竜とそばかすの姫(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『竜とそばかすの姫』とは、2021年の夏に公開されたスタジオ地図製作の細田守が監督を務める日本アニメーション映画。心に大きな傷を抱えた主人公の女子高校生が、仮想世界と現実世界での出会いを通して成長していく姿は見る人に勇気を与える。監督特有の空想と現実による2つの世界と2つのアニメーションによって紡ぎだされる物語は、かつてない圧倒的スケールとなる。SNSが当たり前になり目まぐるしく変化していく世界で、変わることの無い大切な物は何かを訴えかける作品となっている。

『竜とそばかすの姫』の概要

『竜とそばかすの姫』とは『時をかける少女』『サマーウォーズ』『バケモノの子』などで知られる細田守監督による作品。スタジオ地図10周年に当たる2021年7月に公開された。主人公のすず役はシンガーソングライターとして活躍する中村佳穂が務める。劇中歌の歌唱と一部作詞も務めた。Uの世界で登場する竜の声は俳優の佐藤健が務める。すずのUの世界での姿であるベルのデザインを『アナと雪の女王』のJin Kimが担当し、音楽をスウェーデン出身の作曲家Ludvig Forssellが担当するなど、海外のクリエイターも参加している。2022年1月には第45回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞を受賞。同年3月、音楽スタッフの岩崎太整、Ludvig Forssell、坂東祐大が第45回日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞する。母親と歌うことが大好きだった主人公のすずは幼いころに母を亡くし、人前で歌うことが出来なくなってしまう。成長し高校生になったすずはUと呼ばれる約50億人が集うインターネット上の仮想空間を体験する。みんなが匿名のUの中で歌えるようになったすずは、そこで大きな傷を持つ暴力的なアバター竜と出会う。竜に興味を惹かれ近づくすずは彼の秘密に触れることになる。そこからU全体を巻き込んだ大騒動となるが、それをきっかけにすずは大きく成長していく。

『竜とそばかすの姫』のあらすじ・ストーリー

悲しい過去を抱える主人公「すず」

Uの世界での出来事に困惑し親友のヒロちゃんに相談しているすず

舞台は高知県のとある田舎町。主人公の「すず」こと内藤鈴(ないとうすず)は幼いころに母を亡くし、父と二人暮らしをしている。すずの母は合唱団員だったため、その影響を受けてすずも歌うことが大好きだった。ところが彼女が幼いころ、母は増水した川の中州に取り残された子供を助けるために川に飛び込み命を落とした。その映像がネットで拡散され、すずの母の死はネット上で自殺行為だと激しく叩かれてしまう。他の子の命と引き換えに母に先立たれたすずは、寂しさと共に母の行動が理解できず思い悩んでしまう。それをきっかけにすずは大好きな歌が歌えなくなってしまった。心の傷を克服できぬまま高校に進学したすずは内気な性格からクラスの雰囲気になじめずにいた。ある日親友の「ヒロちゃん」こと別役弘香(べつやくひろか)に勧められ、Uという50億人が利用するインターネット上の仮想現実を体験する。Uにはキャッチコピーがある。”〈U〉はもうひとつの現実。〈As〉はもうひとりのあなた。現実はやり直せない。でも〈U〉ならやり直せる。さあ、もうひとりのあなたを生きよう。さあ、新しい人生を始めよう。さあ、世界を変えよう”だ。

新しい自分を見つけた「すず」に訪れる変化

Uの世界で歌う喜びを思い出したすず(ベル)

AsとはUの中で活動する自分の分身となるアバターのこと。すずのアバターは同じ高校の人気者である「ルカちゃん」こと渡辺瑠果(わたなべるか)にそっくりだったが、すずの顔にあるそばかすがそのアバターにしっかり反映された。そのアバターをすずはベルと名付けた。
Uに入ると、そこは広大な仮想現実空間。Asは自身の体とボディシェアリングしているためまるで現実にその空間にいるかのように感じる。
すずは現実世界では歌うことができなかったが、実名が伏せられたUの世界では不思議と歌うことができた。そしてその不思議で魅力的な歌に共感を覚える人が増えていき、ベルは瞬く間にフォロワー数を2億まで伸ばす。Uの中とはいえ急に有名人になったすずは取り乱すが、唯一ベルの正体を知るヒロちゃんがプロデュースをしてくれることになる。
ベルが人気になるにつれてその正体を探ろうとする動きが出てくる。すずの学校でもベルのことが話題になるが、本人のすずはその話題には入れず、代り映えの無い日々を過ごしている。
そんなある日、すずはヒロちゃんの提案で2億人以上のAsを前に大規模ライブの開催を決定する。

「竜」との出会い

ライブ開催直後に竜が乱入してきて、困惑するベル

ライブを開催当日、1億から2億のAsが同時接続しベルの歌を待ち望んでいる。しかしいざライブが始まろうとした時、突然会場に「竜」と呼ばれる凶暴なモンスターの姿をしたAsが乱入し、後から追ってきたUの警備組織「ジャスティス」との戦闘が始まる。
ベルのライブ会場で激しい戦闘が繰り広げられ、ライブは大荒れ。その後中止になってしまう。ジャスティスのリーダーであるジャスティンはUの中で暴れ回る竜の正体を暴こうと、Asを強制的に現実世界での姿に戻すアンベイルを行おうとする。しかし竜は間一髪その場から逃げ出した。その時ベルは竜の身体が全身痣だらけになっていることに気付き、竜のことが気になり始める。
竜は他のアバターに対して非常に暴力的なため周囲からの評判はとても悪い。U内では竜の正体に対する憶測が飛び交い、スポーツ選手やマダム、有名人に疑いの目がかけられ非難の声が浴びせられる。一方竜のことを擁護する者も少数派として存在し、特に子供たちから人気があった。
竜に興味を持ったベルは彼の住みかとしている城の情報を聞き付けそこに行ってみることに。住みかに侵入してきたベルを乱暴に追い払おうとする竜だったが、不意に見せる優しい一面に気づき、彼の凶暴性には何か理由があるのではないかと疑いだす。

現実世界と仮想世界で起こるアクシデント

固く閉ざした心を開く竜とそれによりそうベル

そんな時学校で、すずがクラスの人気者である男子の「しのぶくん」こと久武忍(ひさたけしのぶ)と付き合っているという出まかせの情報が出回る。クラスではおとなしく地味な存在だったすずは、急に人気者との噂を流されクラス内での居場所が無くなりだす。この件はヒロちゃんのネットを使った情報操作により深刻化は避けられた。しかし噂が出回ったことに納得のいかないすずは噂の真相を知るためにしのぶくんに直接話を聞こうとする。しかししのぶくんはまともに取り合ってもらえず、なぜ噂が流れたかはわからないままとなってしまう。
一方Uの世界でベルは再び竜に会おうと試みる。しかし同じく彼のことを追っていたジャスティンに見つかり捕らえられてしまう。ジャスティンはアンベイルでベルを脅し、竜の居場所を無理やり聞き出そうとする。しかしギリギリのところで駆け付けた竜が間一髪で助け出す。このことをきっかけにベルと竜との間にあった壁が少しづつ無くなっていく。
現実世界に戻ったすずはクラスのマドンナであるルカちゃんに出会い、彼女がしのぶくんの親友である「カミシン」こと千頭慎次郎(ちかみしんじろう)に想いを寄せていることに気付く。その話をしているときに偶然カミシンがやってきて、すずは一生懸命2人の仲を取り持ち告白の手伝いをした。
その時偶然現場の近くにいたしのぶくんは唐突に、すずに「ベルの正体はお前だろ。」と告げる。大きく取り乱すすずだったがそんな時ヒロちゃんから竜に危険が迫っていることを知らされる。

「竜」に迫りくる危機

竜の城が燃やされているのを目の当たりにするすずと友人たち

すずは急いで竜のもとに向かうが、既にUではジャスティスが竜の城に火を放っていた。ベルと再会した竜は「自分が逃げれば迷惑はかけない」とどこかへ去ってしまう。
すずはヒロちゃんの協力を得て竜に関する情報をかき集める。すると竜にしか歌ったことの無い歌を口ずさむ少年のライブ動画を発見する。それを見ていると、父親から酷い虐待を受けている少年・知(とも)とそれを必死に庇う少年の兄・恵(けい)の様子が流れる。すずは恵の様子を見て彼が竜だと気き、動画の通話機能を使い自分がベルであることを告白する。しかし突然見ず知らずの人からそういわれても恵は信じようとしない。
しのぶくんは、恵の心を開くためにはベルの正体を公表するべきだと助言する。ヒロちゃんたちはそれに反対するが、すずは恵に信じてもらうためにUでベルの正体を明かすことを決意する。
すずたちのことを心配してか、気づけばすずのもとに母の合唱団のメンバーや高校の友達たちが集まっていた。

心揺さぶるすずの歌、動き出す竜の心

アンベイルされ、素顔をさらしたままUの世界中の人の前で歌うすず

Uの世界に戻ったベルの前にジャスティンが現れ、しつこく竜の居場所尋ねる。頑なに口を閉ざすベルに耐えかねたジャスティンはアンベイルを行うが、ベルはそれをあえて受け入れUの人々の前で本当のすずの姿をさらけ出す。
ベルの姿でしか歌えなかったすずだが、しのぶ君の言葉を受けて本当の姿のままUの世界中の人たちの前で歌いだす。途中で何度も歌うことを辞めそうになるが、仲間たちや世界中の人たちの声援を受け、すずは歌いきる。その歌声と勇気は多くの人々の感動を誘う。
そんなUでの出来事を見ていた恵はすずに自分の住所を教えようとする。そこに恵の父が戻ってきてしまい、通信を無理やり遮断する。それでもすずは仲間たちと協力し、数少ない情報から恵の居場所を絞り出す。
急いで児童相談所に連絡するがまともに対応してもらえず、しびれを切らしたすずは自ら恵のもとに乗り込む決心をする。
止めようとする皆を説得し、恵のところへと向かうすずのもとに父親が見送りに来る。
無謀な行動に出るすずのことを信じて優しい表情で見送る父の姿を見て、すずは母が子供を助けて亡くなった時のことを思い出す。
その時の母の姿と今の自分を重ねながら、すずは東京行きの夜行バスに乗り込み恵のもとへ向かう。

すずと恵の出会い、ベルと竜の再会

翌朝父の下から逃げ出してきた恵と知を発見するが、後を追ってきた父が襲い掛かってくる。それを庇ったすずは傷を負うが怯むことなく2人の前に立ちふさがる。すずの気迫に押された兄弟の父は断念して去っていった。

恵はベルから勇気をもらい、父の暴力と戦う決心を固める。すずも「竜」と出会ったことで過去を克服し前に進むことが出来たことに感謝する。お互いの抱える問題を克服することを約束しそれぞれの家に戻る。
地元に帰ってきたすずは父や同級生たちに出迎えられる。そこでしのぶくんから告白され2人は付き合うことになる。そして歌うことの壁を乗り越えたすずは合唱団への勧誘を受け、大好きだった歌と共に大きく成長して映画は幕を閉じる。

『竜とそばかすの姫』の登場人物・キャラクター

9bcheese115
9bcheese115
@9bcheese115

Related Articles関連記事

バケモノの子(アニメ映画)のネタバレ解説・考察まとめ

バケモノの子(アニメ映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『バケモノの子』とは、2015年に公開され、400万人を動員した大ヒット作といえるアニメーション映画である。監督は『時をかける少女』『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』を手がけた細田守。ひとりぼっちの人間の子供と、天涯孤独のバケモノが、奇妙な師弟関係からともに成長し、親子の絆を築く新冒険活劇。

Read Article

おおかみこどもの雨と雪(アニメ映画)のネタバレ解説・考察まとめ

おおかみこどもの雨と雪(アニメ映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『おおかみこどもの雨と雪』は2012年7月21日に公開されたアニメーション作品である。 アニメ映画版「時をかける少女」や「サマーウォーズ」を世に出した細田守監督の長編オリジナルアニメーションであり、監督が立ち上げたアニメーションスタジオ「スタジオ地図」名義での記念すべき1作目である。主題歌はアン・サリーが歌う「おかあさんの唄」。

Read Article

時をかける少女(時かけ)のネタバレ解説・考察まとめ

時をかける少女(時かけ)のネタバレ解説・考察まとめ

『時をかける少女』とは、2006年に公開された、アニメーション映画である。監督は『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』などを手がけた細田守。筒井康隆の原作を元に作られており、原作の20年後が舞台となっている。時間を跳躍する力を手に入れた主人公が、その力を使いながら、本当に大切なものは何なのか気づいていく、青春SF作品。

Read Article

サマーウォーズ(アニメ映画)のネタバレ解説・考察まとめ

サマーウォーズ(アニメ映画)のネタバレ解説・考察まとめ

サマーウォーズ(Summer Wars)とは2009年8月1日から公開された日本のアニメ映画である。監督はアニメ映画版『時をかける少女』や『おおかみこどもの雨と雪』で知られる細田守であり、今作品は監督初の長編オリジナルアニメーション作品となっている。 仮想世界が発達した世界を舞台に主人公である小磯健二が先輩の篠原夏希とその家族らとともに仮想世界と現実世界の危機に立ち向かう物語である。

Read Article

未来のミライ(細田守)のネタバレ解説・考察まとめ

未来のミライ(細田守)のネタバレ解説・考察まとめ

『未来のミライ』とは、スタジオ地図製作により2018年7月に公開された長編アニメーション映画である。監督は「時をかける少女」や「サマーウォーズ」を制作した細田守。 横浜の片隅で両親と暮らす「くんちゃん」は、「お兄ちゃん」になったばかり。妹が生まれてから両親は自分の要求を叶えてくれなくなり、ついにくんちゃんは「赤ちゃん返り」をしてしまう。「赤ちゃん好きくない!」を連発して駄々をこねるくんちゃんは、家の中庭から不思議な時間旅行をすることになる。そこで出会ったのは未来の妹だった。

Read Article

millennium parade(ミレニアムパレード)の徹底解説まとめ

millennium parade(ミレニアムパレード)の徹底解説まとめ

millennium parade(ミレニアムパレード)とは、2019年結成したKing Gnu常田大希が主催するアーティスト集団。楽曲によってメンバーが変わる。メインメンバーはボーカル・作詞ermhoi、ピアノ江﨑文武、サックスMELRAW、ベース新井和輝、ドラム勢喜遊、石若駿、ディレクター佐々木集、アートディレクター森洸大、デジタルアート神戸雄平。日本の東京をベースに活動を行い、東京の最新の音を世界に発信しており、若者中心に人気を集めている。

Read Article

ハウルの動く城(ジブリ映画)のネタバレ解説・考察まとめ

ハウルの動く城(ジブリ映画)のネタバレ解説・考察まとめ

「ハウルの動く城」とは宮崎駿監督、スタジオジブリ製作の日本の長編アニメーション映画作品である。2004年11月20日に全国公開され、興行収入は196億円。スタジオジブリ製作アニメでは「もののけ姫」を抜き、「千と千尋の神隠し」に次ぐ第2位の記録を樹立した。 物語は魔法と機械が混在する架空の世界が舞台。呪いで老婆にされた少女ソフィーと魔法使いハウルの戦火の恋を描く。

Read Article

アニメ・漫画に出てくる、見ているだけでよだれが出てくる美味しそうな食べ物たち

アニメ・漫画に出てくる、見ているだけでよだれが出てくる美味しそうな食べ物たち

アニメ・漫画で度々登場するのが、食べ物のシーン。しかし食べ物は現実、色のグラデーションや光の吸収率や反射率などがまちまちで、絵として表現するのは至難の技なのです。けれども、そんな中でもその独特な食べ物たちを極めて美味しそうに書いたアニメや漫画があるのです。今回はそんなシーンにこだわって、たくさんの美味しそうな食べ物をまとめてみました。

Read Article

食べたい!おいしそうなジブリ映画の食べ物【ジブリ飯】

食べたい!おいしそうなジブリ映画の食べ物【ジブリ飯】

『千と千尋の神隠し』で千が食べたおにぎり、『魔女の宅急便』のニシンとかぼちゃの包み焼き、『もののけ姫』の雑炊。すばらしいアニメーションとストーリーに感動しながらも、無性におなかがすいてしまう、それが「ジブリ飯」だ。ここでは人々の食欲を刺激してやまないジブリ映画の食べ物を紹介する。

Read Article

【スタジオジブリ】何度でも観たい!「ハウルの動く城」の秘話や名言・名セリフまとめ

【スタジオジブリ】何度でも観たい!「ハウルの動く城」の秘話や名言・名セリフまとめ

ハウルの声優を木村拓哉が務めたことで話題になったスタジオジブリの映画『ハウルの動く城』。ヒロインのソフィーが老婆になってしまう姿に、衝撃を受けた方も多いのではないでしょうか。この記事では、そんな本作に関する制作秘話や作中の名言・名セリフについてまとめています。これを読んだら、あなたもハウルの魔法にかかってしまうかもしれません。

Read Article

【ハウルの動く城】スタジオジブリ作品とゆかりのある場所まとめ【耳をすませば】

【ハウルの動く城】スタジオジブリ作品とゆかりのある場所まとめ【耳をすませば】

スタジオジブリ作品を観ている時、街並みや背景の美しさに惚れ惚れしたことはないでしょうか。実は、スタジオジブリ作品の中には私たちの現実世界とゆかりの深い場所がたくさんあるといわれています。この記事では、作品の舞台となったと思われる場所についていろいろとまとめてみました。一度は絶対訪れたいところばかりなので、チャンスがあったらぜひ!

Read Article

【天空の城ラピュタ】タロットカードみたいに繊細で美しいスタジオジブリのイラストまとめ【ハウルの動く城】

【天空の城ラピュタ】タロットカードみたいに繊細で美しいスタジオジブリのイラストまとめ【ハウルの動く城】

とんでもないものを見つけてしまいました。スタジオジブリ作品の登場人物やキャラクターがまるでタロットカードの絵のように描かれたものがあるのです。こういうのホンマにありそう!いやぁ、美しい…もはや芸術の領域ですね。どんなカードが出ても文句は言わないので、ぜひこのカードで未来を占ってください…。

Read Article

目次 - Contents