舞妓Haaaan!!!(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『舞妓Haaaan!!!』とは、宮藤官九郎が脚本を手がけたコメディ映画である。主人公の鬼塚(おにつか)は舞妓の美しさに魅了され、お茶屋遊びにあこがれていた。しかし京都の茶屋はどこも「一見さんお断り」のため、鬼塚はツテを頼ってなんとか茶屋に入ろうとする。そして贔屓の舞妓・駒子(こまこ)やライバルの内藤(ないとう)、元カノの富士子(ふじこ)等、周りの人物を巻き込みドタバタ劇が繰り広げていく。この作品は鬼塚という舞妓へ異常な執着を持った強烈キャラが、日常を忘れて大笑いさせてくれる映画になっている。

『舞妓Haaaan!!!』の概要

『舞妓Haaaan!!!』とは、2007年6月16日に公開された日本のコメディ映画である。監督は水田伸生で脚本は宮藤官九郎が手掛けた。主演は阿部サダヲ・堤真一・柴咲コウの三人で、阿部にとって本作が映画初主演となる。また、西陣の社長・斎藤役の植木等の最後の映画出演作となっており、エンドクレジットには追悼テロップが入っている。興行収入は20.8億円で、2008年にはアメリカのビズピクチャーズ配給でニューヨークやサンフランシスコなど5都市を皮切りに、全米で公開された。第31回日本アカデミー賞優秀主演男優賞(阿部サダヲ)、優秀助演男優賞(堤真一)、優秀脚本賞(宮藤官九郎)を受賞している。
カップラーメンの製造・販売を行う鈴屋食品の東京支社に勤める鬼塚は、学生時代に修学旅行で訪れた京都で舞妓の小梅に親切にされて以来、舞妓の魅力に取りつかれていた。そして「いつか自分の稼いだお金でお茶屋遊びがしたい」という夢を持っていた。そんな中、異動先の京都支社でついにお茶屋遊びのチャンスが巡ってくる。しかしお座敷遊び目前で胃に穴が開いて手術になったり、因縁のライバルである内藤の登場でなかなか思うようにいかない。ようやくお茶屋遊びにこぎつけても、鬼塚が贔屓にしている舞妓・駒子や元カノの富士子ら女性陣にも振りまわされていく。この作品は、鬼塚という舞妓への異常な執着を持った一人の男が周りを振り回し時には振り回され、観ている観客をも巻き込んで爆笑の渦にさらってくれる映画となっている。

『舞妓Haaaan!!!』のあらすじ・ストーリー

舞妓に魅せられた男

同級生に置き去りにされた、鬼塚

京都の夢川町という花街で、カメラを抱えて町を駆け抜ける男たちの姿があった。その中でも鬼塚(おにつか)は目的地への近道を一人進み、男たちの先頭に出る。一方で、若い舞妓が置屋(おきや)という舞妓たちが生活する家で化粧をし、着物を着ている。その舞妓は、まわりに芸妓らを従えて外に出てくる。その様子を待っていた男たちが、一斉にカメラでとらえる。この日はこの舞妓、駒子(こまこ)の舞妓デビューの日、お見世出しの日だった。

「ええ写真やわー。あんまりええから8枚もアップしてもうた」と、鬼塚は勤め先のオフィスで、うっとりした表情でパソコンに向かっていた。「ぼんの舞妓日記」という、自身のブログに駒子のお見世出しの様子をアップしていたのだ。しかしそのブログに、「舞妓ゆうたら祇園ちゃいますのん?なんで夢川町やねん」という辛らつなコメントが届く。鬼塚は「またこいつかよ」と慣れた様子で、夢川町は昔ながらの置屋も多く通の間では人気のスポットであることを返信する。相手からは「通のわりにはお座敷の写真が一枚もおまへんな」などと再びコメントが投稿される。互いにコメント欄での罵り合いはヒートアップしていく。鬼塚は思わず声に出して相手を罵り、そんな鬼塚に同僚の大下(おおした)らは驚く。また、少し離れたつい立の影からは、鬼塚の交際相手の富士子(ふじこ)がその様子を携帯電話のカメラで「超かっこいい」と隠し撮りしていた。その間も、鬼塚のブログのコメント欄上では罵り合いが続いていた。相手は、インテリっぽい眼鏡に白いスーツをきっちりと着こなす男だった。茶屋のお座敷でコメントを投稿しており、そこに舞妓や芸妓が大勢やってくる。「おおきに、おこしやす」と声をかけられ、男はニンマリとする。罵り合いの中で相手がお座敷遊び中であることを悟った鬼塚は、食べていたカップ麺を怒りのあまりひっくり返すのだった。

場面は鬼塚の学生時代にさかのぼる。埼玉の学校に通っていた鬼塚は、修学旅行で京都に来ていた。鬼塚は自由行動の7班のリーダーだった。しかし同じ班の生徒は言うことを聞いてくれず、鬼塚は自由行動の時間に置き去りにされてしまった。7班の生徒を探すうちに、鬼塚は夢川町に迷い込んでいた。しかし誰も見つからずだんだんと不安になり、泣き出してしまう。そこに舞妓の小梅(こうめ)が通りかかり、鬼塚に「ぼん、どないしはったん?」と声をかける。鬼塚が迷子であることを悟った小梅は、丁寧に京都駅までの道のりを教えてくれるのだった。しかしその優しさや舞妓の美しさに魅せられた鬼塚は、その後も様々な舞妓に何度も京都駅までの道のりを聞いて回る。なかなか京都駅に向かわない鬼塚に、「ぼんにはまだ(花街)は早いわなぁ。一人前になったら、お姉ちゃんにお花(舞妓に支払う料金のこと)つけておくれやすな」と和菓子を差し出す。そこに、小梅をひいきにしている茶屋の女将であるこまつが「今、学校の先生が迎えに来はるさかいな」と知らせに来る。そして鬼塚は迎えに来た教師たちによって、強制的に連れて行かれるのだった。

こうして鬼塚は舞妓に魅せられた。鬼塚は「この世にこんな美しい人がいるのか。そんな舞妓さんたちと自分のお金で野球拳がしたい!でも一介のサラリーマンにはお座敷に上がる経済力はない」と歯がゆい思いをしていた。そんな鬼塚の元に、朗報が飛び込む。念願の京都支社への異動が決まったのだ。後日、鬼塚は大喜びで同僚に京都支社への異動を報告していた。そんな鬼塚をみて、同僚の大下は苦い顔をする。鬼塚の会社は主にカップラーメンの製造・販売をしているのだが、京都支社は「かやく工場」と呼ばれていると言うのだ。社長の指示でなぜかかやくだけ京都で作っており、その非効率さから社内ではあまり良い印象のある支社ではないのだった。

鬼塚は富士子に、別れ話を切り出していた。「遠距離なんて無理!お前耐えられないだろ」と言う鬼塚に対し、富士子は「やってみなきゃわかんないじゃん!」と対抗し暴れる。「じゃあふーちゃん(富士子のこと)も来ればいいじゃん、実家京都だろ」と言って、鬼塚は地図を開く。しかし富士子は京都と隣接した三重の土地を指さす。「三重じゃん」「住所はね。でも京都とくっついてるし、京都のテレビ入るもん」「なんで嘘ついてたんだよ、京都の女じゃなかったら、嫌いになると思ったの?」と鬼塚は言う。そして「そりゃそうですよ!あなたから京都取ったら何が残るって言うんですか!あぁ冷めた。今この瞬間から、僕とあなたは赤の他人でお願いします」と、富士子にきっぱりと別れを告げるのだった。

いざ、京都へ

鬼塚のブログの画面

京都支社に異動してきた鬼塚は、張り切って挨拶回りをしていた。しかし京都支社の面々はテレビを観たりして、やる気が無さそうである。鬼塚は京都支社での上司にあたる先崎(せんざき)に歓迎会を催促する。先崎も他の社員同様やる気がなさそうに「じゃあ、しましょうかねぇ」と返事をする。「このあたりだと、お店はどこに?」と鬼塚に聞かれた先崎が「店ねぇ、祇園(ぎおん)か夢川町…」と答えると、「祇園!?」と鬼塚は興奮する。舞妓と野球拳をする夢が一気に膨らんだのだ。しかし実際は、祇園のカラオケボックスで社員同士がイキイキと野球拳をするのを見せつけられるのだった。思わず鬼塚はカラオケボックスを飛び出す。通りにはたくさんの舞妓が行き来していた。落ち込んでいた鬼塚だったが、舞妓の姿を見て次第に元気になっていく。気分も盛り上がり「えぇい、ひとりで行ったれ!」と、ある茶屋に入ろうとする。しかしそこで鬼塚の脳内に、自身のブログの「システムと料金紹介」のページが浮かび上がる。「一回のお座敷代は銀座のクラブよりもリーズナブル」という項目にならい、鬼塚はATMに向かって10万円をおろす。また、アフターがあることや「高価でなくても、せめてブランド品を身につけましょう」という項目から、消費者金融でお金を借り、スーツを新調するのだった。そしてやっと茶屋に入るが、そこで下足番の玄太(げんた)に「にいさん、お名前は?はて、お伺いしてませんけど」と入店を止められる。さらに奥から女将のこまつも出てきて「お客さん、東京のお方?お茶屋遊びは初めてどすやろ。すんまへんな、うちとこ、一見(いちげん)さんはお断りなんどす。京都のお茶屋はどこも、一見さんお断りどすえ」と言う。ここで鬼塚は京都の茶屋の「一見さんお断り」システムを思い出す。京都の茶屋では来る人が安心して遊べるように、誰かの紹介が無いとお茶屋遊びは出来ないのだ。「金ならあるんです」と鬼塚は財布を広げて見せるが、「お引き取り願えますやろか。玄関先で財布広げるような無粋な人に、お茶屋遊びはわかりまへん」と追い出されてしまう。鬼塚は他の茶屋にも頼み込んでみるが、「どなたさんからかのご紹介がないと」と全て断られてしまう。

お茶屋遊びのために

京都発の新商品をプレゼンする、鬼塚(画像左から2番目)

「こんなんじゃ何のために京都来たのかわかんねぇよ。一生かやく作って生きるのか?」と、結局お茶屋遊びができなかった鬼塚は会社でグチグチとつぶやいていた。グチりながら自身のブログを開いて自分が撮った写真を確認していると、どこかで見覚えのある男が写っていた。その男は鬼塚が勤める会社「鈴屋食品」の社長、鈴木(すずき)だった。鈴木がお茶屋遊びをしているとわかり、自分を茶屋に紹介してもらおうと考えた鬼塚は、さっそく京都滞在中だった鈴木に会いに行く。しかし鈴木の車に無理やり乗り込み話をしたため、降ろされてしまう。鬼塚を降ろした車は夢川町にやってきていた。そこでなぜか先回りをしていた鬼塚は、車の前に飛び出して再び無理やり鈴木と話をするのだった。鬼塚は17歳の頃からお座敷遊びに憧れていたことを熱弁する。そして「芸妓さん舞妓さんにかける情熱は誰にも負けません!今夜だけで結構です。どうかお供を!」と鈴木に頼み込む。しかし鈴木は「ここはな、信用がモノをいう社交の場だ。いいかね、君を紹介するということは、金銭面も含めて君のことすべてに責任を持つということなんだよ。だから信用できる者しか連れてこない」と断るのだった。鬼塚は「どうすれば信用していただけるでしょうか」と食い下がる。「簡単だよ、仕事で結果を出しゃあいいんだ。私を儲けさせてくれたらな」と言う鈴木の言葉に、鬼塚は奮起するのだった。

後日、京都支社では社員たちが談笑していた。そんな社員たちに鬼塚は、「なにサボってんすか!結果結果!結果を出しますよ!京都発の、オリジナル商品作りましょうよ!」と呼びかける。しかし他の社員はやる気がないため、鬼塚はまず、一人で消費者の声を聞きに街頭インタビューと称して舞妓たちに話を聞きに行くのだった。社に戻ってインタビュー動画を観る鬼塚は、インタビュー内容よりも舞妓や芸妓、仕込み(舞妓になる前の少女のこと)の鑑賞をしてしまっている。「仕込みの子は、素材が良ければシンプルでもええなぁ」と鬼塚はつぶやき、「ん?シンプル?ということで、かやく入れるのやめました」と先崎らにプレゼンをし始めるのだった。京都支社はかやく工場と呼ばれているくらいなので、先崎は「なめとんのか、失業しちゃうよ」と反対する。しかし鬼塚は「かやくを別売りにするんです。消費者のみなさんには、入れたい具を選んで買っていただく。ダイエット中のお母さんはネギだけ、スタミナが必要なお父さんは全部乗せとかね」とプレゼンを進めていく。次第に他の社員たちも乗り気になっていき、「あんさんの好きにしたらよろし」という意味も込めて「あんさんのラーメン」というネーミングも決まった。そしてサンプルを作って本社に売り込みに行くことになり、鬼塚ら京都支社の面々はサンプルづくりに没頭していくのだった。

鬼塚がお茶屋遊びを目指して結果を残そうと奮闘する中、富士子は鬼塚のことが忘れられずにいた。そして鬼塚に電話をかけてみようと、何度も話す内容のパターンを考えたり、シュミレーションを繰り返す。結局富士子は、間違い電話の体でさりげなく電話をかけることにした。富士子はやっとの思いで鬼塚に電話をかけたが、サンプルづくり中の鬼塚にかわり、先崎が電話に出てしまう。そして間違い電話を装った富士子の言葉を真に受け、そのまま電話を切る。先崎が無言で電話に出たため、富士子は鬼塚が無言で自分の電話を切ったと勘違いするのだった。

鬼塚らの研究の成果もあり「あんさんのラーメン」は無事に発売され、街頭CMも大々的に流されていた。そして京都でも東京でも爆発的ヒットとなり、1,000万食を達成するのだった。その結果から、約束通り鬼塚は鈴木に茶屋へと連れてきてもらっていた。ウキウキして茶屋に入る鬼塚だったが、またしても玄太に止められてしまう。しかし今回は、「お客さん、申し上げにくいんですが、今すぐ病院行ってください。私はもう40年も下足番しております。靴を見たら、お客さんの健康状態が手に取るようにわかるんです」と言う。実際、これまで鬼塚は結果を出すために不眠不休で勤務していた。そして念のため受診した病院では、ネチネチとした独特の話し方をする医師に「ストレスと寝不足で身体ボロボロですわ」と言われてしまう。胃に穴が開いており、さらにヘルペスもあり、即手術ということになった。

富士子も京都へ

富士子に「おきばりやす」と声をかける、駒子

富士子は大きなスーツケースを引いて、京都にやってきていた。鬼塚を見返すため、舞妓になることにしたのだ。向かった先は、こまつや玄太の茶屋とよく取引のある置屋で、そこで「舞妓になりたいんです」と富士子は頭を下げる。通常舞妓になるには中学卒業後から修行に入ることが多いため、富士子は24歳のところを18歳だと嘘をつく。置屋の女将のさつきはそんな富士子に苦笑いをしながらも、「新しい仕込みさんどすえ。富士子ちゃん、挨拶して」と受け入れた。緊張してうまく自己紹介できない富士子に、かつて鬼塚の面倒を見た小梅が「かたいかたい。置屋のお姉さんゆうたら家族なんどすえ」と優しく声をかける。さつきも「年下でも先に入った子にはお姉さんね。それから、うちのことはお母さんと呼んでおくれやす」と声をかける。また、さつきの娘である駒子も紹介され「おきばりやす」と激励される富士子だった。その後富士子は、19歳の駒子に花街でのいろいろなことを教えられていた。駒子と富士子が通りを歩いていると、一人の老人が上機嫌に歌をうたいながら通りかかる。この老人は西陣の社長で、斎藤という。駒子をたまにお座敷に呼ぶそうで、互いに楽しそうに軽口をたたきあうのだった。

富士子は駒子に連れられて、夢川女学園に来ていた。ここは舞妓になる前の仕込みの半年間、舞や三味線、鼓(つづみ)、お唄の稽古をする学校である。さらに仕込みの期間は学校で学ぶ合間に行儀作法やお茶、お花の勉強もしなければならない。仕込みや舞妓たちが生活する置屋は、芸妓や舞妓が所属するプロダクションのようなものである。さつきのような「お母さん」が置屋の中を取りまとめ、こまつのような茶屋の女将はお客の好みに合わせてひいきの置屋から芸妓・舞妓を派遣してもらうのだ。置屋はみんなが生活する大切な場所のため、仕込みは掃除洗濯、台所仕事、おつかい、お姉さん方の身の回りのお世話などもこなす。それは同時に着付けやお化粧の勉強にもなるのだ。また、京都弁と花街言葉は別物なので花街言葉も覚えなければならない。仕込みの期間はお姉さん方のお世話が終わってからお風呂に入り、就寝できるのは深夜2時頃になる。翌朝10時からはまた学校に通い、休みはない。富士子はそんな生活を続け、身体を壊してしまう。鬼塚が以前かかった医師に、同じように「胃に穴があいてるねぇ。即手術やねぇ」と言われ、手術室に運ばれるのだった。そこを、ようやく退院する鬼塚が富士子がいるとは知らずにすれ違っていった。

はじめてのお茶屋遊び

駒子の準備を手伝う、富士子

鬼塚は、再び鈴木にお茶屋遊びに連れてきてもらっていた。今回は下足番の玄太からもOKが出て、女将のこまつにも名前を覚えてもらっていた。念願のお座敷だったが、鬼塚は「自分もう帰ります。だって始まったら終わっちゃうってことですよね」と怖気づいている。「落ち着け、今から京都で一番の舞妓と芸妓が来るんだぞ」と鈴木が励ましていると、芸妓の小梅がやってきた。小梅はなんと、修学旅行で迷子になっていた鬼塚を覚えてくれていた。「ご立派にならはって」と言う小梅に、鬼塚は上機嫌になる。また、後から駒子が座敷にやってくる。鈴木は本当は豆福(まめふく)という舞妓を指名していたそうだが、他の座敷に呼ばれていたため、駒子が代打でやってきたのだった。そして駒子も、鬼塚が自身のお見世出しに来ていたことを覚えていた。小梅と駒子の「花街の女は一度顔を見たら忘れない」という言葉に、鬼塚は感動するのだった。駒子と小梅が「祇園小唄」を舞う。鬼塚はその舞と唄を、夢見心地で堪能する。しかしその時、隣の座敷から、ふすまと一緒に一人の男が倒れこんでくる。泥酔して上半身裸の状態ではあったが、その男はプロ野球選手の内藤(ないとう)だった。女将のこまつも何事かとやってくるが、内藤は「壊れたものは弁償するから」とおさめ、鬼塚とは舞妓の話題で盛り上がるのだった。しかしその会話の中で、物語冒頭で鬼塚のブログでやり合った相手だということに互いに気付き、ブログ同様鬼塚は内藤に罵られてしまう。内藤は「ぼん、お座敷遊びの基本中の基本を教えたるわ。ええ思いしよう思うなら、のし上がるこっちゃ」と言い捨てていく。鬼塚は次の日になっても内藤に対する怒りが収まらなかった。

ようやく退院した富士子は、駒子の準備を手伝っていた。富士子が「今日はどのお座敷へ?」と駒子に聞く。「鈴屋食品の鬼塚はんゆうてなぁ。最近よう声かけてくれるんえ。そや、一緒に行く?次期に(富士子も)お見世出しやし、鬼塚はんええ人やし、安心して勉強できるわ」と駒子が言うが、富士子は「まだ(鬼塚に)会いたくない」と小声で言い、お座敷への同伴を断るのだった。そこにさつきがやってきて「富士子ちゃん、目録届いてますえ」と知らせに来た。目録とは富士子のお見世出しに対するお祝いとして置屋に張り出されるもので、そこには「駒富士(こまふじ)」と書かれていた。駒富士は舞妓としての富士子の名前である。駒子の名前から一文字とっているので、駒子と駒富士が舞妓として姉妹であることが夢川中に知れ渡ることになる。駒子は「あんたの粗相はうちの責任やし、しっかり頼みますえ」と笑顔で駒富士に言う。責任重大だが、置屋に受け入れてもらえていることに感動する駒富士だった。

再び結果を残す鬼塚

始球式のマウンドに立つ、鈴木社長

鬼塚は、小梅や駒子とお座敷遊びをしていた。そこで内藤が豆福の旦那になることを聞く。旦那とは、その舞妓が所属する置屋のお母さんに申込み、特別な関係になることである。着物や帯を買い与えたり舞の発表会の券を買って配るなどして、その舞妓の面倒をみるのだ。近年は不景気のため帯はこの旦那、着物はこっちの旦那、と一人の舞妓に対して複数人の旦那がつくことが多い。内藤のように一人で旦那になることは、花街の中でもちょっとしたニュースなのだ。男として内藤と自分との差を思い知り、悔しがる鬼塚だった。バッティングセンターで憂さ晴らしをする鬼塚の元に、鈴木社長と先崎がやってくる。京都のお座敷遊びでは紹介者のもとに支払いの請求が行くのだが、鬼塚は限度なくお座敷遊びをしていた。当然請求書が分厚い束になって鈴木の元に届いており、かなりの金額になっていた。鈴木はその苦情を言いに来たのだが、逆に鬼塚は「そんな社長に儲け話が」と持ちかける。

後日鈴屋食品の会議で鬼塚は、会社の幹部たちに京都でプロ野球の球団経営に乗り出すことを提案していた。突拍子の無い提案に失笑する社員たち。しかし鈴木は「卓越したアイディアというのは、彼のようなおかしな頭から生まれる。京都には毎日たくさんの修学旅行生が出入りしており、中高生というのはプロ野球とカップ麺が大好き!」と擁護する。そうしてチーム名は「京都おいでやーす」に決まり、鈴屋食品は経営不振だった球団を買収した。そして試合中の球場ではカップ麺が販売されるのだった。鈴木もご機嫌で始球式のマウンドに立ったが、そこに鬼塚が辞表を提出する。そのままプロ野球選手に転身し、バッターとして打席に立つのだった。そしてホームランやヒットを次々と量産し、新聞の一面を飾るようになっていった。鬼塚のそんな躍進の裏で、駒富士は自身のお見世出しを果たし、駒子のようにカメラを持った男たちに囲まれていた。さらに内藤の座敷にも呼ばれるようになっていた。

駒子の秘密

駒子たちの置屋で話す、鬼塚(左)と内藤(右)

鬼塚と駒子は、お座敷遊びの後二人でデートに来ていた。普通の若者が行くような割とリーズナブルなお店で、駒子はそんな場所に憧れていた。鬼塚は駒子の旦那になるために野球を頑張っており、駒子に「じゃあ今度普段着でデートしよう」と誘う。しかし駒子は「たまにお座敷に呼んでくれたら」としか言わない。多くを望まない駒子に鬼塚は「僕は(はじめてのお座敷遊びで)駒子の踊りを見たとき、(それまでの)無理していた生活から解放されたんだよ。旦那になってもいいよね?」と言う。しかし駒子は泣きながら「あかん。だってきみちゃん(鬼塚のこと)、うちのこと舞妓やから好きなんやもん。うちのことまだ何も知らんのに旦那はんになるなんて、内藤はんと張りおうてるだけでっしゃろ」と返す。それを聞いた鬼塚は駒子を置屋に連れ帰る。そして「君のことを知る第一歩だ」と言って無理やり駒子の化粧を落とそうとする。結局駒子が自分で化粧を落としたのだが、その額には大きくバツ印の傷がついていた。驚く鬼塚の元にさつきがやってきて「これからする話、決してよそで口外しないって誓えます?」と聞く。さつきの真剣な顔に、鬼塚は大きく頷く。

さつきの話によると、実はプロ野球選手の内藤はさつきの実の息子だという。そして駒子は父親のわからない私生児で、母親は夢川町の芸妓だった。母親は勝気な性格で姉さんの旦那と関係を持ち、駒子を産んだのだが、その旦那は駒子を認知できないとして逃げたという。さつきも跡取りがいなかったため、母親から駒子を身請けというかたちで引き取ったのだ。そして以前はよく置屋に顔を出していた内藤に駒子はよくなつき、次第に内藤に対して恋心を抱くようになった。しかし内藤と駒子は一応兄妹であり、駒子も身請けされたからにはさつきの跡を継がなければならない。そんな自分の境遇にどうしようもなくなり、駒子は自ら額にバツ印の傷をつけたのだった。偶然それを目撃した内藤は駒子を止めるが、駒子は「傷があれば舞妓にならずにすむ、貴一郎兄ちゃんの(内藤のこと)嫁になれる!」と叫ぶ。さつきたちも騒ぎに気付いて駒子は病院に連れて行かれ、内藤は置屋に寄り付かなくなった。そして駒子が舞妓になったころから内藤はすっかり変わってしまい、以前の優しい内藤の姿は見られなくなってしまったのだった。そのような過去から「うちは旦那はんなんかいらん、一人で生きていくの」と言う駒子だったが、鬼塚は「こんな傷で僕が駒子ちゃんを嫌いになるわけないじゃん。内藤と張りあってるんちゃいます!」と再び旦那になりたいということを熱弁する。さつきも鬼塚を認め、ためらっている駒子の背中を押す。ついに駒子も「よろしゅうお願い申します」と鬼塚に旦那になってもらうことを了承するのだった。そこに泥酔した内藤が押し入ってくる。そして鬼塚がいるのを見つけ、二人は別室で話すことになった。内藤は「調子えぇみたいやな」と鬼塚に切り出す。鬼塚も「そっちもリーグ優勝はもらったようなもんだろ。いよいよ直接対決だな」と内藤との勝負が楽しみだという様子で返す。しかし、実は内藤は鬼塚の知らないうちに野球選手を電撃引退しており、すでに映画主演をして俳優デビューしていた。主演映画は興行収入70億円の大ヒットで、内藤は「野球なんてアホらしい」と言う。驚く鬼塚に、内藤は「ついでに紹介するわ」と駒富士を連れてくる。「こんなキレイな人見たことない」と鬼塚は驚き、駒富士が富士子だということに気付いていない。内藤は駒富士の旦那になると宣言するが、内藤はすでに豆福の旦那となっているため、花街のルールとしては認められない。しかし駒富士も内藤に旦那になってもらうつもりでおり、駒子は駒富士に「あんたみたいな礼儀知らず、姉と妹の縁を切らせてもらいます」と言い放つ。さつきも内藤に「おかえりください」と冷たく言うのだった。内藤は興ざめした表情で、駒富士に「お前がこの町に来た理由がわかったで」と言い残し、置屋を去って行った。内藤は、駒富士が鬼塚を見返そうと舞妓になり、多少の無理をしてでも自分を旦那にしようとしたことを見抜いたのだった。

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