目玉焼きの黄身 いつつぶす?(漫画・アニメ・ドラマ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『目玉焼きの黄身 いつつぶす?』とは、おおひなたごうによるフードコメディ漫画。『コミックビーム』にて、2012年10月号から連載された。主人公・田宮丸 二郎は食事に異常なこだわりを持つ男だ。同棲中の恋人・長嶋 みふゆが自分とは違う目玉焼きの食べ方をしていたことから「自分の食べ方はメジャーではないのか?」と衝撃を受ける田宮丸。それ以降もことあるごとに他人の食事の仕方に疑問を持ち、首を突っ込んで食べ方について論争していく。周囲と食べ方で衝突しながらも、田宮丸が人として成長していくストーリー。

『目玉焼きの黄身 いつつぶす?』の概要

『目玉焼きの黄身 いつつぶす?』とは、おおひなたごうによるフードコメディ漫画。エンターブレイン刊『コミックビーム』にて、2012年10月号から2019年5月号まで連載された。
独特な世界観が人気を呼び、テレビアニメ版が『NHK総合テレビジョン』で2014年8月5日から8日まで放送された。全4話。また2017年11月に実写テレビドラマ化もされ、主演は劇団EXILEの青柳 翔(あおやぎ しょう)が務めた。

主人公・田宮丸 二郎(たみやまる じろう)は、食事に異様なこだわりを持つ男である。恋人である長嶋 みふゆ(なかしま みふゆ)と初めて朝を迎え、みふゆが作った朝食を幸せいっぱいな気持ちで食べていた。
しかし、みふゆは目玉焼きを「白身だけ先に食べて、黄身を最後に食べる」タイプだった。一方で田宮丸は「半熟の黄身を潰し、醤油と混ぜながら白身と一緒に食べる」タイプだった。田宮丸はみふゆに「どうしてそんな食べ方をするんだ?」と驚きに震えながら聞く。みふゆは些細なことだと思っていたので「なんでって…最初に黄身を潰したらお皿が汚れるでしょ?」と答えた。それを聞いた田宮丸はみふゆの食べ方が受け入れられず「お前、馬鹿か?」とみふゆを貶してしまった。その結果、みふゆは家を出ていく。

自分の食べ方がメジャーで正解だと思っていた田宮丸は、この出来事以降「みんなどうやって食べているんだ?俺の食べ方が一番なんじゃないのか?」と疑問を思うようになる。
そして田宮丸は様々の人と関わりながら、食事の仕方に理解を深めていく。その中で田宮丸自身の成長も描いていくフードコメディ漫画。

『目玉焼きの黄身 いつつぶす?』のあらすじ・ストーリー

田宮丸の食に対するこだわりの始まり

主人公・田宮丸はゆるキャラ「どくフラワー」のスーツアクターの仕事をしている。田宮丸の恋人であるみふゆは新人漫才コンビ「魑魅魍魎(ちみもうりょう)」の魍魎(もうりょう)として活動している。

2人は愛を育み、ある日ついに初めて田宮丸の部屋で朝を迎える。みふゆは半熟の目玉焼きにソーセージ、ほうれん草に味噌汁という愛情が詰まった朝食を作る。田宮丸は幸せを感じながらみふゆと朝食をとっていた。
しかし、「半熟目玉焼きに醤油を垂らし、黄身を潰して白身と一緒に食べる」タイプの田宮丸に対し、みふゆは「白身を先に食べて黄身を最後に食べる」タイプだった。今まで見たことがない食べ方に驚く田宮丸。田宮丸は思わず「どうしてそんな食べ方をするんだ」と問いただす。みふゆは「特に理由はないけど、黄身を先に潰すとお皿が汚れるでしょ?」と言って、最後まで残した黄身を一口で食べた。その食べ方を受け入れられない田宮丸は思わず「お前、馬鹿か?」とみふゆを貶してしまった。当然みふゆは怒り、家を出ていく。

その後、田宮丸は仕事へ向かう。田宮丸は仕事終えると、職場の上司であり田宮丸が所属している「フラワー企画」のイベントチームリーダー・近藤 雄三(こんどう ゆうぞう)に「奢るので一緒に目玉焼きを食べに行きませか?」と誘う。今朝のみふゆとの一件で、人がどう目玉焼きを食べるのか気になっていたからであった。
近藤は快く承諾し、田宮丸と共に定食屋を訪れる。そして近藤が見せた食べ方は、「白身を先に食べてから黄身をご飯の上にのせ、醤油を垂らしぐちゃぐちゃに混ぜて食べる」タイプだった。自分ともみふゆとも違う食べ方に、衝撃を受ける田宮丸。
そこから田宮丸は「みんな自分の食べ方に疑問を持たないのか?」という気持ちを抱え始める。そして家に帰り、みふゆの食べ方で目玉焼きを食べ始めるが、途中で黄身をつついてしまい黄身が皿に流れ出す。「こんな難しい食べ方を、みふゆはしてたんだな」とみふゆに感心を覚えるも、みふゆに謝ることは出来ないままだった。

食べ方で悩みながら成長する田宮丸

その後も田宮丸は「トンカツのキャベツをいつ食べるか」「カレーのルーをどこまでかけるか」「納豆をご飯にいつかけるか」という疑問を持ち始め、周囲の人と食べ方が違うと衝突し悩みを抱えるようになる。

「トンカツのキャベツをいつ食べるか」という疑問を持った原因は、定食屋で近藤の妻の食べ方を見てからである。
田宮丸は「まずカツを一口食べ、カツが口に残っている間にキャベツを一口食べる。カツとキャベツが混ざっているところにご飯をかき込む」食べ方こそが至高と思っていた。しかし近藤の妻は「ご飯とカツを先に全て平らげ、キャベツは最後にドレッシングをかけて食べる」というものだった。
この時、喧嘩後のみふゆとも偶然再会し、田宮丸はみふゆに「みふゆはどうやってキャベツを食べるんだ?」と聞く。みふゆは「カツを食べて、飲み込んでからキャベツを食べる」というものだった。その食べ方をする理由は、みふゆにとってカツは脂なので、中和させるためにキャベツを合間に挟むというものだった。衝撃を受けた田宮丸は「油っぽいのが嫌ならトンカツ食うな!」と怒ってしまい、またみふゆに去られてしまう。
目玉焼きの一件で、田宮丸は「人それぞれ食べ方がある」と理解したつもりだったのに、結局は「理解した気になっていた」だけだったことを痛感する。また自分の食べ方を否定されているようで「俺の食べ方が一番うまいんだ!」とやり場のない怒りを抱えた。

「カレーのルーをどこまでかけるか」に関しては、田宮丸は長年カレーの食べ方について悩んでいた。
田宮丸の食べ方は「ライスとルーが半がけになっているものを、ルーとライスが触れ合っている中央から食べ進める」というものだった。しかしその食べ方では、途中で皿の真ん中が空いてしまい「ルーをライスの方に寄せるか」「ライスをルーの方に寄せるか」と悩みながら効率の悪い食べ方をしていると感じていた。
仕事の後輩・大貫(おおぬき)は「ルーとライスを混ぜて食べる」という田宮丸からすれば野蛮な食べ方をしており、解決方法が見つからずまた田宮丸はみふゆに連絡を取る。
みふゆは「ルーを掬ってライスにかけ、一口ずつ食べる」という食べ方をしており、ルーをライスに全部かけることはしていなかった。「ルーの半がけがメジャーなのか、全がけは罪なのか」と悩む田宮丸。
しかし、近藤に連れられたカレー屋のオプションで「全がけ」出来ることを知り、「全がけは罪じゃない」とこの問題は解決している。

「納豆をご飯にいつかける」では、田宮丸は納豆の扱いに悩んでいた。「納豆を全てご飯にかけると、納豆ご飯になってしまう。そうなると鮭やたらこの入る隙がなくなり、納豆を一口ずつ食べて味噌汁で口の中をリセットして…という食べ方も窮屈」と感じていた。大貫は相変わらず納豆とご飯を混ぜて食べる「混ぜラー」であった。
一方で近藤は「茶碗に海苔を壁のように並べてからご飯を盛り、そこに納豆をかける」タイプだった。この食べ方をすれば、海苔を巻いて納豆巻きとしても食べられ、なおかつ茶碗がべとべとにならないため洗うときは楽という利点を持っていた。
家に帰り、近藤の食べ方を真似してみる田宮丸。しかし時間が経つにつれ海苔が湿気を帯び柔らかくなる。その結果、海苔も茶碗にこびりついてしまい洗う時にも手間がかかることを知り、納豆との向き合い方に答えは出ていない。

日々、こういった食に対する悩みを抱えているせいかスーツアクターとしてのキレも悪くなっていく。一時は近藤により「どくフラワーにあぐらをかいていないか?」とどくフラワーを降ろされ、怪我で休みを取っていた大貫の代わりに「ヒマりん」というキャラクターのスーツアクターを務める。自分の代わりなどいると感じる一方で、どくフラワーをこのまま諦めたくない自分もいた。
そんな時、つけ麺の食べ方にも悩んでいた。つけ麺は温かいラーメンでも、冷やし中華などの麺とは違う。つけ麺のスープは最初は温かいが、食べていくうちに緩くなってしまうし、わざわざ麺を一度スープにつけて食べる意味も分からなかった。
しかしこのことを近藤に相談すると「つけ麺はぬるいからつけ麺なんだ」と教えられる。
実際に周囲の人にも「なぜつけ麺を食べるのか?」と聞いた際にも「麺をガッツリ食べたいから」「温かいラーメンだと鼻水が出るから」と答えられる。それを聞いて「つけ麺を食べるのにもつけ麺ゆえの理由があるのだ」と感じる田宮丸。
そして「ラーメンでも冷やし中華でもないつけ麺も好きな人がいる」「つけ麺はつけ麺というポジションなのだ」と感じるようになる。そのことから「自分にしかない気持ちでどくフラワーに向き合おう」と思い始める。

田宮丸の成長を感じた近藤は再び、田宮丸をどくフラワーのスーツアクターに戻す。田宮丸はそこでどくフラワーと一心同体のようなパフォーマンスを見せ、周囲からも認められるスーツアクターとなる。
ある時、友人・笠原 美治(かさはら よしはる)から「お前の話をもとに脚本を書いたんだ、主役を務めてくれないか?」と演劇の道に来るよう誘われる。笠原は大きな劇場での公演を予定しており、もっと輝けるかもしれないと田宮丸の気持ちは揺らぐ。その一方でどくフラワーの活躍も目覚ましく、どくフラワーの単独公演ツアーの第二弾も決まっていた。
田宮丸がどくフラワーを降りている時、田宮丸の代わりにどくフラワーを演じていたのは後輩・靖雄(やすお)だった。しかし靖雄も別の道を目指すとフラワー企画を卒業。自分の代わりになる人がいない状況だが「演劇の道へ行きたい」と近藤に相談する。近藤は「どくフラワーの代役は探しておく。お前はやりたいことをやれ」と応援してくれた。

みふゆの変化

一方でみふゆの環境も変わっていた。
田宮丸とは食のことで喧嘩しながらも復縁し、恋人状態であったみふゆ。お笑いコンビ「魑魅魍魎」としても大会に出場し、頂点は取れなかったものの知名度は上がっていた。
しかし、相方・千夏(ちなつ)も妊娠し恋人と共にアメリカへ行くことを決める。みふゆは魑魅魍魎を解散した。そして、元々魑魅魍魎のファンだった俳優・黒野 ホルム(くろの ホルム)からオファーがあったことからテレビドラマへの出演で再出発することになる。
この頃の田宮丸も「自分に近い役だったから演じられただけで、別の役をやりきれる自信はない」と演劇を経験した上で、自分の芝居のレベルの限界を感じどくフラワーのスーツアクターに戻っていた。

ある時、黒野は「どくフラワーのファンだ」とみふゆに伝え、田宮丸と会うことになる。黒野はどくフラワーが好き過ぎるあまり「どくフラワーの中の人になりたい」と田宮丸に告白する。思わぬライバルの出現に戸惑う田宮丸。その翌日、黒野のマネージャーである若月 メタ(わかつき メタ)と出会う。
若月は黒野がどくフラワーの中に入ることには反対で、「どくフラワーよりも演じるものがあるのに、本人は話を聞いてくれない。黒野がどくフラワーに入ることを止めてくれませんか?」と田宮丸に相談してくる。その話をフードコートでしていたのだが、田宮丸は本題よりも若月のソフトクリームの食べ方に感銘を受けていた。
というのも、以前みふゆとデートしている時に田宮丸はソフトクリームを食べていた。田宮丸は「ソフトクリームの周りを舐めて芸術的に食べる」タイプなのに対し、みふゆは「先端の方から食べる」タイプだった。なぜそんな食べ方をするのか田宮丸が聞くと、みふゆは「だって舐めて食べるなんて汚いし子供っぽい」と言い放った。その時田宮丸はショックを受けるものの「そうだよね」とみふゆと喧嘩にならないよう納得したふりをしていた。
一方で若月の食べ方は「先端を食べてから周りを舐めてまた先端を作り食べる、その繰り返し」だった。芸術的な食べ方に惹かれた田宮丸は、みふゆに食べ方を否定されたこともあり、うっかり若月と一線を超えてしまう。

その間にも近藤が許したため、黒野は実際にどくフラワーの中に入っていた。黒野は必死にどくフラワーを演じるも一心同体になれない気持ちを感じる。黒野は「こんなにもどくフラワーを演じることは難しかったのか」を感じ、己の未熟さから現時点でどくフラワーを演じることは諦める。その事実を知った田宮丸は「俺以外をどくフラワーに入れたんですか!」と近藤を責める。そのまま喧嘩になり近藤は無傷、田宮丸は顔面負傷し入院となった。
入院中、お見舞いに来てくれた友人・服部 龍峰(はっとり りゅうほう)に「みふゆ以外の女性と関係を持ってしまった」と後悔と反省を告白する。そこで服部は「俺が代わりに話をつけてくる」と若月に会いにいく。服部の説得により若月と田宮丸の縁はここで切れ、以降もみふゆとの交際を続けていく。

スーツアクターだけでは収入が不安定だった田宮丸は、フラワー企画に正社員として昇進する。そのタイミングでみふゆにもプロポーズし、2人は結婚を目指して交際することとなる。

「どくフラワー」の変化とみふゆとの結婚

田宮丸はみふゆの父へ、結婚の挨拶をしにいく。当初、みふゆの父は田宮丸を快く受け入れていたが、田宮丸がすじこを全て食べ尽くしてしまう。そのすじこはみふゆの父がみふゆのために用意したものだったため「みふゆのために用意したものを全部食べるなんて許せない!」と田宮丸を追い出す。
田宮丸は深く反省し、すじこを持って謝罪に行く。その熱意に打たれた父は田宮丸を受け入れ、挨拶は無事に終わった。

田宮丸は仕事でも好調であった。
市が建設しているフラワーパークという遊園地のテーマキャラクターとしてどくフラワーを起用したいという声がかかった。
早速田宮丸はテーマパークの企画担当である蛇錦(へびにしき)と打ち合わせを進める。しかし蛇錦は「どくフラワー」という名前は適していないから「らぶフラワー」に改名しようと提案してきた。田宮丸は「どくフラワー」にもちゃんと由来があると説明しようとしたが、蛇錦は「意味を考えて見ている人なんていない。らぶフラワーの方が万人ウケしますよ」と話を聞き入れない。なおかつ、蛇錦は酢豚に入っているパイナップルを避けて食べる男だった。そのことから田宮丸は蛇錦と相入れないと感じる。
しかし実は、蛇錦はハンバーグと一緒に食べるときはパイナップルを添えて食べるタイプだった。それを知った田宮丸は「酢豚のパイナップルは食べないのに、ハンバーグのパイナップルは食べるのか」と責める。蛇錦はこれに対し「酢豚のパイナップルは水分もなく不味い。しかしこのハンバーグ屋のパイナップルは違う。しっかりと焼かれていてシャキシャキだし、焦げた味わいもたまらない」と熱弁した。そして蛇錦は「同じパイナップルだからって見た目で判断するな」と怒る。
それを聞いた田宮丸は「どくフラワーも見た目で判断しないでください!改名には断固反対です!」と言ったことで、蛇錦はどくフラワーの改名を取りやめる。しかし結局、スポンサーの意向で、どくフラワーの名前と色を変えることになった。

「どくフラワー」が「らぶフラワー」に改名されたのち、「らぶフラワー」が実写テレビ版で放送されることが決まる。田宮丸は演劇の経験から、「らぶフラワー」に変身する前までの主役を演じることになる。そして肝心の「らぶフラワー」の中身は、田宮丸と同じくらい熱意のある黒野が担当することになった。
この頃、田宮丸はみふゆとの結婚を控えており、披露宴でどのような料理を提供するかで悩んでいた。そして思いついたのが、2人が揉めるきっかけともなった目玉焼きだった。
田宮丸は「人それぞれ過ごした環境も食べ方も違う。そのことを教えてくれた目玉焼きを、みんなそれぞれの食べ方で食べて欲しい」と参列者一人一人にコンロを配り、思い思いに目玉焼きを焼いてもらう。みんなそれぞれ違う焼き方や食べ方をして、結婚式は和気藹々と終わった。田宮丸もようやく「人の食べ方、環境が違うことを受け入れる」ことも出来、人として成長していた。

その後はみふゆとの間に息子・三郎(さぶろう)をもうけ幸せに暮らしていた。

『目玉焼きの黄身 いつつぶす?』の登場人物・キャラクター

主要人物

田宮丸 二郎(たみやまる じろう/演:青柳翔)

みふゆの家にある調味料の数に驚く田宮丸。

CV:福原耕平

周囲からは「ジロちゃん」の愛称で呼ばれることが多い。仕事は「どくフラワー」というゆるキャラのスーツアクター。秋田出身。

食に対して異常なこだわりを持ち、当初は「自分の食べ方こそが王道で1番うまい」と思っていた。このことから恋人・みふゆが自分とは違う食べ方をしていただけで「お前、バカか?」と否定してしまい、恋人として初めて朝を迎えた日に家を出て行かれる。別れてはいないがその後も度々食べ方で衝突し、みふゆとは微妙な距離感を保っていた。

田宮丸のこだわりとは多岐に渡り、例えば「ショートケーキの苺は最後まで取っておく」「おにぎりは半分に割り、具の部分にかぶりついて残った白飯はお新香と共に食べる」「そばに乗っているかき揚げはサクサクのうちに食べる」などである。
しかし、自分の食べ方が1番美味しいと思っていた田宮丸の周囲の人々は、田宮丸とは全く違う食べ方をしていた。そのことから「どうしてそんな食べ方をするんだ?」と人々の食べ方に疑問を持ち始める。
そして人々の様々な食べ方のこだわりを知る度に「人には人の想いがあって、食べ方が違う」ということに理解を示していく。

例えば仕事仲間で後輩である大貫が蕎麦を食べる時は「かき揚げを汁に沈めて、つゆを染み込ませたかき揚げを蕎麦と一緒に啜って食べる」という食べ方をしていた。これを見た田宮丸は「かき揚げのサクサク感はどうでもいいのか!サクサクなのが1番美味いんだぞ!」とショックを受けた。
このことを仕事の上司である近藤に相談したところ、近藤は「俺も大貫の意見に賛成だ」と田宮丸の想いを否定した。というのも立ち食い蕎麦屋ではスピード感が求められている。そんな中でかき揚げは揚げるのにも時間がかかるため、作り置きされている場合が多い。そうするとかき揚げは冷めた状態で提供されるため、温かい蕎麦のつゆに浸して食べるのが近藤は美味しいと感じているのだった。
店舗側の配慮も理解した上で、田宮丸はもう一度かき揚げ蕎麦を食べにいく。かき揚げを汁には浸したくないが、蕎麦を食べるときに大貫がしていた「天地返し(てんちがえし)」という技をしてみたいと思っていた。「天地返し」とは単に、蕎麦の上にあるかき揚げを蕎麦の下に入れるだけの技ではあるが、田宮丸はそれを習得しようと奮闘する。
そうしているうちにかき揚げにつゆが染み込み、いつの間にかサクサクではないかき揚げを食べられるようになっていた。
このように田宮丸は「自分の食べ方が1番」という先入観が強いだけで、信頼している近藤からアドバイスをもらうと「他の人がしていた食べ方」も徐々に理解し出来るようになっている。

上記のことから事あるごとに食に対する悩みや不安を抱えたことにより、スーツアクターとして仕事に身が入らなくなる。
そのことを近藤に見抜かれ「お客さんは毎回違うんだぞ、どくフラワーという主役に胡座をかいているんじゃないか」と言われてどくフラワーを下される。自分らしさとは一体何なのかと悩む中、田宮丸を更に悩ませていたのはつけ麺の食べ方である。
つけ麺を食べていると毎回、つけ麺のスープは食べているうちにぬるくなってしまうし、それならば熱々のラーメンか冷えている冷やし中華でいいのでは思い始めてしまう。つけ麺の存在意義に悩んでいると、近藤から「つけ麺はつけ麺というポジションなんだ」と教えられる。つけ麺を食べる人の理由は「麺をガッツリ食べたいから」や「温かいラーメンだと鼻水が出るから」というものがあった。みんな思い思いの理由でつけ麺を食べている。それこそがつけ麺だけの良さなのである。
そのことに気づいた田宮丸は、自分にしかないどくフラワーへの思いを感じ「またどくフラワーに戻りたい!」と思えるようになる。その気持ちが近藤にも伝わり、無事にどくフラワーへと戻ることができた。

一方、みふゆとは微妙な関係が続いていた。
そもそもみふゆと交際を始めたのも、みふゆがショートケーキの苺を最後までとっておくタイプだったから。田宮丸にとってショートケーキの苺は特別であった。小さい頃、家族でショートケーキを食べる時間が一番の幸せだった。苺を食べてしまえばその時間が終わると、田宮丸は最後まで苺をとっておくタイプだった。
このことからみふゆのことは「信じられる人だ」と思い、恋人へと発展していった。目玉焼きの食べ方で揉めて以来、田宮丸も「人それぞれ食べ方が違う」ことを理解し「自分とは違う食べ方」を受け入れようとしていた。

そんなある時、みふゆと1泊2日の旅行へ行くことになる。ホテルの朝食で目玉焼きが出てきたので、田宮丸はみふゆと同じ食べ方をしようと「白身を先に食べて黄身を最後に食べる」という食べ方を見せた。
しかし、みふゆは目玉焼きとご飯の時はその食べ方だが、今回はトーストだったために「黄身を先に潰し、パンにつけて食べる」という食べ方をしていた。その姿に田宮丸はショックを受ける。みふゆを理解したくて同じ食べ方をしたのに、そんな自分の気持ちを理解せずみふゆは違う食べ方をした。そのことに悲しみ、勢いのままホテルを飛び出してしまう。
冬だったために雪山の中を彷徨い、そのうちに一軒の山小屋へと辿り着く。そこはペンションで、オーナー夫婦は遭難した田宮丸を快く受け入れた。夫婦が田宮丸に「何か体の温まるものを作ろうか」と提案したが、田宮丸はどうしても目玉焼きの一件が頭から離れず「目玉焼きで」とお願いした。
夫婦も交えて田宮丸は再び目玉焼きを食べる。オーナー夫婦の夫の方は、トーストに目玉焼きを挟んで食べるタイプだった。また妻の方はみふゆと同じように、パンに黄身をつけて食べていた。改めて目玉焼きにも色々な食べ方があると知った田宮丸。みふゆを責めてしまったことを反省し、ホテルに戻るが田宮丸に呆れたみふゆはすでに東京へ戻っていた。

みふゆとは連絡を取らないままでいた。その間みふゆは宮(みや)という男性芸人と関係を持っていた。同時期、田宮丸も小学校の時の同級生である志岐 カオル(しき カオル)と偶然再会し、共にパンケーキを食べていた。
その時、志岐はパンケーキの食べ方に関して異常なこだわりを見せた。志岐はメイプルシロップをパンケーキ全体に染み渡らせたいという強い思いがあり、パンケーキは「全体にバターを塗ってから3枚重ねになっているパンケーキを8等分にし、その上からメイプルシロップをかける」という食べ方をしていた。このこだわりを目にした田宮丸は「志岐となら同じこだわりを持つ同士、食事で揉めずにうまく交際できるかもしれない」と思い始める。
そして田宮丸はみふゆを呼び出し、パンケーキの食べ方をチェックする。みふゆの食べ方は「パンケーキ全体にバターを塗り、3枚重ねの1番上から切って食べる」というものだった。自分とは違う食べ方をしたみふゆに対し悲しくなり、そのまま別れを告げる。
このまま志岐と付き合うかのように思えたが、田宮丸が「パンケーキの全体にバターを塗り、先にメイプルシロップをかけてから8等分」したことにより、志岐が「食べ方が違う!」と怒ってしまったため交際には至らなかった。

ある時、フラワー企画の社長である羅生門(らしょうもん)と焼肉屋へ行った。その際、田宮丸は焼き肉と共に白飯を食べていた。しかし、羅生門は「焼肉の時に白飯を食うなど言語道断」と田宮丸の食べ方を強く否定する。
羅生門は大の白飯好きだが、糖尿病で食べられない悔しさから田宮丸の食べ方を否定した。そのことを知らない田宮丸は「自分と違う食べ方をするからって否定するなんて」と怒りをあらわにする。しかし、近藤に「それは今までお前がしてきたことだろう」と正論を言われてしまう。
確かに田宮丸は今まで自分と違う食べ方をしているから、という理由だけで人の食べ方を否定してきた。自分はこんなにも無情なことをしていたのだとひどく落ち込む。そしてみふゆに対しても、「食べ方が違うだけで別れを切り出し、傷つけてしまった」と反省していた。
その後、近藤に連れられ再び焼肉屋を訪れる。そこで「カルビと白飯は合うが、ホルモンと白飯だとホルモンの歯応えがあるために飲むこむタイミングが異なること」や「生マッコリと肉も合う」ことを知る。焼き肉を食べるときに白飯があってもなくてもいいという境地に辿り着き、同時に「人から食べ方を否定されると傷つく」ことも知って成長した田宮丸。どくフラワーとしての単独公演が決まる中、まだみふゆに謝れずにいた。

そんな時、みふゆが『MANZAI GP(まんざいぐらんぷり)』の決勝まで進んだことを知る。みふゆには内緒でライブに応援に行く。残念ながら魑魅魍魎は優勝を逃す結果となった。
その後、田宮丸は遊園地でのどくフラワーショーを行っていると偶然、みふゆと再会する。そのまま昼食を共にすることになり、湯豆腐屋へ行った。
しかし湯豆腐屋で出てきた鍋には、豆腐の他に魚や野菜が入っていた。このことに田宮丸は激怒。田宮丸は「湯豆腐は昆布だけで出汁をとって、具は豆腐だけを入れるんだ。それに豆腐につけるタレは鍋の中で温めておくものだ」と語る。それに対しみふゆは「私もそう思う」と賛同したことから、2人は田宮丸の家に行き本当の湯豆腐を食べた。このことから、再び2人は連絡を取り合うようになる。
そしてみふゆが「バームクーヘンは1枚ずつ剥がして食べる」「アーモンドやポッキーのチョコは舐めてから食べる」といった食べ方をする「剥がし魔(はがしま)」であることを知る。みふゆの独特な食べ方を目の当たりにし、本当のみふゆを知れた田宮丸はみふゆの食べ方を否定せず受け入れた。みふゆも本当の自分を受け入れてくれた田宮丸に愛を感じ、2人はキスをして恋人となった。

私生活も仕事も順調な田宮丸に、今度は友人の笠原が「脚本を書いたから主役を務めてくれないか」という誘いを持ちかけてくる。
笠原が書いたという脚本『目玉焼きいつ食べる?』は田宮丸とみふゆの目玉焼きで揉めた話を元にしたものだ。当然主役は田宮丸が元になっているので、笠原は「これ以上の適任はいないよ」と強く田宮丸を誘う。
田宮丸も興味はあったが、どくフラワーの仕事も忙しく稽古をしている暇はない。またここまで自分を育ててくれた近藤に対して背くようで、申し訳なさも感じていた。
それでも芝居に興味を持ち、「どくフラワーは靖雄が代わりを務めてくれる」と思って笠原の誘いに乗る。しかしその後、靖雄がスーツアクターから引退してしまったことにより、ますます近藤に言い出せなくなる。
そうしているうちに芝居の稽古も始まり、そこで演出の焼野原(やけのはら)と出会う。焼野原は牛丼屋で紅生姜をこれでもかと牛丼にかけて食べていた。もはや紅生姜丼であるそれをムシャムシャと食べる姿に、田宮丸は「どうしてあんなに紅生姜を乗せるのか?」と疑問に思う。しかしそのことを焼野原に聞いても「食べてみれば分かるよ」と明確な答えは貰えなかった。
どうしても気になった田宮丸は、牛丼屋で紅生姜を溢れるほどかけて食べてみる。どう食べても辛くて不味い。
田宮丸は「食べても何も分からないじゃないか」と呆れながら帰宅したが、その深夜にまた「紅生姜丼が食べたい」と思うようになっていた。確かに辛くて不味いのに、気がつけば体が欲して紅生姜丼を食べてしまう。この現象に戸惑い、焼野原へ理由を聞くと「何かストレスを抱えているんじゃないか?」と言われる。
田宮丸はどくフラワーを継続したいが今は芝居に専念したいこと、近藤に面と向かって言えないことがストレスとなり、刺激を求めて紅生姜丼を食べてしまったのであった。そのままでは体を壊すと焼野原に教えられ、田宮丸は意を決して近藤に芝居のことを話した。
近藤は「やりたいことがあるなら止めない」と田宮丸の気持ちを汲み取り、どくフラワーは田宮丸の代役を立てて芝居を応援してくれた。ストレスから解放された田宮丸は、それ以降パッタリと紅生姜丼を欲しなくなる。

いざ芝居の稽古が始まるが、芝居未経験な田宮丸はスムーズにセリフも言えない。
ようやく「お前、バカか?」というセリフが言えたが、焼野原から「もっと驚くように」「雰囲気を掴んで」など指示が飛んでくる。それに対し田宮丸は「俺が原作なんだろ!俺の言い方が1番合ってるはずだ!」と反発。その結果、演出に背く主役は要らないと焼野原に主役を下ろされる。
言いすぎてしまったことを反省し、焼野原に「もう一度主役をさせてくれないか」と頼み込む田宮丸。焼野原は「じゃあ今からラーメン屋に来られるか」と田宮丸に聞いた。すぐさまラーメン屋に向かう田宮丸。
焼野原と会い、まずは怒ってしまったことを詫びる田宮丸。しかし、謝罪よりも田宮丸は焼野原のラーメンの食べ方に驚いた。
焼野原は「レンゲの上にラーメンの麺を一口盛り、具やスープを乗せてまるでミニラーメンのようなものを作りそれを一口で食べる」という食べ方をしていた。それを見た田宮丸は思わず「お前、バカか?」と言ってしまう。
焼野原は「その言葉とニュアンスだよ!今の気持ちを忘れないで、それを芝居に活かしてくれ」と言った。田宮丸から自然な「お前、バカか?」と引き出すために、焼野原はあえて変な食べ方をした。それを知った田宮丸は焼野原に感謝し、再び芝居へと戻ることになった。
『目玉焼き いつ食べる?』は成功を収め、連日満員御礼で幕を閉じた。焼野原からも「演劇の世界に来ないか」と誘われたが、田宮丸は「今回の役は俺が元になっていたから出来ていただけで、俺に演劇は無理だ」と感じたために誘いを断る。

ある時、みふゆを通じてどくフラワーの大ファンで売れっ子俳優・黒野 ホルム(くろの ホルム)と出会う。黒野は「どくフラワーの中に入るのが夢」と面と向かって田宮丸に言ってきた。
どくフラワーの中に入れるかは自分が決めることではないと、少し自信をなくす田宮丸。そんな中、みふゆとデートした際にソフトクリームの食べ方を否定される。
田宮丸はソフトクリームはいかに芸術的に食べるかをモットーにしており、まるで聖火のような形を舐めることで作り上げていた。しかしみふゆは「でもそれって唾液まみれで汚いことだよね?」と否定。自分の食べ方が受け入れられなかったことに傷つき、その場は「そうだよな、汚いよな」と平静を装うものの凹んでいた。
その直後、黒野のマネージャーである若月から連絡が入る。若月は「黒野が芸能界を引退してどくフラワーに入ると言っている。それはうちの事務所としても困るから、田宮丸の方から断ってくれないか」という内容のものだった。とにかく今後のことを話し合うために、田宮丸はコンビニのイートインで若月と落ち合う。
どくフラワーの中に誰が入るかは田宮丸が決めることではなく、また黒野の純粋な気持ちも知っているため止められないと田宮丸は若月に説明した。そして若月が「どうやってソフトクリームを食べるのか」が気になった田宮丸は、若月にソフトクリームを奢る。
そこで若月は「ソフトクリームの先端が好きなので、最初に一口食べてから周りを舐めて、また先端を作る」という食べ方をした。並々ならぬソフトクリームに対する情熱とこだわりに感銘を受けた田宮丸は、みふゆに否定されたこともあり若月を部屋に呼んでしまう。そして2人は一夜限りの関係を結んだ。

その間に、黒野のやる気が認められ近藤と羅生門の許しもあり、黒野はどくフラワーの中に入ってショーのリハーサルに参加していた。そのことを知った田宮丸は激怒し、「そんな簡単に黒野をどくフラワーに入れたんですか!?」と近藤に詰め寄る。
しかし、実は黒野は挫折を感じていた。どくフラワーの大ファンで、自分も中に入れば完璧にこなせると思っていた。それなのに実際にはどくフラワーと一心同体になれず、自分はまだまだだと痛感していた。そして黒野がそう感じるだろうと予想していた近藤は、あえて黒野を一度どくフラワーに入れさせたのである。決してどくフラワーを軽んじている訳ではいない気持ちを伝えながら、近藤は田宮丸を腫れ上がるまでビンタした。その結果、田宮丸は入院することになる。
入院中、お見舞いに来た服部へ若月と一線を超えてしまったことを告白する。服部は「親友として一肌脱ぐ」と言って田宮丸の代わりに若月と話をつけてきた。これにより、若月との浮気はみふゆに知られる前に収束している。

食に対してこだわりが強すぎる自分を、いつも受け止めてくれるみふゆに深い愛情を感じ結婚を意識するようになる。
そしてどくフラワーの収入だけでは不安定であるためフラワー企画の正社員になったところでプロポーズをする。みふゆは泣いて喜んだが、その後の食事で田宮丸は「やっぱり結婚は待ってくれ」と言ってしまう。
その原因とは、みふゆが「ご飯を一口食べて飲み込んでから、おかずを食べてる。また飲み込んでからご飯を食べる」からである。田宮丸は「ご飯を口に含みながらおかずを食べて、またご飯を食べること」が1番美味しい食事方法だと思っていた。だが、みふゆはそれをしていない。この自分との大きな差に驚愕し、田宮丸は結婚生活が不安になってしまった。だから「結婚を待ってくれ」を口にしたのである。
しかし、このことを近藤に相談すると「ご飯を飲み込んでからおかずを食べてみろ」と言われる。「口の中にご飯がある状態でおかずを食べるのが1番美味しいのに」と思いながらも、言われた通りにする田宮丸。すると田宮丸は衝撃を受けた。なんと「ご飯を食べて飲み込み、おかずを食べる。そのおかずも飲み込んでからご飯を食べる」を繰り返すと、おかずを飲み込んでいるからか、ご飯の甘さや旨さがより一層引き立つのである。今までおかずもご飯も混ぜて食べていたせいで、お米のおいしさを蔑ろにしていた。みふゆはただお米のおいしさを感じていただけなのだ。
そのことを知り、「ただ美味しいから」という理由だけでご飯とおかずを混ぜていた自分を恥じる。そしてみふゆに「結婚を待ってくれ」と言ってしまった後悔も感じながら、田宮丸はみふゆに必死に謝り再度結婚を申し込む。みふゆの許しを経て、無事に婚約状態に戻った。

田宮丸はみふゆの父へ挨拶しに行く。みふゆの父は田宮丸を快く受け入れたが、みふゆのために用意してあったすじこを、田宮丸が全て食べてしまったことにより父は激怒する。
田宮丸を追い出し「結婚なんか認めない」と叫ばれた田宮丸は、「なんてことしてしまったんだ」と落ち込む。しかし、ここでみふゆとの結婚を諦めたくないと、新鮮なすじこを買って再び父の元を訪れる。
そして田宮丸は「僕のことは許さなくて大丈夫です。でもすじこだけは受け取ってください。申し訳ございませんでした」と謝罪した。父はその熱意に打たれ、田宮丸を許してみふゆと3人ですじこを食べた。

その頃、どくフラワーが市のテーマパークのキャラクターに選ばれたと近藤から聞かされる。当然喜ぶ田宮丸だったが、テーマパークの開発者やスポンサーが「どくフラワーだと見た目も名前も悪いので、らぶフラワーに改名しよう」と言ってきたのである。
ここまでどくフラワーとしての地位を確立してきたことや、今までのファンを切り捨てるようで、田宮丸はテーマパーク開発担当の蛇錦に「改名はやめましょう」と伝えるが「万人受けする見た目と名前が大事なんです」と認めない。またこの話を中華料理店でしていたのだが、蛇錦は酢豚に入っているパイナップルを避けていた。
その翌日、テーマパーク開発のディレクターで改名反対派である逆中川(ぎゃくなかがわ)から「実は蛇錦はハンバーグにだけパイナップルを添えるんです」という情報をもらう。そして蛇錦がハンバーグ屋にいるところに変装し、田宮丸はその様子を伺うことにした。
確かに蛇錦はハンバーグにだけパイナップルをオプションでつけるほど好いており、それを見た田宮丸は変装を解いて「どうして酢豚のパイナップルは避けるのに、ハンバーグのパイナップルは食べるんですか?」と詰め寄る。蛇錦は「酢豚のパイナップルと違って、このハンバーグのパイナップルは歯応えがあり鉄板で焼かれて香ばしい。パイナップルだからといって酢豚のものと一緒にするな」と反論した。
それを聞いた田宮丸は「どくフラワーも同じことです。見た目や名前だけで判断しないでください!」と力説した。その結果、蛇錦は改名を取りやめたがスポンサーの意向で結局は名前と見た目を「らぶフラワー」に変更した。

テーマパークの建設が進む中、らぶフラワーの実写版もテレビ放送されることが決まった。そして芝居経験がある田宮丸がらぶフラワーの変身前までの役者を演じ、中の人には黒野が起用された。
そんな中、みふゆとの結婚式を控えていた田宮丸は披露宴で振る舞う食事に悩んでいた。みふゆとの出会いや、食との関わり方、周囲の人々の助けを思い出し田宮丸が決めたシメの料理は目玉焼きにした。
一人一人にコンロを配り、思い思いに目玉焼きを食べてもらう。当然隣の人と食べ方は違うが、それでいいのだとお互いに理解し合う心が大事だと田宮丸は伝えたかったのだ。
このような催しもあり、結婚式は無事に祝福されながら終わることが出来た。数年後の未来で、田宮丸は一人息子・三郎とみふゆと幸せに目玉焼きを食べていた。

長嶋 みふゆ(なかしま みふゆ/演:成海璃子)

カレーを食べるみふゆ。

CV:白石涼子

田宮丸の恋人。若手女性お笑いコンビ「魑魅魍魎」の「魍魎」担当。ファンからの愛称は「もーちゃん」。ボケ担当。料理がうまい。青森出身。

高校時代、友人がおらず1人でお弁当を食べているところに千夏が話しかけてきた。このことから2人は親友と呼べる仲になり、成人後はお笑いコンビを結成。
田宮丸と出会い交際を始めるが、初めて2人で迎えた朝に目玉焼きの食べ方から「お前、バカか?」と田宮丸に言われたことから家を出ていく。その後は別れたわけではないが、度々食べ方で衝突する微妙な関係性になる。

ある時、みふゆは田宮丸と初めて1泊旅行へ行った。
朝食に出た目玉焼きを、田宮丸はみふゆが以前食べていたように食べてみせた。白身を先に食べて最後に黄身を潰さずに食べる方法だ。
しかし、みふゆはその食べ方ではなく、早々に黄身を潰していた。
田宮丸は驚き「白身から食べるんじゃないのか」とみふゆに聞く。みふゆは「ご飯の時はね。今はトーストがついてるから、黄身を潰してパンにつけるの。こぼれた黄身もパンで拭えば大丈夫よ」と答えた。それを見た田宮丸は「俺はみふゆと同じ食べ方をして喜んでもらいたかったのに!」と悲しみに暮れ、怒りのままホテルを飛び出した。
みふゆは食べ方が少し違うだけで怒る田宮丸に疲れ、田宮丸が戻ってくる前に先に東京へと戻った。
その後も田宮丸のことを理解しようとするが、みふゆも全てに付き合いきれず、田宮丸と別れる前に宮と関係を持つ。その頃、田宮丸も志岐とも再会しており田宮丸もみふゆとの関係に悩んでいた。そしてみふゆのパンケーキの食べ方が「バターを全体に塗り、3枚重ねの1番上から切って食べる」という田宮丸とは違う食べ方だったため、田宮丸は「みふゆとはもう食べ方で合うことはない」と悟り、田宮丸はみふゆを振った。

その後、みふゆは宮と交際するも宮があまりにも食に無関心で、みふゆはここでも食に対する違いに悩む。
どうにか宮に食の楽しさを伝えようと、ブイヤベースを作ってみるが宮は「美味しいけど俺は何食うてもうまいねん」と言われてしまう。また宮は食べるのが遅く、みふゆのペースに合わせるのが大変だとも愚痴をこぼした。そしてどんどん魑魅魍魎として売れていくみふゆのそばにいることが辛く、宮はみふゆへ別れを告げる。

みふゆは宮と別れた後、『MANZAI GP』に出場。優勝は逃すものの決勝まで勝ち残り、魑魅魍魎としての知名度を更に上げていった。
偶然、遊園地へ行った先でどくフラワーのショーを見かける。そこで田宮丸と再会し、湯豆腐を共に食べることとなる。その際、鍋に豆腐や魚、野菜が入っている湯豆腐を見て田宮丸は「こんなの湯豆腐じゃない!鍋だ!」と激怒する。そして田宮丸は「昆布だけで出汁をとり、豆腐を入れて鍋の真ん中にタレが入った容器を置くんだ。それが湯豆腐だ!」と語った。それを聞いたみふゆは「うちもその食べ方だったわ」と意気投合。ここから再び2人は会うようになる。

ある時、みふゆはバームクーヘンを1枚ずつ剥がして食べたり、アーモンドチョコのチョコから先に舐めて食べたりする姿を田宮丸に知られてしまう。
みふゆは小さい頃に両親が離婚し、一人っ子だったことから1人の時間の寂しさを紛らわせるため、時間をかけてるようにおやつで遊びながら食べていた。その結果、バームクーヘンを1枚ずつ剥がして食べたり、ポッキーやアーモンドのチョコを先に舐めて食べたりという食べ方をしていた。同時にこれは「行儀の悪いことだ」と分かっていたので、みふゆは家で1人きりの時にだけしていた。
それを田宮丸に知られたみふゆは「もう剥がしたりしないから、1人にしないで!」と田宮丸に泣きつく。本当のみふゆを知れた田宮丸は受け止め「1人にしない。俺の前では剥がしていいから泣かないでくれ」とみふゆにキスをした。

その後2人は順調に交際を重ねていく。
その一方で、千夏が彼氏・エベレットの子供を妊娠したために魑魅魍魎は解散。みふゆはピン芸人として再スタートすることになる。
そこにドラマのオファーが舞い込む。ドラマの主演・黒野 ホルム(くろの ホルム)はみふゆのファンでもありどくフラワーの大ファンでもあった。みふゆを通じて田宮丸と黒野も会うことになる。そこで黒野は「どくフラワーに入るのが夢だ」と田宮丸に語った。
黒野に自分の座を奪われるのではないかと不安な田宮丸。そこにソフトクリームの食べ方をみふゆに否定されたことも重なり、黒野のマネージャーである若月と一夜限りの関係を持ってしまう。しかし、このことはみふゆに発覚する前に服部が収束させたためみふゆは知らない。

若月との一夜限りの関係を反省し、またこんな自分を受け入れてくれる人はみふゆだけだと田宮丸は思うようになる。
田宮丸は本格的にみふゆとの結婚を意識し始め、正社員になったタイミングでプロポーズをする。みふゆの指輪もサイズも知らなかったため、指輪のサイズを測るリングをプレゼントして婚約となる。しかしその直後、みふゆが「ご飯を一口食べて、飲み込んでからおかずを食べる。またおかずを飲み込んでからご飯を食べる」という食べ方をしていた。このことに田宮丸はショックを受ける。
なぜなら田宮丸は「ご飯を食べて飲むこむ前におかずを食べる」タイプだったから。そしてそれが1番美味しいと思っていた。田宮丸はどうしても納得できず「結婚はやっぱり考えさせてくれ」とみふゆに申し出る。このことにみふゆは悲しみに暮れる。
その後、「ご飯を食べて飲み込んでからおかずを食べると、白飯をより美味しく感じる」ことに気づいた田宮丸がみふゆに謝り、再び婚約を申し出る。みふゆは田宮丸を許し再び婚約をした。

婚約を果たした2人は、みふゆの父に挨拶へ行く。そこでみふゆの父がみふゆのためにと、用意していたすじこを田宮丸が全て食べてしまう。そのことから一度、みふゆの父から「結婚は認めない!」と田宮丸は家から追い出される。しかし、みふゆとの結婚を諦めたくない田宮丸はすじこを用意し、父の許しを得て挨拶も無事に終わった。
晴れて2人の結婚式の日となり、2人が初めて食べ方で揉めた原因である目玉焼きを参列者に振る舞う。「好きなものを自分の好きなように食べ、それを好きな人と共有できる幸せ」を知ってもらいたかったからだ。結婚式も順調に終わり、2人は夫婦として新しい生活を始める。
数年後の未来では、息子を1人もうけて幸せに暮らしている。

近藤 雄三(こんどう ゆうぞう/演:佐藤二朗)

カツの食べ方について語る近藤。

CV:松原大典

フラワー企画のチームリーダー。田宮丸の上司で元どくフラワーのスーツアクターをしていた。アフロヘアと鷲鼻、真っ黒なサングラスが特徴。妻と息子・昌三(しょうぞう)がいる。

常に冷静で落ち着きがあり、田宮丸のくだらないとも言える食の悩みを逐一聞いてアドバイスをしてくれる。一方で厳しい面もあり、田宮丸が食べ方で悩みスーツアクターとしての心がブレてキレが悪くなった時はどくフラワーを下ろすなどの判断をした。

第7巻41話『焼き鳥はタレ派?塩派?』では、田宮丸は「本当はタレって言いたい。俺の中で焼き鳥はタレなんだ」と思いながらも「塩で食べる方が通で分かっている感」が否めずつい塩で食べてしまっていた。田宮丸は焼き鳥以外にも、蕎麦や寿司を塩で食べるのがかっこいいと思っていた。
そのことを近藤に相談したところ、近藤は「タレの良さを知れ」と共に焼き鳥屋へ向かう。近藤は様々な焼き鳥屋を訪れ、その店独自のタレを味わい「タレにもそれぞれ特徴がある」ことを知る。田宮丸が「塩もタレも美味しいです。タレか塩かで悩むなんて人間は面倒な生き物ですね」と反省したときには「お前が面倒なだけだ」と近藤はハッキリ言い放った。

田宮丸が焼肉屋で白飯を食べ、羅生門に「焼肉屋で白飯を食べるなど言語道断」と怒られてしまう。田宮丸は店を出て羅生門と別れた後、「人が何を食べようと自由だろ!自分と合わないからって否定するな!」と怒る。しかし近藤は「お前が今までしてきたことだろう」と正論を言った。このことに田宮丸は「今まで俺はこんな風に、自分食べ方が違うだけで相手を否定していたのか」とショックを受ける。
後日、落ち込む田宮丸に近藤は焼肉屋へと誘う。そこで「ホルモンと白飯は合わない」ことや「生マッコリは肉と合う」ことを教える。肉によって白飯の合う合わないを教えることで、田宮丸に「必ず白飯を食べてはいけないというわけではない」ことを伝えた。田宮丸も納得し、焼肉屋での食べ方は場面と人それぞれなのだと知る。
そして実は「羅生門が糖尿病から好きな白飯を食べられず、その辛さから田宮丸を否定していただけ」という本質を、田宮丸が納得してから教えた。当然、田宮丸は「なんで最初から教えてくれなかったんですか!?」と近藤に詰め寄るが、近藤は「食べ方一つで排除される悲しみを知って欲しかった」と田宮丸を思ってこその行動だったと告白。
田宮丸はこれに感謝し、近藤との仲はさらに深まっていった。

黒野が「どくフラワーの中の人になりたい」と夢を語った時も、「好きという気持ちだけじゃスーツアクターは務まらない。その現実を教えよう」という気持ちで黒野をどくフラワーの中に入れた。
その思いを知らない田宮丸から「どうして俺以外を簡単にどくフラワーへ入れたんですか!?」と責められたときは、「俺の気持ちも分かれ!」と言いながら田宮丸を往復ビンタをし、入院させてしまう。近藤の想いを知った後の田宮丸はこのことに怒ることなく、また近藤との絆を深めたと感じている。ちなみに治療費はきちんと近藤が払った。

近藤がここまで田宮丸の食に対するこだわりに付き合うのは、過去の自分と似ているからである。
近藤も若い頃は尖っており、食に対するこだわりも多かった。そして田宮丸と同様「自分の食べ方が1番」と思っていた。しかしある時、同期のスタントマンだった有馬(ありま)と蕎麦の食べ方一つで揉める。有馬の食べ方も自分と違うが、こだわりがあって良いものだったと反省する頃には、有馬はスタント中の事故で亡くなっていた。
そのため食べ方一つで揉め、有馬に謝れないままになってしまったことを後悔し、田宮丸には自分のようになって欲しくないと思っているからこそ親身にサポートしている。

仕事関係

大貫(おおぬき/演:八木将康)

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