1人と1匹の最後の旅とは…「旅猫リポート」

「吾輩は猫である。名前はまだ無い。-と仰ったえらい猫がこの国にはいるようだ」というコミカルな書き出しで始まる「旅猫リポート」。銀色の車に乗った1人と1匹の新しい飼い主を探す旅は、どのような結末を迎えるのでしょうか。猫好きにも、そうでない人にも読んでもらいたい、ベタベタだけど泣けるオススメ作品です。(あくまで個人的評価ですので、つまらないと言われても責任は取れません。悪しからずご了承ください)

出会いと旅立ち

「吾輩は猫である。名前はまだ無い。-と仰ったえらい猫がこの国にはいるそうだ。
その猫がどれほどえらかったのか知らないが、僕は名前があるという一点においてのみ、そのえらい猫に勝っている」(6ページより引用)

「旅猫リポート」(作・有川浩、表紙・村上勉)の冒頭はこんな感じで始まります。交通事故に遭ったのがきっかけでサトルの飼い猫になった「ナナ」。5年間を一緒に過ごした1人と1匹が新しい飼い主を見つけるために、サトルの友人たちを訪ねる「最後の旅」に出るという話です。
最初はなぜ新しい飼い主を探さなくてはならなくなったかは明かされませんが、物語が進むにつれてその理由が見えてきます。私はぶっちゃけ先が読めてしまいましたが、先が分かっていてもそれが欠点にならないほどの破壊力です。

オスなのに「ナナ」?

ちなみに小説内の記述によると、ナナは「三毛っぽく見える」オス猫です。(三毛猫のオスは遺伝の関係で極めて少ないのです)
オスなのに「ナナ」というのはちょっと違和感がありますし、ナナも「僕の性別に合致していないこと甚だしい」(6ページより引用)と必ずしも気に入っていないようです。ちなみに名前の由来は、カギシッポが数字の「7」に見えるからです。「ラッキーセブンで縁起もいいし」(16ページより引用)と、サトルは気に入っているみたいですね。
ネットで「三毛っぽい」猫の画像を探してみましたが、もしナナが実在したら、こんな感じなのでしょうか。

あくまで勝手に想像しただけです。有川さんの想定と違っていても責任は持てません。(「フリー写真素材ぱくたそ」より)

舞台に、そして絵本に

この「旅猫リポート」ですが、有川さんと俳優の阿部丈二さんの演劇ユニット「スカイロケット」による公演が2013年4月に行われています。また、2014年2月には絵本版も発売されています。
これなら小説はまだ早いという子供でも読めそうですが、話が結構ヘビーなのを考えるとオススメしてもいいかどうかは少し悩むところです。

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