メシマズというスタイル

萌えキャラの属性にメシマズが確立されてから、随分長い時間がたった。同時にギャグの一形態として古典ともなってしまったこの属性を再検証することで、どう物語に活用されるようになったのか俯瞰してみたい。

砂糖と塩を間違える古典

一番最初にこのギャグを取り入れたのは少女漫画だったと思いますが、もはや何が一番最初にやったものかが確認できません。かろうじて確認できるのは『きまぐれオレンジロード』(1984~1987)でヒロインの一人が砂糖と塩を間違えるかドラマ『おヒマなら来てよネ!』(1987)で出汁の入っていない味噌汁を作ったぐらいまでは思い出せますが、とにかく由緒正しいギャグでした。

ここではキャラクターの「世間知らず」と「未熟さ」をあらわしているわけです。

ジャイアン・シチュー

そして、もう一方の「ガキ大将」の料理。「俺が作ったものがまずいわけがない」と根拠のない自信に満ち溢れた、ジャイアンの料理をあげることができます。
あまりに有名なこの料理の食材は「ひき肉・たくあん・しおから・ジャム・にぼし・大福・そのほかいろいろ」、追加食材では「みそで味を調えて」、「せみのぬけがら」を…
もはや料理を通り越して、テロそのものです。
「たまに家事をやろうとする漢の料理」がダメなのか、「味見をしない」のがダメなのか議論が分かれるところです。

そもそも文化が違う

『うる星やつら』(1978~1987)のラムちゃんも、「地球人には合わない味覚」の持ち主です。主人公のあたるの家でよく飲んでいたのはタバスコ…。しかし同郷のテンからは悪い評価を受けていないことから、そもそも味覚を感じる要素が種族間で異なるが故のメシマズだったわけです。
宇宙人なら仕方ないんでしょう。

好きなものを入れればいいというものでもない

00年代に入り、有名な「メシマズのコピペ」が作られる頃、漫画の中でも「ゆとり世代」と思しきキャラクターがメシマズのパターンを革新。『ハチミツとクローバー』(2000~2006)では「好きなものを入れればおいしくなる」という豪の者が出現。これは毎回出される無理難題を、いちいち応える男性キャラクターの優しさが問題でありましょう。

尚、念のため有名なコピペを載せておきます(以下コピペ)。
マズニチュード
見た目、香り、味を指標とするマズメシの尺度。 単位は[Mz]
0Mz 無害
1Mz 違和感を覚えるものの、完食は十分に出来る
2Mz 正直に言えば美味しくないが、好みの違いと思いたい
3Mz 眼に水分が集まる
4Mz あの酸っぱさが絶え間なく続く
5Mz こんなもの食えるかと言っても失礼ではない
6Mz 子供は食べるんじゃない。君はまだ先がある
7Mz 飲み込む、とは何だ
8Mz 豚も食わない
9Mz 高度な黒魔術の触媒になりうる
10Mz 常人が表現する中で最高の代物
12Mz 天才のみ達しうる領域
15Mz 一口で神仙を殺す料理

まとめ 一家に一台 メシマズキャラ

もはや一つの物語につき、一人はメシマズキャラがいるという状況になりました。女の子博物館と化した近年のアニメ、その欠点でもある属性までパターン化されて、料理回までもが「王道」となった今では、そんなに珍しくもない属性になってしまったのかもしれませんね。

最も、それだけ社会が裕福になった証拠なのかもしれません。

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