。私はメーベル。今帰る所よ」と答える。ルビーと会話をしているメーベルに驚き、「彼女が見えるの?」と聞くカルヴィン。カルヴィンがなぜそんなふうに言うのか理解出来ないルビーは「そうよ。私も彼女が見える」と苛立ちながら言った。「ほんとに君も見えるの?」と、カルヴィンは信じられない様子でメーベルに聞く。メーベルはそれには取り合わず、「修羅場は嫌よ。もうやめましょ。それじゃあね。いい本を書いてね」と言ってその場を去って行った。「あの子は誰なの?」とルビーがカルヴィンに問い詰めるが、カルヴィンはカフェのスタッフを呼び止めて「彼女が見えますか?」と聞く。ルビーは激怒し、グラスに入っていた水をカルヴィンに浴びせ走り去った。呆然としたカルヴィンは「本当にいるんだ」と呟き、我に返ってルビーを追いかけた。取り乱していたルビーは追いかけてくるカルヴィンに「そばに来ないで。あっちに行って」と言いながら、バッグで殴る。通行人が「警察を呼ぼうか?」とルビーに言う。少し冷静になったルビーは丁寧にその申し出を断った。カルヴィンは「ルビー。話を聞いて」と必死になってなだめた。「近付かないで。あんな変な態度をとるなんて…」とルビーが言いかけると、カルヴィンは突然ルビーを担いで走り出した。「やめてよ!降ろして!」と声を荒げるルビーを人通りの少ない場所に座らせ、「聞いて。君には説明出来ないくらい色んなことが起こり過ぎていて自分でもついていけなかったんだ」とカルヴィンが話し始める。ルビーは泣きながら「ちゃんと私に話してよ。他の女とデートなんかしてないで」と言った。カルヴィンは「誤解だ。デートなんかしてない」と弁解する。「何があったの?」と泣き崩れるルビー。「よく分からない。ただ僕はこの状況が受け入れられなくて。君がこうして存在してる。そのすべてが信じられないよ」とカルヴィンは涙を流す。ルビーは訳が分からないながらも次第に泣き止んだ。そして「バカね。キスして」と笑った。

カルヴィンとルビーの過ごす日々

デートを楽しむカルヴィン(画像右)とルビー(画像左)

それからというもの、2人は思い切りデートを楽しんだ。映画やゲームセンター、クラブなど、2人で色んな場所へ行きはしゃいでいた。
そしてある日カルヴィンはハリーと会って、現在の状況を説明した。カルヴィンは「信じられないだろうけど彼女は存在してる。どうしてかは知らないけど確かに彼女はいるし、僕はそれを楽しんでる」と打ち明ける。「ということは、お前以外の人間も見えるんだな」とハリーが言う。「そうなんだ。レストランや公園に行った時もよその人と会話してる」とカルヴィンが話す。「そんなのありえない」とハリーは言い、カルヴィンを心配して「ローゼンタール先生は何て言ってる?」と聞いた。カルヴィンは何も答えない。ハリーは「話してないのか?幻覚を見たら精神科医だ」とカルヴィンに強く言う。カルヴィンは「幻覚じゃない」と否定した。「カルヴィン。先生に連絡しろ」とハリーは冷静に言う。「できない。先生には本の内容を話してるんだ。理解してもらえない」とカルヴィンは言った。ハリーは半ば呆れたように「お前は異常かもしれない」と呟く。カルヴィンは「状況は異常だけど僕は正常だ」と言い切った。「自分が何を言ってるか分かってるのか?」とハリーは少し怒ったようにそう言った。

カルヴィンはハリーを家に連れて来た。気の進まない様子のハリーに「僕が彼女を書いたことは黙ってて」とカルヴィンは言う。始めから信じていないハリーは玄関先で「ルビー。よろしくな」と投げやりに言うと「じゃあ先生に連絡しろよ」と言って帰ろうとした。するとそこに、キッチンからルビーが走ってやって来てカルヴィンに抱きつく。ハリーは呆気にとられていた。「ルビー。兄貴のハリーだ」と、カルヴィンはルビーに紹介する。ルビーは「どうも。会えてうれしいわ。カルヴィンからあなたの話はよく聞いてるの」と言ってハリーと握手する。ハリーは呆然としていた。「今夕食を用意してるの」と言ってルビーがキッチンに戻った隙に「話しがある。外に出よう」とハリーは言って、カルヴィンを連れ出した。

「女優を雇ったのか?ネットで募集でも?」とハリーはカルヴィンを問い詰める。「突然現れたんだ」と話すカルヴィン。「お前は魔術師か?ちゃんと説明しろ」と声を上げるハリーに「”愛”だ」とカルヴィンは答える。何を言っても無駄だと感じたハリーは「いいか。人間は突然空中から現れない」と冷静に諭す。カルヴィンは「現れたんだ。不思議だけどこれが”愛”だ。”魔法”だ」と興奮気味に言う。ハリーは呆れて「もういい。先生に連絡する」と言って携帯電話を取り出した。すると、「ハリーやめて。僕の話を聞いて。お願いだ」とカルヴィンは必死になってハリーを止めた。そして「スージーとの出会いは?理想的な女性だって言ってた。僕には彼女がそうなんだ」と話す。「彼女は詐欺師かもしれないんだぞ。お前に近付きたい女がこの原稿を読んで…」とハリーが言うのを遮り、「原稿を読んだのはハリーだけだよ」とカルヴィンは言った。カルヴィンの真剣な目を見てハリーは「よし分かった。じゃあお前が彼女を創り上げたんなら書くことが全部彼女の身に起こるんだな?書き足してみたか?」と聞く。「いいや」と怪訝そうに答えるカルヴィンに、「彼女について書くんだ。それが実際に起こったらお前を信じよう。奇跡が起こったんだ。でも何も起こらなかったら警察に行こう」とハリーは落とし所を見つけたように言った。

原稿に書き足すカルヴィン(画像左)とハリー(画像右)

部屋に戻るカルヴィンとハリー。カルヴィンは「ちょっと上に言って調べ物をしてくる」とルビーに言う。「2人でドラッグでもやってたの?」とルビーは冗談めかして言った。
2階の書斎に入り、タイプライターに向き合うカルヴィン。ハリーは「すぐ気付くような分かりやすいのを書け」と言った。そして「分かった。こうしよう」と言ってハリーは小声でカルヴィンに提案する。カルヴィンは言われた通り「”彼女はフランス語が堪能だ。本人は気付いていないが…”」と打ち込んだ。

1階へ下りた2人は、流暢にフランス語を話すルビーを目の当たりにして驚きを隠せず顔を見合わせる。カルヴィンは急いで書斎に戻り、何かを書き足した。するとルビーは英語に戻っていた。
その後夕食を囲む3人。ハリーはすっかりルビーと意気投合し、ハリーもルビーも終始楽しそうにしていた。
夕食を終えハリーが帰る時、カルヴィンとハリーは2人で車の中で話した。「こんなのありえない!」と叫び出すハリー。そして「頭に描いた女を出現させるなんて」と興奮気味に話す。「彼女を好きなように変えられるんだろ?男を代表して言う。この奇跡を無駄にするな」とハリーが言うと、「もう彼女のことを書くのはやめる」とカルヴィンは決心したように言った。
カルヴィンは書斎に行き、ルビーのことを書いた原稿を引き出しに仕舞い鍵をかけた。するとルビーがやって来て「私、ハリーに気に入られたかな?」と不安そうにカルヴィンに聞く。「大好きだって」とカルヴィンは微笑み、ルビーはうれしそうに笑ってカルヴィンに抱きついた。

左から時計回りにルビー、ガートルード、モート、カルヴィン、スージー、ハリー

ある日の週末、カルヴィンはルビーを連れて母親の住む家へ向かった。カルヴィンの母のガートルードは再婚しており、現在はモートという男性と暮らしていた。
家に着くと、ガートルードはルビーを快く歓迎した。ガートルードとモートが暮らす家は外も中も植物で溢れており、内装は木造で整えられていた。ルビーは「まるで神殿にいる気分」と感激していた。ガートルードは「まあ驚いた。そう言ってくれるなんてすごく光栄よ。直感力があるのね」と驚き、「木材はアーミッシュの居住地から調達してるの。レンガは解体されたカトリックの学校からもらったのよ」と、ガートルードは上機嫌で説明する。
聖なる場所にあったもので造られた家を神殿のようだと表現したルビーを、ガートルードはとても気に入ったようだった。
モートは流木で家具などを作る自由を好む芸術家で、とても気さくな人物だった。ルビーはガートルードともモートともすぐに打ち解けていった。
ハリーとスージーも加わり、夜は全員で食事を楽しんでいた。

次の日、カルヴィンが1人で読書をしていると、庭のプールでルビーがモートやハリー達とはしゃいで遊んでいた。カルヴィンも皆からプールに入るよう誘われるが、カルヴィンは断る。ガートルードが気になってカルヴィンの元へ向かうが、カルヴィンは冴えない表情だった。
カルヴィンは疎外感を覚えていた。誰とでもすぐに仲良くなるルビーを見て、焦りのようなものを感じているようだった。

翌日カルヴィンは、モートが流木で作ったという大きな椅子をしぶしぶ受け取り、ルビーと一緒に自宅へ帰って行った。
カルヴィンの自宅へ戻りルビーが歌いながら料理をしていると、「本が読めないよ」とカルヴィンが咎める。ルビーは機嫌を損ねたようだった。

その夜、椅子にもたれかかりながらルビーは「せっかくの週末なのに本ばかり読んで」とため息混じりにカルヴィンに言う。「お母さんもモートも一生懸命だったのに」と、ガートルードとモートの家でのカルヴィンの振る舞いを非難した。「悪かった」と謝るカルヴィン。ルビーは「友達はいないの?」とカルヴィンに聞く。カルヴィンが「君がいるから。他には誰もいらない」と答えると「それって重い。なんだか寂しいわ」とルビーは涙ながらに言った。「そんなこと言うな。お願いだから」と言って、カルヴィンはルビーを抱きしめる。そして「どうしたい?」とルビーに聞いた。ルビーは「美術の学校に行きたい」と答える。「いいね。気分転換にもなる」とカルヴィンが言うと、「それから、たまには自分のアパートで寝るわ」とルビーは言った。「君のアパート?」とカルヴィンは不思議そうに言う。カルヴィンからすればルビーは突然現れた女性だったが、生い立ちや環境なども書いていたことでルビーにはルビーの生活がある程度は確立されていたようだった。
「週に一晩。実験的に」とルビーが言う。カルヴィンは「分かった」と言って、心ならずもルビーの提案を受け入れたのだった。

ルビーを操り始めるカルヴィン

美術教室に通い出したルビー

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