7番房の奇跡(韓国映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『7番房の奇跡(韓国映画)』とは、2013年公開の韓国のヒューマンコメディ映画である。
知的年齢が6歳の父(イ・ヨング)と6歳の娘(イェスン)は仲睦まじく二人で暮らしていたが、ある日父ヨングは警察庁長官の娘を殺した罪で捕まる。事件によって離れ離れになった親子だったが、同じ刑務所の7番房の仲間たちの手を借り父と娘は再会を果たす。
一方、刑務所の課長(チョン・ジニョン)は、ヨングの事件は冤罪である事を確信するのだが、冤罪を晴らすべくみんなの協力もむなしく、死刑が求刑されるのであった。

『7番房の奇跡』の概要

『7番房の奇跡』とは、2013年公開の韓国のヒューマンコメディ映画である。監督はイ・ファンギョンである。韓国では歴代3位の記録となる1200万人以上の観客動員を記録し、2015年に日本でも公開された作品である。韓国のアカデミー賞といわれる大鐘賞で歴代最多の12部門にノミネートされ、4部門に輝いた。因みに主演男優賞(リュ・スンリョン)、脚本賞(イ・ファンギョン)最優秀企画賞、審査員特別賞(カル・ソウォン)を受賞した。その他、第34回青龍映画賞最多観客賞、第49回百想芸術大賞にて大賞(リュ・スンリョン)、第49回百想芸術大賞・人気賞(パク・シネ)、第21回大韓民国文化芸能大賞映画部門大賞、第21回大韓民国文化芸能大賞映画部門最優秀演技賞(オ・ダルス)、第33回韓国映画評論家協会賞助演女優賞(パク・シネ)、第34回黄金撮影賞作品賞、第34回黄金撮影賞男優助演賞(オ・ダルス)、第9回マックスムービー最高の映画賞最優秀新人俳優賞(カル・ソウォン)と、数多くの賞を受賞した。
この映画は1970年代に起こった事件が元ネタになっていると言われているが内容についてはフィクションである。また、トルコにて2019年に同タイトルでリメイクされた。

知的年齢が6歳の父ヨングと6歳の娘イェスンは、貧しいながらも仲睦まじく暮らしていた。ある日、ヨングはたまたま警察庁長官の娘が死んでいる現場にいた為に無実の罪で逮捕されてしまうのである。刑務所に送られたヨングは癖の強い5人の囚人と一緒に過ごす事になる。ひょんなことで、囚人の一人を助けたヨングはお礼として娘イェスンと塀の中で再会させてもらう。はじめは囚人たちも、刑務所の課長もヨングを毛嫌いしていたが純粋なヨングと共に生活していく中で、囚人たちはヨングを好きになり友情が芽生え始める。刑務所の課長もまたヨングに対しての偏見もいつの間にか消え、ヨングの冤罪を疑うようになる。
囚人たちや娘のイェスン、刑務所の課長たちみんながヨングの無罪を信じ、裁判の日に向けて無罪を勝ち取るべく練習を開始する。
しかし裁判当日、ヨングは罪を認めてしまう。それは、裁判の前に娘を亡くした警察庁長官に殴られ、「罪を認めなければイェスンに危害を加える」と脅されていたためであった。ヨングはそのまま死刑を求刑される。
刑が確定し死刑執行日は12月23日、イェスンの誕生日であった。
死刑執行日前までに、7番房の仲間は気球を作りヨングを脱獄させる事を企て、刑務所の課長および看守たちも見て見ぬふりで逃がそうとした。しかし脱獄は失敗に終わり、死刑執行を免れる事は出来なかった。
その後課長はイェスンを引きとり育てる。成長したイェスンは再び7番房の元囚人たちを集め、父親であるヨングの無罪を証明してみせるのだった。

見どころとしては、冤罪を扱った映画である為重たい雰囲気にもなりそうなのだが、コメディタッチで描かれており7番房の個性あふれる面々が笑いを誘う。娘のイェスンもとても愛らしく見ているだけでほっこりさせられる。ヨングに対して敵意むき出しであった課長の心の変化や、正義を貫こうとする姿も見どころの一つである。
娘を守るために命をかけた、父親ヨングの姿に誰しもが心を打たれる作品である。

『7番房の奇跡』のあらすじ・ストーリー

ランドセルと事件

仲良く一緒に眠っている父ヨングと娘イェスン

1972年2月、知的年齢6歳の父親イ・ヨングと6歳のしっかり者の娘イェスンは貧しいが仲良く毎日を過ごしていた。イェスンはアニメの『美少女戦士セーラームーン』が大好きで、『セーラームーン』のランドセルを欲しがっていた。ヨングはイェスンにランドセルを買ってあげる為に一生懸命働いていた。いつも近所のお店でイェスンとランドセルを見ては、給料日には買おうと決めていたのだ。だが最後の1個が目の前で売れてしまう。どうしてもランドセルを買ってあげたいヨングは、最後の1個を購入した家族に「これはイェスンのです」と主張する。しかしヨングは、見た目は大人であるが知的年齢は6歳である為、子供の様な言動をしてしまう。そんなヨングの言動を不気味に感じた夫婦はあからさまに嫌な顔をした。そしてヨングは夫婦の娘の顔に触った為、父親はヨングに暴力を振るった。
店内に置いて有るテレビモニターからは『セーラームーン』の曲が流れていた。その歌詞はこれから起こる事を暗示するかの様な歌詞であった。

翌朝、ヨングは仕事の休憩中、最後の1個のランドセルを買った少女に偶然話しかけられる。少女はランドセルが他のお店でも売っている事を伝え、ヨングをそのお店まで連れて行ってくれようとしていた。ランドセルが買えると楽し気なヨングであった。
しかし、少女は仰向けに転んでしまい運悪く後頭部を強打して、死んでしまう。そこへたまたま通りがかった女性が倒れている少女と、ヨングの姿を目撃する。ヨングは少女の頬を触ったり、少女のズボンを緩めたり人工呼吸をしている。しかし事情を知らぬ他人から見ると、どう見てもヨングが強姦殺人を行った様にみえる。直ぐに逮捕されたヨングだったが、少女は警察庁長官の娘であったことから、聞きつけたマスコミが殺到する。前日のランドセルを巡って少女の父親である警察庁長官に殴られていたこともあり、その復讐で少女を殺したとされていた。何も知らないイェスンはヨングの帰りを待つが戻る事はなく朝を迎えてしまう。
翌朝、沢山のマスコミの取材陣がいる中現場検証に訪れたヨングは、昨日あったことを再現する。ヨングは人形相手に昨日少女を助けようと、救命処置を行った経緯をやってみせるが、警察官の誘導やこじつけによってまるで強姦殺人を行ったかのような行動をとらされる。そこにイェスンがやって来る。イェスンに気が付いたヨングは自分が窮地に陥っているにも関わらずイェスンをいたわる言葉をかけ続ける。やがてヨングはパトカーに乗せられイェスンと離れ離れになるのだった。
ヨングは女児誘拐殺人及びわいせつ罪で刑務所に入る事になったのである。

7番房の仲間たち

個性豊かな7番房の囚人たち

ヨングは刑務所に送られ、他の逮捕者たちと刑務所課長の元へと連れて行かれる。課長はS4の新入り受刑者がいる事を部下から聞かされる。S4とは警備処遇等級により、S1~S4までに分けられていて、S4は最も罪の重い凶悪犯罪者の扱いとされている。課長は以前自分の息子を、面倒をみてやっていた服役囚に殺されたという過去を持っており、ヨングの犯した罪が女児誘拐強姦殺人だと知り、激しく嫌悪し暴力まで振るってしまう。課長は息子の死とヨングの事件が重なり激しくヨングを憎むのだった。
程なくして看守に連れられヨングは7番房にやって来る。これから寝起きを共にしていく5人の先輩囚人たちは、見るからに癖の強そうな人ばかりだった。一方でイェスンは保育園に居たのだった。

ある日刑務所での作業後の休憩時間に、7番房の防長であるヤンホが荒くれ者の囚人に刺されそうになる。それに気づいたヨングは自分が盾となってヤンホを救う。ヤンホは義理を大事にする男だった為、ヨングの欲しいものを与える約束をする。欲しいものを聞かれたヨングは「イェスン」と呟くのだった。
刑務所で、聖歌隊が歌を披露するイベントが行われている日聖歌隊の中にイェスンの姿があった。7番房の仲間であるマンボムは何とかイェスンを7番房まで連れて行き、ヨングとイェスンは再会を果たすのだった。しかし、聖歌隊のイベント中に牧師が倒れてしまった為、2時間のイベントが急に早く終わってしまい慌ててイェスンを聖歌隊の中に返そうとするが、失敗に終わり再びイェスンは7番房に戻って来る。
お荷物が増えたとばかりにイェスンに嫌な顔をして意地悪ばかり言うのは7番房のボンシクであった。イェスンがいる事で、罪が重くなる可能性があるからである。しかし一緒に居るうちにイェスンの天真爛漫な愛くるしさにみんな心和まされていた。
再び、看守に気づかれぬようにイェスンを塀の外に返す作戦が決行されるのだが、また失敗に終わる。その夜、課長は以前行われた聖歌隊のイベントの写真を部下から見せてもらっていた。子供聖歌隊に初めは写っていたイェスンが、いつの間にか消えていることに課長は気が付いたのだった。7番房にやってきた課長はイェスンを見つけ、ヨングを懲罰房に入れる。程なくして、以前ヤンホを刺そうとして失敗に終わった男サンミョンが房に火を着け火事を起こす。火事を起こしたサンミョンは「他の奴の娘は入れてやるのになぜ俺の親父はダメなんだ」と看守たちに言い放つ。サンミョンは駆け付けた課長に泣きながら、「どれ程親父に会いたいか…」と言ったかと思うと、実は親なんておらず皆を道連れにしようとしていた。結局はヨングやイェスンが羨ましく思う気持ちがあったのだ。更に火の手が回った所で、ヨングは炎の中に飛び込み煙に巻かれ死にそうな課長を助けたのだった。

一方で、イェスンは行くはずだった学校に顔を出し担任の先生と話をする。そして担任の先生を連れ、保護者面談と称し父の居る刑務所に行く。相変わらずイェスンの心配ばかりしているヨングであった。二人のお互いへの愛情の深さやヨングの人柄、二人のやり取りを扉の外で見ていた課長は、ヨングが犯人である事に疑念を持ち始めるのだった。
そんな中、課長はイェスンが食事をとらず病院に入院した事を部下から聞き、イェスンに会いに行く。ベットの上でイェスンは「自分も刑務所に入れて欲しい」と課長に頼むのだった。課長はイェスンを不憫に思い、秘密で房にイェスンを送り込んだ。

課長は後輩の警察官の元に行き、ヨングの事件の供述調書を読ませてもらう。その際被害者が警察庁長官の娘であることから、「1週間で解決しろ」と指示されていたことを知る。調書の中のサインも本人が書いたものかどうか、疑わしいものだった。課長の疑念は確信に近づきつつあった。そして課長がその後向かった先は、イェスンの通う小学校であった。イェスンは迎えにきた課長に飛びついて喜んでいた。
再び7番房にやって来たイェスンは、文字の読み書きが出来ないヤンホの為にみんなで文字を教えていた。そして、妊娠中の妻が心配でたまらないボンシクにイェスンは友だちから借りた携帯電話を貸す。ボンシクは無事妻と話ができ、女の子が産まれた事を知る。名前を決めて欲しいという妻に「ボンソン」と伝えた。7番房の仲間たちは皆で喜び、楽しい時間をイェスンと過ごした。

真実

裁判所でのヨング

ヨングの人柄から犯人だと疑うものは囚人たちは勿論、看守さえもいなかった。課長も例外ではない。しかし、みんなの心配はヨングの知的年齢が6歳であると言う事だった。ヨングの受け答えでは裁判で不利になってしまうからである。ヨングは仲間に事件の日の事を話し、みんなで当時を再現していく。事件のあった日は、刑務所の水道管も凍るような寒い日であり、少女とヨングが通った道は市場の前の路でしょっちゅう水が流され、路面が凍結していてもおかしくはない。滑って転んだ挙句偶然が重なった事故であることに間違いはなかった。しかもヨングは職場で救命処置の講習を受けていた事もわかり、少女にわいせつな事をしていたのではなく救命処置をしていただけであった。
一方課長は警察庁長官の元を訪れ、ヨングの再捜査を頼みに行くのであった。

なんとしてもヨングを助けたい7番房の仲間たちは、裁判を有利に進めるべくヨングに裁判での受け答えの練習を始めるのであった。そこに弁護士が訪ねて来て、「警察庁長官は国の偉い人だから怒って娘のイェスンに危害を与えるかもしれない」と脅しをかけたり課長が持って来た沢山の人の嘆願書にさえ興味すら示さない。そもそもこの国選弁護士はヨングを助ける意思などなく、ヨングと話す時も終始馬鹿にしたような態度であった。

裁判当日、一人で受け答えを練習するヨングの元に警察庁長官が訪れると、ヨングを激しく殴り罪を認めなければ娘を同じ目に合わせると脅されてしまう。その為開かれた裁判の間ヨングは検事の質問に答えられず、おまけに罪を認めてしまう。ヨングは自分の刑の事などどうでも良かったのである。ただただイェスンの事が心配でたまらず、イェスンを守りたい一心なのであった。結果冤罪にもかかわらず、一審と同じ死刑を求刑されてしまうのであった。

時は流れ、夏から冬になっていた。刑務所ではいつも通り変わらぬ生活を送るヨングや房の仲間、看守であった。課長はイェスンを自宅に呼び妻とイェスンと幸せな時間を過ごした。また、イェスンとヨングも面会や手紙で交流をはかる。しかし、そんな中ヨングの死刑執行の日が12月23日に決まる。12月23日はイェスンの誕生日でもあった。

お別れの日

死刑執行の日、抱き合う父ヨングと娘イェスン

毎年行われている刑務所でのイベントが近づいていた。その出し物で優勝すれば、家族と一晩過ごす権利が与えられるというものだった。死刑執行がもうすぐであることを知った7番房の仲間は、ヨング脱獄の計画を立て始める。他の囚人たちの力も借り、ヨング親子を乗せて脱獄させる為の大きな気球を作るのだった。
イベント当日、刑務所には歌を歌いに子供たちが来ていた。その中にイェスンの姿もあった。イェスンの担任の先生にも力を借り、何とかみんなで作った気球に乗せる事に成功する。課長は脱獄に見て見ぬふりだった。無実のヨングと、可愛い娘のイェスンを逃がしてやりたかったのだ。しかし飛び立った気球は、塀を超える事は無かった。気球から伸びたロープが塀の有刺鉄線に引っかかり、それ以上進むことは出来なかった。気球からは、美しい夕日が空に広がっているのが見えた。美しい夕日の中でヨングとイェスンは心穏やかな一時を過ごした。
死刑執行のその日、7番房ではイェスンと少し早いクリスマスと誕生日を祝っていた。クリスマスケーキと房のみんなからプレゼントを貰い、ヨングからは欲しがっていた『セーラームーン』のランドセルを貰い、イェスンは幸せだった。しかしお別れの時間が来る。房の仲間にヨングは別れと感謝の気持ちを伝える。イェスンとヨングは何度も何度も別れを惜しみ、ヨングはイェスンが心配しないようになるべく気丈に振舞ったものの、泣いているイェスンの元へ駆け寄り何度も何度も「助けてください、ごめんなさい」と謝り続けるのであった。房内にヨングの悲痛な叫び声が響くのだった。

時は流れ、課長に育ててもらったイェスンは大人になっていた。大人になったイェスンは父であるヨングの無実を証明する為、弁護士を目指していた。司法修習生の模擬裁判にて、当時ヨングと過ごした7番房の仲間と課長に力を借りて、見事父ヨングの無罪を勝ち取るのであった。

『7番房の奇跡』の登場人物・キャラクター

イ・ヨング(演:リュ・スンリョン)

無実の罪で捕まったヨング

6歳のイェスンの父親である。
知的年齢は6歳だが、娘を心から愛している。心優しく純粋な天使の様な人物である。
仕事は駐車場の誘導員をしており、給料日には娘のイェスンに『セーラームーン』のランドセルをプレゼントしようと思っている。
自分の心配より、常にイェスンの心配をしており無実の罪で刑務所に送られてからも、毎日イェスンの事を考え心配している。
同じ刑務所の7番房の癖の強い先輩たちとも、持ち前の明るさや人柄によって仲良くなる。

イェスン(幼少期)(演:カル・ソウォン)

父ヨングに会いに来たイェスン(子供時代)

ヨングの一人娘。幼いころから父ヨングの面倒を見るしっかり者である。明るく天真爛漫な性格で、周りの人間を和ませる。
アニメ『美少女戦士セーラームーン』が大好きで、セーラームーンのランドセルを欲しがっていた。
父を心から愛し、いつも父の心配をしていた。父が冤罪で死刑にされた後は刑務所課長夫妻に引き取られ、大切に育てられた。

イェスン(現在)(演:パク・シネ)

模擬裁判に挑むイェスン(現在)

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