80年代イギリスネオアコシーン「孤高の存在」ザ・スミス(THE SMITHS)の軌跡

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イギリスにおける80年代ネオアコシーンで欠かす事のできない存在、それがザ・スミス(THE SMITHS)です。
ザ・スミスのボーカリストにして、独特な世界観を「詩」によって吐露したモリッシー。
孤独なカリスマが紡いだ「心模様」を中川五郎氏の訳詩をひきながら紹介し、あわせて、特に秀逸な作品を動画を交えて紹介します。

スミスのメンバーと結成までのいきさつ

ザ・スミス(THE SMITHS)はイギリスの北部都市マンチェスターで結成されたバンド。
活動期間は1982年〜1987年の5年間と短いものでしたが、当時の音楽シーンの主流とは全く異なるアプローチが熱狂的なファンを生み、後のオルタナティブ系アーティストやギターポップ、パワーポップに至るまで強い影響を及ぼしました。

途中でメンバーの交替などがあったものの、ザ・スミスは基本的に次の4人のメンバーによって構成されていました。

モリッシー(Morrissey)/ボーカル
ジョニー・マー(Johnny Marr)/ギター
アンディ・ルーク(Andy Rourke)/ベース
マイク・ジョイス(Mike Joyce)/ドラム

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左からアンディ、モリッシー、ジョニー、マイク。

モリッシー(本名/スティーヴン・パトリック・モリッシー)は、1982年当時マンチェスターの実家でフリーライターをしながら生活していました。
そしてこの頃既にギタリストとして目立つ存在であったジョニー・マーがモリッシーの記事の読者であったところから二人の接点が生まれます。
やがてモリッシーの書く歌詞にジョニーが曲をあてる形でザ・スミスがスタート。オーディションで選んだベーシストのアンディ・ルーク、ドラマーのマイク・ジョイスの4人となって、本格的なバンド活動に乗り出しました。

たった3枚のシングルCDとライブの実績で「ブライテストホープ」に!

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画像はイギリスMEADOWSでのライブの1シーン。

当時のイギリスミュージックシーンは、ニューロマンティックに代表されるような、「トゥーマッチな」ファッションが主流でしたが、ザ・スミスは普通のTシャツやジャケットやジーンズ姿でライブをしました。

1983年5月にラフ・トレードと契約したザ・スミス。
ファーストシングルは「ハンド・イン・グローヴ(HAND IN GLOVE)」。これは思った程はヒットしませんでしたが、続いてリリースされた「ディス・チャーミング・マン(THIS CHARMING MAN)」、「ホワット・ディファレンス・ダズ・イット・メイク?(WHAT DIFFERENCE DOES IT MAKE?)」はイギリスのチャートでそれぞれ25位、12位までアップ。
この3枚のシングルとライブでの人気・実績が決め手となって同年の「NME(ニューミュージカルエクスプレス)」の読者投票で最優秀新人賞に選ばれました。

解散までに出された4枚のアルバム

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ザ・スミスは5年という短い活動期間中に、4枚のアルバムを発表しています。
※コンピレーションアルバム「ハットフル・オブ・ホロウ(HATFUL OF HOLLOW)」「ワールド・ウォント・リッスン(THE WORLD WON'T LISTEN)」は除く。
発売順に紹介しますとー

1 ザ・スミス(THE SMITHS) 1984年2月
2 ミート・イズ・マーダー(MEAT IS MURDER) 1985年2月
3 クイーン・イズ・デッド(THE QUEEN IS DEAD) 1986年6月
4 ストレンジウェイズ・ヒア・ウィ・カム(STRANGE-WAYS HERE WE COME) 1987年9月

そしてシングル発売された曲は、先に紹介した3曲の他に十数曲あり、それらのいずれもがモリッシーの内省的・自虐的な歌詞と、それとは真逆なジョニー・マーの繊細な曲・アレンジによって構成された、他のアーティストにはない独特の世界で聞く者を魅了しました。

特におすすめしたい作品

「ゼア・イズ・ア・ライト・ネヴァー・ゴーズ・アウト(There is A Light That Never Goes out)」は、シングルカットはされていませんが、現在に至るまで多くのファン達から支持を集める一曲です。

筆者もTHE SMITHSでモリッシーが書いた歌詞の中で、特に素晴らしいと思う作品のひとつです。
切なさを盛り上げるオーケストラによるアレンジもドラマチック。

「二階建てバスがぼくらにぶつかってきたとしても、きみのそばで死ねるならそれほど素敵な死に方はない。
10トントラックがぼくら二人を押しつぶしたとしても、きみのそばでしねるならそれは僕の喜び、ぼくの名誉」

(訳詩/中川五郎氏著「モリッシー詩集」より※以降、すべての訳詩の出典は同じ著作から)

これは凄い表現だと思います。
ある意味究極の「ラブソング」と言えるかもしれません。

Please, Please, Please, Let Me Get What I Want

後半部からラストにかけて奏でられるマンドリンの演奏が素晴らしい。
これはジョニー・マーの手腕によるところが大きいと思われます。

「だから一生に一度だけ、ぼくの欲しいものを手にいれさせておくれ。
誓ってもいい、これが初めてなんだ。
誰も知らないだろうけれど、これが初めてなんだ。」

この下りに胸がぐっと詰まります。
劣等感の塊だったような時期が筆者にもあったので、こういう心境がストレートに分かってしまったからです。

Heaven Knows Im Miserable Now.

歌詞の内容は限りなく絶望的なのに、曲調は果てしなくクリアで爽やか、というスミスならではの特徴がとても分かりやすく出ている作品。

「このぼくの人生。
ぼくが生きていようが死んでいようが気にもしていないやつらに、どうして自分の貴重な時間を預けられるというのか」

あ〜わかる、そういう気持ち!と思う人も多いのではないでしょうか。

This Charming Man

モリッシーの繊細な感覚が短いフレーズに凝縮されている作品。
イギリスの緑したたる田園風景の中を自転車に乗って駆け下りて行く姿が見えるようです。
ジョニーマーのギターが瑞々しくてまた素晴らしい。

「今夜はでかけたい。
だけど着ていく服が何もない」

これもすごく分かる感覚です。
本当に服が何もないわけじゃなくて、いわゆる「勝負服」的なもののことでしょう。

How Soon Is Now?

スミスの曲にしては、ややグランジ寄りな匂いのする作品。
この曲は後にロシアのお騒がせ2人組t.a.t.u.がカバーしたことでも有名になりました。
PVがかっこいい。

「ぼくは人間。
他のみんなと同じようにぼくだって愛されたいんだ」

このフレーズは当時衝撃的でした。(個人的に)
だって、「I AM HUMAN,AND I NEED TO BE LOVED」って。。。

Stop Me If You Think You've Heard This One Before

個人的に大好きな一曲。
PVでイギリスの地方都市をモリッシーと、大勢の少年たちが自転車に乗って走り回る様子がこの曲にぴったりあっていました。

The Boy With The Thorn In His Side

筆者が初めてザ・スミスに「開眼」した曲。
震えるような繊細さと、透明感にあふれたメロディが絶妙の取り合わせで、しばらく
耳から離れなかったことを思い出します。

「心に茨を持つ少年。
憎しみの影に潜むのは、人を殺しかねないほどの愛への激しい欲望。

ぼくの目をじっと見つめておきながらどうしてみんなはぼくのことを信じてくれないんだ。
ぼくの言うことには耳を傾けながらどうしてみんなはぼくのことを信じてくれないんだ。
今信じてくれないんだとしたら、そのうち信じてくれるのか?
今信じてくれないのなら、いつかは信じてくれることがあるのか?」

思春期には程度の差こそあれ、似たような思いを抱くことがあるのでは、と感じます。

心に茨を持つ少年 The Boy With The Thorn In His Side

筆者が初めてザ・スミスに「開眼」した曲。
震えるような繊細さと、透明感にあふれたメロディが絶妙の取り合わせで、しばらく
耳から離れなかったことを思い出します。

「心に茨を持つ少年。
憎しみの影に潜むのは、人を殺しかねないほどの愛への激しい欲望。

ぼくの目をじっと見つめておきながらどうしてみんなはぼくのことを信じてくれないんだ。
ぼくの言うことには耳を傾けながらどうしてみんなはぼくのことを信じてくれないんだ。
今信じてくれないんだとしたら、そのうち信じてくれるのか?
今信じてくれないのなら、いつかは信じてくれることがあるのか?」

思春期には程度の差こそあれ、似たような思いを抱くことがあるのでは、と感じます。

まとめ

いかがでしたか?
ザ・スミスの作品には、THE QUEEN IS DEADやMEAT IS MURDERなどのように、社会問題をテーマにしたものもかなりあります。
しかし個人的には、ここで紹介したような「心の揺れ」を描いた作品の方に愛着を覚えるのです。
モリッシーは現在もソロで活動中と聞きます。いつかまた、できればジョニー・マーと一緒にスミス時代の曲を歌ってくれないかしら、そうなったらいいなぁ。

matsurika
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@matsurika

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