読書の季節到来「秋の夜長にさらりと楽しみたい小説」5選

暑い時は文字を見るのすら億劫になりますが、涼しくなると不思議と活字が恋しくなりませんか?夜の時間が増えてくるこの時期は、読書に最適です。肩が凝らずにさらりと読めて、しかも面白い作品をピックアップしてみました。

「不連続の世界」

出版:幻冬舎文庫 著者:恩田陸

妻と別居中の多聞を、三人の友人が「夜行列車で怪談をやりながら、さぬきうどんを食べに行く旅」に誘う。車中、多聞の携帯に何度も無言電話が……。友人は言った。「俺さ、おまえの奥さん、もうこの世にいないと思う。おまえが殺したから」(「夜明けのガスパール」)――他四篇、『月の裏側』の塚崎多聞、再登場。恩田陸のトラベル・ミステリー!

連作のミステリーホラーで最終話の展開はやはりうまいと思う。多聞のこれまでの冷静な分析力とあくまで傍観者というちょっと引いた立場からのモノの見方が根底から崩れる追い詰められ感が読後にぞっとさせられる。

出典: bookmeter.com

恩田さんのファンとして、とても楽しめました。
ホラーっぽくても最後にどこか救いのある、完全に地獄に落としきらない優しさがあって、それが恩田陸の好きなところです。

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「木守り男」「悪魔を憐れむ歌」「幻影キネマ」「砂丘ピクニック」「夜明けのガスパール」の5編からなる短編集です。
恩田ファンであれば「恩田節」が全開の作品ですので、文句なく楽しく読めると思います。
初めての方も、妙にひねった話ではないので読みやすい作品集でしょう。
読みやすいといっても単純な訳ではなく、ヒヤリとしたスパイスが効いています。

「ジョーカー・ゲーム」

出版:角川文庫 著者:柳 広司

”魔王”――結城中佐の発案で、陸軍内に極秘裏に設立されたスパイ養成学校”D機関”。その異能の精鋭達が、緊迫の諜報戦を繰り広げる! 吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞に輝く究極のスパイミステリ。

とにかく、展開が速い。軽ーい感じで読めるので、楽しい。しかも、この手の本にある昭和初期のなんか暗ーい感じ。特高登場、思想統制、欲しがりません勝つまでは。みたいなところがない。逆に明るい雰囲気のなか話が展開していく。
だから、楽しく、弾むように読んでいける。スパイになりたくなった。

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短編集ながら最初にしっかりと必要な設定と成り立ちが説明されていてすごく引き込まれる作品。話のテンポもよくあっという間に一冊読み終えた。登場キャラも魅力的で戦前という時代の雰囲気も良く楽しめた 。

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2015年1月に亀梨和也、深田恭子、伊勢谷友介らの出演で映画化されたので記憶に新しい題名だと思います。
ジョーカーシリーズは複数作品ありますが、この一作目が一番人気が高いようです。
スパイ達の華麗な駆け引きが楽しめる作品です。

「その女アレックス」

出版:文春文庫 著者:ピエール・ルメートル 訳者: 橘明美

おまえが死ぬのを見たい―男はそう言ってアレックスを監禁した。檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが…しかし、ここまでは序章にすぎない。孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進するのだ。イギリス推理作家協会賞受賞作。

幾重にも重なり深く隠された真相に向かって、飽きさせず、しかも理解しやすく読み手を導く手腕は驚くばかりです。全体像が明らかになるにつれ読み手はアレックスという女性を理解し寄り添うようになり、結末に目を閉じるしかなくなります。登場人物たちはどの人も魅力的。

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まさにどんでん返し!スリリングな展開に読むのを止められず、最後まで読み切ってしまった!基本的に翻訳ものは苦手なのですが、文章はとても読みやすく、一気に読めました。

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想定外の展開に意識を持って行かれて、読む手が止まらなくなってしまう巧妙なストーリーテリングが魅力の作品です。
ショッキングなシーンもあったりしますが「エグいのは苦手」という方をも読ませてしまうパワーがあるようです。
後半に差し掛かったら、もう夜更かしは決定かも。

「オー・マイ・ガアッ!」

出版:集英社文庫 著者:浅田次郎

日本史上最大のお気楽男、ファッション・メーカーの共同経営者にだまされ彼女にも逃げられた正真正銘のバカ、大前剛47歳。元スーパー・キャリア・ウーマン、現ラスベガス・ブールヴァードのコール・ガール、肉体以外のすべてを捨てた梶野理沙32歳。ベトナム戦争末期の鬼軍曹も、いまはただの飲んだくれ、エリートの妻に捨てられたジョン・キングスレイ―が、スロット・マシンで史上最高のジャック・ポットを出しちまった!だが…。謎の老婆に若き石油王、元マフィア父子にヒットマンetc。爆笑のうちに、人生はルーレットのごとく回転し、そして!著者会心の、勇気百倍正調喜劇。

壬生義士伝に続いて読んだ作品ですが、構成の上手さに脱帽です。
また、観光案内を兼ねている部分もあってラスベガスに行ってみたくなります。
そして、スロットマシーンにチャレンジしてみたくなります。
更に、ジャックポットが出せるような予感さえしてきます。

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いつの間にか著者も小説の登場人物になっていたり、構成が素晴らしい。人生崖っぷちの人々を、ユーモアとラスベガスのゴージャスな雰囲気でだんだん魅力的に描くので感情移入してしまう。

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「王妃の館」が映画化されたので、知名度が更に上がりました。
色々な遍歴の末にラスベガスで一攫千金を狙う登場人物達に、どんどん惹きこまれてしまう楽しい作品です。

「BUOYANCY OF DEATH」(死神の浮力)

出版:文芸春秋 著者:伊坂幸太郎

おまえはまだ死なない。俺がついているから――。映画化(金城武主演)もされたベストセラー『死神の精度』の「千葉」が8年ぶりに帰ってきました! しかも今回は長篇、冒頭の一部を除いてすべて書き下ろしです。7日のあいだ対象の人間を観察し、「可」か「見送り」を判定。「可」の場合8日目にその人間の最期を見届ける……。人間界でひっそりとこんな仕事をしている死神の千葉。クールでとぼけた彼のちょっとテンポのずれた会話と、誠実な仕事ぶりをたっぷりお楽しみください。

エンターテイメントのサスペンスでありながら気楽に読めるファンタジー。
第一級の文学作品を思わせる描写を見せながら、会話は、くすりと笑わせる上品な漫才や落語のよう。
それでいて、生きるために大切なメッセージを、われわれ読者は勝手に読み取ることができる。

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面白かった。相変わらずの千葉さんだった。徐々に相手を追い詰めていく様子がわくわくしたし、なんといっても、終盤の物語の加速度がすごくよかった。最後まで大変楽しめました。

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