マンガ好きなら知っておきたい、志村志保子さんの密やかな世界

毎年たくさんの作家さんが生まれる少女マンガの世界。その中でも、93年のデビュー以来、叙情的で文学性の高い作品を精力的に発表している漫画家・志村志保子さんの魅力についてご紹介いたします。近頃話題になった「フードマンガ」も、志村さんの手にかかると一味違う…?

志村志保子さんとは?

1993年、23歳のとき「カンカンカン」にてぶ~けでデビュー。

その後、当時の担当さんがクッキー編集部へ移ったことをきかっけにクッキーでの執筆を開始。

当時、「りぼん」から移動された作家さんも多く、少女向けの「りぼん」よりも少し大人になった女性を対象とした「クッキー」では、矢沢あいさんの『NANA』を代表作としていました。

志村さんはそんなクッキーに「それまでのマンガ雑誌とは違って新しい、時代にあっている」という印象を抱いたそうです。

現在では「フィールヤング」などでも活躍中。

志村志保子さんの代表作とは

志村さんの代表作は『女の子の食卓』(全8巻)。

そのタイトルの通り、様々な女の子が登場し、それぞれ食べ物を中心としたエピソードが繰り広げられる短編オムニバスです。

もともと「ノートに気になったことやふと思いついたキーワードを書き溜め、そこからストーリーを考えていく」という執筆の方法をとっていた志村さんは、以前より短編作品を中心に発表していました。

『女の子の食卓』でも、小学生の女の子を主人公としているものから、毎日に疲れたOLの視点で描かれるものなどバラエティは豊かです。

また、ストーリーの中核を担うフードメニューも様々!

・じゃがいものニョッキ
・自分の家のものより甘い麦茶
・自作のキャラメルポップコーン
・友人の家で食べたバジリコ・スパゲティ
・カスタードと生クリームのシュークリーム
・親戚が買ってくれたお赤飯のおにぎり

これらのフードが、女の子たちの記憶と絡み合っていきます。

志村志保子さんの作品が持つ魅力とは

「女の子」という主人公、「食べ物」という日常生活に関わるアイテム、そしてそもそも「少女マンガの世界である」ということをつなぎ合わせていくと、可愛くて楽しい雰囲気のマンガを想像するかもしれません。

しかし『女の子の食卓』は必ずしも幸せな話ばかりではないのです。

ドラマチックで素敵!というわけではないけれど、なんとなく忘れられないシーンであったり、時間が経ってからも残っている後悔であったり、シンプルで後ろ向きなストーリーも多数あり、それこそが魅力となっているのです。

例えば
・小学校の同じクラスで、仲が良かった子が突然……
・両親の離婚後、会っていなかった父に会いに行くと……
・友人のお母さんの、変わってしまった姿を見て……

など、ディープなテーマも織り込まれます。

しかし、後味が悪くなるのではなく美しく密やかな瞬間として短いページ数に収めてしまうのは志村さんの手腕によるものでしょう。

静かな夜長に、少し苦味のあるフード漫画はいかがですか?

keeper
keeper
@keeper

目次 - Contents