春の呪い(漫画・ドラマ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『春の呪い』(はるののろい)とは、2016年1月から2017年1月まで小西明日翔が『月刊コミックZERO-SUM』(一迅社)にて連載していた恋愛漫画である。テレビドラマ化され、2021年5月からテレビ東京系列で放送された。主人公の「立花 夏美(たちばな なつみ)」は最愛の妹の「立花 春(たちばな はる)」を癌で亡くし、妹の恋人であった「柊 冬吾(ひいらぎ とうご)」と交際することになる。春への罪悪感の中で惹かれ合う二人の複雑な心情が魅力的な作品である。

二人で暮らそうと約束する夏美と春

夏美と春がまだ幼いとき、実の母親が家を出ていき新しい母ができた。「お姉ちゃん…お母さんどこに行ったのかな…」と不安そうにしていた春に、夏美は「いつかお姉ちゃんと一緒に二人で暮らそうか。お姉ちゃんお金貯めるからさ 二人で」と言う。不安そうだった春の顔が晴れ、「じゃあ春もお金ためる!」と二人は嬉しそうであった。二人はその約束を支えにし、辛いことがあるといつか二人で暮らそうねとお互いに慰めあっていた。「春のためならなんでもできた。結婚なんかしなくてもいい。ずっと二人でいられればそれでいい」と思っていた夏美だったが、冬吾が現れてから一瞬にして春の心を奪っていってしまった。春が自分を置いていってしまうと思った夏美は、冬吾をいっそ殺してやりたいとすら考えてしまった。その矢先に春が死んだ。自分の思いが春を殺してしまったのではないかと思う夏美は春の最期を思い出す。夏美は春のことを誰よりも幸せにできると思っていたが、春が最期に呼んだのは夏美ではなく冬吾だった。

夏美「頭から離れん… 呪いみたいだ…」

春の最後の言葉が頭から離れず、呪いみたいだという夏美

冬吾と付き合うことになった夏美は春への罪悪感に押しつぶされそうであった。「いっそ死んでしまおうかと3秒に1度考えてしまう 春が死んでから今までずっと悪い夢を見ているようだ これは本当に現実なのか?」と考えているうちに無意識に踏切に手をのばすが、寸前のところで冬吾に止められた。「冬吾さん 何も思わないんですか…わたしと付き合っていて何か…罪悪感とか…」と肩を落として問う夏美に、冬吾は「…春には…申し訳ないと思っている」と言う。この言葉から冬吾が自分に好意を向けていることに気がつき始めている夏美だったが、その度にか細い声で「冬吾さん…」と言う春の最後が頭に浮かぶ。「頭から離れん… 呪いみたいだ…」「この際呪いでもいい 春の声を忘れないでいられるならば」と夏美は思い、乾いた笑みを浮かべる。

冬吾の母「そう だから冬吾も小学校を卒業して中学校を卒業して高校を卒業したらここに通うのよ 絶対に」

子供の頃からレールを敷かれていた冬吾

冬吾の母親は幼い冬吾を立啓(りっけい)学院大学に連れていった。母親の弟、つまりは冬吾の叔父がここで働いており、会いに来たと言う。
「大きいでしょう。冬吾のおじいちゃんのおじいちゃんがこの学校をつくったの」と母は誇らしげに言う。幼い冬吾にはまだわからなかったが、「相馬家の人はみーんなここで勉強してきたのよ。そう だから冬吾も小学校を卒業して中学校を卒業して高校を卒業したらここに通うのよ 絶対に」と母に言われた時は、幼いながらも自分の人生が既に決まっているということを知ったのであった。そうして冬吾は親の期待する通り小中高と道筋を進み、母親の言葉通りに立啓学院大学へ入学した。冬吾は自分のやりたいことや将来への願望が何も浮かばず、立花家との見合いの話も言われるがままに受け入れたのであった。

春「もし二人を引き離せるのなら…どちらかを連れていけるならわたしは姉を連れていく 姉を地獄に道連れにしてでも…彼には生きて幸せになって欲しい だから写真だけでいい 写真だけでもわたしは彼を連れていきたい」

冬吾と一緒に生きられないことを悟った春は、夏美に自分の棺に写真を入れてほしいと頼んだ

春は冬吾の好意が夏美に向けられていることに気づいていた。「お姉ちゃんが羨ましい お姉ちゃんが妬ましい。…お姉ちゃんになりたい」と考えていた春は「もしわたしに何かあったら…これ…入れてほしいの わたしの棺に」と言い、冬吾と二人で写った写真を夏美に託した。夏美は冬吾のことが単に好きだから写真を入れてほしいのかと思っていたが、そうではなかった。「本当はわたし以外の女の人と結婚しないでほしい…。ずっと一緒にいてほしい…死んでも離したくない。…でも一緒に死んでほしいとは思わない。もし二人を引き離せるのなら…どちらかを連れていけるならわたしは姉を連れていく。姉を地獄に道連れにしてでも…彼には生きて幸せになって欲しい。だから写真だけでいい 写真だけでもわたしは彼を連れていきたい」と春は思っていたのであった。

冬吾「夏美 お前が好きだ 俺はお前が欲しい…!」

初めて冬吾の本心が見える

冬吾が事故にあったと聞き、思い当たる病院をすべて当たって冬吾の病室へとたどり着いた夏美は「生きててよかった…」と泣き崩れる。
「妹の代わりに死んでやれたらと何度も考えました…。なのにわたしは…懲りずにここまで来てしまった…。最低の鬼畜生だ…。よりによってなぜ死んでしまった妹の恋人なんだと毎日考えては死にたくなりました。でもあなたのことを考えるとけっきょく死ねなかった…!あなたと一緒にいると楽しいと思いたくないのに恐ろしいほど楽しくて、一緒にいたくないのに一緒にいたいと思ってしまう…。これが人を好きってことなんですか?」「それなら どうせ死ぬなら あなたと一緒にいて死にたい。春はわたしのたった一人の家族なんです…。妹に呪い殺されるなら、本望です」と夏美は泣きながら胸の内を明かす。そんな夏美を見て冬吾は「…俺は…春が死ぬその瞬間まで本気でアイツと結婚するのだと思っていた…。周囲が期待しているその通り春が大学を卒業すれば結婚して、子供をつくり仕事をこなし、それなりの人生を送るのだと…それでよかったのに、春が死んでそこから全てが狂ってしまった…!」と今まで言えなかった自分の気持を打ち明ける。
「生きる目的なんて考えたこともなかったのに、お前と一緒にいるとだんだんとお前に会うことこそが生きる目的になってしまって お前に会える週末のために仕事をして、別れた後は来週の週末のためにまた仕事をしていた」「お前は一体なんなんだ…!別れさえすれば昔の自分に戻ることができると思っていたのに…お前といると欲ばかり出てきてしまう…!」と夏美を抱き寄せて言う。「夏美 お前が好きだ 俺はお前が欲しい…!」冬吾の言葉に、夏美の頭には春の顔が浮かぶが「好きです…わたしも…あなたが…っ」と夏美は本心を打ち明けた。

夏美の義母「10年前は急に娘二人が出来るなんてと思ったのに… まさかこんなにも急に娘二人がいなくなるなんて…」

夏美が家を出ることに涙する母

家を出ることを決心し、冬吾と二人で暮らすことになったと夏美は母親に打ち明ける。「お父さんには私から話す。多分死ぬほど怒られるから、その間お母さんは海斗とどこかに逃げててよ」と荷造りを進める夏美に母親は怒らなかった。「…行きたいなら行きなさい。もう止めないわ。でもお父さんが帰ってくる前に出ていきなさい。お父さんにこんな話をしたらお前は今後一切家から出してもらえなくなる。お母さんからお父さんに話します。お母さんがあなたを勘当します」と夏美の手を握りながら母親は言った。母親は夏美と春に心から好かれていないことは気づいており、それでも10年間ずっといい娘でいてくれた二人を大切に思っていた。「10年前は急に娘二人が出来るなんてと思ったのに…まさかこんなにも急に娘二人がいなくなるなんて…」と母親は涙を流しながら言う。この言葉に夏美は今からでもこの家族でうまくやっていけるのかもしれないと思うか、脳裏に冬吾の姿が浮かび、家を出ることにした。

『春の呪い』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

夏美と冬吾の共通点

夏美は高1から飲食店でアルバイトをしているため、レジ打ちや電卓打ちが早い。後輩のミスも笑って対応出来るほどの経験を積んでいる。後輩は「夏美さんメチャクチャ仕事できるしプラマイゼロでしょ!フロアもキッチンも発注もクレーム対応もできるし、もう社員になればいいのに~!」と夏美をおだてている。
冬吾は銀行業務をしているのでお札の勘定が早い。金融業務は相馬家のお家芸であり、冬吾は相馬家の中でも更に勝ち組だと篤実に言われている。冬吾は出世には興味はなく、母の言うとおりに進学して就職した。資格をたくさん所持しており、法務二級と三級、FP(ファイナンシャルプランナー)二級と三級、税務二級と三級、財務三級、宅建、簿記二級、地歴公民教員免許を持っている。TOEICスコアは890点である。

実は冬吾には兄がいた

冬吾に兄がいることが発覚した

冬吾の「学費以外は自分で稼いでくるよう…特に兄からは厳しく言われてきた」という言葉で、冬吾に兄がいることがわかった。冬吾の上に二人の兄がおり、どちらも海外にいるが長男はそろそろ日本に帰ってくるという。
昔はよく使い走りにされたようで、今でも日本料理が恋しくなると日本の食料品をリストアップして冬吾に送らせている。冬吾の珍しい末っ子な一面が見えるシーンである。

自分の理想とは真逆の女を好きになる冬吾

natsuzora8
natsuzora8
@natsuzora8

目次 - Contents