『瞳』がテーマの3短編

〈目は口ほどにモノを言う〉と言うことわざがありますが、それだけ人の心を動かす部位であることは間違いないよう。そんな"瞳"をテーマに扱った珠玉の短編を三篇紹介します。(新潮社の百年文庫『瞳』参照)

『ブロードウェイの天使』ラニアン

〈あらすじ〉
競馬のノミ屋をしているケチな男・ベソ公のもとに、担保として名前も知らない一人の女の子が預けられる。初めは困惑するベソ公だったが、しだいにほだされ以前のケチさはどこへやら、とっても気前の良い父親然とした態度をとるようになってゆく…

お人形のように可愛い少女"マーキー"。彼女によってケチで利己的な男が気前の良い心身へと転身する姿が微笑ましくもあり、ラストに切なさも誘います。

『子供たち』チェーホフ

〈あらすじ〉
大人の居ない留守版の日、子供たちはここぞとばかりに集ってゲームを始める。そう、大人たちの賭博を真似して…

パパもママも家政婦もいない、そんな抑える者の居ないチャンスに、眠い目をこすりながら賭けごとのまねっこをする子どもたち。親の居ぬ間の居心地の良さと帰ってくるまでのスリルに懐かしさを覚えます。

『悲恋』モーパッサン

〈あらすじ〉
神ばかりを気にかけ、独身を貫いてきたミス・ハリエット。純朴な彼女は、やがて出会った若い画家に心を奪われてゆく…

誰にも優しく洒落た画家に、悲しいほどの熱情的な想いを馳せる純朴な老女。ラストに雷を打たれるような衝撃を覚えます。

いかがでしたか?

人の心をくすぐる瞳、少し背伸びしたいたずらっぽい瞳、熱を帯びたまっすぐな瞳…

それぞれ言葉に出来ぬ思いを運ぶ"瞳"の物語。心洗われるような短編をお求めの方にピッタリの作品集です。

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