呪詛(台湾映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『呪詛』とは、動画配信サービスNetfliXで2022年7月8日から公開されている台湾発のホラー映画。ケヴィン・コー監督による本作は、2019年に国際映画祭に出品され、2022年3月に台湾で公開されると、史上最高の興行収入を叩き出した。また、台湾映画祭では長編映画賞・監督賞ほか7部門にもノミネートされている。過去に宗教施設で禁忌を破り、呪いを受けたリー・ルォナン。命を賭して一人娘の命を守ろうと視聴者に語り掛けるリーの姿が、モキュメントの形で描かれる。

作中では、リーら3人が陳氏の館を訪れた際、アードンが出迎えに来た陳一族の男性と親しげに会話を交わす場面が見受けられる。出迎えに来た男性はアードンの祖父に当たり、アードンとアーユエンが陳氏の血縁に当たる人物であった。つまり、2人の元々の名前は幼少期に大黒仏母に捧げられたため、アードン、アーユエンという仮名で2人が過ごしてきたのだ。このことは、禁断の地下道で発狂したアードンに向けてアーユエンが「チャン・リードン!」とアードンの真の名を叫ぶ場面からも明らかである。また、呪われて自殺する直前のアーユエンがしきりに「俺に聞くな!」と叫んでいたのは、大黒仏母から真の名前を問いかけられることを嫌ってのものだと推察される。

題材となった事件の結末

2005年に、各々が神に憑かれたと主張する呉一家が長女を監禁して死に至らしめた事件。事件の直前には、一家6人が意味不明な言葉を叫び、家外で副葬品を焼いたり、互いに暴力をふるう様子が近隣住人たちに目撃されている。しかし、警察が通報を受け、事態が明るみに出たのは、家族に異変が生じてから約1か月後の同年4月11日のことであった。

端緒となったのは、観音菩薩が憑いていると主張した長女の死である。同年4月9日、一家が泡を吹いて動かなくなっている長女を発見。一家は、長女に憑いた悪霊が払われただけで、長女が死んだわけではないと断定してしまう。しかし、2日経っても意識が戻らない長女の様子を見て、ようやくおかしいと勘付いた父親が近隣住民に助けを求めたことで事態が発覚したのである。

検察は残された家族5人を遺棄致死罪で起訴。それでも家族5人はしばらくの間、長女は死んだのではなく悪霊が払われただけだと考えていたという。弁護側は、家族5人が精神異常により責任能力を欠く状況にあったと主張するも、治療の結果、家族全員が「精神異常なし」との診断を受ける。しかし、最終的に長女の死因が多臓器不全によるもので、家族による暴行といった外的要因ではないことから5人とも無罪となった。

この事件の始まりは、そもそも呉一家とは離れて暮らす29歳の長女が下宿先で夜な夜な悪夢にうなされるようになり、その原因を悪霊のせいだと断じた呉一家が長女を引き取ったことである。長女が悪夢にうなされるようになったのは、父親が長年信仰してきた三太子の像を処分しようとしたことによるものではないかとも噂されているが、未解明な部分も多い。

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