独自のヒップホップで世界に認められたTHA BLUE HERB

特徴的なトラックとMCでそれまでのヒップホップとは一線を画すTHA BLUE HERBに注目してみた。

THA BLUE HERBとは

THA BLUE HERB(ザ・ブルー・ハーブ)は、北海道・札幌を本拠地として活動を続ける日本のヒップホップグループである。

概要

ILL-BOSSTINOとO.N.Oの2人で1997年に札幌の地に結成された。アナログでリリースされたシングル曲『知恵の輪(THIRD HALLUCINATION CHAOS)』を聴いたDJ KRUSHがクラブプレイ時に盛んにこの楽曲をかけた(「remix」誌に掲載されていた自身のプレイリストにもこの曲の名前を入れていた)ため、東京を始めとして日本全国のヒップホップ関係者の耳目を集めることになる。

2000年に初の全国ツアーを行う。フジ・ロック・フェスティバルに出演した。2005年以降はレコーディングに集中するためライヴ活動を休止し、2006年は新曲の発表も無かったものの、2007年マキシシングル『PHASE 3』の発売をきっかけに活動を再開、同年5月にはサードアルバム『LIFE STORY』をリリースした。自身のレーベルTHA BLUE HERB RECORDINGSを持つ。
メンバー

1人のMCと1人のトラックメイカーに加えて、ライヴにおいては1人のDJが加わる。

BOSS THE MC(ボス・ザ・エムシー) / ILL-BOSSTINO(イル・ボスティーノ)

MC。
ブルーハーブではBOSS THE MCの名前を、外部作品及びブルーハーブ以外のプロジェクトではILL-BOSSTINOの名前を使う。
レーベルメイトであるワチャルと共にHERBEST MOONというハウスのプロジェクトも行っている。
また2006年にはCalmとJAPANESE SYNCHRO SYSTEMというユニットを組んでいる。

O.N.O (オー・エヌ・オー)

トラックメイカー。
既成のヒップホップにとらわれないサンプリングの加工や複雑に打ち込まれたドラムはTBH独自のグルーヴを産み出した。
ソロアーティストとしてもハード機材を用いたライブ活動を行い、2004年にはフジロック・フェスティバルに、2007年にはMETAMORPHOSEに出演した。

DJ DYE (ディージェイ・ダイ)

ライブDJ。
個人名義でMix CDもリリースしている。

JERRY "KOJI" CHESTNUTS(ジェリー“コージ”チェストナッツ)

シンガー。
ブルーハーブ関連の楽曲にたびたび登場し、上の3人に続くブルーハーブの準メンバーと言える。

作風

THA BLUE HERBの最大の特徴はそのリリックである。Shing02などと同様、リリックには強いメッセージ性があるとされている。 自身の存在の誇示(セルフボースティング)、セレブや音楽業界の東京中心主義への批判(ディスリリック、バトルライム)が衆耳を集めがちだが、『時代が変わるPt.2』ではイデオロギーの違いによる人間の対立、『未来は俺らの手の中』で生への希望を描き、『Candle Chant』で死者への追悼をするなどメッセージは幅広く、『スクリュードライマー』のプロモーションビデオでは大麻を讃えるような描写が見られる。

フロウは『SHOCK-SHINEの乱』などの早期はガナリ声、トラックにとらわれない強引な言い回しであったが、『智慧の輪』以降、近年は冷静な口調でラップをする事が多くなった。またJAPANESE SYNCHRO SYSTEMではポエトリーリーディングのような作風になっている。

出典: ja.wikipedia.org

THA BLUE HERBのサウンド

THA BLUE HERBは特異な存在であると言いたい。
それはヒップホップから逸脱しているという意味ではない。
一つの衝突地点であり、発着地点でもある気がする。
ポエトリーリーディングのスタイルを一般に知らしめたのは彼らである。
注目すべきはトラックもそうである。
サンプリング自体の創意工夫がいたるところに聞こえる。
例えば、彼らの曲「路上」はカトマンズの夜を題材にしている。
リリックは路上で薬物を売る青年の生活と世界を書いたものなのだが、実にリアルな内容なのだ。
一つの楽曲を通り越して物語を聞いている感覚に近いものがある。

また、「PRAYERS」では
東日本大震災やそれによる原発事故を題材にした曲である。
MVはリリースと同時に発表した訳ではなく、
実際に彼らが東北の地を訪れてライブをし、
目で見て、耳で聞いたものを映像化していることが特徴的だ。
リリックも含めてサウンドはどこか枯れていて、
言葉の一つ一つを大事にしていることがよく分かるものとなっている。

ブルーハーブのサウンドはどこまでも現実を感じさせる。
ラップすることへの意志や、
ヒップホップという音楽についての向き合い方、
時には哲学的な内容までふんだんに盛り込まれている。

最後に

THA BLUE HERB以降、日本のヒップホップはあらゆる可能性が出てきた。
彼らとはまた違うテイストだが、shing02のようなMCも台頭してきた。
いわゆるヒップホップらしいサウンドという型にハマったものを打ち崩したのだ。(彼らにとっては自然なことだったのかも知れない)
東日本の震災後に出したアルバムには彼らの苦悩も見えている気がする。
また、近年はクラムボンと共演した曲「あかり from here」も話題を生んだ。
生音のドラムと打ち込まれたドラムの境が自然であり、
ピアノの音、ボーカルがとても良い味を出している。
そんな、「まさか」という組み合わせをしてくれるのだから非常に面白い。
これから、THA BLUE HERBはどんなサウンドを見せ、聞かせてくれるのだろうか。

あかり from hereのライブバージョン。
元々、某CDショップの企画で誕生したコラボレーションだった。
それに関して若干の批判があったが、この組み合わせはそんな雑音をかき消してしまった。
それを象徴するのがこのライブに出ている。
自然と会場のボルテージも上がっていき、
最後には感動すら覚えるものとなっている。
ILL‐BOSSTINOのポテンシャルの高さが伺る映像である。
ぜひともチェックしてみてほしい。

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