魔女の旅々(小説・漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『魔女の旅々』とは2016年からGAノベルより発刊されている白石定規の小説、およびそれを原作とした2020年のアニメ作品である。主人公イレイナは、魔女ニケが世界を旅してつづった本『ニケの冒険譚』の内容に憧れ、自らも魔女となり世界をあてのない旅をすることになる。イレイナは訪れる様々な国で出会いと別れを繰り返していく。その中には明るい話もあれば、暗く悲しい話もある。イレイナは旅人として、それらを記録しながら旅を続ける物語である。

『魔女の旅々』の概要

『魔女の旅々』とは2016年からGAノベルより発刊されている白石定規の小説、およびそれを原作とした2020年のアニメ作品である。作者の白石定規は同作品がデビュー作である。2014年にAmazon Kindleで公開された自費出版小説が、のちに加筆修正されてGAノベルより発刊されることになった。小説版のイラストはあずーるが担当。2018年には七緒一綺の作画により漫画版も連載されている。『このライトノベルがすごい!』の単行本部門で、2018年は9位、2019年は6位、2020年は6位、2021年は10位に選ばれている。
主人公イレイナは、魔女ニケが世界を旅してつづった本『ニケの冒険譚』の内容に憧れ、自らも魔女となり世界をあてのない旅をすることになる。イレイナは訪れる様々な国で出会いと別れを繰り返していく。その中には明るい話もあれば、暗く悲しい話もある。イレイナは旅人として、それらを記録しながら旅を続ける物語である。

『魔女の旅々』のあらすじ・ストーリー

魔女見習いイレイナ

主人公であるイレイナは幼いころから、魔女ニケが世界を旅してつづった本『ニケの冒険譚』を読み、魔女に憧れていた。魔女になるために必死に勉強したイレイナは、14歳で国最年少の魔女見習いになることができた。周りよりも自分のレベルの高さに自信を持っていたイレイナはすぐに魔女になれると考えていた。しかし、魔女になるにはほかの魔女に弟子入りする必要があったが、それをおもしろく思わない国の魔女にことごとく断られてしまう。ようやく星屑(ほしくず)の魔女フランの弟子となることができたが、雑用や理不尽な要求をされるだけで、全く魔法を教えてくれることなく1か月たってしまう。そして、フランはイレイナに試験として自分と戦うことを課すが、イレイナは全く歯が立たず敗れて泣き出してしまう。そこで、実はフランはイレイナの両親に依頼されて失敗や挫折を味わせるために理不尽なことをしていたと明かす。フランはイレイナに我慢せずにつらいことがあれば戦うようにと諭す。その後はしっかりと修行を行ってもらい、1年後にはイレイナは「灰(はい)の魔女」となった。そして、魔女として憧れていた旅に出ることとなった。

魔法使いの国

魔法使いが優遇される魔法使いの国に訪れたイレイナであったが、着いた早々、魔女を目指す少女サヤにぶつかってしまい魔女の証のブローチを落としてしまう。ブローチを失ったイレイナはサヤが働く安宿に泊まることになる。そこで、イレイナはサヤに魔女見習いの試験の対策をお願いされ、引き受けることになる。しかし、イレイナはサヤがわざとぶつかりブローチを奪ったことに気づく。サヤは妹が先に試験に合格して国に帰ってしまったのを人寂しく思い、代わりにイレイナを引き留めようとしていた。イレイナは一人で立ち向かうように諭し、そして自分の代わりに三角帽子を渡し旅立った。半年後に別の国で、イレイナはサヤが無事に魔女見習いになったことを知るのであった。

花のように可憐な彼女

イレイナは見事な花畑の中で女性に出会う。女性は花の美しさをほかの人に知らせるために次に向かう国に花束を届けることを頼まれ引き受ける。しかし、次の国でその花には毒があり人を花が咲いているところまで誘導し、養分にしてしまうものだと知る。イレイナは次の日に再び花畑に訪れると、女性はすっかり植物に取り込まれており、女性の兄であった門兵もまた植物に取り込まれようとしていた。そして、花束をもって国に向かう多くの人影がそこにあった。

瓶詰の幸せ

イレイナは幸せを魔法の力で瓶詰にしている男性エミルと出会う。エミルは、自分の家の使用人であるニノがいつも暗い顔をしているので元気づけるためにそれをプレゼントしようとしていた。家に招待されたイレイナは、ニノがエミルの父にひどい目にあわされていると気づく。エミルは元気のないニノに瓶に入った、多くの幸せな風景を見せる。イレイナは旅路の途中でよく似た物語を思い出していた。その物語では外に出歩けない妻のために、夫が世界の風景を見せた結果、妻が絶望してしまった「人のためにと思ってしたことが正しいとは限らない」という話であった。

民なき国の王女

イレイナが訪れた国はすでに滅んでしまっていた。その中で唯一残っていた建物を尋ねると記憶喪失になっていたこの国の王女であり、魔女でもあるミラロゼと出会う。ミラロゼのもとに残っていた手紙によればこの国を滅ぼしたのはジャバリエという怪物で、不幸にも殺されてしまったもののためにもミラロゼがジャバリエを倒さなければいけないとのことであった。イレイナはミラロゼを手伝い、ジャバリエを倒すための罠を作った。その罠を使って、ミラロゼは追い詰めることに成功する。その中で、ミラロゼは記憶を取り戻す。自分が料理人に身分違いの恋をしたこと、子を身ごもったことを国王に告げると、料理人は拷問の末に処刑されてしまう。その復讐のために国王をジャバリエにする呪いをかけて、その代償で記憶を失ってしまっていた。国王は、自身の意識がある状態でジャバリエとして国民を殺し続けさせられていたのである。ジャバリエを倒したミラロゼは亡き料理人と子供のために食事を用意するのであった。

王立セレステリア

王立セレステリアでは魔法使いが大道芸で皆を楽しませたり、魔法を使って仕事をしたりする風景が広がっていた。イレイナは急に王立魔法学校の生徒たちに追われることになる。夕刻まで逃げ切ると、師匠であるフランと再会する。学校の先生でもあるフランが生徒たちに課外授業としてイレイナを連れてくるように言ったためイレイナは追われることになったのだ。次の日は特別講師としてイレイナは学校で教えることになり、楽しむのであった。フランから大道芸などをやっている魔法使いはお金のためではなく、人に喜んでもらうのが好きだから行っているのだと聞かされる。イレイナはこの街のそういったところが、自分の旅そのものと重なる部分があると感じるのであった。次の日にフランと生徒たちが用意した花吹雪に見送られまた旅に出るのであった。

正直者の国

正直者の国では、その国にいる人はみんな嘘をつけなくなってしまう魔法がかかっていた。そこでイレイナは魔女となったサヤと再会する。イレイナと魔法統括協会の所属であるサヤは、流砂(りゅうさ)の魔女エイヘミアの依頼で、嘘をつけなくなってしまう魔法を解くことになった。エイヘミアは自身の声まで代償にして、国王の依頼で魔法を使ったが、魔力を失ったエイヘミアは王宮から追い出されてしまっていた。三人で王宮に侵入し国王と対峙する。そこで、イレイナは真実が剣であるというなら、嘘はその剣を納める鞘であり、人をむやみに傷つけないためにあると王を諭し、魔法を解くのであった。サヤはイレイナとの別れ際に、おそろいのネックレスをイレイナにプレゼントするのであった。

旅人が刻む壁

『ニケの冒険譚』には、同じ国の左側と右側は仲が悪く、間に壁を設けている国の話があった。魔女ニケは片方の国の役人に壁の自分側の方が優れていると自慢したいと考えているがどうすればよいかと相談される。ニケは、これから訪れる旅人にこちら側の素晴らしさを書き込んでもらい、その数が多ければ優れていると自慢できるようになると提案した。さらに、反対側にはすでにいくつか書き込みがあったと嘘をついた。それと同じことを反対側でも言った結果、その国では訪れる旅人が壁に文字を刻む風習ができあがった。それから十数年の時がたったのちに、魔法統括協会のサヤはその国の役人に、ブームが下火になったので新しいアイデアを出してほしいと依頼される。サヤは、これからは旅人ではなく、その国の人も書き込むことを提案する。サヤもまたそれを反対側の役人にも伝えた。さらにそののちに、イレイナは『ニケの冒険譚』に載っているこの国の壁を楽しみに訪れたが、すでに壁は取り壊されてしまっていた。国の人が書き込んだ結果、その内容が恥ずかしいから取り消したいと壁を削る人がたくさん出てしまった。そして、壁が壊れていき、最終的に壁を取り壊すことになったのであった。そのときにはすでに右側と左側のわだかまりもなくなっていた。

ぶどう踏みの少女

まだお酒を飲んだことがなかったイレイナは、最初はおいしいものを飲みたいと考えて、ぶどう酒が名産の村に訪れていた。ここでは「こっちの村」と「あっちの村」で分かれていた。あっちの村では美人のローズマリーが、ぶどう酒を作るためにぶどうを踏んだことを売りにして大ヒットしていた。イレイナはこっちの村の村長に頼まれてぶどう踏みの乙女を担うことになる。乗り気ではなかったイレイナであったが、そこに訪れたローズマリーに馬鹿にされたことで本気でぶどうを踏むことになる。しかし、それでもわずかな量しか作れなかったことで、イレイナはローズマリーが一人でぶどう踏みをしていないことに気づく。そして、男たちがローズマリーの代わりにぶどうを踏んでいる現場を押さえた。そうすると、こっちの村とあっちの村の住民たちは喧嘩になりお互いにぶどうを投げ合うことになる。さらにぶどう酒を飲んで酔っ払ったイレイナが村人全員に魔法でぶどうの弾丸を浴びせ、気絶させてしまう。のちに、それがもととなりぶどう投げ祭りがその村でおこなわれるようになった。

切り裂き魔

国民が人形好きなため、国中に人形があふれている国で、切り裂き魔の事件について調べている魔法統括協会に所属する夜闇(よやみ)の魔女シーラと出会う。証言によると切り裂き魔は女の命を奪っているとのことであった。イレイナはそのあとに無料で人形を配っているお店に訪れるが、受け取らずに去る。宿に泊まった次の日の朝に、イレイナは鏡を見ると「女の命」である髪を切られてしまっていることに気づく。シーラとともに宿泊をした部屋を調べると、部屋に置いてあった人形が消え、代わりに人形の髪が残されているのに気づく。その後、特別な人形を扱っている闇オークションの存在を突き止め、人から奪った髪の毛を付けた人形が出品されているのを発見する。そして、犯人である無料で人形を配っていた店の店主を捕まえ、失った自分の髪も取り返した。シーラは犯人を魔法統括協会に引き渡す際に、自身の弟子であるサヤと再会した。犯人がイレイナの髪を切ったと聞いたサヤは怒り狂うのであった。

遡る嘆き

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