ギフト±(プラスマイナス)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ギフト±』とはナガテユカによる日本のミステリー漫画。『週刊漫画ゴラク』で2015年4月3日号から連載中。単行本は『ニチブン・コミックス』から刊行され、累計発行部数は280万部を突破している。主人公は女子高生の鈴原環。一見すると普通の女子高生だが、実際は男子大学生が率いる臓器売買のメンバーの1人として、更生できない元凶悪犯の身体を解体し臓器を取り出す解体師だった。感情をほとんど表に出さない環。自身の行為や組織についても知らなかった。忍び寄る国外組織。環を巡り次々と事件が起きていく。

『ギフト±』の概要

『ギフト±』とは、ナガテユカによる日本のミステリー漫画。『週刊漫画ゴラク』で2015年4月3日号から連載中。単行本は『ニチブン・コミックス』から刊行され、累計発行部数は280万部を突破している。
主人公は女子高生の鈴原環。一見すると普通の女子高生だが、実際は男子大学生が率いる臓器売買のメンバーの1人として、更生できない元凶悪犯、通称「クジラ」の身体を解体し臓器を取り出す解体師だった。取り出された臓器は、正式には移植ができない患者のために臓器売買を行っている。しかし、感情をほとんど表に出さない環は、あらゆる事象に対して興味を持たないうえ学校内外での交友関係もない。こうした性格のため、クジラの身体から臓器を取り出している行為についても悲しみや辛さなど負の感情を抱かない。逆に命を再生している善意の行動として感謝の意を込める。人体から臓器を取り出す際に「命をありがとう」と言葉を投げかけ、生きたまま人間を解体していくのだった。
謎に包まれたタカシ率いる臓器売買の組織。物語は、闇ルートで取引が進められる臓器売買と環を巡って次々と事件が起きる。謎の中国組織が環らのグループに忍び寄り、環を含む周辺の人間を巻き込み、ついには死者も出てしまう事態に。この中国の組織は、実はタカシらと同様に臓器売買を秘密裏に行い環らの活動も把握していた。決して表には出ない臓器売買には政府や警察までもが関与していた。物語が進むにつれて、環自身が臓器移植用に造られた人間だったことなど隠されてきた事実が少しずつ明らかになっていく。

『ギフト±』は、スマートフォンでの視聴に最適化した、タテ型アニメを配信するアプリを手がける株式会社プロダクション・アイジーが提供する「アニメビーンズ」でアニメ化された。2018年9月21日より配信を開始。鈴原環役には、元AKB48で女優の梅田彩佳が演じる。アニメビーンズでは、『ホリデイラブ』『めしぬま。』などの配信も行っている。

『ギフト±』のあらすじ・ストーリー

「クジラ」の謎

授業の終了を知らせる鐘が鳴り響く。机に突っ伏していた鈴原環が静かに目を開けた。環は、一見するとふつうの女子高生だが、他人を寄せ付けない独特な雰囲気があり友達はいないに等しい。学校が騒がしくなる。一人の女子生徒が自殺を図るため屋上から飛び降りようとしていた。騒ぎに気付いた環は屋上にのぼり女子生徒に近づく。「命は大事にしないと」と語り掛ける環。慌てる周囲とは裏腹に淡々とした様子だった。校舎の際に立つ女子生徒は足を滑らしてしまう。しかし、間一髪のところで環は女子生徒の腕をつかんだ。こんな時でも環は落ち着いた様子で、周囲が助けにこないと考え、女子生徒の腕を横に振りわざと校舎から落とした。学校内に悲鳴があがった。女子生徒は足の骨を折る大けがを負ったが命に別状はなかった。校舎脇に植えられた木がクッションになったためだ。環は、木の位置を確認して女子生徒を落としていたのだった。

環の学校で騒ぎがあった同じころ、刑務所から一人の男が出所した。「15年ぶりの娑婆かぁ」と天を仰ぐ男。道端の野良猫を愛でるように話しかけ餌を与えた。しかし、その後、猫たちは腹が切り裂かれて殺されていた。
雑居ビルが立ち並ぶ一角にあるクリニックに透析を強いられている一人の男性が訪れていた。「ここのクリニックなら良心的な値段で腎移植ができると聞いてきました」と男性は医師に思いを伝える。300万円を医師に渡す男性に対し、腎移植の手術を引き受ける医師。医師は林と名乗っていた。「タカシか?俺だ。いつものように適応検査を頼む。”キビダンゴ”2つ」と話す林。林は偽名で、本名は英琢磨。過去に大量殺人をした疑いをかけられた医師として指名手配されていた。名前を変えて「闇医者」として医療行為をしていたのだ。医師のもとに阿藤という男が現れた。英は、過去に治療で面倒を見ていたひとりの少女を探しており、探偵業をしていた阿藤に見つけるように依頼していた。探しているのは「たまきちゃん」という女の子だった。たまきちゃんとは鈴原環のことだがこの時点で、英や阿藤は、環が生きているか死んでいるかも分かっていなかった。

ホテルの一室。女性が身体を拘束されて男に犯されていた。男は、出所したばかりの猫を惨殺した人物だった。その場に環が現れ、スタンガンで気絶させた。その後、タカシという人物に電話をかける環は「クジラをつかまえた」と言う。クジラとは何を意味しているのか。それは、クジラは捕鯨されると、臓器や骨など無駄は一切なく活用されるということだった。
環とタカシは、スタンガンで気絶させた男を拘束し全裸で手術台にのせていた。台のそばには10種類ほどのナイフが並ぶ。作業着をまとった環は、透明のフェイスシールドを付けて、男のそばに立った。「命をありがとう」。環は、台に拘束した男に語り掛けて、生きたままの状態でナイフを胸にいれた。血しぶきとともに、男は絶命する。環は、肝臓や腎臓、膵臓などあらゆる臓器を摘出した。

タカシは、違法な臓器の売買をしていたのだ。そして、環は女子高生のかたわら人体を解体する役割を担っていた。2人は、出所してきた男のような極悪の犯罪者を、肉体のすべてを活用できる「クジラ」として捕まえて、臓器の闇取引をしていた。今回、取り出された腎臓2つは、闇医者の英に届けられ、臓器移植が行われた。環やタカシは、元犯罪者を監視して、更生が見込めない場合はクジラとして捕獲していた。あるときは、嬰児を遺棄したとして逮捕された未成年の相澤華南がターゲットにされていた。相澤は妊娠後に男に捨てられたという経験がトラウマとなっていて、男に捨てられないように避妊しないセックスを続けていた。そして、2度にわたり自分が出産した子どもを遺棄していたのだ。この行動に気付いた環たちは、相澤を捕獲した。しかし、この時ばかりは凶悪犯ではなかったことから子宮だけを取り出して、相澤を解放していたのだ。

環と同じ学校のクラスメートの女子生徒がいじめを受けていた。ある日、足を引っかけられて負傷したところを環がその女子校生に絆創膏を渡す。このことがきっかけで、女子高生は環に興味を抱く。環と女子高生は無料通信アプリの連絡先を交換した。ある日、この女子高生から「会いたい」という連絡を受けた。環が待ち合わせ場所の公園に行くと、そこには連絡先を交換した女子高生ではなく亜依という別の生徒が現れた。「あの子とは連絡がとれない」と亜依が言う。しかし、亜依は影で外国籍で売春を取り仕切っている劉達善、通称「リュウ」とつながっていて、売春させる女子高生らを斡旋していた。亜依は、環を売春する女子高生としてリュウに紹介しようとしていたのだ。そのころ、環と連絡先を交換した女子高生は歯と内臓を抜かれた状態で水死体として川で見つかった。この女子高生は売春の斡旋先でひどい扱いを受けて殺されていたのだ。探偵の阿藤は、女子生徒の死の報道を見て、売春児童クラブ「プティシャトン」を経営していた日高孝太郎の変死事件が頭によぎる。日高は、何者かに殺された疑いがあったにも関わらず、警察上層部の指示によって自殺として片付けられていた。このことがきっかけとなり阿藤は警察を辞職。探偵業についたのだ。そして、今、プティシャトンの事実を探るとともに、クジラの謎、鈴原環の行方を追っていた。

阿藤は、臓器売買の真実にあと一歩のところまで迫っていた。しかし、悲劇が襲う。阿藤は、警察官でありタカシの部下の加藤によって銃で撃たれてしまう。闇の事実を知りすぎたため、組織によって消されてしまうことになっていたのだ。死ぬ間際、阿藤は瑞希に連絡をとった。盗聴されないようにプリペード式の携帯電話で阿藤と会話をした。瑞希は阿藤が瀕死の状態だと知り心を乱す。しかし、阿藤は瑞希にすべてを伝えた。違法に臓器を取り出される「クジラ」のことや、クジラを利用して闇取引する組織の話、警察官の加藤が犯罪に加担していること、そして環が被害者であることなどを話した。「俺のかわりに正義の味方になってくれ」と阿藤は言い残して絶命した。電話のあと、廃工場を訪れた瑞希が目にしたのは、複数の死体が転がる中、血を流して息絶えた阿藤だった。乱れそうな心を落ち着かせて、瑞希は阿藤の携帯からクジラに関するデータが入ったSDカードを抜きだして立ち去った。

阿藤と瑞希がつながっているとにらんでいた加藤は、阿藤が死んだ情報が漏れないように瑞希に電話をかける。アリバイや阿藤との関係を尋ねる加藤に対し、瑞希は「阿藤圭介との男女の関係はない」と涙ながらに伝えた。瑞希はこの電話を機に、阿藤の遺志を受け継ぎクジラをめぐる事件の全貌を明らかにしようと決意した。一方、学校から帰宅しようとしていた環は、突如、ワンボックスカーに乗った3人組の男にさらわれる。環は「ちょっとよくない状況?」と考えながらも冷静でいた。男の1人が環のスタンガンを使おうとしたが、環以外の人間は使えないような仕掛けがされていたため感電して気絶する。そして、環はもう1人の男もスタンガンで気絶させた。最後に運転する男の顔を見た環は、その男が過去に凶悪犯罪を犯した人間だと気づく。環は「捕らなきゃいけないクジラならちゃんと間引きしないと」と言って、男の捕獲に成功する。環は、タカシにクジラを捕獲したことを伝えるとともに、行方が気になり始めていた英のことや、環に接触してきた阿藤について尋ねた。しかし、タカシは「また調べておく」とはぐらかす。その後、タカシは裏でつながっている加藤から、阿藤を殺したとの報告を受けるのであった。

幼少期の環は、英が医師を務める大きな病院に入院していた。心臓移植が必要な少女として聞かされていた英は、移植手術をするための準備を進めていた。環への移植手術は成功した。しかし、英は術後に一つの疑念を抱く。それは、環の心臓が健康的であることだった。取り出した環の心臓をクーラーボックスに保存し手術室の角に置いたが、いつのまにか持ち出されていた。不可解な現象に納得できない英は、術後にカルテを見直した。すると、病院長である叔父のパソコンから「裏カルテ」がみつかる。環は健康体だったが、移植が必要な別の誰かのために「ドミノ移植」と呼ばれる手術を強いられていたのであった。裏カルテに気づいた英のもとに、叔父である病院長が訪れる。そこで、「環は戸籍も身寄りもない存在だ」と叔父から聞かされる。叔父に対して警察に行くように促す英だったが、逆に叔父に銃を突き付けられて撃たれてしまう。幸いにもこめかみをかすっただけだったが気絶してしまう。英は、血のにおいで目を覚ます。すると、そこには叔父の身体にメスを入れる環の姿があった。環は「人の身体でもメスの使い方を練習しないと」と英に話す。英は、ためらいもなくメスを入れる環に悪魔のように感じる一方で、澄んだ瞳の環が天使のような存在でもあるように感じる。この時、英は環の心臓を取り出したことを悔い、いつか本人の心臓を戻そうと心に誓う。そして、叔父の身体に灯油をかけて、証拠を隠滅するために病院を燃やすのであった。

ある民家で幼女が監禁されている。手足を拘束した上で目隠しされた幼女を猟奇的な目で見る1人の男。男は泣き叫ぶ幼女の首をしめた。そのとき、男のうなじにスタンガンが向けられる。環だった。

瑞希は、阿藤が殺された謎を探るためにジャーナリストの廣瀬直也のもとを訪れた。廣瀬は過去に連続少女殺人事件の犯人として逮捕された1人の男について、冤罪として無罪を勝ち取るための活動に携わっていた。その男は結果的に無罪を勝ち取る。廣瀬は、無罪になったあとも定期的に男の顔を見るために住んでいた家を訪れていた。瑞希が訪ねてきた際も、廣瀬は男のところに行く予定だったため、瑞希を連れていった。しかし、男はいなかった。家具などはなくなりもぬけの殻だった。廣瀬は瑞希に対して「おまえたち警察の仕業か」と語気を強める。
廣瀬が探していた男は、手術台の上で拘束されていた。男は無罪ではなく少女を襲う殺人犯だったのだ。それに気づいていた環やタカシ、それに加藤たちは、男を「クジラ」として捕獲した。環は何のためらいもなく男の胸に刃をいれた。「命をありがとう」という言葉を言わずに、環は次々と男の臓器を取り出していく。タカシはどこか環の様子がいつもと違うと感じていた。環自身も分かっていなかったが、あまり感情を出さない環は、この頃から憎しみや悲しみなど感情が表に出るようになっていた。

瑞希は、再び廣瀬に会っていた。クジラの存在に気づき始めていた瑞希。殺人などを犯した元受刑者で行方が分からなくなっている人物が何人もいると廣瀬に告げる。そして、更生できない人物を解体して臓器をリサイクルする組織があることも話した。廣瀬とともにクジラの謎を暴くことを決意した瞬間だった。

「環は、環とうり二つの真琴と呼ばれる女性の受精卵を使って、代理出産で誕生した」と英が話す。その事実に言葉を失う瑞希と廣瀬。さらに、新たな事実が語られる。当時、英の叔父が病院長を務める英医院は資金繰りに困っていたため、秋光家が組織する極秋会病院が、資金を工面していた。その代わりに公にできないような手術を英医院に任せていたという。さらに、環の出生の目的が明かされる。それは、秋光家の長男が先天性の心臓病を患っていたため、心臓移植のために誕生したというのだ。英医院は臓器工場となっていた。
環も自分に感情が生まれつつあることに気づき、タカシにペースメーカーをつけることを申し出た。クジラの捕獲を続けるためだった。心臓外科を担当し、環の面倒を見ていた梨世が手術を担当することに。タカシからの直々の依頼だった。手術は無事終わったが、梨世は環の心臓の細胞サンプルを密かに抽出していた。タカシと肉体関係をもつ梨世だが、不穏な動きを見せ始めていた。梨世は、中国の人民解放軍の影の実力者で、曹国良と呼ばれる男から秋光グループに潜入するよう命じられており、そのためタカシに近づいていたのだ。

ある日、環は公園を歩いていると気功をしている集団に出会う。その団体のメンバーから環は「この天廻功と呼ばれる修行を始めれば病気にかからない」と声をかけられる。そして、今抱えている悩みなども払拭され、徳を積むことで来世には幸せが訪れるなど宗教的な考えも伝えられた。環は、天廻功をしている集団のことをタカシに伝えると、タカシは「中国の新興宗教だから気を付けろ。その国ではとってはいけない臓器を抜き取っている」などと警告した。これを聞いた環だったが、自分も臓器を取り出す「クジラ」の捕獲をしている者として集団に接触しようと決め、集団が拠点としている道場を訪れた。ここで、どこかで嗅いだことのある臭いを感じたが、このときはなんの臭いか分からなかった。環は道場で瞑想をすることになる。クジラをとっているような集団には感じなかった。後日、環は借りた道着を返すため、再び道場を訪れた。どこで嗅いだことがある臭い、それは臓器を抜き取る時に使う消毒液の臭いだと思い出す。誰もいない道場の中を歩く環は、集団が臓器を抜き出すために使っていた処置室を見つけた。そして、集団のリーダー的存在のヌクイと呼ばれる男に見つかる。天廻功が違法に臓器を抜き取っていることに気づいた環は「私はとっていいクジラしか捕らない」と感情を露にした。ペースメーカーを入れたはずなのに、激しく鼓動する環の心臓。環は気絶してしまう。

気絶した環は、ヌクイら集団によって山奥の小屋に連れ去られてしまう。ヌクイは、環をマインドコントロールして集団の一員にすることを考え拘束。しかし、集団メンバーの1人でシイナという女性が、幼く純粋な環を見て逃がすことを決意する。シイナは、環を拘束している紐をといて、一緒に逃げ出す。しかし、途中でヌクイに見つかってしまう。このとき環は、いつものように無感情の状態に戻っていた。そして、ヌクイらにスタンガンを使い気絶させる。

ヌクイの脅威からの逃れた環だったが、何者かが背後から近づき眠らされてしまう。車に詰め込まれてしまった環。その車のハンドルを握っていたのは、行方をくらましていた梨世だった。梨世は誰かと通話し「サンプル(環)をアメリカ大使館に連れていく」と告げる。しかし、通話の相手からは「梨世をうけいれるわけにはいかない」と突如告げられる。目を覚ます環。驚いた梨世はハンドル操作を誤り、壁面に衝突させてしまうのであった。その後、タカシが曹の力を借りて、環を見つけて、裏切った梨世の確保にも成功した。
再びタカシのもとに戻った梨世。これまで秘密にされていた環の心臓について梨世が語る。環の心臓は、高度な再生医療が施された心臓で毛細血管まで再現されたものだった。表には出ていないこの技術を手に入れたいとする中国のほか、梨世はアメリカのスパイとして環を確保しようとしていた。しかし、本人も分からない何らかの理由で梨世はアメリカ側から手を切られていたのだった。さらに、その心臓を作り上げたのは、タカシの祖父であることも明かされた。

新たな脅威

新たな脅威が環に近づきつつあった。リュウと同じく中国の残留孤児の1人で、仲間だった楊亮という男が環を狙っていた。かつて、代議士などの地位のある人間に少女を買春させる店「プティシャトン」のような悪事を働き、楊はふたたびそれで金儲けをしていた。環も「上玉」の女子高生の1人として狙っていたのだ。しかし、リュウはその動きに気づき、加藤と連絡を取り合う。リュウは、組織の幹部から楊を殺害するように命令されていた。
「調理開始」の言葉を合図に、2人の男が指名手配の強姦強盗犯の身体にメスを入れていた。インターネットを使って臓器を売買していた。タカシや環たちのグループではない。2人の名前は安西数馬と省吾という兄弟だった。幼少期に母親を殺した過去があり、それが引き金となり、殺人に快楽を覚えていた。兄弟の行いに気づいたタカシたち。環は街中で2人を見つけ、傘型のスタンガンで気絶させ拘束に成功した。タカシらによる取り調べの中で、2人は臓器を取り出したあと人肉を食べていたことを明かす。特に弟の省吾は、その肉を多く食していたことから、タカシは、感染症のリスクを考えて、クジラにはせずいわゆるモルモットとして実験に使うことを決める。兄の数馬はクジラとして臓器を取り出されることが決まり、環によって処置されたのであった。

いつも通りに学校に通う環。誰かに後を付けられていることに気づく。その人物が環の目の前に姿をあらわす。桜田だった。桜田は「英先生は無事だ」と環に告げた。そして、これから連絡を取り合うために、回線が安全な携帯電話を渡した。
楊は、環を狙い続けていた。しかしその動きをいち早く呼んでいたリュウ。暗殺命令が出ていたが、かつての仲間としてリュウは逃がすことを決める。しかし、その行為が逆に楊を奮い立たせてしまう。楊は、自分自身の名前を組織内で上げるために、プティシャトンの顧客メンバーの殺害を続けた。派手な殺しを続けて、世間を騒がせる狙いだった。しかし、曹の組織力は想像以上で、いくら派手な殺害をしても公にはならず揉み消されていった。追い詰められた楊は、環の学校に車で突っ込む。環を殺すためだった。学内に侵入し生徒の惨殺を続ける楊は、教室に立てこもるのであった。警察によって学校は包囲された。そうした中、環は楊がジャックした教室に入る。楊は、環を殺そうとするが、表情を変えずに懐に入り込む。一方、同じころ、校舎から離れていたところでスナイパーを構えていたのは加藤だった。リュウからクジラにはせずに殺してほしいと頼まれていたからだった。加藤は、楊の頭に狙いを定めて引き金をひいたが、環が楊の身体を引っ張り弾をよける。そして、スタンガンで気絶させた。リュウの願いも叶わず、楊は環によってクジラとして処理された。

中国組織による浸食

臓器売買を許さないと誓う英。一方、タカシは曹と再会する。曹が準備した巨大なタンカーに案内されるタカシは、積まれたコンテナの中を見せてもらうことに。2000体分の臓器が保管されていた。タカシはなぜ曹と手を組もうと思ったのか。それは、環が感情を表に出すようになり、これまで通り遺体を解体することができなくなると考えたため、曹のもとで働いている解体師をかりるためだった。正義のためにクジラ狩りをしていたタカシが権力にのまれていく姿を見て、加藤はタカシのもとを離れることを伝えた。そして、加藤は桜田を呼び出して、プティシャトンの事件の真相についてを明かしたうえで、加藤自身が桜田の恋人だった阿藤を射殺したことも伝えた。桜田は「自首して」と加藤に告げ、加藤は「生きて戻れたなら必ず裁判ですべてを証言しよう」と返した。一方、英は、廣瀬らのサポートで国外に出ていた。中東の某国にある戦地で医師として活動していた。ある日、戦地を取材する日本人ジャーナリストを治療していた時、そのジャーナリストから興味深い写真を見せてもらう。臓器が抜き出された遺体の写真だった。タカシのもとで臓器売買に加担していた英だったが、タカシらのグループから逃れるために国外に逃亡していたのだ。

加藤は、中国の組織を止めるために単身で動いていた。桜田にプティシャトンの顧客リストとともに、警視庁の辞表届を渡していた。曹らによる臓器売買を止めるためだった。これまでタカシのもとで臓器売買に関係していたにも関わらず、なぜ急にタカシのもとを離れることになったのか。それは、タカシの祖父である秋光が死ぬ直前に、「中国が臓器売買に関心を持っている。タカシが中国に取り込まれそうになったらとめてほしい」と頼まれていたのだ。加藤は、自動小銃などを購入し、曹らが拠点としているタンカーに忍び込んだ。暗闇に乗じてタンカーのボディーガードたちを次々と排除する加藤。しかし、背後から近づいた警護に殴打されて気絶してしまう。
目を覚ました加藤は、手術台の上で拘束されていた。目の前には曹が雇う解体師の易愛怜がいた。易は、加藤の腹を開き、埋め込まれていた爆弾も取り出していた。

曹は加藤が襲ってくることを予知していた。タカシから密告を受けていたからだった。実は、曹は加藤をターゲットにしていた。理由は、臓器移植において拒絶反応が起きることがあるが、加藤は拒絶反応を起こさない遺伝子を持っており、この遺伝子を入手するためだった。曹は、環ら移植のために造られた人間について加藤に説明する。環は、誰かに臓器を提供したとしてもその相手が拒絶反応を行すことがない「パーフェクトドナー」と呼ばれる存在だった。しかし、環のような完璧なドナーはほかにいないため、大抵のドナーであれば身体が拒絶反応を起こしてしまう。この拒絶反応を抑えるために加藤の遺伝子は貴重なものだった。

囚われた加藤だったが、かつての仲間リュウが助けに来ていた。目を覚ました加藤はリュウに語り掛ける。易が体内から取り出した爆弾はおとりで、さらに身体の奥に起爆装置を入れていることを告げた。リュウに起爆装置を体内から取り出すよう依頼し、麻酔を使わず腹に手を突っ込ませて装置を取り出したのだった。そして、加藤はリュウに船から立ち去るよう命じた。瀕死の加藤は最後の力を振り絞り起爆装置を押した。コンテナは大爆発を起こし、曹が管理していた2000体分の臓器は海の藻屑となるのであった。
タンカーから逃げ出そうとする曹だったが、目の前にリュウが現れた。加藤の仇をうつために曹を殺すことに成功した。しかし、曹は3兄弟で組織を動かしており、まだ組織の動きを止めることはできていないかったのだ。

易は、曹のためだけに動いているわけではなかった。加藤が自爆することを察していたのか、加藤の遺伝子サンプルをきちんと入手していた。そして、易はタカシのもとを訪れ、クジラ狩りをスタートさせていた。環の解体とは違い最期まで絶命させずに臓器を取り出していくという残虐性があった。動物虐待や子どもの命を奪ったシリアルキラーの行為を許さず、「フェアじゃない」などと語り掛けながら臓器を取り出していった。一方、その様子を見ていた環は、自分自身がやってきた行為を客観的に見て複雑な感情を抱いていた。

易とタカシは、パーフェクトドナーについて話をしていた。タカシの祖父が目指していたのは環のようなパーフェクトドナーを量産すること。易はタカシに、警察官の加藤が居なくなった今、さまざまな事案をもみ消すことができる人間がいなくなったためクジラ狩りをするのは危険だと告げる。そして、環は本来は、感情を表に出さないはずの人間だが、英の存在がそれを邪魔していると推測した。易は、タカシにマニュキュアを塗りながら、これまでタカシ自身は手を汚しておらず卑怯な存在だとたきつける。いらだちをあらわにするタカシ。タカシは、易に立ち去るように告げる。これは易の思惑通りだった。実は、易が塗ったマニキュアには毒が入っていた。
梨世と過ごしていたタカシ。爪を噛む癖があったタカシは、ふとしたことから親指の爪を噛んだ。その直後、ベッドから転げ落ちて意識を失う。易が塗った毒のマニュキアを体内に含んでしまったのだ。そして、昏睡状態に陥っていた。

『ギフト±』の登場人物・キャラクター

主要人物

鈴原環(すずはら たまき)

CV:梅田彩佳
物語の主人公。胸に大きな心臓手術の手術痕がある女子高校生。更生が見込めない犯人を狙い「クジラ」として捕獲し、生きたまま身体を解体して臓器を取り出す技術に長けている。タカシの臓器売買を支えている。環は臓器提供者として生まれたデザイナーベビー。冷凍保存されていた秋光正のめかけ・真琴の受精卵を使い、代理母出産で誕生した。秋光渉のドナーとして造られた人間。戸籍はない。ほとんど感情をあらわにしないのが特徴だが、さまざまな出会いを重ねる中で感情を持つようになる。

秋光崇(あきみつ たかし)

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