Engage Kiss(エンゲージ・キス)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『Engage Kiss』(エンゲージ・キス)とは、悪魔が暗躍するメガフロート都市「ベイロンシティ」を舞台に、ダメ男とヤンデレ少女と元カノが繰り広げる三角関係とアクションを描いたオリジナルアニメ。メディアミックス作品『Project Engage』の第1弾である。
零細PMC「I&S事務所」の経営者で、その日の糧にも事欠く生活を続ける緒形シュウ。ヤンデレ気質の悪魔少女キサラと元カノで大手PMCの社長令嬢夕桐アヤノに支えてもらいつつ、シュウは家族を殺した悪魔を探してベイロンシティを駆け抜ける。

『Engage Kiss』の概要

『Engage Kiss』とは、悪魔が暗躍するメガフロート都市「ベイロンシティ」を舞台に、ダメ男とヤンデレ少女と元カノが繰り広げる恋とバトルとアクションを描いたオリジナルアニメ。
アニプレックスによるメディアミックス作品『Project Engage』の第1弾である。メインライターに『冴えない彼女の育てかた』などの代表作で知られる丸戸史明、イラストレーターに『ネプテューヌシリーズ』で人気を博したつなこを採用しており、ズラリと並んだ実力派スタッフの名前にアニメファンから期待と注目が集まった。

次世代のエネルギー源として注目されるオルゴニウム。その採掘場を兼ねた海上都市「ベイロンシティ」。ここで活動する零細PMC「I&S(イサムアンドシュウ)事務所」の経営者である緒方シュウ(おがた シュウ)は、家族を殺した悪魔を追うために独立したはいいものの、その日の糧にも事欠く生活を続けていた。
そんな彼を支えるのは、ヤンデレ気質の少女キサラと、元カノで大手PMCの社長令嬢夕桐アヤノ。「ダメ男を巡る2人の(見る目の無い)女の戦い」に見えて、実のところキサラは“人の記憶を代償に力を発揮する”強大な悪魔であり、アヤノはアヤノで仇討ちのために己の全てを犠牲にしようとするシュウを案じて彼に関わり続けているのだった。

己の記憶をキサラに差し出しながら、家族を殺した悪魔を追い続け、シュウは今日もベイロンシティを駆け抜ける。

『Engage Kiss』のあらすじ・ストーリー

ヤンデレ悪魔と元カノ

次世代のエネルギー源として注目されるオルゴニウム。その採掘場を兼ねた海上都市「ベイロンシティ」。人々の欲望渦巻くこの街には、いつの頃からか悪魔が入り込み、超常の力を人々に貸し与え、あるいは契約した者の手足となって、様々な事件を起こしていた。これに対抗するため、ベイロンシティではPMC(民間軍事会社)が精力的に活動しており、悪魔絡みの騒動が起きるたびに「どの会社が鎮圧を担当するか」で入札が行われるのが常だった。
そのPMCの中でも異彩を放つのが「I&S事務所」。所長の緒方シュウと相棒の女学生キサラのみのごくごく小規模の会社ではあったが、ベイロンシティ最強の存在として市民や警察からは頼りにされていた。それもそのはず、キサラは見た目通りの少女ではなく、その正体は強大な力を秘めた悪魔なのだった。

一方で「I&S事務所」の経営は、シュウが常に入札価格を採算度外視の金額で引き受けるため常に火の車。その日の食事にも事欠く有様で、シュウはキサラや元カノの夕桐アヤノに食費や生活費を援助してもらうことでなんとか食いつないでいた。シュウの現恋人を自認するキサラとしてはそれが気に入らず、またシュウに未練たっぷりのアヤノとしてもキサラの存在が受け入れられず、2人は顔を合わせるたびに反目する。
どうしてそこまでシュウが悪魔絡みの事件にこだわるかといえば、彼の両親と妹が悪魔に殺されたことに原因があった。その後警官のマイルズ・モーガンの家に引き取られたシュウは、自分の命と引き換えにしてでも仇を討ちたいと考え、PMCに入社。悪魔を倒す術を求める中でキサラと出会い、力を借りる代償として自分の記憶を少しずつ彼女に差し出しながら、なりふり構わず情報を集めていたのだ。

同棲までしていたシュウが、己の人生を投げ打ってでも仇討ちを果たさんとしていることを知り、アヤノは「自分では彼の心の傷を埋められないのか」と嘆きつつもこれを止めるために奔走。キサラはキサラで、シュウもまたアヤノへの想いを捨て切れていないが、自分が記憶を奪うことで彼女との思い出を失いつつあることへの罪悪感と「このまま記憶を奪い続ければシュウを独占できる」との暗い喜びの間で揺れ動く。

悪魔代理人

シュウの調査は少しずつ実を結び、ベイロンシティに「力を欲する者に悪魔を紹介する」何者かが存在していることが判明する。しかし警察からは「悪魔代理人」の名で行方を捜索されているその人物は、シュウたちに探られていることに気づき、自分を嗅ぎ回る者を始末しようとアヤノに刺客を放つ。これを先読みしていたシュウはキサラを送り込んでアヤノを守らせた上で、相手の手がかりを得ようと画策する。
そんなシュウの動きと狙いを察した市警察の刑事三上テツヤ(みかみ テツヤ)は、シュウが家族の仇を追っていることまで調べた上で、「一緒に一連の事件の黒幕を捕まえないか」と提案。自分とキサラだけで目的を果たそうと考えていたシュウだったが、三上の熱意を受け入れ、彼やマイルズと共に犯人を追うことを選択する。

相手の動きは捜査の手を一歩先回り、ここしばらくシュウたちの周囲で暗躍していた“悪魔を人々に配って回っていた謎の人物”こと花村ジュンヤが何者かに殺される。再び手掛かりが失われてしまったという現状を前に、しかし三上は「花村を殺した犯人を追えば、必ず黒幕に辿り着く」と前向きな言葉を口にする。シュウもまた家族を殺した悪魔を討つため、その際に起きた事件で父に着せられた冤罪を晴らすため、そして「悪魔に連れ去られた妹を助ける」というかすかな望みを叶えるため、命と人生と生活を代償に活動を続けていく。

星天教会の使者

シュウが三上と組んで調査を進めていく中、星天教会のシスターにして悪魔祓いを職務とするエクソシストのシャロン・ホーリーグレイルがベイロンシティにやってくる。彼女はここ最近の活躍で画像がネット上に溢れるようになったキサラを滅することを目的としており、そのために市内のPMCを次々と襲撃して情報を集めていく。やがてシャロンはシュウの前にも姿を現し、彼を守ろうとしたキサラと対峙。そこでシャロンがシュウとかつて恋仲であり、同時に“封印されていたキサラを解き放ち、2人がかりで致命傷を負わせた”人物であることが明らかとなる。
その時よりも彼女の力が増していると判断したシャロンは、聖天教会が開発した悪魔の体組織を利用した強化服を持ち出してキサラを仕留めんとする。追い詰められるキサラだったが、駆けつけたシュウの「お前以外の悪魔の力を借りるつもりはない」との言葉に励まされ、彼の記憶を食ってシャロンを撃破。敗れたシャロンは警察に確保されるが、その後の取り調べで、彼女は「近い内にベイロンシティにかつてないほど強力な悪魔が現れる、聖天教会はそれを討つために動いている」と語り始めるのだった。

三上の死

シャロンの一件とは別個に、三上は地道に捜査を続け、「悪魔代理人と黒幕の悪魔の間に、恐らくはもう1人仲介となる人物が存在する」ことがほぼ明らかとなる。シュウたちはその人物に“真の悪魔代理人”と名称を付け、絞り込みを進めていく。
そんな中、シュウは「真の悪魔代理人の正体が分かった、2人だけで話したい」と三上から連絡されるが、そのタイミングで何者かが彼を襲撃。シュウが駆け付けた時には三上は殺されてしまっていた。その場にいた怪しい男を捕まえて尋問してみれば、それはキサラがカモフラージュのために通っている学校の生徒会長蜂須賀ミハイル(はちすか ミハイル)だった。市長の息子にして警察庁のトップでもあるミハイルは、親の権力を悪用して市内の悪魔犯罪の調査をしており、三上のことを知って接触しようとしていたのだった。

三上という協力者を失い、真の悪魔代理人に関する手がかりも失われ、意気消沈するシュウ。しかし三上が残した言葉とミハイルから得た情報から、シュウは「真の悪魔代理人がいるとしたら、その条件を満たす人間は1人しかいない」ことに気付く。
三上の葬儀でマイルズと対面したシュウは、彼に「真実に肉薄したから三上を殺したのか」と問いただす。

マイルズの過去

かつてマイルズは、シュウの父親である緒方イサム(おがた イサム)と組んで世界中を騒がすようになっていた悪魔による犯罪を追っていた。ある時、イサムはついに悪魔たちの活動が「新時代のエネルギー源」と当時注目され始めていたオルゴニウムと深く関わっていることを突き止め、世界最大のオルゴニウム採掘現場でもあるベイロンシティの地下深くの調査を計画。この時マイルズの妻は病で明日をも知れぬ状態で、「彼女の側にいてやりたい」との一心でマイルズは調査には関わらないことを決める。
しかし、ここでマイルズに悪魔が接触。イサムの妻でもある緒方サユリ(おがた サユリ)こそは、現在にも続く一連の事件の黒幕にしてシャロンたちが語っていた大悪魔アスモデウスなのだった。サユリはマイルズの妻の病を癒す代償として、彼に自分の手下になるよう要求。これに逆らえなかったマイルズは、イサムを謀殺する事件の片棒を担がされてしまう。その後サユリは“人間と悪魔の混血”であるシュウの妹を連れていずこかへと去り、マイルズは罪悪感に押し潰されそうになりながらもシュウを保護し、せめてもの償いに彼を家族に迎え入れて大切に育てていった。

マイルズとサユリの契約は未だに続いており、愛する妻を失いたくない一心で、彼は様々な悪魔犯罪に関与し続けていた。三上はこの真実に辿り着いてしまった結果、マイルズによって殺されたのである。
もはや逃げ場は無いと悟ったマイルズは、サユリから借り受けた悪魔としての力を発揮して暴れ出す。シュウは呆然とこれを見詰めていたが、マイルズがアヤノや脱獄してきたシャロンまでも手に掛けようとしているのを見て、キサラに「自分の中のマイルズに関する全ての記憶を食ってアイツを殺せ」と命じる。

それはシュウにとって家族にも等しい存在であるマイルズとの決別であり、同時に現在の人格に多大な影響を及ぼしかねない危険な行為でもあった。シュウの非情な決断を拒みたくとも拒めず、指示通りに大量の記憶を食べて戦うキサラ。マイルズはそんなキサラとも互角以上に渡り合うが、自分のことを忘れたシュウが「あの男が三上を殺した」という怒りと憎悪に身を震わせて銃を構えたのを見ると、彼の前に飛び出していく。
放たれた銃弾に撃ち抜かれる直前、マイルズが発した最期の言葉は、いつしか本当の息子のように愛するようになっていたシュウに対する謝罪だった。

アスモデウスの顕現

マイルズから奪った記憶を手掛かりに、一連の事件の黒幕が大悪魔アスモデウスであること、その野望を阻止するためにイサムは海底の坑道を爆破したのだということが明らかとなる。しかしこの記憶を読み取ったキサラは、アスモデウスの正体がサユリであることを言い出せず、「シュウがこのことを知る前に決着をつけよう」とシャロンと共に独断で問題の坑道へと向かう。
アスモデウスは十数年前には本物のサユリと入れ替わっていたらしく、最強のエクソシストとも呼ばれていたイサムとの間に娘のカンナを儲け、その力を利用してより大量の悪魔をこの世に呼び寄せるのが目的だと思われた。アスモデウスがシュウには興味を示さなかったのは、彼がイサムと本物のサユリの間に生まれた普通の人間だったからなのだった。

廃棄された坑道内部でキサラとシャロンがカンナを見つけた時、アスモデウスも姿を現し、その強大な力でキサラとシャロンを圧倒。2人が追い詰められたところで、別個にこの坑道の存在に気付いたシュウとアヤノが合流するも、そこで何者かの繰り出した刃がキサラを貫く。驚愕するシュウの前に現れたのは、アスモデウスの支配下に置かれた彼の妹カンナの姿だった。
ミハイルが密かに入手していた衛星兵器の援護で、一行はどうにか離脱に成功。しかしこの時にはすでにシュウは記憶の大半をキサラとの契約に費やし、ついに「自分に家族がいた」ことさえも忘れてしまっていた。アスモデウス顕現の影響で、ベイロンシティにはかつてない悪魔の大群が現れ、ここに住まう人々はその生活も命も追い詰められる。しかし彼らにとっても切り札であるキサラは、これ以上シュウから思い出を奪うことに耐えられず、彼との契約を破棄して全ての記憶を返却するのだった。

女たらしと女たち

一度は海の底に沈んだカンナが再び動き出し、ベイロンシティはいよいよ存亡の危機に立たされる。自分自身のものまで含めて全ての記憶を捧げてくれたキサラに対し、シュウは「もうお前を戦わせるわけにはいかない」と語り掛け、彼女を病院に残してカンナに立ち向かう。
ベイロンシティに常駐するPMCのほとんどが「勝ち目無し」として匙を投げて逃げ出す中、アヤノやシャロンと共にカンナを封じるべく奮戦するシュウ。彼女たちとの連携でいったんは追い詰めるも、その目に浮かぶ涙を見てしまったシュウはトドメの一撃を繰り出せず、反撃を食らって倒れ伏す。

しかしあわやというところで、キサラが戦場に駆けつけてシュウを救う。彼女は記憶を失う前の自分が書き残した「彼を信じて一緒に戦え」というメッセージを受け取り、何も分からないながらも自分のことを大切にしてくれるシュウたちのために戦うことを選んだのだった。シュウ、キサラ、アヤノ、シャロン、そしてベイロンシティのPMCがそれぞれに奮戦した末にカンナは取り押さえられ、彼女を利用して進められていたアスモデウスの野望は阻止されるのだった。
その後シャロンは教会に戻り、ベイロンシティは日常を取り戻していく。シュウは記憶を失ったキサラを改めてパートナーとして迎え入れるも、相変わらずアヤノとの関係もズルズルと引きずり、さらにアスモデウスの支配から逃れたカンナが「お兄ちゃんを誑かす悪い虫」だと彼女たちを執拗に追い払おうとする。ようやく家族を取り戻せたことに充実感を覚えつつも、シュウはその自分を巡って言い争う女たちに囲まれて頭を抱えるのだった。

『Engage Kiss』の登場人物・キャラクター

緒形シュウ(おがた シュウ)

CV:斉藤壮馬

零細PMC「I&S事務所」の経営者。業界の常識を無視した安値で仕事を請け負う一方、仕事用の装備にはしっかり金をかけるので、日々の食事にも事欠く貧乏性。
荒事には滅法強く、近距離での射撃戦から距離を置いての狙撃まであらゆる銃火器の扱いに長ける。アヤノとはかつて同棲までした恋人関係にあり、一方的に別れを告げた今も仕事上の付き合いがある。

家族を殺した悪魔を追っており、そのためにアヤノと別れ、大手PMC「AAA Defender co.」を退職。キサラと契約した後に独立して「I&S事務所」を立ち上げる。キサラの圧倒的な戦闘能力により、同事務所はベイロンシティの最高戦力と見なされて市の上層部から頼りにされる一方、その価格破壊を厭わぬ営業が同業者から不評を買っている。

キサラ

CV:会沢紗弥

シュウの相棒の少女。生活能力の無い彼を健気に支え、自腹を切って食事を提供することもある。普段はベイロンシティにある高校に通っている。
その正体は、ベイロンシティでも他に例のない“A級”カテゴリーの強大な悪魔。真の力を発揮するにはその都度シュウとの契約が必要で、代償として彼の記憶を奪っている。

シュウのことは契約者であるという以上に本気で愛しており、元カノのアヤノに対しては敵意を露わにする。そのアヤノから「このまま契約を続けて全ての記憶を奪われたシュウが廃人になってもいいのか」と尋ねられた際は、「最後の女になれればいい」と語った。

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