ビンテージ・キーボードの役に立たないウンチク~海外モノフォニック編

「ビンテージ」と呼ばれる楽器がありますが、キーボードにもそう呼ばれるものが存在しています。知っている人は「あの楽器か」と懐かしく思えるでしょう。知らない人にとっては「何それ?」と思えるかもしれませんが…。そんなビンテージ・キーボードを紹介していきたいと思っています。まずはシンセサイザー黎明期に発売された単音式の2機種からです。

小さくて「ビッグ」なMinimoog

シンセサイザーの黎明期は、単音しか出ないモノフォニックタイプが主流でした。和音の出せるポリフォニックタイプもあるにはあったのですが、これはサイズが大きすぎて持ち運べるようなものではありませんでした。亡きロバート・モーグ博士が作り上げたMoogもこの例に漏れずといったところで、YMOが初期に使用していたことで知られるポリフォニックタイプのモジュラーシンセサイザー「ⅢC」は「タンス」の異名を取るほどの大きさで、人間が1人運べるような代物ではありませんでした。
そこで、何とか人間が持ち運べるサイズにしようと、小さなモノフォニックタイプのシンセサイザーとして開発されたのがMinimoogです。開発されたのは1970年ですが、鍵盤数が37と少ないため、当時としては珍しいポータブルタイプのものでした。なぜモノフォニックにしたのかというと、当時の技術では人間が持ち運べるレベルのポリフォニックシンセサイザーを開発できなかったからです。

特筆すべきは、発振器を3つも備えていたことで、ものすごく太い音が出ましした。音のキャラクターが強すぎたため汎用性には欠けていましたが、当時はこの存在感が逆にセールスポイントになったほどです。
実際、Minimoogでなければダメだと思ったからでしょうか、多くのミュージシャンに愛されました。あまりに多すぎるので詳細な名前は省きますが、このMoogのオフィシャル動画には、リック・ウェイクマンやチック・コリア、クラフトワークのラルフ・ヒュッターの演奏が収録されています。

オシャレでカラフルなOdyssey

そしてMinimoogと並んでよく知られているのが、ARP Odysseyです。こちらは音が2つまで出せましたので、厳密に言えばデュオフォニックなのですが、ポリフォニックのように和音を鳴らすことは不可能でしたので、実質的にモノフォニックと考えていいでしょう。発売されたのはMinimoogに遅れること2年の1972年です。鍵盤数も同じ37で、先行製品であるMinimoogを意識したのかもしれませんね。

Minimoogの操作系がダイヤル式だったのに対し、Odysseyはスライド式です。画像は1975年から3年間発売されたMarkⅡのものですが、スライドにカラフルな色がついていてちょっとオシャレで垢ぬけた感じがするかもしれません。
Odysseyも多くのミュージシャンに愛されましたが、よく知られているのはハービー・ハンコックの「カメレオン」です。あの特徴的なシンセベースは、Odysseyならではの音といわれています。

現代に伝わるビンテージ・キーボードの遺伝子

Minimoogは本家Moogの方から後継機が発売されています。その名も「Minimoog Voyager」です。出音の方はといえば、さすがにMinimoogだけあってMinimoogの音がします(意味不明)。問題は価格で、さすが本物のMinimoogだけあって4995ドル(約60万円)。
ねー博士、これ高すぎない?

一方、Odysseyの方は本家ARPが倒産してしまったため、後継機は存在していない…と書くと思ったでしょう。実はこのビンテージ・キーボードを現代に復刻させてしまった奇特な企業が存在するのです。その名も株式会社コルグ。そう、あのKORGです。価格の方も10万円前後と、Minimoogよりかなりお買い得です。やるじゃんものづくり日本。

ただ、それでも高いと思う人がいるかもしれませんね。そんな人には両方の機種をシミュレートしたソフトシンセがオススメです。

Minimoogは仏Arturia社から「Mini V2」が発売されています。価格は99ドル(約1万2000円)。ただ、こちらは和音の出せるポリフォニックですので、実機と違うところもいくつかあります。

一方、Odysseyの方はGFORCEから出ている「Oddity2」で、こちらもインターフェースはOdysseyを彷彿させます。価格は116ポンド(約1万9000円)と若干高くなっていますが、雰囲気を楽しむのなら「あり」なのではないでしょうか。

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