怖くても繰り返し読んでしまう『山田悠介』5選

2012年の「第58回学校読書調査」で小・中学生が好きな作家1位に選ばれた山田悠介。
彼の代表作というとアニメ化・舞台化までされた「リアル鬼ごっこ」だろう。彼の作品はバットエンドで終わることが多く後味の悪さを感じさせるが、なぜか何回も読んでしまうある種の「中毒性」を持っている。
本の簡単な紹介と独断と偏見でその「中毒度」を掲載する。参考にして戴きたい。

1 『特別法第001条 DUST』 中毒度:★★★★★

あらすじ
2011年、国は「ニート」を世の中のゴミとして流罪にする法律を制定した。その際に作られた機関が「DEO」である。
流罪にされた主人公たちは無人島で500日のサバイバルを余儀なくされる。その島で主人公たちは飢えや仲間の裏切りやさまざまな困難に遭遇。その中で女性と恋に落ちやがて出産。しかし、最愛の我が子を「DEO」に奪われてしまう。
時は流れ、無人島から出ることを許された主人公は我が子を探すことに全力を注ぐ。
しかし、やっと見つけた最愛の我が子は最も憎んでいる「DEO」の人間になっていた…。

現代日本に必要な法律なのかもしれないと思ってしまうことが怖い。この本を読むたびに現代のニート・フリーターについて考える。
ラストシーンに思わず涙する。

2 『スイッチを押すとき』 中毒度:★★★★

あらすじ
若い世代の自殺者が減らないことに加え、少子化に伴う税の負担から2008年、政府は「青少年自殺抑制プロジェクト」を立ち上げる。
全国から無作為に選ばれた子供たちに「スイッチを押せば一瞬で死ぬことが出来る」謎の装置が埋め込まれる。そして、その装置が埋め込まれた子供は10歳になったら強制収容施設に連れて行かれ、拘束される。その時点で『命のスイッチ』が渡され、「これを押せば死ねる」と教え込まれる。
施設に収容された子供たちは孤独に耐えかね、泣きながら、発狂しながらスイッチを押していった。しかし、ある施設には7年もスイッチを押していない子たちがいるというのだ。彼らの「生きる目的」とは何か…。

死ぬために生まれた子供たち。でも、『命のスイッチ』を押すタイミングは自分で決めていい。
自分だったら…と置き換えてドキドキしながら読める。バットエンドだけど最後のオチに驚くこと間違いなし

3 『ドアD』 中毒度:★★★

あらすじ
2007年の年末。テニスサークルのメンバーと楽しく飲み会をした帰りだった。
気が付いたら飲み会の時と同じメンバーで「謎の灰色の部屋」に閉じ込められていた。
この部屋から脱出するには誰かを犠牲にしなくてはならない…。
あなたならどうしますか?

これは文句なしの鬱展開。最後まで救いがないまま終わる。
『友達を殺さなければ前に進めない』
極限状態に追い込まれた人間の狂気と理性を描き出した作品。

4 『名のないシシャ』 中毒度:★★

あらすじ
『彼ら』には体温も血管もない。疲れも感じることはない。痛みもない。眠らなくても平気だ。
『彼ら』は人間ではなく、人の寿命が見え、人に寿命を与えられる『シシャ』だ。彼らは自分の10000000秒、つまり三年分の時間を与えると消滅してしまう。
今まで1秒も人に与えたことがなかった『シシャ』が初めて時間を与えてもいいと思える人に出会う。
しかし『黒いネックレスのシシャ』がよからぬことを計画していた…。

可愛らしい表紙に騙されてはいけない。この作品も山田悠介の世界観が出ている。
人間は『死』に怯え、それが避けられるなら何にでも縋り付いてしまう。その弱さにつけ込み悪事を働く『シシャ』
彼を妄信し犯罪さえも厭わなくなる『信者』たちの愚かさ。人間の弱さと狂気が合わさったらどうなるか…。
最後は胸が締め付けられる苦しさで終わる。

5 『貴族と奴隷』 中毒度:★

あらすじ
閉鎖空間に集められた少年・少女は「貴族」と「奴隷」に分かれる。
初めは単なる「役割」であり『貴族と奴隷ごっこ』という単純なお遊び的なものであったはずが、「貴族」がだんだん豹変していく…。
最後は「奴隷」が「貴族」へとチェンジする場面で終わる。
続きが想像でき背筋が寒くなるラストである。

アメリカの『スタンフォード監獄実験』に基づいた作品。
普通の人に特殊な肩書きを与えたら人はどのように豹変してしまうのか。
「たかが肩書き」でこんなにもあっけなく人を破壊することが出来る人間の狂気と隠された残虐性をえぐりだした作品。

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